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生活者とまちづくり:対抗的自律型市民の育成と共働的参加型社会の実現―資料紹介―

人々の主体性を伴った参加なくして「縮充する未来」はありえない。幸いなことに、参加の潮流はさまざまな分野で高まりつつある。(4ページ)/参加の主体となるのは生活者だ。生活者という言葉がいろいろな場面で使われるようになった時期は、参加することによって社会を変えていこうとする機運の高まりと符合している。(55ページ)

〇山崎亮は、近著の『縮充する日本―「参加」が創り出す人口減少社会の希望―』(PHP研究所、2016年11月)において、「縮小」を「縮充」へと導く唯一の解が「参加」であると言う(本ブログの「ディスカッションルーム」(66)参照)。また、天野正子著『「生活者」とはだれか―自律的市民像の系譜―』(中央公論社、1996年10月。以下[1]と略す)を紹介し、「生活者」に関する所説に触れている(54、167、221ページ)。上記はその一節である。
〇天野(1938年3月~2015年5月、社会学者)の著書には、『現代「生活者」論―つながる力を育てる社会へ―』(有志舎、2012年11月。以下[2]と略す)もある。[1]と[2]を通して、天野は、「生活者」の概念の軌跡を辿り(注①)、理論の集大成を図るなかで、その歴史的・現代的な意味を問い直す。とともに、国家・市場経済・専門家などに支配・管理されない「生活者」の、自律的な暮らしや他者との「つながり」(共同性・公共性)のあり方を模索する。それは、「まちづくり」や「福祉教育」に通底する研究の視点・視座でもある。本稿で[1]と[2]を取り上げる理由のひとつは、ここにある。また、天野の論理的思考とその文学的表現は、訴求性やストーリー性も高く、筆者(阪野)を惹きつける。
〇以下で、天野の「現代生活者論」の論点や言説のいくつかを紹介(引用、抜き書き)することにする。

日本社会が高度経済成長期をひたすら走っている頃には、生活者という言葉を、今ほど広範に聞くことはなかった。「生活者」がひんぱんに用いられるようになるのは、1980年代末から90年代にかけての時代である。([1]7ページ)/その背景には、明らかに日本社会の仕組みが「生産者」優位に偏りすぎてきたことへの反省がある。また、生活にゆとりが感じられず、「豊かな社会」のなかに、都市問題や環境・安全・資源問題などのさまざまな課題が山積していることへの不安がある。/「生活者」とは、そうした反省や疑問、不安などが入り交じった混沌のなかから生み出された、人びとの願望や期待のこめられた、新しい人間類型のラベルとみるべきである。([1]11ページ)

「生活者」という言葉が使われるのは、人びとの行動の形態や属性(消費者や勤労者、国民など)をさすのでも、また、「主婦感覚」や「庶民感覚」の持ち主といった感覚レベルの特徴をさすためでもない。「生活者」とは、特定の行動原理にたつ人びと、あるいはたつことをめざす人びとの、一つの「理想型」として使われている。([1]11~12ページ)/「生活者」の行動原理の一つは、「労働者」や「消費者」に対置され、その両方を含む全体としての生活の場から発想し、問題解決をはかろうとすることである。生活者という言葉は、生活が本来もっている全体性と、その全体を自らの手のなかにおきたいと願う主体としての人びとをさす。/もう一つの行動原理は、「個」に根ざしながら、他の「個」との協同により、それまで自明視されてきた生き方とは別の「もう一つの」(オルターナティヴな)生き方を選択しようとすることである。生活者とは、自分の行動に責任をもちつつ、他者との間にネットワークをつくり、「あたりまえ」の生活に対抗的な新しい生き方を創出しようとする人びとをさす。そして、「生活者」にとって、それぞれの私的な利害を異にする人びとが対話を重ね、「私」を超えていく場としての地域・市民領域へのかかわりかたが重要になる。([1]13~14ページ)

生活者という概念は時代により、さまざまな意味をこめられ、一つの理想型として使われてきた。しかし、それらに通底しているのは、それぞれの時代の支配的な価値から自律的な、いいかえれば「対抗的」(オルターナティヴ)な「生活」を、隣り合って生きる他者との協同行為によって共に創ろうとする個人――を意味するものとしての「生活者」概念である。/私たちは、いまその生活者概念の原点に立ち戻って、大衆消費財化しつつある(意味内容のあいまいなままに安売りされ、消費されている)「生活者」をとらえなおし、みずみずしく力強い響きをとりもどすことの必要な、時代を迎えているのである。([1]236ページ)

「生活者」とは、なによりも、無名であるが、しかし、それぞれに「わたし」をたずさえた、その意味で固有の名をもって存在し、生きる現場ともいうべき家族や地域の暮しを基底に、暮し方、ひいては自分の生き方を意識化し見直すことに、社会の展望拠点を求めようとする人びとである。さらにいえば自らの無名性において、他者との共通の主題・関心のもとに相互につながり、小さな共同性・公共性への回路を模索していく過程への参画を果たそうとする人たちである。/生活者は、多くの場合、すでに存在する何者かを指す概念ではない。生きる拠点である「生活」が破壊され、あるいは危機に陥ったときに、あらためて意味を担って浮上してくる概念である。そう考えるなら、生活者とは、日本社会の大きな転換過程で向きあう不安感やリスク感、日常的な暮し方への反省や疑問、新しい生き方やライフスタイルへの願望や期待の入り交じった混沌のなかから生み出された、どこにでも存在するごく「普通の人びと」である。([2]ⅰ~ⅱページ)

