「老爺心お節介情報」号外
老爺心お節介情報/号外(2024年2月1日)
「老爺心お節介情報」号外
「老爺心お節介情報」号外
「老爺心お節介情報」第53号
地域福祉研究者各位
社会福祉協議会関係者各位
能登半島地震には本当に胸が痛みます。
亡くなられた方のご冥福と被災された方々へ心よりお見舞い申し上げます。
2024年1月26日 大橋 謙策
寒中お見舞い申し上げます!
Ⅰ 能登半島地震で亡くなられた方々のご冥福と被災された方々へお見舞い申し上げます
〇2024年が幸多かれと寿ぎをしている最中、能登半島地震の発生が知らされました。大変厳しい年明けになってしまいました。
〇能登半島地震で亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災に会われた方々へ心よりお見舞い申し上げます。
〇能登半島地震の被災状況は、日を経るにつれ、被害の甚大さが明らかになり、従来の震災とはまた別の様相を示しています。救命・救援、インフラの復旧は、行政及び専門職の方々にお任せするしか手を出せない状態です。しかしながら、被災地の高齢化や被災地のインフラの破壊状況を考えると、被災住民の方々の生活再建、地域復興に向けての「復元力」には相当厳しいものがあると推察しています。
〇この1月28日に、宮城県石巻市で「災害時ソーシャルワークフォーラム」が開催されます。このフォーラムは、日本医療ソーシャルワーカー協会が、東日本大震災被災後から12年間、石巻市で被災者支援をしてきた1047ケースの分析を基に開催されます。当日には『東日本大震災被災者への10年間のソーシャルワーク支援ー(公社)日本医療ソーシャルワーカー協会の相談支援1047ケースの実践報告』という本も中法規出版から刊行されます。この本は、12年間に亘る被災者支援の「縦断的調査研究」です。
〇このケースの分析、報告書の刊行に向けて、ここ5年間お手伝いをさせて頂いていましたが、①災害被災者支援は長期的に、災害被災後生活変容ステージごとに、かつ個々人の社会生活のアセスメントを丁寧に行いながら個別支援を行わないと、生活再建には程遠いことが明白になりました。②また、被災者一般ではなく、被災者の中には要支援者もいれば、「復元力」がおびただしく弱い人もいて、被災者といっても同じ“一枚岩”でなく、階層性を有しているので、その階層性に応じた支援が必要となります。
〇発災直後の「災害ボランティアセンター」の支援だけでは“ダメ”だということと、「復元力」の弱い高齢者や障害者への支援は継続的、長期的に、かつより伴走的個別支援のソーシャルワーク機能が重要であることが明らかになりました。この課題解決には、今まさに問われている「地域共生社会政策」における包括的、重層的支援体制を整備していくことに他なりません。
〇全社協は、2022年3月に『災害から地域の人びとを守るためにーー災害復旧支援活動の強化に向けた検討会報告書』を出しましたが、この内容レベルでは“ダメ”だと思います。これは、発災後のある時期には必要ですが、被災者支援に於いて、ややもすると“置き去りにされがちな”「復元力」が弱い、いわゆる“災害弱者”と言われる方々への支援が十分ではありません。
〇社会福祉協議会の使命は、まさに今問われている「地域共生社会政策」における「復元力」が弱い人を、誰一人“孤立”させない、“孤独”にさせない、個別支援を軸とした参加支援とそれを可能ならしめる地域づくりとを統合的に行う使命も持っているはずです。だからこそ、”地域を基盤として成り立つ社会福祉法人“として、住民から住民会費を頂いているのではないでしょうか。
〇社会福祉協議会が1987年の阪神淡路大震災を契機に「災害ボランティアセンター」を設置し、多くの被災住民から喜ばれる活動をしてきたことは高く評価しますが、その陰で被災者の中でもとりわけ要支援が必要な方々への長期的、継続的、伴走的支援をシステム的に行えていたのでしょうか。
〇能登半島地震に遭われた地域の状況、地域住民の社会生活の構造、従来にない地殻変動的被災の状況を考えると被災者支援は長期化するでしょうし、生活再建は容易ではないと思います。東日本大震災の時の教訓から、“集落ごとの避難”がかなり意識され、取り組まれていますが、地殻変動の大きな今回の震災では、集落の維持、持続自体が可能かどうか危ぶまれます。「生活再建」は相当に長期化し、厳しいものがあると推察されます。
〇社会福祉関係者は「災害被災者支援のソーシャルワーク」の在り方とそれを展開できるシステムづくりを改めて考える必要があるのではないでしょうか。
Ⅱ 1984年拙稿「公民館職員の原点を問う」は「地域共生社会政策」の先取りか?
〇昨年末から新年にかけて、私が1984年に書いた論文「公民館職員の原点を問う」(『月刊社会教育』1984年6月号所収、国土社)の内容が、今日進められている「地域共生社会政策」の“個別支援を通じて地域を変える”とかの先取りであるとか、今日の地域づくりの考え方に必要なものであるとか、今日の社会教育行政、公民館の在り方を予見していたものであるとかの評価、意見を頂きました。
〇1984年の拙稿は、私にとって今日のコミュニティソーシャルワークの在り方につながる、いわば基底になる考え方を示した論文です。私は、岡村重夫理論には地域福祉に関わる職員論がないと批判してきました(拙著『地域福祉とは何か』P18参照)が、1984年論文はその中核となる論文でもあります。それが、今日、改めて問われていることは嬉しいことです。
〇私の研究は、1984年論文で言いたかったことを常に意識してきました。したがって、拙著『地域福祉とは何か』の中でも、イギリスの1982年のバークレイ報告との関りで、1984年論文を引用、紹介しています(『地域福祉とは何か』P124。そこでは1984年論文を1984年8月号と書いてあるのは誤植です)。
〇上記のような意見を頂く契機は、明治大学の小林繁教授が『月刊社会教育』(旬報社に発行元が変更)の2023年12月号で、『「公民館職員の原点を問う」が提起するもの』と題する論文を書いてくれたからです。
〇『月刊社会教育』2023年12月号の小林論文は、1984年の拙稿を、①戦後初期の公民館構想が、1949年制定の社会教育法に組み込まれて行く過程で、公民館構想が有していた「住民が問題を発見し、問題を共有、深化させ、問題を解決する実践の中で形成される力、その教育的機能というものを事実上排除」し、結果として「いちじるしく公民館の活動を狭めた」こと、②1960年代以降の急激な産業構造の変化の中で、さまざまな社会的矛盾が地域課題や生活問題としてあらわれ、そのことがとりわけ子どもや障害をもつ人、高齢者などの社会的不利益者の問題として顕在化してくる。それらは別個の問題などではなく、複合的に連鎖している状況のなかで、公民館はどのような役割が求められているのか、(大橋)論文では、これらの問題の連鎖を分析・把握するための学習と、その問題を「解決するための力に転化させるための励ましや援助」との有機的つながりが必要であること、③公民館職員にはコミュニティワーカーとして、「住民が認識を高め、問題を解決する実践力を身に着けられるよう援助する」ことが求められること、④(大橋論文)は、この間の地域福祉の大きな転換、すなわち「地域共生社会」に向けて、「支え手」と「受け手」に分かれず互いに支え合う活動が(その当時から)追求されていると、拙稿の1984年論文を引用しながら、論文の今日的意義を整理してくれています(「」内は私の補足)。
