「まちづくりと市民福祉教育」カテゴリーアーカイブ
平岡国市と子供民生委員制度
出典:阪野貢「平岡国市と子供民生委員制度」『戦後初期福祉教育実践史の研究』角川学芸出版、2006年4月、13~65ページ。
馬川友和・北海道民生委員児童委員連盟/新型コロナウイルス感染症に対する意識と活動に関する調査報告書
日開野 博/「子ども民生委員活動」復活の想いを込めた推進事業の展開
資料1
資料2
資料3
資料4
大橋謙策/CSW研修のプログラム・方法の構造化と体系化
日本でのCSW(コミュニティソーシャルワーク)機能の必要性と重要性は、1990年の「生活支援地域福祉事業(仮称)の基本的考え方について(中間報告)」(座長大橋謙策)において指摘された。
それは、従来のCW(コミュニティワーク)、CO(コミュニティオーガニゼーシン)をより地域福祉の理念、考え方に引き付けて発展させたものであった。これ以降、CSWは用語としても、考え方としても、かつ社会実験的にも実証され、定着してきた。
日本社会事業大学の教員による共同研究を基にまとめた『コミュニティソーシャルワークと自己実現サービス』が2000年8月に上梓されたが、その本でほぼコミュニティソーシャルワークの考え方、機能は整理されたといえる。
しかも、コミュニティソーシャルワークを展開できるシステムとしては、東京都目黒区、東京都の子ども家庭支援センター等の先駆的試みを経て、2000年4月から開始された長野県茅野市の保健福祉サービスセンターのシステム(『福祉21ビーナスプランの挑戦』参照)において、その必要性と可能性も確認された。
これらの機能、考え方、システムの在り方は、現在厚生労働省により「地域共生社会政策」として推進されている。
しかしながら、これらコミュニティソーシャルワークのシステムや機能を具現化させる職員の養成、研修の在り方は必ずしも体系化、構造化されていなかった。
筆者は、ここ数年、大学業務に束縛されることが無くなり、時間的余裕もできたので、コミュニティソーシャルワークの研修を依頼された機会を活用して、コミュニティソーシャルワーク研修のプログラム・方法の構造化と体系化に心がけてきた。それは、まさに、現場の研修を担当している職員との「バッテリー型研修」であり、「コンサルタント的研修」を行うなかで、ほぼ“完成”に近い、納得できるCSW研修のプログラム・方法の構造化と体系化ができたと思っている。
この“社会的実装”に参加してくれた社会福祉協議会は、富山県社協、香川県社協、佐賀県社協、大阪府社協、千葉県社協、岩手県社協、東京都世田谷区社協(人口92万人)等である。この紙面を借りて、改めて関係者にお礼と敬意を表したい。
このコミュニティソーシャルワーク研修を全国に広め、定着させると同時に、社会福祉系大学の教育、演習の在り方を変えてもらうためにも、全国の関係者と共有し、次年度からの研修に活かしてほしいとの思いで「老爺心お節介情報」第18号を送信する。関係者は
相互に連絡を取り合って、情報交換をし、各自が関わるところで研修を見直して頂きたい。
なお、研修プログラムの作成に当たっては、以下の点を考慮、配慮してほしい。
(1) 研修には、予算、期間の制約があり、この通りにはならないが、研修に盛り込むべき内容は同じである。
今回添付ファイルしたものは、富山県社協の地域福祉部(部長古野智也)と富山県福祉カレッジ(学長大橋謙策)とが共催で取り組んだ取組で、プログラムや参加者に課した課題の整理、あるいは演習で使用するシートを作成してくれたのは富山県社協の魚住浩二さんである。富山県社協の研修時間は残念ながら、現時点では約3時間足らない。期間としてはAM、9時30分~PM5時までの全日4日間はほしい。
なお、従来、「多問題家族のアセスメントシート」を使ってきたが、より「社会生活」をきちんとアセスメントするのがソーシャルワークであると考え、タイトルを「社会生活モデルに基づくアセスメントの視点と枠組シート」にタイトルを変えた。このシートのレイアウト作成には、世田谷区社協の山本学さんに協力を頂いた。
(2) 研修参加者の主体性を高めるために、アクテブラーニングの考え方を取り入れ、小グループ編成によるワークショップだけでなく、演習の課題に即し、参加者各個人にレポートを課し、県社会福祉協議会職員と研修講師である筆者とがコメントし、さらに加筆修正をしてもらって提出するというサイクルを試みた。
最も、典型的に取り組んでくれた県社協は佐賀県社協の小松美佳さんである。その1例が多久市の北島暁さんの「問題解決プログラム企画立案書」である。これは、1月に行われる佐賀県市町村社協役職員研修で発表されるものなので、1月末までは取り扱いに注意してほしい。
(3) 岩手県のCSW研修では、アウトリーチ型のロールプレイをビデオに収録し、その後それを再現して、検証した。これからは、ビデオ活用も考える必要がある。
(4) 富山県では、小グループごとにパソコンとプロジェクターを用意し、グループ討議の内容をあらかじめ入力してあったシートに打ち込み、映し出して論議するという方法を取った。これからは、ICTを活用した研修を考える必要がある。