ネットワーク型コミュニティは、家族という親密でミクロな関係でも、国家や行政、市場というマクロな関係でもない、その中間に形成される、しゃべる、笑う、まなざす、振舞うなど、自他が身体を介して出会う<生>の現場に、小さな共同性、公共圏を創出していく営みである。([2]ⅷ、206ページ)/歴史的経験から学ぶことなしに、他者とつながる力を蓄えるのはむずかしい。状況の「破壊」と時代の転換が急速にすすむ今、ネットワーク型コミュニティの歴史的経験とそこに蓄積された経験知に学び、それを基盤に、国家や市場から自由なもう一つの共同性、公共性への回路を模索することがこれまで以上に重要性を増している。([2]ⅸ~ⅹページ)

東日本大震災による、地震・津波・原発事故という複合的な災害は、人間生命の再生産に最大の価値をおくジョン・ラスキン(John Ruskin、1819年~1900年、イギリスの社会思想家:阪野)の言葉――「生命のほかに富というものは存在しない」(There is no wealth but life)(注②)と、それを踏まえて、「生きること」が相互に異なる「人びととの“間”にある」こと、「つながり」を生きることと同義語であることを実践してきた歴史のなかの生活者像を、あらためて思い起こさせるものであった。/専門家支配や中央管理システム、市場経済にふりまわされない、自律的な新しい暮しのスタイルと共生のしくみをどう創りあげていくのか。その可能性はなによりも、時代を生き抜く概念として「生活者」の内実を問い、実質的な生命を与え、鍛えあげるなかから生れてくる。([2]297~298ページ)

〇筆者はこれまで、「市民福祉教育」について語る際に、基本的な考え方として、「生命」「生活」「生涯」すなわちライフ(Life)は人間の成長・発達の過程であり、それはまた教育の過程でもある、と言ってきた。天野の[1][2]の言説によってその点を加筆すれば、「生活」(Life)とは、その時代の社会、経済、政治、文化などの諸条件のもとで、生命(生きる力)の再生産を行い、自分を生き抜くための、生涯にわたる主体的・自律的で共同的・公共的な営み(具体的な行動)の過程である。そして、その過程を通して、曖昧模糊としたものであることも少なくないが、生活者の思想性(考え方)や哲学性(生き方)が形成される。しかもそれは、時間の経過(歴史性)のなかで広狭や浅深のあいだを揺らぎ、ときには要求や必要、意欲や志向を変える、ということになろうか。
〇地域に生きる一人ひとりの住民は、その生活や人生のさまざまな場面や過程で、自己責任が伴う自己選択や自己決定を行い、他者の支援を受けながら自分の人生を切り開いていく。「他者(ひと)まかせにしない、できることは自分で、一人でできないことは他者(ひと)と支えあって」というのが、生活者本来の生き方である([2]ⅳページ)。約言すれば、「自立と連帯」「自律と共生」である。しかし、住民は必ずしも、生き方について論理的・体系的に考え、自覚的・能動的に行動する(できる)とは限らない。煩雑で混沌とした日々の生活のなかで、また社会のしがらみを抱えながら、自分の思いや考えを自分のなかに閉じ込めてしまう。「長い物には巻かれろ」「郷に入っては郷に従え」であり、「沈黙」と「従属」である。それは、自分が自分の「生活」の主体であることを放棄し、自分の「生活」をみんなと共に創ることを止めることを意味する。教育的営為(「生活者教育」)が求められるところである。
〇天野は[1]で、生活雑誌『暮らしの手帖』を創刊した花森安治(1911年~1978年)の次の言葉を紹介している。「戦争に巻き込まれたのは、自分を含む民衆一人ひとりが守りたい自分の暮らしを創ってこなかったから」である([1]36~37ページ)。
〇日本社会では、「縮小社会」「格差社会」「右傾社会」「監視社会」などが進展し、国際的には同盟関係の強化などが図られている。また、その「現場」である地域社会と「担い手」である地域住民は、生活の不安や混乱のなかにある。「地方創生」という名の地域破壊も進んでいる。そうした「いま」、花森のこの言葉(「自分の暮らしを創る」)に思いを致すことが強く求められる。それは、国家の権力や意志に抗する生活者像であり、生活に根ざした自律と変革の思想である。
〇天野によれば、生活者とは、「生産や消費、労働や余暇、福祉や環境など、『生活』を細切れではなく総体として把握し、社会の支配的な価値からの自律を求める人たち」([2]238ページ)である。これを要するに、生活者は、(1)生活の全体性を把握する主体であり、(2)自律的な新しい暮らしのスタイルと共生のしくみを創りあげていく主体である([1]13~14ページ、[2]297~298ページ)。そこで、生活者を理解するにあたっては、生活者の生活意識をはじめ、生活様式や生活構造、生活環境や生活問題、そして生活史などの、生活の実相を総合的・学際的に把握することが求められる。また、対抗的な生活をとなりに生きる他者と創りあげるためには、生活の「共同性と公共性」(つながり)の実現に向けた日常的実践や社会運動(「生活者運動」)と、その統合をめざす取り組みが重要となる。まちづくりや市民福祉教育に通底する言説のひとつである。留意しておきたい。


①天野によると、「近現代における生活者像の形成を辿るなかで明らかにされた、(1)だれが(どのような運動が)、(2)どのような時代状況のもとに、(3)社会的にどのような階層を担い手に、(4)生活者に対置するどのような人びとを想定して、(5)どのような行動基準に立つ人びとが生活者とされたのか、(6)外国生まれの類似概念として何があげられるかについて、要約すれば」([2]41ページ)次の表のようになる。