〇小林繁論文のタイトルにはサブタイトルとして「座談会のテーマ(学びの壁を突き破るには)に関って」が付けられています。
〇私にとって、座談会の内容は、今日の社会教育行政や公民館の活動の分析と1984年当時の大橋論文との分析、内容とが必ずしもかみ合ってない感がするので、座談会そのものの論評はここでは避けたいと思います。
〇私が、この論文を書いた1984年当時、三多摩の公民館で働いていた、ある有力な職員から批判、反論を頂きました。その折、私の恩師である小川利夫先生から、“これは大事なことだから継続的論争として発展させた方がいい”とけしかけられましたが、当時の私はそれを受け入れませんでした。というのも、その当時、私は社会教育関係者も、社会福祉関係者も“出てきた政策には敏感に反応するが、政策が出されてくる背景には鈍感である”と批判していて、現象的な“評価”で論争する意欲が沸かなかったからです。
〇この「公民館職員の原点を問う」という論文は、当時、表向きにはなかなか言える立場ではありませんでしたが、岡村重夫地域福祉論における“地域論”、“職員論の欠如”への批判でもありました。また、この論文は、その後のコミュニティソーシャルワーク機能に関する論文の基底になる論文でもありました。
〇拙稿が『月刊社会教育』でとりあげられていることを202年年末に教えてくれた人は、長野市中条地区で活動されている黒岩秀美さんです。中条村が長野市に合併され、中条地区の地域の力、住民の力が弱くなり“消滅していく”のではないかという危機感の下、改め地域づくりに尽力されている方で、小池正志元長野県社会福祉協議会事務局長などと研究会を組織し、「人口減少地区における地域福祉のあり方」について研究、活動しているメンバーの一人です。そこでは、公民館と社会福祉協議会、施設経営の社会福祉法人の今後のあり方が論議されています。
〇その黒岩秀美さんが、元長野県飯田市の社会教育主事であった木下巨一さんとつながり、いろいろ情報が寄せられました。と同時に、私の教え子たちからもこの1984年論文が改めて俎上にのぼっていることも教えられました。
〇以下の文は、黒岩さん、木下さんにメールした内容です。
『月刊社会教育』2023年12月号の件、改めて40年前の拙稿を読み返してみました。40年前と現在とは状況は違いますが、指摘していることは間違ってなかったし、今でも“通用する”論文だと思いました。
2023年12月号の特集は、拙稿のもつ意味についての論考ではなく、その中の一部の「地域における個別課題に関する学習の組織化とその普遍化、住民の共有化」に関わる部分だけですので、それはそれとして“独立した”課題として、今日的状況を踏まえて論議していく必要があるでしょう。
40年前の拙稿が述べたかった点は、“公民館が住民が抱える地域課題を通して地域づくりを行うこと”をなぜ失念してしまったのかへの提起でした。
それは、“公民館の教育機関化と学習内容の高度化”(市民大学化)への警鐘でした。
私自身、「地域青年自由大学構想」に関する論文を書いていますので、公民館の学習内容の高度化を単純に否定しているわけではないのですが、あまりにも“公民館が住民が抱える地域課題を通して地域づくりを行うこと”が軽視されていることへの警鐘でした。
「限界集落、「消滅市町村」の現況の中では、改めてこの論文の意味するところを考え、「公民館復活」が重要です。
仮に、公民館の学習内容の高度化を考えるなら、もっと教育方法、教育内容についての考察が深められるべきだと当時思いました。当時、三多摩では学習内容の高度化、科学化を目ざした取り組みがおこなわれていたので、その関係者からは批判されました。
しかしながら、時代が証明したように、放送大学や各大学の地域講座、通信教育が多様化するなかで、相対的に“公民館の地位”は低下してしまいました。
私は、日本社会教育学会で、松下圭一さん、島田修一さんとシンポジュウムを行いましたが、松下さんに組したわけでもありませんし、島田さんに組したわけでもなく、“第3の立場”で発言をしました。ただ、松下さんに代表される“社会教育への批判”はもっと謙虚に受け止めるべきだと思い、その旨の発言はしています。
もし機会があれば、40年前の拙稿をどう評価するか、大いに論議したいものです。
(2024年1月6日記)
(備考)
「老爺心お節介情報」は、阪野貢先生のブログ(「阪野貢 市民福祉教育研究所」で検索)に第1号から収録されていますので、関心のある方は検索してください。
この「老爺心お節介情報」はご自由にご活用頂いて結構です。
〇若松英輔(批評家、随筆家)の『ひとりだと感じたとき あなたは探していた言葉に出会う』(亜紀書房、2023年10月)を読みました。「気になる14+1のワンフレーズ」を抜き書きしました。誰が何を書いているか、自分が書くのに何が役立つか、そんなことを気にする苦しみから解放されたい。自分なりのこれまでの学びを思い起こし、自分なりのこれからの学びを楽しみたい。そんなことを願っています。
生活は水平的な方向のなかで広がりを求めて営まれるのに対して、「人生」は一点を掘り下げるようにして深まっていく。(7ページ)
自分を「受け容れる」とは、それまでの過去を抱きしめ、ゆっくり明日に向かって進んでいこうとする営みである。(14ページ)
同情の眼は、相手に弱者の姿を見出すが、「共感」の眼は、弱者の奥にもう一度立ち上がろうとする勇者の姿を見る。(18ページ)
「祈る」とは、願いを鎮め、彼方からの声に耳をかたむけること、無音の言葉を聞くことなのではないだろうか。(28ページ)
「ひとり」のときを生きる(孤独を生きる)とき、人はそれまで見過ごしてきた、さまざまなものに出会い直す。(35ページ)
「書く」とは、頭にあることを言葉にすることではなく、心の奥にあって、言葉にならなかったものを照らす営みなのである。(40ページ)
書かれた言葉、話された言葉は、誰かに受けとめられたとき、初めて「言葉」になる。(49ページ)
苦しみながらでも生きている。この現実が、「生きがい」が存在することを確かに告げ知らせている。(55ページ)
自分のものであるよりも、何かのはたらきで自らの手もとにあると感じられるもの、それを人は「分かち合う」。(63ページ)
「成長」は上に向かって芽を伸ばすことだが、「成熟」は、大地に深く根を下ろすことである。(72ページ)
「味わう」とは、意味を解釈することではない。書き手が強く感じながらも言葉にできなかったことをすくいとろうとすることである。(107ページ)
「年を重ねる」とは、言葉にできることを多く持つのではなく、語り得ないものを心に積み上げていくことなのではないだろうか。(109ページ)
二人の作品(筋ジストロフィーの兄弟の詩と画)は、病は存在しない、病を生きる人間が存在するだけだ、そう語っているようにも感じられる。(121ページ)
命の尊厳は亡くなってからも続く。死とは、生命の状態から純粋な「いのち」へと変容することだといえるかもしれない。(129ページ)
+
「新しさ」とは、単に新規性があることを意味しない。むしろ、古くならない何かを指す。(142ページ)
生きづらいのは特別の人だけ?
SNSの友達やフォロワーが多い人は幸せ?/「これからはモノの豊かさより心の豊かさ」、そう言っているのは高齢者だけ?!/ウチでは気を遣いすぎるくらい遣うのに、ソトでは冷たいのが日本人?!