(5) 今までの研修では、県内や市町村の社会福祉に関わるデータを無視して、一般的に論議し、研修をしていたが、研修を通じて県内、市町村ごとのデータを踏まえた論議と問題解決のプログラムを創る必要があるとの認識から、富山県、千葉県では県内の社会福祉に関するデータ、政策に関わる資料を収集し、ファイル化して使えるようにした。今では、上記に挙げた県社協はすべて資料集を作っている。
ただし、この資料集を十分に使った研修ができてない。時間の制約がどうしてもある。市町村社協職員は、行政に説明する場合なども考えて、この資料集を活用して“数字にも強い職員”にならないといけない。
(6) 各県のCSW研修は、初学者、初任者でなく、国家資格や一定の経験を有している人を対象にしているので、座学はあまり時間はいらないと思っていたが、それなりに時間が必要である。
各県の研修では『コミュニティソーシャルワークの理論と方法』、『コミュニティソーシャルワークの新たな展開』を使っていただいているが、CSW研修用に、この2冊から必要な部分を選択し、アレンジして新たな教材を作る必要がある。それを座学で行うか、e―ラーニングで行うかは今後考える必要がある。
(7) 事例検討の仕方は、最初に事例全体の報告をしてから行うのではなく、最初は事例の概要を報告してもらい、その報告された概要に基づき、どのようなアセスメント、聞き取りをしないと援助方針が立てられないかということを認識させる必要性から、報告された概要に基づき、確かめるべきアセスメント項目、聞き出すべきアセスメント項目を、まず参加者個人がポストイットに書いて書き出す。それを基にグループごとに類型化する。この作業を通じて、個々人のアセスメントの視点と枠組が偏っていることを認識させる。その際に、「社会生活モデルに基づくアセスメントの視点と枠組みシート」を使う。
その後、事例は具体的にどう展開したのかを報告してもらい、それでよかったのか、望ましい支援方針はどういうことが考えられるのか“夢のある支援方針”を立案してもらう。岩手県では、この部分に時間を割いたが、あまりにも参加者が制度の枠組みや固定観念に囚われて支援方針を考えていたので、“夢”を語ってほしいと述べた。
事例は、参加者が抱えている困難事例か、県内にある実際の困難事例を使う。できれば、事例報告者には事例に基づく演習が終わるまで参加してもらう。
具体的事例を扱うので、改めてプライバシー保護を徹底化させる。必要なら、事例は回収する。
(8) ソーシャルサポートネットワークづくりに関する演習の成果物で、これはというものは今のところ把握できていない。大阪府の社会福祉法人の地域貢献とコミュニティソーシャルワークの研修の中から、素晴らしいものがでてくる予感がしている。
今後深めないと意見兄分野で、住民の差別、偏見をなくす福祉教育なども視野に入れて取り組みたい。この部分こそが、「地域共生社会政策」の具現化の“象徴”である。
(9) 本来、ここに情報提供しているプログラムや演習シートなどは、商標登録や著作権の対象となるものであるが、我々社会福祉関係者はお互いの資質、能力、力量が向上し、福祉サービスを必要としている人々の生活が改善されることを願って仕事をしているのであるから、そのような制約はかけない。その分、多くの関係者が努力していることに“思い”を馳せてほしい。
(10) 演習の進め方については、演習の課題に即して、まず個人作業をすることが大切。個人作業を通じて、その課題に関する自らの認識、力量を自己覚知することが重要で、最初からグループ討議をしてしまうとその自己覚知の部分が確認できない。
その後、小グループごとに討議をするが、その過程で自分の作業と他の人の作業とを比較する中で、自分を見つめ直す機会とする。
小グループで演習課題に関する課題を完成させ、全体会で発表し、研修講師が座学で学んだことを事例、達成課題に引き付けてコメントする。
(「老爺心お節介情報」第18号、2020年12月24日)
日開野 博「ボランティア/温故知新 木谷宜弘先生の軌跡からボランティア活動のこれからを見据えて」
【備考】
木谷宜弘氏の「生涯と思想と実践」については、徳島県社会福祉協議会のホームページに表示されている「木谷宜弘資料館」(Yoshihiro Kitani Archives)をご参照下さい。
田辺則人「地域福祉とSDGsの一体的展開に向けたはじめの一歩についての考察」
森依顕「子ども民生委員の復活を―教科書が教えない世界を平和にするための子供民生委員活動―」
原田正樹「『ボランティアの輪』連絡会議の歩みとその特徴について」
出典:原田正樹「『ボランティアの輪』連絡会議の歩みとその特徴について」『「広がれボランティアの輪」連絡会議25周年記念誌―「いつでも、どこでも、誰でも、気軽に、楽しく」ボランティア・市民活動に参加できる環境づくり、気運づくりをめざして―』「広がれボランティアの輪」連絡会議、2020年10月、13~19ページ。
備考
(1)「広がれボランティアの輪」連絡会議とは
出典:『同上書』6~7ページ。
(2)ボランティア・市民活動と「広がれボランティアの輪」連絡会議の動き
出典:『同上書』20~22ページ。