②山崎は、「生活こそが財産である」と訳している(『前掲書』168ページ)。

付記
本稿のタイトルの文言――「対抗的自律型市民」については、天野の次の言説に留意したものでもある。
「生活者」とは、「あたりまえ」の生活に対する「対抗的な」「もう一つの」(オルタナティヴ、alternative)新しい生き方を創出しようとする人びとである。([1]13ページ)
「生活者」とは、参加の自発性という点で「市民」(citizen)と、「居住すること」から問題を組み立てていく点で「住民」とを統合する視点をもつ概念である。([2]240ページ)

「縮減社会」(小滝敏之)と「縮充社会」(山崎亮):参加・つながり・自治―資料紹介―

〇筆者(阪野)の手もとにいま、2冊の本がある。(1)小滝敏之著『縮減社会の地域自治・生活者自治―その時代背景と改革理念―』(第一法規、2016年4月)と(2)山崎亮著『縮充する日本―「参加」が創り出す人口減少社会の希望―』(PHP研究所、2016年11月)である。小滝(千葉経済大学、元官僚)は、「縮減社会」の「地域自治・生活者自治」について、その背景や理念・方策などを幅広い視点で捉え、広範な学問分野の言説を多く引用しながら、歴史的、理論的かつ実証的に論述する。山崎(東北芸術工科大学、コミュニティデザイナー)は、「縮充する社会」をつくるためには、人々の主体的な「参加」が必要不可欠であるとして、「まちづくり」などの8つの分野における「参加」の潮流を、各分野を牽引するリーダーとの対話を通して纏めあげる。「縮充」とは、「人口や税収が縮小しながらも地域の営みや住民の生活が充実したものになっていく」(17~18ページ)ことをいう。
〇以下に、2冊の本から、筆者なりに注目しておきたい論点や言説のいくつかを紹介(引用、抜き書き)することにする。

(1)小滝敏之/「縮減社会」における「地域自治・生活者自治」
生きた人間(実存的人間)の生活世界を考えていくにあたっては、一元論(monism)はもとより、白か黒かというような二元論では割り切れない点が多々あることを銘記しなければならない。二元論的把握を回避しようとするならば、「他律」対「自律」、「統治」対「自治」、「競争」対「協力」というごとき対立図式から、一方的に「自律」や「自治」の優位性を説くのみでは不十分である。最終的には、「他律(ヘテロノミー)」と「自律(オートノミー)」の両立・共存を目指し得る「相互律(アレロノミー)」の観点が必要となってくる。(ⅵ~ⅶページ)/「相互律」は「理屈の上では矛盾しているものが、矛盾し反撥しながらも、互いに他の存在を否定せず、これを承認し合っている」ような状態を指す言葉で、これこそが「実在の論理」である。(54ページ)

「人口減少社会」や「縮小社会」を論じるにあたっては、社会実体の量的側面のみならず質的側面についても目を向けなければならない。/最も危惧すべき質的縮減の側面は、「家族機能の縮減」であり、「地域における共助機能の縮減」であり、「社会的連帯の縮減(低下)」であり、「コミュニティ意識の縮減(薄弱化)」である。(24ページ)

「縮減社会」において設定されるべき「共通価値」(common values:社会の成員により共有される価値規範)は、「ローカリゼーション(地域社会化)」、「共助社会(共に助け合う社会)」、そして「実存的な生活世界におけるコンヴィヴィアリティ(共歓共生:共に歓びをもって生きること)」である。(62ページ)/今後は、「競争原理」とは対極的な「協力原理」に基づく社会システムを再生し強化していかなければならない。その方策の重要な柱が「社会関係資本」すなわち「ソーシャル・キャピタル(social capital)」の形成であり、「市民的共同体」すなわち「シヴィック・コミュニティ(civic community)」の結束強化である。(68ページ)

生活者住民が「共通価値」を実現していく上で必要なのは「生活者自治」である。「生活者自治」とは自治体主体の「地方自治」ではない。行政学的・行政法学的な既成概念としての「住民自治」とも異なり、実存的生活世界を基盤とする生活者住民の固有の自治権に基づく社会的・政治的・経済的営為を指す。人が人を動かすという意味での政治(自治)の主役、自分たちの地域をどうしていくのか、どう変えていくのかを決める主役は、政治家や行政官などではなく、地域社会の生活者住民にほかならない。(125ページ)/都市部であれ農村部であれ、地域で暮らす生活者住民(小さき民)の「内発性と自治」こそが、自らの基盤である地域社会(コミュニティ)を守り育てていく根幹である。(133ページ)

「地方政府とは地域住民である」。それは、地域住民が地方政府の主役であることを意味している。自治体の首長・職員や議員が主役のままで、住民・市民がたまに参加を求められるごとき受動的な「市民参加(citizen participation)」などではなく、住民・市民が自律的に主導する「市民参画(citizen engagement)」が求められている。/「市民参画(シティズン・エンゲイジメント)」というのは、「人びとが、一連の関心と機構とネットワークをもって、討議(deliberation)と共働行動(collective action)のために一緒に参加し、市民的一体性(civic identity)を育成し、統治過程(governance process)に人びとを巻き込むこと」を意味している。(143ページ)

実存的生活世界という場に生きる生活者、すなわち地域社会・近隣社会に生きる住民こそが、「自治生活」の主体として近代システムに振り回されることなく、人間社会に本源的な協同(協働)・連帯・共助の精神を取り戻し、真の自治と新たな生を切り拓いてゆくことができるのである。私たちは、生活する足元の地域社会や共同体に改めて目を向け、連帯・共助の精神を再生・創造していかなければならない。(181ページ)/国(中央政府)であれ自治体(地方政府)であれ「政府」の権限や責務以上に留意しなければならないのは住民自身の責務であり、生活者住民の主体的努力と自治意識である。(188ページ)