――絆は、しがらみ。「ほどほどな幸せ」で生きていこう。(下記「帯」)
〇筆者(阪野)の手もとに、桜井正成著『コミュニティの幸福論―助け合うことの社会学―』(明石書店、2020年9月。以下[1])という本がある。その「帯」は、[1]の内容を次のように紹介する。「『助けたくない、助けられたくない』日本のあなたとわたし、身近なギモンや俗説の真相究明に挑んだ国内外の学術的研究を紹介しつつ、家族や地域、趣味・ボランティアのグループ、SNSやネットゲームといったあらゆる“コミュニティ”を取り上げて、人と人との関わり合いを問いなおす」(「帯」)。
〇現代の日本社会は、血縁(家族)・地縁(地域社会)・社縁(会社)による社会的なつながりが希薄化あるいは崩壊した「無縁社会」(橘木俊詔)であると言われる。そんななかで、「コミュニティ」という言葉は多様性・多義性の高い概念として使われる。[1]で桜井は、「コミュニティ」を「人と人とのあつまりや、その関係性・空間」(ⅶページ)と定義し、地域、居場所、インターネット、当事者、働くこと、災害などさまざまな観点から幅広く「コミュニティ」を捉える。そして桜井は、「コミュニティで人と人とが(あなたと私とが)幸せに生きるには?」ということを追求し、考える(ⅶページ)。そしていう。「あなたが幸せならば誰かも幸せになる。コミュニティの幸せとはそうした性質を強くもつている。ともに幸せになっていくのである」(ⅸページ、語尾変換)。
〇[1]のうちから、桜井の言説や論点のいくつか(概要)をメモっておくことにする(抜き書きと要約。語尾変換。見出しは筆者)。
人と人が関わり合って人を助けることは助けた人も幸せにする
「人のために何かする」行動は、社会心理学などでは「利他的行動」、「向社会的行動」と呼ばれている。この行動は、「コミュニティと幸せ」に重要な意味合いをもっている。それは、人が誰かを助けることは、助けられた人にとってだけでなく、助けた人も幸せにする、ということである。(6ページ)/(現代の、自己責任が問われる個人化社会にあって)人と人との関わり合いは、幸せを生む可能性がある。(7ページ)
人と信頼し合って広く付き合う多様な人間関係によって幸福感が得られる
日本は人との円滑な関係に価値を置いている文化であるために、人と調和したときに幸福を感じるのではないか(「協調的幸福」)。(19ページ)/北米の文化と比較したときに、家族などの身近な人との関係が良好であることが、幸福に与える影響はより大きいとされている。(20ページ)/身近な特定の人だけ信頼して親密に付き合うのではなく、皆が信頼し合って広く付き合う(信頼を「解き放つ」)ことによって、多様な人間関係から幸福感を得られる人が増えるのではないか。(36、38ページ)
日本のボランティア活動はウチでの活動が盛んでありソトに目が向かないでいる
日本でボランティア活動を行なっている人は、個人で行なうというよりも、団体に所属して行なっていることが多い。そしてそのもっとも多い団体の形態は町内会などの組織である。(52ページ)/日本のボランティア活動は、お互い知り合い同士のなかで行なわれる、身内(「ウチ」)での活動が盛んであるがゆえに、「ソト」の見知らぬ他人を助けることに目が向かない可能性が考えられるのではないか。つまり、「助けを求める」見知らぬ他者に気づけない人が多くいる可能性がある。(60ページ)
助けられるとき「居心地の悪さ」を感じて助けを求めない・求められない人がいる
人は助けてもらうとき、ありがたみと同時に申し訳なさも感じる。(68ページ)/ウチとソトの壁が厚い(意識が強い)日本文化においては、ソトの人から助けられることも、そして助けることも、強い「居心地の悪さ」を感じる(「心理的負債」)。(86ページ)/関係性が永続的に続くような固定した人間関係では、助ける・助けられるというプラスの互酬性は、裏返せば、迷惑をかける・かけられるという、マイナスの関係性も積み重なっていくのではないか。(78ページ)/(従って)助ける側の人は、ウエメセ(上から目線、象徴的支配)にならないように気をつけなければならない。そして、助けられる側の人には助けを求められない(求めることが心理的負担となる)状況があるので、それを社会として、あるいはコミュニティとして解消する必要がある。(89ページ)
〇以上のような議論(論拠)に基づいて桜井は、国内外の学術的知見や事例を紹介しながら、子ども・若者らの「生きづらさ」の現状を多角的・多面的な分析する(抜き書きと要約。語尾変換。見出しは筆者)。
地域コミュニティ:ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)には負の側面がある
ソーシャル・キャピタル(social capital、社会関係資本)は、地域・社会における人々の信頼関係や互酬性の規範、ネットワーク(社会的つながり)の状態を示す概念である。/信頼、規範、ネットワークが強くあるコミュニティでは、経済的の発展や犯罪の防止、教育の成果、被災地の復興などに、有用であるとされている。(112ページ)/しかし、①外部者の排除(閉鎖的になる)、②個人の自由の制限、③集団のメンバーからの過度な要求、④規範の水準の押し下げ(皆が楽な方に、悪い方に流されてしまう現象)、といった負の側面がソーシャル・キャピタルにあることも指摘されている。(114ページ)/このようなソーシャル・キャピタルの両面性は、日本語での「絆」が同時に「しがらみ」を意味することを思い出させる。(115ページ)
居場所とコミュニティ:助けが必要な子どもほど助けを得られるつながりも居場所もない
居場所には、1人でいる「個人的居場所」と他の人と一緒にいる「社会的居場所」がある。/個人的居場所もときに人には必要であるが、生きづらさの解消のためには、最終的には社会的居場所がより重要な役割を果たす。人と話せて、安心でき、自分の存在や役割を確認できる場が重要となる。(125ページ)/現在の子ども・若者にとっては、自宅(ファーストプレイス)でもない学校・職場(セカンドプレイス)でもない社会的な居場所(サードプレイス)となり得るのは、インターネット空間である可能性が高い。(135ページ)/しかも、助けが必要な子どもほど、助けを得られるつながりも居場所もない、という現状にある。(137ページ)
インターネットとコミュニティ:オンライン・コミュニティが現実社会のコミュニティに影響を及ぼす
SNSでのオンライン・コミュニティと現実の生活との関連はより多様化・複雑化し、そこでの幸福は一様ではなくなっていくことが予想される。(174ページ)/今後、オンライン・コミュニティがオフラインの現実社会のコミュニティに影響を及ぼし、その意味やあり方をますます変えていく可能性がある。そしてそこでの個人の幸せのあり方も、多様に広がっていきそうである。(176ページ)
「当事者」とコミュニティ:「当事者」という表現はそうでない人たちとの線引きを明確化する
LGBTに限らず、「当事者」という言葉は、当事者「以外」の人たちを、その当事者が抱える問題のソトの人=よそ者と位置づけることにもなりかねない。(200ページ)/当事者(コミュニティ)のウチとソトのあいだの壁を低くする、あるいはそのあいだをつなぐことは、当事者にとっても、当事者以外にとっても、その社会での生きやすさにつながると言えるのではないか。(207~208ページ)/当事者とそうでない(と思っている)者とのコミュニケーションのなかにこそ、お互いの生きづらさを明らかにし、共有し、問題を解決していく道筋があり、またそれを促進するような支援のあり方が必要ではないかと考えられる。(208ページ)
