「鳥居一頼の世語り」カテゴリーアーカイブ

和顔愛語地蔵の開眼

9月とは思えぬ 30度を超える真夏日
柔和なお顔をしたお地蔵さまが 中庭に立つ
四百キロを超える 頭でっかちの体躯はご立派

コロナ禍に
負けない笑顔と
優しい言葉で
満ち溢れる職場を
願って建立した

師は 地蔵開眼に祈念して 経を唱える
老男女が 中庭を見渡せる窓越しに席を置き
静かに読経に合わせ 合掌する

師は 浄土真宗の僧侶である
特養ホームの中庭に 
コロナウイルスの収束を願い
和顔愛語のこころを伝える
地蔵を 建立した

施設の利用者も 職員も
和顔愛語のこころを尽くして
終の住処で 安心して過ごせるよう
その願いを 一身に受けたお地蔵さま
御利益は 
一人ひとりのこころに宿る

信じるということは 
自分のいまのあり方を問うことか
信じるということは
ひとの仕合わせを祈ることか
信じるということは
信じる人に救われるということか

コロナ禍で 日々の安寧を祈り
こころ穏やかにして 今日もひとと関わる
こころ安らかにして 今日も家路につく
こころ無にして 今日も手を合わせる

※和顔愛語(わげんあいご):大無量寿経の一節で、その意はうそ、いつわり、こび、へつらいの心を持つことなく、いつも穏やかな笑顔、愛情のある言葉を持って人に接し、相手の意志を先んじて知り、その望みを満たすこと。

〔2020年9月8日書き下ろし。8日地蔵開眼の儀があった。リスクゼロを続ける職員への師の思いを伝える日となった〕

緊張と緩和

一週間も 禁酒した
書き上げるまでは
髭も剃らずに
四六時中 机に向かった

一週間で 勝負した
書き上げようと
目覚めた時が 仕事の始め
寝たい時が 仕事の終わり

一週間の ラストスパート
一日8人とインタビュー
まとめに 二日間集中した
書き始めて三ヶ月 目処が立つ

原稿を 書き終えた
この後 最後の添削作業
頭が緩んだ途端
身体は 酒を欲した

九月とは思えぬ 真夏日
札幌は32・7度で 観測史上最高
一缶のビールが 喉を流れる
至福の一瞬

弛緩は 
ただ一缶のビールで
満たされる 無欲さがいい
ただ一缶のビールで
身体が緩む 無力さがいい 
ただ一缶のビールが
褒美にかわる 安さがいい

〔2020年9月8日書き下ろし。昨日の続き。緊張と緩和のサイクルが続く苦楽が、一缶のビールで癒やされる〕

追い込む

締め切りを決めた
だからやるしかない

締め切りは動かさない
だから逆算する

締め切りは約束だ
だから破られない

締め切りが間近だ
でも書き足さねばならない

締め切りが嬉しい
だから書くしかない

締め切りを待つ
余裕のなさがなぜか愉しい

締め切りまであがく
追い込まれていくのがいい

締め切りはけじめだ
それで解放される

〔2020年9月7日書き下ろし。現況レポートです〕

おもえ うごけ かんじよう

21歳の誕生日おめでとう!

いまここに命ある不思議さと
宇宙の深淵の時空に
地球という惑星に生きる奇跡を
大いに楽しもう

遠大な宇宙を想像しながら
命の尊さを意識した者でしか味わえぬ
人生の機微であり 深さである
夢の実現に生きる者にしか味わえぬ
人生の創造であり 喜びでもある

人はひととつながって
自らの命と心のありようを問う
その優しさと厳しさを
試練を課して 大いに鍛えよう
生きるを学ぶ 心と態度をさらに磨こう 

きみには 人生を切り拓く
源泉力は すでにある
それが何なのか 
21歳の誕生日からの宿題だ

思考せよ~おもえ!
行動せよ~うごけ!
感動せよ~かんじよう!

祖父母は 静かに見守ることにする

〔2020年9月6日書き下ろし。孫娘が明日7日誕生日を迎える。贈る言葉を記すことだけでも幸いである〕

学生を育てる

経験6年の 若い介護福祉士がいた

介護の現場で 日々仕事しながら
介護の魅力と職場を 元気に発信する
老人ホームのリクルート担当
ともかく 底抜けに明るい笑顔に 圧倒される

お年寄りの心に添いたい
お年寄りの願いや夢が
ひとつでも叶えられたら
そのひとつのことを 思い描いて
最期まで伴走する
仕合わせづくりのお手伝い
それが介護の仕事の魅力だと
ほんとに心底嬉しそうに 目を輝かせる
仕事が大好きと言って 憚(はばか)らない
飾らぬ本気度が ストレートに伝わる
ピュアで 真っ直ぐなリクルーター
爽やかな出会いを創る 熱いおもいのルクルーター

進路に悩みながらも 
介護に興味のある高校生
どこに就職しようかと迷う
福祉系の専門学生や大学生
コロナ禍でも 今夏10人の施設見学者
9月にも18人を受け入れる