(2)山崎亮/「参加」が創り出す「縮充する社会」
人口が減り、少子化と高齢化によって活気を失ったまちが再び元気になるためには、そのまちに暮らす人たちの「参加」が不可欠になる。「参加なくして未来なし」である。(14~15ページ)/「楽しさ」は、参加型社会の重要なキーワードになる。「正しい」だけでは仲間は増えない。どんなに立派な取り組みでも、つまらなければ長続きはしない。活動することに、「楽しさ」を見出せてこそ、参加は市民にとって社会を変革する有効な方法となり得る。その意味で、「楽しさなくして参加なし」である。(36ページ)/「楽しさなくして参加なし」「参加なくして未来なし」を縮めて言えば、「楽しさなくして未来なし」ということになる。つまり、「楽しさ」と「未来」とを結びつけるしくみが「参加」だということになる。(19ページ)

地域をよくするための関わり方には、「物理的介入」と「心理的介入」の2つのアプローチがある。(59ページ)/ハンナ・アレント(1906年10月~1975年12月、ドイツ出身の哲学者:阪野)は、人間の生産的な行為を「労働」「仕事」「活動」の3つに分類した。お金のためではなく、モノを残すためでもなく、自ら主体的にやりたいと感じ、そこに他者が何らかの価値を見出せる行為を「活動」と位置づけた。そして、「活動」に重きが置かれてこそ、豊かな社会はつくられるとアレントは論じている。(61ページ)/「活動」する人たち、もしくは「活動」する意識を持った人たちが「市民」になる。地域をよくするための「心理的介入」(ワークショップなどで住民の生活を意識から変えていこうとする活動)は、「住民」(「一般の人」)を「市民」に変えていく活動をいう。(61~62ページ)/コミュニティデザイナーの仕事は、「住民」の意識が「市民」へと変わるように支援することである。したがって、住民の主体的な変化を促すために介入するのが役目になる。(64ページ)

「参加」には発展性がある。参加することの楽しさを知れば、「参画」する意欲が生まれる。他者がつくった計画に加わることは「参加」だが、計画の策定段階に自ら加わることは「参画」になる。「参画」の動きが活発な分野では、もっと高次元の現象が起こり得る。それが「協働」(コラボレーション)という活動である。(68ページ。図1:67ページ)
   
行政への住民参加(住民活動の原動力)には、「住民がやりたいこと」「住民ができること」「行政が求めていること」の3つがある。この3つ輪が重なるところに、縮充の時代に求められる「参加」「参画」「協働」のヒントがある。(146ページ。図2:145ページ)/この3つの輪を「自分がやりたいこと」「自分にできること」「社会が求めていること」と書き換えれば、人生を傾けて取り組める活動を探り当てることができるかもしれない。(426ページ)

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日本の戦後の社会福祉に欠けていたのは、「わたしたち」にとっての「教育」だった。課題というのは“当事者”の参加なしには解決できない。法律を整えたり、施設をつくったり、お金を与えたりしても、当事者である「わたしたち」に課題を解決する意欲がなければ、社会が豊かになることはない。言い換えれば、当事者が学ぶことによって課題解決の道は開かれる。/これからの地域福祉に必要な知恵を、「わたしたち」は、どこで学ぶのか。現場で学べばいい。地域の活動に参加して、人と人とのつながりのなかで体験し、発見し、感動し、共感しながら知恵を会得(えとく)することに勝る教育はない。(355ページ)

学校や社会教育の現場などの教育の分野がいよいよ参加型に変わろうとしている(アクティブラーニング、コミュニティ・スクール等:阪野)この動きは、あらゆる分野に影響を及ぼし、参加型社会から参画型社会、さらには協働型社会へと発展していく大きな推進力になる可能性がある。いよいよ本丸である。(358~359ページ)

市民参加の形態(「参加した市民の目的意識」)は、おおよそ3つの年代に分けて整理することができる。/(1)戦後から1970年頃までの「第1期」―「不可避的な課題の解決」のための参加:災害や公害などによる人命や健康への深刻な被害、あるいは(市民から見た)政治の暴走といった生活に及ぼす大きな影響をくい止めようとする目的意識。(2)1970年代から1995年頃までの「第2期」―「公共的な課題の解決」のための参加:一億総中流社会や福祉社会が叫ばれるなかで、「住民vs.行政・企業」ではなく、「住民&行政・企業」という視点で都市計画やまちづくりを進めようとする目的意識。(3)1995年以降の「第3期」―「関係性の課題の解決」のための参加:地域のつながりが希薄化するなかで、生活から欠落したコミュニケーションと人間関係の再構築を図ろうとする目的意識。(402~405ページ)/第4期「参加の時代」が2020年から始まるとすれば、その機運はすでに起きつつある。いまわれわれが感じている「新しい参加形態」は、きっと第4期「参加の時代」の胎動なのだろう。(445ページ)