「働くこと」とコミュニティ:就労支援には支援者たちのネットワークづくりと小さなコミュニティが重要である
働くことから排除され、ホームレス状態になる若者は、多重的な社会的排除の状態にある。(220ページ)/社会的排除は人間関係からの排除でもある。(222ページ)/「働くこと」が支えられる(若者の就労支援)には、就労困難な若者個人を支援し就職支援をするだけでは、その支援達成に向けては不十分であり、それに加えて若者支援の社会ネットワークの構築が必要になる。(229ページ)/それが社会的包摂を推進する。(234ページ)/このような「支えるコミュニティ」は、大きな集団ではネットワークの密度が低くなることから、小さなものが、さまざまに存在していることが理想である。(229ページ)
災害とコミュニティ:一人ひとりがどこかでは助けてもらえる社会をつくることが重要である
災害に強いコミュニティとは、「レジリエンス」(resilience)なコミュニティである。レジリエンス(強靭)とは、何かが起きたときでも柔軟に対処できるしなやかなコミュニティのあり方をいう。(251ページ)/(災害などでコミュニティがこわれたときの対応策として)一人ひとりがどこかでは助けてもらえる、あるいは助け合える関係性が社会でつくられることが重要である(「パッチワーク型コミュニティ」)。(271ページ)
〇以上を踏まえて桜井は、「助け合うコミュニティづくり」のためのアプローチについて提示し、「幸せなコミュニティづくり」の手法を紹介する(抜き書きと要約。語尾変換。見出しは筆者)。
助け合うコミュニティづくりの3つのパターン
皆が助け合える幸せなコミュニティをつくるには、問題を「個人化」させて自己責任とせず、①「助けられる人が助ける」、②「贈与を交換にする」、③「ソトをウチにする」、という3つのパターン(方法、アイディア)がある。(277ページ)/①「助けられる人が助ける」の方法は、常に援助される側にまわってしまいがちな人でも、誰かを・何かを助ける場面をコミュニティでつくることができれば、「心理的負債」を減らすことができるのではないか。いわば、ケアするコミュニティ(ケアリング・コミュニティ)の可能性である。(277ページ)/②「贈与を交換にする」の方法は、「贈与」であった援助を、対価を払うことで「交換」という規範へと変えてしまうことである。地域通貨(特定のグループや地域で流通させるクーポン券)やボランティアの時間預託制度などである。(280、281~282ページ)/③「ソトをウチにする」は、ソトの人に頼れないのであれば、「ソトをウチに」することによって、ウチの人を新たにつくってしまう、という方法である。他人と住み暮らすシェアハウスという取り組み(シングルマザー・シェアハウスなど)がそれである。(283~284ページ)
幸せなコミュニティづくりの2つの手法
「幸せなコミュニティづくり」のためのコミュニティ・ソーシャルワークの代表的な手法には、コミュニティ・オーガナイジング(Community Organizing:CO)とアセットベースド・コミュニティ・ディベロップメント(Asset Based Community Development:ABCD)の2つがある。/コミュニティ・オーガナイジングは、地域課題に焦点を当て、個人の関係構築や組織化を進め、社会変革に対する行動を起こすものである。(286ページ)/それは日本の住民運動や障害者運動とよく似ている。(290ページ)/アセットベースド・コミュニティ・ディベロップメントは、地域資源に着目し、地域住民主導の参加型プロセスで、人と人とのつながり(ソーシャル・キャピタル)を醸成し、内発的な発展を志向するものである。/それは例えば、コミュニティ・デザイン(山崎亮)や、地元学(吉本哲郎)などの手法がそれである。(295ページ)
「幸せのシェア」と「パッチワーク型コミュニティ」
誰かが誰かに寄り添い支援する、誰かがどこかで見守っている「つぎはぎ」の助け合いやコミュニティづくり(パッチワーク型支援、パッチワーク型コミュニティ)が重要である。ただそれは、支援の網の目が均一でないので、どこかで支援の網からもれる可能性がある。(とはいえ)支援を受ける側にとって選択肢があることや、「絆」を超えた「縁」を新たに結ぶことなどによって、「幸せのシェア」(共有・分かち合い)が柔軟で、風通しの良い「幸せなコミュニティ」を作っていく第一歩として効果的な手段である。(303、304、308ページ)/「幸せのシェア」と「パッチワーク型コミュニティ」がこれからどうやって日本で根付いていくのか。またそれは、コミュニティでの幸せが築かれるためにどれだけの意味があるのか、が問われるところである。(309ページ)
〇[1]で桜井は、国内外の多くの学術的な研究と事例を取り上げ、「ウチとソト」「絆と縁」といった日本文化論を根幹に据えながら、多様なコミュニティ活動を読み解き、新たなコミュニティ論を展開する。そして桜井は、「(本書の)文章は、教科書でも一般書でも、研究書でもない、でもそれらすべてでもある」(312ページ)という。それ故にではなく、筆者の感受性の低さによるのであろうか、[1]に登場する数多くの地域(地元)や事例(実践)から、それぞれに固有の音や色そして匂い、そこに生きる個々人の痛みや苦しみ、あるいは心地よさなどが、必ずしも十分に肌感覚として伝わってこない。桜井が指摘する山崎亮や吉本哲郎らの、その地域(コミュニティ)の土(組織)や暮らし(活動)の匂いがする実践や研究が思い起こされるのは、筆者だけであろうか。
〇筆者の手もとに、[1]と同じようなタイトルの、山崎亮+NHK「東北発☆未来塾」制作班著『まちの幸福論―コミュニティデザインから考える―』(NHK出版、2012年5月)がある。そこで山崎はこういう。「コミュニティの活動、言い換えれば、人と人とのつながりが機能するまちの暮らしは、住民ひとりひとりの『やりたいこと』『できること』『求められること』が組み合わさって実行されてこそ、初めて実現するものではないか。『できること』を他者に委ね、『求められること』を拒否し、『やりたいこと』だけに時間と労力を費やす人々の生活からは、成熟した豊かなコミュニティの姿を展望することはできない」(165ページ)。そして山崎は断言する。「コミュニティデザインに教科書はない」(144ページ)。
付記
地域福祉の視点から「ケアリング・コミュニティ」(caring community)を捉えると、それは「福祉サービスを必要とする人を社会的に排除するのではなく、地域社会を構成する一人として包摂し、日常生活圏域の中で支えていく機能を有しているコミュニティのことである」(大橋謙策編著『ケアとコミュニティ―福祉・地域・まちづくり―』ミネルヴァ書房、2014年4月)。簡潔に換言すれば、人と人が共に生き、相互に支え合うコミュニティをいう。そこでは、相互の関係性を大切にし、お互いによりよく生きようという「相互実現的自立」(interdependence)が重視される(原田正樹)。
出所:新崎国広・勝部麗子/子どもを育む多職種協働(3)―だれも “ひとりぽっち” にしない社会の創造に向けて―/『ふくしと教育』通巻37号、大学図書出版、2023年12月、50~55ページ。
