Congratulation!

大坂なおみ
全米オープン
Congratulation!

「私はアスリートである前に、一人の黒人の女性です。
私のテニスを見てもらうよりも、いまは注目しなければいけない大切な問題があります」
アスリートは 政治や社会運動から距離を置くべきか
違うと 毅然と言い放し 試合放棄という行動に出る
「●●の仕事をしている者は、政治を語ってはならないのか」
選手も市民であり 発言する権利を有することを
シンプルに分かりやすく 見事に言明する

全米オープンへの参加宣言
「7枚のマスクを持ってきた」
黒人差別の被害者の 名前入りマスクを着用する
人種差別への 抗議のメッセージを発信し
決勝までの7試合に挑む 決意表明
「自らの身には起きていないからといって、それが起きていないということではない」
「あなたがどんなメッセージを受け取ったのか。それの方がもっと大事です。
私はみんなに話を始めてもらうことが重要だと、そんなふうに感じています」
国際社会の耳目を集めた
「彼らが必要とすることは、なんでも手伝いたい」
「7枚じゃ足りないことが、すごく悲しい」
準々決勝後の 犠牲者の遺族からの感謝にそう答えた
タフな決勝戦を制し 有言実行に感服する間もなく
勝利後のコメントも 秀でていた
核心を突いた ほとばしる柔らかな生きたことばを 
すでに身につけた 22歳の女性だった

黒人の差別問題という一点から 果敢に切り込む
日本の若者たちへの 強烈なメッセージ
社会問題に無関心な者たちへの 喚起のメッセージ
ひとりの人間として 
いかに考えるべきか
いかに行動すべきか
いかに生きるべきか

優勝は 
スポーツを通して培われてきた
人間的な 社会的な 成長を雄弁に語る
優勝は
意志力が 発言力とその発信力を鍛え
ファンの垣根を越えて 
世界中に 共感のムーブメントを起こす

「新しいなおみも、古いなおみもいない。
自分をどうやって成長できるかだけだと思う。
全ての失敗から学ぶことはある」
優勝インタビューの〆で語った
人間的成熟を目指す 
若いアスリートのポジティブな態度に
歓喜と共に 
また魅了された 

〔2020年9月13日書き下ろし。深いことを分かりやすくコメントする彼女に言葉力をいつも感じる。英語教育に熱心な文科省や中教審の方々には、大きな課題。国語力すら心配な日本の子どもたち。自由意思とその表現力をいかに保障するのか。12日の総裁選の討論を聞いていて、保身的な答弁を繰り返す方への信頼はいかがなものかと心許ない〕

付記
コートを正義を守る場に変えた
〈アスリートと社会問題の歴史に詳しいグランドバレー州立大のルイス・ムーア准教授の話〉大坂選手が過去の犠牲者の名前に言及することで、人びとは彼らの事件について考えざるをえなくなる。マスクの着用は、テニスコートを社会的正義を守るグローバルなプラットフォームに変える。いまの大坂選手には、人びとの注目を引きつけるテニスの才能がある。それを生かし、人種差別に関する世界的な意識を高めているのは素晴らしい。
 大坂選手を見て私が思い出すのは、1950年代に黒人の女子選手として初めて4大大会に勝った故アリシア・ギブソンさんのことだ。ギブソンさんは「公民権運動における自分の役割は素晴らしいテニスをすることと、素晴らしい人間になることだ」と口にしていた。(朝日新聞9月13日「大坂なおみと7枚のマスク」の記事の一部)