出会った学生らは 彼女の世界に引き込まれる
福祉の現場で働きたい学生は
明日の自分を描き始める
迷いを払拭した学生は
明日の自分を歩く準備を始める

リクルートの最前線で
学生と仕事をつなぐ
学生とお年寄りをつなぐ
仕事の魅力を 気負うことなく
笑顔を絶やさず 呟いた
学生を育てる仕事だと

〔2020年9月5日書き下ろし。お年寄りに添いながら介護の魅力に手応えを感じ現場力を発信する介護士のエネルギッシュな仕事ぶりにエールを贈りたい。久しぶりにこころ躍る〕

継ぐと継がせる

継ぐんじゃない
継がせてやるんだ

三人の翁が 雛壇にいた
後押しを 正論化する記者会見
総裁選で かってないシーン
異常ではなく 不気味なのだ

後ろ盾を持たない男を 担いだ
後ろ盾を持たない男は 従った
民意でも 仲間の総意でも ない

三人の翁は 壇上で答えた
後押しを 正当化する記者会見
派閥のボスは 老獪だった
尋常ではない 脅威なのだ

後ろ盾を持たない男を 持ち上げた
後ろ盾を持たない男は 神輿に乗った
民意を反映しないと非難した過去を 葬った

三人の翁は 言わした
アベノミクスを継承するだけ 
新しいことなどやらせない 
見返り求め 釘を三本刺した

後ろ盾を持たない男は 
三人の翁の 本音を知っている
継ぐんじゃない
継がせてやるんだ
 
〔2020年9月3日書き下ろし。老いて益々盛んの翁たち。求めてもいないのに、日本丸の舵取りに余念がない〕

決まってるのに

父子で TVニュースを見ていた。

「総裁選挙ってなあに?」

「国の偉い人を決める選挙」

「国の偉い人は、総理大臣でしょ」

「そうだよ」

「でも、なぜ総裁を決めるのにこんなに騒いでいるの?」

「日本は、米国のように大統領を選挙で決めるわけじゃないんだ」

「じゃあ、どう決めるの?」

「自民党というグループの中で、総裁という人を選挙で決めるんだよ。その総裁になった人が、今度は国会で選挙して総理大臣に決まるってことなんだ」

「総理大臣に、なぜ決まるの?」

「国会議員で自民党の人の数が多いから、選挙すれば絶対に勝てるんだよ」

「それじゃ、総裁になれば総理大臣になっちゃうんだね」

「それは自民党の国会議員の数が多くなきゃいけないから、今まで2人、なれなかった総裁もいたんだよ」

「それじゃ、国会議員の数が多い政党のほうが絶対強いんだ。でも総理大臣という偉い人をそんな簡単なことで決めるって、なんか変?」

「どうしてそう思うの?」

「だって、大人のみんなが選挙で議員として選んだだけで、総理大臣を選んだわけじゃないでしょ。勝手にそのグループの中から選ぶのって、みんなの気持ちはなんにもこもっていないよね」

「そうだね。でも日本のルールはそうなっているから仕方ない。でもその総裁を決めるために議員だけでじゃいけないって、全国にいる党員という人たちも選挙に参加して決めるんだよ、ほんとは」

「じゃいまのはほんとじゃないの?」

「全国の党員の中の全部じゃないけど、参加はするけど国会議員の数が多いから、議員の人をどれだけ味方にするかで決まってしまうような選挙にしたんだね」

「だからこうして、毎日ニュースで誰がどうしたって言ってるんだ。でも、派閥がどったらこったらってって言ってるよ」

「自民党というグループといってもいろんな考えを持つ人がいるからね。クラスの中で仲良しグループってあるじゃん。自民党にもそんな仲良しグループがいくつもあるんだよ」

「そっか! さっきから見てて麻生派とか二階派とか細田派とかって言ってるのはそのことなんだ」

「その通り。なんだか、知らないうちにそんなに詳しくなって、頼もしいね」

「たださっきから選挙しますって言ってるけど、もう決まったてんじゃん」

「えっ、どうして?」
いまニュース速報で菅官房長官が立候補を正式に表明すると流れる(2日17時23分)

「立候補するんだね。でも別に選挙しなくても、選挙する前から二階派や麻生派や細田派のグループの人たちが、管さんを応援するから勝つのは決まってるでしょ。それなのに、なんで今さら選挙するの。してもしなくても変わらないのに」

「でも選挙してみんなで決めたと言うことが、大事なんだよ」

「だけど、岸田さんも石破さんも負けると分かって立候補する意味ってわかんない」

「それが日本のやり方だから、いまさら変えられないのさ」

「総理大臣を決めるのに、選挙ごっこして決めましたって、大人げないよね。子どもにもわかるような間の抜けたことしていて、大の大人が恥ずかしくないのかな」

「鋭い! その通りだね」

「こんな決め方で、選挙しましたって言い訳するのって、なんだかうそっぽい」

「だから、政治家を信用しなくなるんだ。困ったもんだね」

「もっとおかしいと思うのはね」

「なんだい?」

「そう思い込んでいるパパたち」

「おっと、痛い所を突かれた。その通りです」

「もっとおかしいのはね、仲良しグループでもみんな考え方って違うでしょ。一人ひとり自分の考え方があるから政治家になったんでしょ。それなのに、グループの偉い人の言うこと聞いてるだけで、いいの? 選挙って自分がこの人って投票するはずなのに。おかしいって気がついても、直すことが出来ない人が、どうして日本の国やひとのことを考えられるの。子どもたちのこと考えられるの。みんな偉い人の言うこと聞くんだよ、そうすれば悪いようにはしないよって言われているような気がする。それでいいの?」