謝辞:転載許可を賜りました日本福祉教育・ボランティア学習学会と大学図書出版に衷心より厚くお礼申し上げます。/市民福祉教育研究所 新崎国広
出所:新崎国広・新宅太郎/子どもを育む多職種協働(2)―災害支援からつながるICTを活用した福祉教育実践―/『ふくしと教育』通巻36号、大学図書出版、2023年9月、50~55ページ。
謝辞:転載許可を賜りました日本福祉教育・ボランティア学習学会と大学図書出版に衷心より厚くお礼申し上げます。/市民福祉教育研究所 新崎国広
出所:新崎国広・村上憲文・小林翔太/子どもを育む多職種協働(1)―高等学校福祉ボランティア科と高齢者施設が協働で取り組む探究学習―/『ふくしと教育』通巻35号、大学図書出版、2023年6月、48~53ページ。
謝辞:転載許可を賜りました日本福祉教育・ボランティア学習学会と大学図書出版に衷心より厚くお礼申し上げます。/市民福祉教育研究所 新崎国広
Ⅰ 著 書
2023/04 | 『福来の挑戦―氷見市地域福祉実践40年のあゆみ―』(共著)中央法規出版 |
2022/03 | 『福祉教育の理論の実践方法-共に生きる力を育むために-』(単著)全社協 |
2021/08 | 『地域づくりとソーシャルワークの展開』(共著)全社協 |
2021/08 | 『伴走型支援-新しい支援と社会のカタチ-』(共著)有斐閣 |
2021/03 | 『地域福祉から未来へ2-社協職員が歩んだ10年 宮城からのメッセージ』 (共著)全国コミュニティライフサポートセンター |
2019/11 | 『地域福祉政策論』(共著)学文社 |
2019/06 | 『コミュニティソーシャルワークの新たな展開-理論と先進事例』(共著)中央法規出版 |
2019/05 | 『ボランティア・市民活動実践論』(共著)ミネルヴァ書房 |
2018/10 | 『地域共生社会に向けたソーシャルワーク 社会福祉士による実践事例から』(共著)中央法規出版 |
2016/06 | 『地域福祉の学びをデザインする』(共著)有斐閣 |
2015/08 | 『社会保障制度改革とソーシャルワーク-躍進するソーシャルワーク活動Ⅱ-』 (共著)中央法規出版 |
2015/06 | 『社会福祉学習双書2015 地域福祉論 地域福祉の理論と方法』(共著)全社協 |
2015/01 | 『コミュニティソーシャルワークの理論と実践』(共著)中央法規出版 |
2014/10 | 『Readings 福祉教育・ボランティア学習の新機軸-学際性と変革性』(共著)大学図書出版 |
2014/10 | 『社会福祉研究のフロンティア』(共著)有斐閣 |
2014/10 | 『地域福祉の基盤づくり-推進主体の形成-』(単著)中央法規出版 |
2014/03 | 『改訂版 地域福祉の展開』(共著)放送大学教育振興会 |
2014/03 | 『新福祉教育実践ハンドブック』(共著)全社協 |
2013/06 | 『ネットワークを活用した ソーシャルワーク実践』(共著)中央法規出版 |
2012/10 | 『地域福祉援助をつかむ』(共著)有斐閣 |
2011/02 | 『改訂 民生委員のための地域福祉活動Q&A』(共著)中央法規出版 |
2010/10 | 『ボランティアを楽しむ 奉仕体験活動のアイデア&指導案』(共著)学事出版 |
2010/04 | 『ボランティア論-「広がり」から「深まり」へ-』(共著)みらい |
2010/03 | 『地域福祉の展開』(共著)日本放送出版協会 |
2009/11 | 『共に生きること 共に学びあうこと-福祉教育が大切にしてきたメッセージ-』 (単著)大学図書出版 |
2009/03 | 「コミュニティソーシャルワークとボランティアコーディネート」 『ボランティア白書2009』(単著)日本青年奉仕協会 |
2009/03 | 『「地域生活の質」に基づく高齢者ケアの推進』(共著)有斐閣 |
2008/12 | 『高齢者福祉の世界』(共著)有斐閣 |
2008/06 | 『社協の底力』 (共著)中央法規出版 |
2006/07 | 『民生委員のための地域福祉活動』(共著)中央法規出版 |
2005/04 | 『地域福祉論』「個別支援から地域支援につなげる地域福祉実践」(単著)NHK学園 |
2004/09 | 『新・社会福祉士の共通基盤』(共著)中央法規出版 |
2004/07 | 『障害福祉の基礎知識』「福祉教育」(単著)日本知的障害者福祉協会 |
2004/04 | 『四訂 社会福祉実習』「社会福祉の専門職教育と実習教育」(単著)中央法規出版 |
2004/04 | 『地域福祉論』(共著)第一法規 |
2004/03 | 『実践子ども家庭福祉論』(共著)中央法規出版 |
2004/01 | 『否定されるいのちからの問い』横田弘対談集 (共著)現代書館 |
2003/04 | 『社会福祉基礎』文部科学省検定教科書 (共著)中央法規出版 |
2003/02 | 『福祉21ビーナスプランの挑戦』(共著)中央法規出版 |
2002/12 | 『権利擁護』「福祉教育」(共著)中央法規出版 |
2002/11 | 『介護等体験ハンドブック』(共著)埼玉県社協 |
2002/04 | 『福祉科指導法入門』(共著)中央法規出版 |
2002/01 | 『福祉教育実践ハンドブック』(共著)全社協 |
2001/09 | 『ソーシャルワークの共通基盤』「地域福祉支援」(共著)日本社会福祉士会生涯研修センター |
2001/09 | 『地域福祉計画と地域福祉実践』(共著)万葉舎 |
2001/08 | 『コミュニティとソーシャルワーク』(共著)有斐閣 |
2001/04 | 『社会福祉士事例集Ⅱ』(単著)中央法規出版 |
2000/08 | 『コミュニティソーシャルワークと自己実現サービス』(共著)万葉舎 |
2000/05 | 『福祉教育の理論と実践』(共著)相川書房 |
2000/04 | 『地域福祉論』(共著)みらい |
2000/02 | 『障害のある人々の生活と福祉』(共著)中央法規出版 |
1999/11 | 『ゆらぐことのできる力』(共著)誠心書房 |
Ⅱ 論 文
2023/03 | 「重層的支援体制整備事業について―その構造と留意点― 」『高齢者虐待防止研究』 (19) 日本高齢者防止学会(単著) |
2023/02 | 「福祉と教育 そして福祉教育と教育福祉 」『ふくしと教育』 (34) 大学図書出版(単著) |
2022/11 | 「誰一人取り残さない社会ま実現に向けた孤独・孤立対策」 『自治体法務研』 (71) ぎょうせい(単著) |
2022/03 | 「コロナ差別・社会的排除に抗う福祉教育」 『地域福祉研究』 50 日本生命済生会(単著) |
2022/03 | 「地域包括ケアシステムの深化としての包括的支援体制」 『病院』 81(3) 医学書院(単著) |
2020/07 | 「withコロナ時代の地域共生社会」 『月刊ガバナンス』2020年7月号 ぎょうせい(単著) |
2020/03 | 「日本福祉大学における地域連携教育の系譜と特徴-サービスラーニングからCOC事業への展開を中心に-」『 日本福祉大学 全学教育センター紀要』第8号 日本福祉大学全学教育センター(単著) |
2018/12 | 「ボランティアを再考する」『 公明』公明党機関紙委員会 (単著) |
2018/10 | 「地域共生社会の実現に向けて その背景と方向性」『 保健師ジャーナル 特集 保健師がつくる地域共生社会 』第74巻第10号 医学書院(単著) |