〇以上を端的に纏めると、小滝は、「縮減社会」の「自治」とその役割について地域社会・近隣社会のレベルで捉え、「生活者」の視点に立って言及する。その際、成長・競争の社会理念に対して、共生・共助の地域づくりの理念を提言する。そして、地域の独自性や多様性、生活者住民の主体性や自律性などを重視した「内発的発展(振興)」や「自助努力」、「自治意識」に基づく地域づくり(「自己責任社会」への転換)の必要性を説く。そのためには、著しく低下してきた住民・市民の「公共精神(public spirit)」や「市民精神(civic spirit)」の喚起・向上を図ることが肝要となる(207ページ)、という。改めて確認しておきたい。
〇また、山崎は、日本の人口減少社会の希望は市民の「参加」にある。「縮充する時代の行方には、正確もなければゴールもない。『学び』というインプットと、『活動』というアウトプットを、つねに市民が織り返している状態にこそ大きな意味がある」(440ページ)、という。シンプルであり、それ故に訴求性の高い結論である。留意したい。
〇小滝と山崎の言説は「参加」をキー概念とするが、「つながり」も重要な位置を占めている。その点をめぐって筆者はかつて、次のように述べたことがある。参考に供することとする。
   
共働活動とは、多様な個人や集団が共生関係を形成し、多面的な相互作用によって社会的統合や融合を達成していく過程で展開される協同活動をいう。市民福祉教育はこうした共働活動を重視する。
住民(メンバー)の共働活動への参加の仕方(姿勢)は、林義樹の「参加の三段階理論」に依拠すると、「参集」→「参与」→「参画」の3つの段階に区分することができる。林によると、参集は、その場に「いあわす」ことであり、活動は個人的で受動的なものにとどまる。参与は、他者と「かかわる」ことであり、活動は集団的で能動的なものとなる。参画は、一定の役割と責任を「にないあう」ことであり、活動は組織的で自省的なものとなる。また、活動は多種多様な人間関係の網の目(コミュニケーション)によって支えられているが、コミュニケーションの過程において伝達される情報は、参集が一方向、参与が双方向、参画が多方向となる。
図3は、林の参加理論を援用しながら、共働活動(相互作用)の諸相について活動の参加姿勢(受動的→能動的→自省的)と参加度(参集→参与→参画)、コミュニケーションの深化の過程(個人的→集団的→組織的)と方向性(一方向→双方向→多方向)、その関わりを座標平面で示したものである。共働活動(相互作用)は、一人ひとりの人間の活動と多くの人々のコミュニケーションとの2つの軸の上に、拡大→深化→高度化と螺旋状に展開される。ここから、活動の参加度やコミュニケーションの深化のレベルに対応して、市民福祉教育実践のねらいや内容、方法などが決定されることになる。(阪野貢『市民福祉教育の探究―歴史・理論・実践―』みらい、2009年10月、81~82ページ)

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補遺
(1)「アレロノミー(allelonomie)」について小滝敏之は次のように述べている。
「競争」と「協力(相互扶助)」とを両立させながら「共存」していく両立的観点―「競争」の全面否定ではなく、非情な「優勝劣敗」の原理とは異なる「共存共栄」の原理に通じる途を求める視点―こそ重要というべきであろう。/「アレロノミー」とは、経済学者の難波田春夫が、ギリシャ語由来の「ヘテロノミー(heteronomy)・他律」や「アウトノミー:オートノミー(autonomy)・自律」という概念と対照的な概念用語として造り出した言葉である。(54ページ)
(2)「コンヴィヴィアリティ(conviviality)」について小滝敏之は次のように述べている。
「コンヴィヴィアリティ」という言葉は、もともとイヴァン・イリイチの創り出した造語であり、本書では「共歓共生」ないし「共に歓びをもって生きること」と意訳しているが、「自立共生」、「自律共働」、「共愉」などと訳されることもある。(63ページ)
(3)山崎亮が「対話」した「医療・福祉」分野のインタビュイーは大橋謙策である。山崎は次のように述べている。
大橋さんの言葉を借りれば、福祉事業者や研究者の間で70年代からスローガンのようにいわれていた「福祉のまちづくり」が、90年代から「福祉でまちづくり」へと変わったのである。(331ページ)/大橋さんは、2010年代は「福祉でまちづくり」から「福祉はまちづくり」といわれる時代へと移行したと話していた。(335ページ)

ボランティアのいない社会づくり:全国ボラフェス(24年間、参加者延べ人数約101万人)、新たなステージへ―資料紹介―

〇2016年12月、厚生労働省に設けられた「地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会(地域力強化検討会)」(座長・原田正樹)が「中間とりまとめ~従来の福祉の地平を超えた、次のステージへ~」を公表した。そこでは、「我が事・丸ごと」の地域づくりを推進する体制づくりを、市町村の役割として位置づけることが検討されている。そのなかで、例えば次のような一節がある。

幼少期から地域福祉に関心を促し、地域活動への参加を通して人間形成を図っていく福祉教育が必要である。就学前から義務教育、高等教育といったそれぞれの段階で地域貢献学習(サービスラーニングやボランティア活動)などに積極的に取り組み、福祉意識の涵養と理解を深めていくことが大切である。またこうした地域福祉の学びは生涯学習の視点からも取り組んでいかなけれはならない。
また、時として、地域の人だからこそ、問題を隠しSOSを発することができないこともある。問題が深刻化して初めて表面化することもある。自分の困り事を地域に伝えたり、助けを求められるようになるための福祉教育も大切である。(9ページ)

地域住民、福祉以外の分野に関わる団体や企業の幅広い活動につなげていくため、社会福祉協議会の役割は重要である。特に、ボランティアセンターは、ボランティアを通じたまちづくりのためのプラットホームとなる「まちづくりボランティアセンター」(仮称)へと機能を拡充させて、関係機関と協働していくことについて、検討する必要がある。(19ページ)