「うんん、参った!」

「パパだって、いつもどんな小さな事でも自分で考えて自分で決めなさいって言うでしょう。大きな事は自分で決めなくてもいいってこと? 人任せにしてもいいってこと?」

「そうじやない。大きい小さいにかかわらず、自分で決めて動くことが,パパは一番大切だと思うよ。そう言ってるパパもそうしないで、政治は人任せにしてきたかもしれない。いいことがあればほめるし、悪けりゃくさすようなことをしているだけで、真剣にこれからのことを考えていなかった。自分の子さえよければいいって、君たち子どものこともちゃんと考えてこなかったと、大いに反省しなきゃいけないね」

「選挙ごっこで大事な人を決めて、ほんとに大丈夫って子どもでも心配になるよね」

「そもそもそんな人たちを選んだまま、好き勝手をさせている大人たちがたくさんいることが、一番問題だね。ダメなことはダメって声を出していかないと、みんなが仕合わせにはならないね」

「パパ、仕合わせってなあに?」

「えっっ!」

〔2020年9月2日書き下ろし。政治の生きた教材を学校では政治教育とみなし使用不可。だから世の親が民主主義と政治力を鍛えよう。秋田生まれの同世代の管さんが総裁になる。JapanDreamの幕が上がる〕

挽歌を捧げる

自由意思を持たぬ 哀れな者たちよ
すでに志は萎み 保身に走る 

自らすべき判断を ボスに委ねし者たちよ
さも決断と 詭弁を弄する

選挙で勝つには 己を捨てる者たちよ
タレント気取りで 変節を繰り返す

その者たちへの挽歌

派閥という力の論理に 従う者たちよ
同志という束縛に 安住する

勢力のバランスを 見極める者たちよ
派閥のドンには 逆らえきれぬ

派閥を誇示して 争う者たちよ
優位に立って おこぼれに預かる

国民をと嘘で飾り 本心を欺く者たちよ
この世の春が 巡ってくると信心する

その者たちへの挽歌

何も変わらぬ 派閥の風習
風を読む 媚びへつらう者たち 
虫唾(むしず)が走る 裏取引
駆け引きに 群がる者たち 
戦慄はとまらぬ 出来レース
したり顔の 勝利を確信する者たち 

その者たちを葬ることなく
政治への信託は 
不信から始めるしかないのか

〔2020年9月1日書き下ろし。総裁選挙、底の知れたタレント気取りの者までもメディアに露出させるマスコミへの挽歌でもある〕

あらがい動く

動かなければ 事はならず

考えなく動くことを 無才という
考えをさしてしないで動くことを 軽率という
考えを放棄して動くことを 無謀という
考えをしっかり持って動くことを 慎重という

動いてはじめて 事は見えてくる

状況を判断できずに動くことを 無知という
状況の判断を間違え動くことを 失敗という
状況を飲み込めずに動くことを 勝手という
状況をわきまえ動くことを 聡明という

時には動かぬ事で 本質を見極める

本質が見えぬことを 混迷という
本質が少しずつ見えることを 苦悩という  
本質に触れることを 探究という
本質に行き当たることを 感動という

動かなければ 事の大事を知らず

どう動くかを考えることを 試行という 
動いた後に考えることを 熟考という
考えた後にまた動くことを 挑戦という
その愉しき紆余曲折に富む道程を 人生という

考え動いてこそ見出す 生きるということ 

慎重にも 聡明にも 感動にも
遙かにして いまだに至らず
いまも はぐれて昏迷する
いまだ 真理に遠く困窮する
いまさら どうすることもできずたじろぐ
ただ あらがいながらも 
問い続ける〈いま〉は 
まだ残されて 
ある

〔2020年8月31日書き下ろし。ただ動いてきただけの自分の不甲斐なさを振り返る〕

夏の終わりに

唐突な辞任表明
散らかした後の始末は
きっとゆるくはない
火中の栗を拾うのは誰だろう

友は積み上げてきた熱いおもいを
若い世代に継いでゆく
きっと意気に感じ動くだろう
そこに確かに人は育っている

書き続けた原稿も
紆余曲折の末に目処が立つ
きっと喜んでくれるだろう
師との共生が同行(どうぎょう)に似る

1年経っても治らぬ腰痛
次から次へとガタがくる
きっと休めとサインが出てる
でも退屈の虫とは凄く仲が悪い

今夏の終わりに
意地を張らず
たじろがず
卑屈にならず
悲観せず
座して世を見るのは
幸いか

〔2020年8月29日書き下ろし。夏の終わりのこころのメモ〕