2018/03 | 「地域共生社会の実現にむけた『教育と福祉』」『 社会福祉学 』58(4) 日本社会福祉学会(単著) |
2017/12 | 「『地域共生社会』の現実を問う 」『こころと社会』№170 48(4) 日本精神衛生会(単著) |
2017/12 | 「地域福祉と地域のガバナンス」『 月刊ガバナンス』 創刊(200) ぎょうせい(単著) |
2017/10 | 「改正地域福祉計画と地域住民等の参加の諸相」『ソーシャルワーク研究』 43(3) 相川書房 (単著) |
2017/09 | 「ケアリングコミュニティの構築をめざして」『月刊自治研』 59(696) 自治研中央推進委員会(単著) |
2017/06 | 「社会福祉協議会との協働にむけて」『 月刊地方自治 職員研修 』 公職研(単著) |
2017/04 | <特集 災害に備える、地域ネットワークづくり>「災害ソーシャルワークとDWATの期待」『 月刊福祉』 100(4) 全社協(単著) |
2017/02 | 「地域共生社会の実現に向けて」『 月刊福祉』 100(2) 全社協(単著) |
2017/02 | 「包括的、包摂的な地域づくりへのビジョン」『月刊ガバナンス』2017年2月 ぎょうせい(単著) |
2012/11 | 「福祉教育・ボランティア学習における創造的リフレクションの開発」 『日本福祉教育・ボランティア学習学会研究紀要』 第20巻 日本福祉教育・ボランティア学習学会(単著) |
2011/02 | 「ソーシャル・キャピタルの質とは-地域の福祉力を高めるための実践から-」 『保健師ジャーナル』 第67巻第2号 医学書院(単著) |
2011/01 | 「ボランティアと現代社会」 『ふくしと教育』 通巻10号 大学図書出版(単著) |
2011/01 | 「身近な地域における福祉活動に今、求められること」 『月刊福祉』 第94巻第1号 全社協 (単著) |
2010/11 | 「コミュニティソーシャルワークの介入としての福祉教育」 『コミュニティソーシャルワーク』第6号 日本地域福祉研究所(単著) |
2010/06 | 「社会福祉協議会に期待される役割と機能」 『まちと暮らし研究 社会福祉協議会と地域福祉』No.9 財団法人地域生活研究所(単著) |
2010/06 | <学会大会報告>「共生文化を創造する学びをどうデザインするか-あいち・なごや大会 ラウンドセッションからのメッセージ-」 『日本福祉教育・ボランティア学習学会研究紀要』 Vol.15 日本福祉教育・ボランティア学習学会(単著) |
2007/03 | 「JRC活動と福祉教育をめぐる研究の論点について」 『青少年赤十字活動と福祉教育の関連と今後の展開 研究報告書』 日本地域福祉研究所(単著) |
2006/12 | 「活力ある市民パワーと共に新たな「協働」へ」 『ノーマライゼーション』 第26巻第12号 日本障害者リハビリテーション協会(共著) |
2006/11 | 「福祉教育が当事者性を視座にする意味」 『日本福祉教育・ボランティア学習学会研究紀要』 第11巻 日本福祉教育・ボランティア学習学会(単著) |
2006/04 | 「福祉教育実践の質を高めていくために」 『兵庫教育』 第58巻第2号(単著) |
2005/03 | 「福祉教育実践のクオリティを高めていくために」 『月刊福祉』 第88巻第3号 全社協(単著) |
2004/11 | 「福祉教育実践における学習者の生活世界の再構」 『日本福祉教育・ボランティア学習学会年報』 第9巻 日本福祉教育・ボランティア学習学会(共著) |
2004/07 | 「地域福祉計画と地域住民の主体性に関する一考察-岡村理論を手がかりにして」 『都市問題』 第95巻第7号 東京市政調査会(単著) |
2003/11 | 「福祉科教育法の確立をめざして」 『日本福祉教育・ボランティア学習学会年報』 第8巻 日本福祉教育・ボランティア学習学会(単著) |
2003/09 | 「地域福祉計画の策定プロセスと住民参加の方法」 『地域政策研究』 第24号 地方自治研究機構(単著) |
2003/07 | 「福祉教育を地域を広げよう」 『社会福祉セミナー』 第16巻第51号 日本放送出版協会(共著) |
2003/05 | 「リスクマネジメントと地域福祉システムの構築」 『都市問題』 第94巻第5号 東京市政調査(単著) |
2003/02 | 「行政計画策定への市民の参画の始動」 『地域政策』 №8 三重県政策開発研修センター(単著) |
2003/01 | 「地域における学びの意義と方法」 『社会科教育研究年報』 日本社会科教育学会(単著) |
2002/11 | 「福祉教育における学習者の内面的変化に関する検討」 『日本福祉教育・ボランティア学習学会年報』 第7巻 日本福祉教育・ボランティア学習学会(共著) |
2002/03 | 「住民が創造する地域福祉システム-茅野市地域福祉計画の策定から学ぶ-」 『地域福祉研究』 No.30 日本生命済生会(単著) |
2002/01 | 「施設における福祉教育推進の視点―社会福祉施設が福祉教育を大切にする意味―」 『介護福祉』 社会福祉振興・試験センター(単著) |
2001/08 | 『発達25 21世紀の社会福祉』 社会福祉法の成立と21世紀の社会福祉』 ミネルヴァ書房(共著) |
2001/07 | 「地域を基盤とした福祉教育システムへの転換」 『社会福祉研究』第81号 鉄道弘済会 (単著) |
2001/06 | 「福祉を学ぶ授業をつくる」 『月刊福祉』 第84号8号 全社協(共著) |
2001/02 | 「計画策定への住民参加をどうすすめるか」 『月刊・地方分権』 第22巻 ぎょうせい(単著) |
2000/09 | 「地域福祉計画の策定とソーシャルワークの視点」 『東京国際大学論叢 人間社会学部』第6号(通巻57号)東京国際大学(単著) |
2000/03 | 「日本社会福祉士会における生涯研修体系と展開」 『日本社会福祉士会研究紀要』第6号 日本社会福祉士会(共著) |
1996/07 | 「地域福祉の時代における福祉教育の展開-社会福祉施設からのアプローチ-」 日本精神薄弱者愛護協会『AIGO』 43(6) 日本精神薄弱者愛護協会(単著) |
1996/05 | 『福祉教育』研究の動向と課題 『日本福祉教育・ボランティア学習学会研究紀要 』創刊 日本福祉教育・ボランティア学習学会(単著) |
1995/03 | 「福祉専門職としての社会福祉士の実態に関する考察」『社会福祉士』 2 日本社会福祉士会(単著) |
1994/03 | 「福祉教育における障害理解プログラムの一考察」『 日本の地域福祉 』第7巻 日本地域福祉学会(単著) |
Ⅲ その他
2022/05 | 『自立相談支援事業従事者要請研修テキスト』中央法規出版(共著) |
2022/03 | 「ウィズコロナ時代の地域福祉実践」『 社会保障・福祉政策の動向』全社協 (単著) |
2021/08 | 「市民が主体-学びと実践の循環 」大学図書出版 (共著) |
2021/06 | 「高齢化の進展と高齢者を取り巻く状況」『介護支援専門員基本テキスト』 長寿社会開発センター (共著) |
2021/03 | 「地域共生社会政策と地域福祉研究」『 日本の地域福祉』日本地域福祉学会 第34巻 (単著) |
2021/02 | 『社会福祉士養成講座 精神保健福祉士養成講座 6 地域福祉と包括的支援体制』中央法規出版 (共著) |