〇これらの指摘は、特に新味があるわけでもないが、住民が主体的に地域課題の解決を図るためには、住民に身近な圏域(市町村域等)で、「我が事の意識の醸成」と「地域力と公的支援の協働」を進め、「暮らしと仕事を丸ごと支える」体制づくりが重要となる。それは「地域共生社会」の実現を志向する、と言うのである。
〇今日、住民の地域・生活課題の複合化・複雑化、地域の福祉力・教育力の脆弱化、ボランティア活動の大衆化・官製化などが進んでいる。「変化」に対して不安を感じ、「保護主義」「ファースト」「極(きょく)」という言葉にも懸念がある。そういうなかで、「ボランティア活動はどこへ行くか」「ボランティア・市民活動とは何か」、という素朴な疑問を改めて持つに至る。まちづくりやボランティア活動の次のステージが、人権意識や正義感覚に基づく「主体的・自律的な住民による、下からの、社会的責務としての市民活動」であるとすれば、「ボランティアのいない社会づくり」が進むことになるのだろうか。
〇不安定で先行き不透明な「コト」や「モノ」の今後の方向性については、歴史に学ぶしかない。本稿を草することにしたのはこの点にある。

〇2016年11月5日~6日、東京(国立オリンピック記念青少年総合センター)で、「広がれボランティアの輪」連絡会議(注①)/全社協主催の「ボランティア全国フォーラム2016」が開催された。それは、1992年以来、24年間にわたって開催されてきた「全国ボランティアフェスティバル」(略称・全国ボラフェス)の歴史とその成果のうえに、ボランティア・市民活動の「理解・普及」と、とりわけ「研究協議」を図る「場」として新たに開催されたものである。
〇「全国ボランティアフェスティバル」は、1977年4月に設置された全社協・全国ボランティア活動振興センター(注②)が中心になって開催した「全国ボランティアのつどい」(第1回は1977年11月開催)と「全国ボランティア大会」(第1回は1989年6月開催)を経て、1992年度から毎年、都道府県持ち回り方式で開催されてきた。その主なねらいは、ボランティア活動についての情報交換と活動基盤の強化、活動の活性化を図ることにあった(注③)。
〇本稿のねらいは、「全国ボランティアのつどい」「全国ボランティア大会」「全国ボランティアフェスティバル」そして「ボランティア全国フォーラム2016」について時系列的に、その概要を紹介することにある。具体的な内容や成果に関する歴史的かつ政策論的な検討・評価は他日を期すことにしたい。なお、政策論的検討を行うに際しては、社会福祉事業法(第70条の2第1項)の規定に基づいて1993年4月に策定された「国民の社会福祉に関する活動への参加の促進を図るための措置に関する基本的な指針」(厚生省告示第117号)や、厚生労働省社会・援護局長の私的研究会「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」が2008年3月に纏めた報告書「地域における『新たな支え合い』を求めて」などへの注目や認識が必要であることを付記しておく。
〇そこで先ず、「全国ボランティアのつどい」について、全社協・全国ボランティア活動振興センターによる報告を紹介する。以下の通りである(注④)。
 
〔全国ボランティアのつどい〕
『全国ボランティアのつどい』は、年一回、全国のボランティアや関係者が一堂に会して開かれています。この『つどい』は全国的な活動課題に沿って、その推進方策や展開のあり方などの協議が行われ、将来の活動の方向を探るうえで役割を果たしてきました。
これまでの『つどい』の内容を見てみると、十代のボランティア活動、福祉教育、障害者福祉、在宅福祉、青少年とボランティア、施設とボランティア、まちづくり、など多彩な内容で開催され、それぞれ福祉教育や在宅活動の強化、また青少年層の活動参加やまちづくり活動の取り組みのうえで重要な契機となりました。
その意味でもこの『つどい』は、全国的な課題提起と活動展開の“うねり”をまき起こす重要なものです。
《全国ボランティアのつどい開催状況一覧》
昭和52年度/福祉を語るボランティアのつどい/昭和52年11月27日
昭和53年度/十代のボランティア活動を考えるつどい/昭和54年3月26日
昭和54年度/学童・生徒の福祉を考えるボランティアのつどい/昭和54年8月7日~8日
昭和55年度/障害者の福祉を考えるボランティアのつどい/昭和56年2月21日
昭和56年度/在宅福祉を考えるボランティアのつどい/昭和57年2月26日~27日
昭和57年度/新たな活動の展開を考えるボランティアのつどい/昭和58年2月25日~26日
昭和58年度/青少年のボランティア活動を考えるつどい/昭和59年2月25日~26日
昭和59年度/福祉のまちづくりをすすめる施設とボランティアのつどい/昭和60年3月2日
昭和60年度/全国ボランティアのつどい―福祉のまちづくりをすすめる全国ボランティア活動推進会議/昭和61年2月26日
昭和61年度/全国ボランティアのつどい―福祉のまちづくりをすすめる全国ボランティア活動推進会議/昭和61年12月12日

〇次に、「全国ボランティア大会」について紹介する。大会のねらいは、全国のボランティアが一堂に会して日頃の活動について情報交換を行い、幅広いボランティア活動の活性化を図ることにあった。また、以前の「つどい」は数百人規模のものであったが、規模が拡大され、厚生大臣功労表彰もこの大会で行われることとなった。東京で3回開催され、参加者(延べ人数)は、第1回が1,000名、第2回と第3回がそれぞれ2,000名を数えた。開催期日、会場、プログラム、分科会テーマは以下の通りである(注⑤)。

第1回全国ボランティア大会/平成元年6月24日/東京・九段会館
プログラム/分科会(6)、全体会(オープニング、功労表彰、創設記念〔作文と詩〕入賞作品表彰、特別講演、フィナーレ)
分科会/①ふれあいのまちづくり、②自然とくらし―環境づくりを考える―、③地域文化活動とボランティア活動、④いきがいと健康づくり、⑤子どもの住みよいまちづくりを考える、⑥国際的なボランティア活動

第2回全国ボランティア大会/平成2年6月30日~7月1日/東京・日比谷公会堂、にれの木広場
プログラム/全体会(オープニング、功労表彰、ボランティア活動手づくり作品コンクール入賞、アトラクション)、ふるさとガーデン(模擬店、舞台コーナー、物産店、体験コーナー)、交流会(19)、ボランティア活動手づくり作品コンクール
交流会/①全国ボラントピア事業推進会議、②障害児(者)の自立、③食事・在宅介助ボランティア、④移送・ガイドヘルプ、⑤保健・福祉ケアボランティア、⑥点訳・拡大写本、⑦朗読、⑧手話・要約筆記、➈自然環境ボランティア、⑩災害救助ボランティア、⑪社会福祉施設・ワークキャンプでのボランティア活動、⑫動物とのふれあい、⑬国際交流(国内国外)とボランティア活動、⑭ボランティア連絡協議会、⑮シルバーボランティア、⑯児童生徒のボランティア活動、⑰青年と野外活動、⑱助け合いとボランティア活動、⑲企業・団体とボランティア活動

第3回全国ボランティア大会/平成3年6月15日~16日/東京・日比谷公会堂、にれの木広場
プログラム/全体会(オープニング、功労表彰、ボランティア活動写真パネルコンテスト入賞、アトラクション)、ふるさとガーデン(模擬店、体験コーナー、舞台コーナー)、交流会(12)、ボランティア活動写真パネルコンテスト
交流会/①食事の援助を必要な人と共に―会食・配食ボランティア―、②家庭で援助の必要な人と共に―在宅福祉ボランティア―、③外出・移動が必要な人と共に―運転・外出支援ボランティア―、④専門的ケアを必要な人と共に―保健・福祉、ケアボランティア―、⑤視覚障害の人と共に―視覚障害者ボランティア―、⑥聴覚障害の人と共に―聴覚障害者ボランティア―、⑦いきいきとした人生を歩むために―中高年とボランティア活動―、⑧自分を生かし、たすけあいの心を育てる―児童・青少年のボランティア活動―、➈企業の社会貢献活動―企業市民へのアプローチ―、⑩国境を越えた福祉の手つなぎ―国際ボランティア活動―、⑪誰もが安心してすめるまちづくり―福祉のまちづくり―、⑫ボランティア活動のネットワークを考える―ボランティア連絡協議会―

〇「全国ボランティアフェスティバル」について紹介する。以下は、開催期日、開催県、メインテーマ、分科会(会場・テーマ等の数)について、各大会の「開催要綱」や『報告書』を基本に整理したものである。なお、参加者(延べ人数)は、例えば第1回8万3,200名、第5回5万2,474名、第10回10万270名(最大値)、第15回6万176名、第20回3,847名、第24回2,305名を数えた(第1回~第15回は全体会・分科会・ふれあい広場参加者、第20回と第24回は一般参加者と関係者)。

第1回全国ボランティアフェスティバル「兵庫」/平成4年10月24日~25日/兵庫県
テーマ/こころの架け橋 ひと・ふれあい ボランティア
「こころの架け橋」には、次のことをイメージしています。
①ボランティア活動の基本である「こころ」と「こころ」が通い合うこと。
②今、本土と淡路を結ぶ「本四架橋」の工事が、我が国最大事業の一つとして、平成10年を目指し行なわれている。架け橋が完成したときの社会は、ボランティア活動もより普遍化していること。
③架け橋は、10年ほど前は夢であったが、現在ではその夢が実現しつつある。ボランティア活動も夢をもって行えば、その夢が具現化すること。
分科会/ボランティア活動交流研究会(14会場)

第2回全国ボランティアフェスティバル「福井」/平成5年9月25日~26日/福井県
テーマ/やさしさ ぬくもりのある ふるさと創造
趣旨
多くのボランティアで支えるまちは、やさしさとぬくもりのあるまちです。
いま、全国各地でみんなの住みよい福祉のまちづくりがすすめられ、ボランティア活動に対する関心が高まってきています。
このフェスティバルは、各地でくり広げられている様々なボランティア活動の経験を持ち寄り多くの人々と交流し、ボランティア活動の輪をひろげる契機とすることを目的として開催するものです。
分科会/ボランティア活動交流会(21会場)

第3回全国ボランティアフェスティバル岩手/平成6年10月15日~16日/岩手県
テーマ/幸せづくり イーハトーブ見つけた
趣旨
多くのボランティアでささえるまちは、やさしさとぬくもりのあるまちです。
いま、全国各地でみんなの住みよい福祉のまちづくりがすすめられ、ボランティア活動に対する関心が高まってきています。
このフェスティバルは、各地でくり広げられている様々なボランティア活動の経験を持ち寄り多くの人々と交流し、ボランティア活動の輪をひろげる契機とすることを目的に開催します。
分科会/交流集会(19会場)

第4回全国ボランティアフェスティバル長野/平成7年11月3日~4日/長野県
テーマ/みすずかる信濃の里から やさしさの風を
開催趣旨
多くのボランティアで支えるまちは、やさしさとぬくもりのあるまちです。
いま、全国各地でみんなの住みよい福祉のまちづくりの取り組みがすすめられる中で、「阪神・淡路大震災」を契機に、ボランティア活動に対する関心がますます広がっています。
さらに、長野県では、オリンピック、パラリンピックが開催されることから、ボランティア機運が高まりつつあります。
第4回全国ボランティアフェスティバルは、各地でくり広げられている様々なボランティア活動、「阪神・淡路大震災」に凝縮されたボランティア活動等の経験を持ち寄り、新しいボランティア活動の輪を広げる契機とすることを目的に開催します。
分科会/ボランティア研究集会(30会場)