2021/02 | 『社会福祉学習双書 地域福祉と包括的支援体制』 全社協 (共著) |
2020/06 | 「これからの時代におけるボランティア」『 月刊福祉 』103(6) 全社協(座談会収録) |
2020/01 | 「成年後見を通した地域共生社会」『 日本青年貢献法学会 成年後見ニュース』№34 巻頭言 日本青年貢献法学会(単著) |
2019/12 | 「協同による社会資源開発のアプローチ 」日本地域福祉学会 (共著) |
2019/12 | 「地域共生社会にむけた0歳から100歳の包括ケアシステムの構築にむけて 」『コミュニティソーシャルワーク 』日本地域福祉研究所 (共著) |
2019/11 | 「社会福祉士・精神保健福祉士養成課程の見直しとこれからのソーシャルワーカーに求められるものとは 」『月刊福祉』 全社協 102(11)(共著) |
2019/11 | 「地域共生社会の実現にむけた包括的支援体制と多様な参加・協働の推進に関する検討会・中間とりまとめの概要と地域包括・在宅センターに期待すること 」『ネットワーク』 (152) 全社協 全国地域包括・在宅介護支援センター協議会(単著) |
2019/10 | 「10代の君への手紙 『彼に教えてもらったこと』」 『道徳教育』59(11) 明治図書 (単著) |
2019/10 | 「サービスラーニングと地域共生社会をめぐって」 『地域共生社会に向けた福祉教育の展開~サービスラーニングの手法で地域をつくる~』全社協(共著) |
2019/10 | <書評>清成 忠男 監修、市川 一宏 編集代表『人生100年時代の地域ケアシステム』『 月刊福祉』102(10) 全社協(単著) |
2019/08 | 「2000年以降の福祉教育実践の展開-全社協の取り組みから紐日本福祉教育・ボランティア学習学会解く-」『ふくしと教育』通巻27号 大学図書出版(単著) |
2019/07 | 「共生を問う-福祉教育・ボランティア学習は「共に生きる力」をどう育むか-」『 日本福祉教育・ボランティア学習学会 研究紀要 』第32巻 日本福祉教育・ボランティア学習学会(共著) |
2019/06 | 「講演録 地域共生社会の実現に向けて」『 ヒューマンライツ 』No.375 一般社団法人部落解放・人権研究所(単著) |
2019/05 | 「<インタビュー>プロデュース力で一人ひとりを主役にする舞台をつくる 」『月刊福祉』 102(5) 全社協(単著) |
2019/03 | 『厚生労働省平成30年度生活困窮者就労準備支援事業費補助金社会福祉事業 地域での計画的な包括支援体制づくりに関する調査研究事業『地域共生社会の実現に向けた地域福祉計画の策定・改訂ガイドブック』全社協 (共著) |
2018/06 | 「地域福祉ガバナンスをつくる 第2回 新しい地域福祉計画の策定と協働」『 月刊福祉 』全社協 (単著) |
2018/05 | 「地域福祉ガバナンスをつくる 第1回 地域福祉ガバナンスへの視座 」『月刊福祉』 101(5) 全社協 101(5)(単著) |
2018/04 | 「<インタビュー>・地域共生社会の実現に向けて」『 週刊保健衛生ニュース』 第1955号 社会保険実務研究所 (単著) |
2017/11 | 『地域福祉のイノベーション : コミュニティの持続可能性の危機に挑む :日本地域福祉学会第30回大会記念出版 』 中央法規出版 (共著) |
2017/10 | 「<放送講座>福祉教育とボランティア 」『NHKテキスト 社会福祉セミナー』 30(99) NHK出版 (単著) |
2017/09 | 「<座談会>地域共生社会をめざして-福祉21ビーナスプラン(茅野市地域福祉計画)の挑戦-」『 月刊福祉』 100(9) 全社協 (共著) |
2017/06 | 「地域福祉の基礎づくりの考え方」『 聖カタリナ大学公開講座「風早の塾」幸福の地域コミュニティ~ソーシャルワークにおける”人-地域-自然”との関係のあり方を問う』カタリナ学園(単著) |
2017/06 | 「<インタビュー>自分を守る武器だった水泳で「障害」の意味を世に問いかけたい」『 月刊福祉』 100(6) 全社協 (単著) |
2017/02 | 「特集 七・二六(相模原殺傷)事件を考える> 『事件が問いかける意味とは』」『 ふくしと教育』 (22) 大学図書出版(単著) |
2015/03 | 「上野谷加代子、松端克文、斉藤弥生編著『対話と学びあい』の地域福祉のすすめ」 『地域福祉研究』 43 日本生命済生会(単著) |
2014/07 | 『生活困窮者自立支援法 自立相談支援事業従事者養成研修テキスト』中央法規出版 (共著) |
2011/03 | 「<書評>岩田正美監修、野口定久・平野隆之編『リーディングス日本の社会福祉 第6巻 地域福祉」 『日本の地域福祉』日本地域福祉学会 第24巻 (単著) |
2010/11 | 特別寄稿>JRC活動と片葩小学校の取り組みから学ぶ」知多郡東浦町立片葩小学校 (共著) |
2009/04 | 『新 社会福祉援助の共通基盤 第2版』 中央法規出版(共著) |
2009/03 | 『社会福祉学習双書 第8巻 地域福祉論 地域福祉の理論と方法』 全社協(共著) |
2009/03 | 『新・社会福祉士養成講座 9 地域福祉の理論と方法-地域福祉論』中央法規出版 (共著) |
2009/01 | 『精神保健福祉士・社会福祉士養成基礎セミナー 第5巻 地域福祉論 地域福祉の理論と方法』 へるす出版(共著) |
2006/05 | 「クローズアップ社協活動(神川町、伊賀市、土佐町、横浜市中区) 」『月刊福祉』 第89巻第5号、第8号、第11号、第90巻第2号 全社協(単著) |
2006/03 | 「学校と地域でつくる新しいかたちの学びの育み 」『なごや福祉教育セミナー報告書』名古屋市社協 (単著) |
2006/03 | 「地域ぐるみですすめる福祉教育の視点と方法 」『福祉教育の歩み』 島根県社協 (単著) |
2006/03 | 「長崎県における『ふれあい学『『』の意義と展開 」『ふれあい学習推進地区報告書』 長崎県社協(単著) |
2004/10 | 「社会福祉専門職と養成教育」『社会保障・社会福祉大辞典』労働旬報社 (単著) |
2004/09 | 「市町村による次世代育成支援-長野県茅野市の取り組み- 」『こども未来』 第397号 こども未来財団(共著) |
2004/08 | 「論壇 『地域での福祉教育の推進にむけて』」『 福祉新聞』 第2211号 福祉新聞社 (単著) |
2004/04 | 『プロセスを大切にした学びの展開』全社協 (共著) |
2004/03 | 『広域における子どものボランティア体験活動の試み ―ヤングボランティアキャラバン事業の評価― 平成15年度独立行政法人福祉医療機構助成事業 』全社協 (単著) |
2004/03 | 『福祉施設における児童・生徒の福祉学習プログラムの開発と大学生の福祉学習サポーター・モデル事業 報告書平成15年度独立行政法人福祉医療機構助成事業 』全社協(単著) |
2003/12 | 「地域福祉計画」『社会福祉士のための基礎知識』「地域福祉計画」 中央法規:日本社会福祉士養成校協会(共著) |
2003/12 | 『講演録:地域福祉をすすめるために』 日本生協連:コープくらしの助け合いの会全国ネットワーク (単著) |
2003/06 | 『日本社会福祉士会十年史』 日本社会福祉士会(単著) |
2003/03 | 『社会福祉士実習受入組織における実習指導者の質の向上と経済的・地域的貢献に関する研究 平成14年度厚生労働科学研究費政策科学推進研究事業報告書 』 日本社会福祉士会(共著) |
2003/03 | 『住民参加による地域福祉計画策定実践手法に関する研修プログラム研究開発事業報告 平成14年度社会福祉・医療事業団助成事業』 全社協(共著) |
2002/04 | 「住民参加と小地域活動」「地域福祉とまちづくり」「福祉教育と社会福祉」 『よくわかる社会福祉』ミネルヴァ書房 (単著) |
2002/04 | 「ボランティア学習」『ボランティア・NPO』中央法規出版 (共著) |
2002/04 | 『大学と施設をつなぐ介護等体験プログラム』東京都社協 (共著) |
2001/04 | 「他者理解・疑似体験」『新・社会福祉援助技術演習』中央法規出版(共著) |
2001/04 | 「福祉教育」『新社会福祉双書・地域福祉論』全社協(共著) |
2001/03 | 『これからの福祉教育実践と福祉学習サポーターの研修のあり方」福祉学習サポーター等養成開発委員会報告書 』全社協 (共著) |
1999/09 | 「福祉計画」「地域福祉」「ボランティア活動」「互助」 『生活学辞典』日本生活学会編TBSブリタニカ (単著) |
大橋謙策の「地域福祉とコミュニティソーシャルワーク」実践と研究
―<実践的研究><バッテリー型研究>のこれまでとこれから―
はしがき
〇本稿は、大橋謙策先生の「地域福祉」とその<実践的研究><バッテリー型研究>の内容や方法、理論や実践、理念や哲学、そして社会システムやコミュニティソーシャルワークなどについて知るためのひとつの第一次資料として編むことを企図したものである。それは、大橋先生の個人的な地域福祉研究史にとどまらず、日本の地域福祉研究の “ これまで ” と “ いま ” を理解し、“ これから ” を展望することに繋がる。大橋先生が50年余に亘り取り組んでこられた地域福祉に関する実践や研究の「集大成の書」である『地域福祉とは何か』(中央法規出版、2022年4月)については、是非とも原典にあたっていただきたい。そこから、先生からの学生・院生や若手の研究者、現場の実践者などに対するメッセージやエールを読み取っていただきたいと念じている。
〇なお、大橋先生がいう<実践的研究>に関して、先生の初期の「実践的研究書」である『地域福祉の展開と福祉教育』(全社協、1986年9月。⇒本文)の次の一節を思い起こしておきたい。「筆者の問題関心は、教育と福祉における “ 問題としての事実 ” に学びつつ、問題、課題をどう実践的に解決するのかという点にある。(中略)社会福祉協議会職員や教師をはじめとして地域福祉、福祉教育推進に日夜尽力されている人びとに、少しでも役に立つ研究をどうすすめられるかという点に筆者の視座がある」(ⅳページ)。<バッテリー型研究>に関しては下記の、『地域福祉とは何か―哲学・理念・システムとコミュニティソーシャルワーク―』の「まえがき」の一節(ⅱページ)を参照されたい。
〇さらにいえば、原田正樹先生が「本書の内容(構想)は、大橋先生の『地域福祉の展開と福祉教育』の今日的な続編でありたいと考え」て上梓された『地域福祉の基盤づくり―推進主体の形成―』(中央法規出版、2014年10月。⇒本文)も併せて読んでいただきたい。原田先生はいう。「地域から学ぶとは、地域の一人ひとりを大切にするということであり、そこから学んだことを地域へ還元し、社会化させていくという大橋先生の姿勢を継承したい」(231ページ)。
〇この3冊は、大橋先生と原田先生の師弟が追究した(する)「地域福祉と福祉教育」の実践と研究の金字塔であり、必読の書である。
(市民福祉教育研究所/文責:阪野 貢)
Ⅰ 地域福祉とは何か
―大橋謙策『地域福祉とは何か』(中央法規出版、2022年4月)―
出典:大橋謙策『地域福祉とは何か―哲学・理念・システムとコミュニティソーシャルワーク―』中央法規出版、2022年4月、ⅰ~xiiiページ。
謝辞:転載許可を賜りました大橋謙策先生と中央法規出版に衷心より厚くお礼申し上げます。/市民福祉教育研究所:阪野 貢
Ⅱ 研究業績
―『大橋謙策主要論文等』―
(大橋ゼミ50周年ホームカミングデー実行委員会、2023年10月)
出典:大橋ゼミ50周年ホームカミングデー実行委員会編『大橋謙策主要論文等(2019年~2023年)』2023年10月、5~16ページ。
謝辞:転載許可を賜りました大橋謙策先生に衷心より厚くお礼申し上げます。/市民福祉教育研究所:阪野 貢
補遺
原田正樹の「地域福祉と福祉教育」実践と研究
―地域福祉の主体形成に関わる地域福祉実践研究のこれまでとこれから―
はしがき
〇原田正樹先生の専攻は「地域福祉と福祉教育」である。先生は断言する。「福祉教育は地域福祉の下位概念ではない。福祉教育を豊かにしていくことが地域を変えていく力になり、同時に地域福祉を推進することで私たち一人ひとりの福祉意識が変わっていく。地域福祉を福祉教育によって支えあうことができる社会、ケアリングコミュニティをどう構築していくことができるかを問うことが『地域福祉の基盤づくり』である」(『地域福祉の基盤づくり』「はじめに」)。先生のこの「地域福祉と福祉教育」研究の視座に、筆者(阪野)は強く同意する。筆者は浅学菲才ながら、その点を「まちづくりと市民福祉教育」として追究してきたが、それに比して先生の実践と研究は広くて深い。碩学(せきがく)である。
〇その点を原田先生の師である大橋謙策先生は、『地域福祉の基盤づくり』を次のように評している。「本書は、岡村重夫先生や私が重視してきた地域福祉実践・研究において、その重要性を指摘しながら必ずしも十分な研究を行ってこれなかった地域福祉の主体形成について正面から実証的に取り組み、その実践を質的研究の視点から明らかにしようとした労作である」。また、大橋先生は原田先生の研究者としての実践・研究姿勢について、次のように評する。「私以上に住民、計画策定委員会委員、あるいは行政担当職遺の “ 伴走者 ” として寄り添い、支えると同時に、時には “ 参与観察者 ”として客観的に計画策定のプロセスを細かく、あまねくみてきた」(『地域福祉の基盤づくり』「推薦の辞」)。筆者はかつて、大橋先生を「『福祉でまちづくり』の『スーパースター』(田中輝美の言葉)的な『関係人口』」と評させていただいたことがあるが、原田先生も正に、「地域福祉と福祉教育」の「スーパースター」的な「関係人口」である。
〇筆者は、大橋先生から薫陶を受けた一人である。原田先生とはいろいろな時や場で共働させていただいた。感謝に堪えない。
〇原田先生の研究業績について、諸般の事情から、ここに「補遺」として掲載させていただくことにした。その一切の責任は筆者が負うものである。読者の皆さんには是非、大橋先生と原田先生の「福祉教育」実践と研究から多くを学んでいただきたい。その一念のみである。
〇大橋先生と原田先生の真摯であくなき探究は、 “ これまで ” と 同様に、“ これから ” も続く。
(市民福祉教育研究所/文責:阪野 貢)
Ⅰ 地域福祉と福祉教育(略)
―原田正樹『地域福祉の基盤づくり』(中央法規出版、2014年10月)
Ⅱ 研究業績(略)
※ 原田正樹/私の「地域福祉と福祉教育」実践と研究 ―地域福祉の主体形成に関わる地域福祉実践研究のこれまでとこれから―/2024年1月1日/本文