第5回全国ボランティアフェスティバル大阪/平成8年9月21日~22日/大阪府
テーマ/新発見 ボランティアロード なにわから
開催趣旨
人とのふれあいや社会に役立ちたいという気持ちから、ボランティアは始まります。
住みやすく、あたたかな地域社会を求めて、今、各地でボランティア活動の輪が広がっています。また、ボランティア活動に参加することによって、自分自身の何かが変わります。
昨年1月の阪神・淡路大震災では、延べ140万人にのぼる人々がボランティアとして活躍し、そのなかには、初めて活動に参加するという人も数多く見られました。多くの人々がボランティアを身近に感じ、「ボランティア元年」という言葉も生まれました。そして、ボランティアはこれからの社会になくてはならないものであるという、新しい意識が国民の間に広まっています。
全国ボランティアフェスティバルは、さまざまなプログラムを通じて、ボランティア活動への理解と参加をアピールし、全国でボランティア活動が一層盛んになることをめざしています。
大阪では、昨年11月の「APEC大阪会議」をボランティアの協力で盛り上げました。来年には「なみはや国体(第52回国民体育大会)」や「ふれ愛ぴっく大阪(第33回全国身体障害者スポーツ大会)」を控え、ボランティアへの関心が高まっています。
第5回全国ボランティアフェスティバル大阪は、このようなボランティアに対する関心の広がりと高まりのなかで、「挑戦と創造」、「自由と多様性」、「であいとふれあい」を基本姿勢として、市民の方々や全国のボランティア、社会貢献活動を繰り広げる企業や労働組合などの参加を得、さらにボランティアの輪が大きく広がっていくことを願って開催されます。
文化が往き来したシルクロードになぞらえて、新しいボランティアの姿を、街と街、人と人を結ぶボランティアロードに乗せて、今、大阪から発信したいと思います。
分科会/テーマ別の集い(32会場)、5講座

第6回全国ボランティアフェスティバルやまぐち/平成9年10月18日~19日/山口県
テーマ/つたえたい ボランティアのハート みんなちがって みんないい
開催趣旨
人と人が支えあい、生き生きと息づき、だれもが安心して暮らせるぬくもりのあるまちづくりこそ、ボランティア活動のめざすものです。
一昨年の阪神・淡路大震災及び今年の重油流出事故では、ボランティアが活躍し、多くの人々がボランティア活動を身近に感じ、国民のボランティア活動への関心と理解が広がっています。
さらに、企業や行政機関等でボランティア休暇制度の創設が行われ、勤労者のボランティア活動への参加機運が高まっています。
社会福祉協議会のボランティアセンターが把握しているボランティアは、全国で6万3千グループ、505万人になっています。
全国ボランティアフェスティバルは、多様なプログラムを通して国民にボランティア活動への理解と参加をアピールし、今後ボランティア活動が全国各地で一層盛んになることをめざしています。
第6回全国ボランティアフェスティバルやまぐちでは、「つたえたい ボランティアのハート みんなちがって みんないい」をテーマに、個性を認めあいながら、互いの人格を尊重することを基調とした、ふれあい、やさしさ、学びあいのボランティア活動を呼びかけます。
ボランティア活動に関心のある人々や、日頃からさまざまな活動に参加している人々並びに参加したことがある人々が、ボランティア活動への理解をすすめ、経験や情報の交換を通して、ボランティア活動の広がりや多様性を知りあうことによって、新たなボランティア活動へ踏み出すきっかけとなること、さらにボランティアの輪、愛の輪が21世紀に向かい、大きく広がっていくことを願って開催します。
分科会/テーマ別のつどい(30会場)

第7回全国ボランティアフェスティバル山形/平成10年9月26日~27日/山形県
テーマ/人がすき 自然がすき 愛かがやいてボランティア・・・いま 豊かな流れを山形から
開催趣旨
全国ボランティアフェスティバルは、全国各地で繰り広げられている様々なボランティア活動の経験を持ち寄り、多様なプログラムを通じて多くの人たちが交流することにより、ボランティア活動の輪を広げていくための契機として開催されるものであり、今年で7回目を迎えます。
阪神・淡路大震災以降、国民のボランティア活動への関心と理解がますます高まったと言われています。その根底には、環境汚染の地球規模での広がりや、かつて経験したことのない速さで少子・高齢化が進むなかで、自分たちが暮らす社会をより良くするためには、一人ひとりが何らかの形で社会にかかわっていかなければならないとする、人間の本質的な心のはたらきがあったものと考えられます。
ボランティア活動も、社会福祉の分野だけにとどまらず、環境や教育・文化、国際協力など多岐にわたる分野で実践されており、大きな関心と期待が寄せられています。
この動きに合わせ、今春には、「特定非営利活動促進法」いわゆるNPO法が成立し、新しい社会セクターとしてのボランティア活動に対する支援策が整備され、参加型社会の実現に向けて、大きな第一歩を踏み出したといえます。
山形県においても、県民参加・交流型社会の実現に向けた取り組みに着手し、「参加」「交流」「創造」をキーワードとして、多様で自立した地域社会の創造を図るための取り組みを進めています。
山形の母なる川「最上川」は、清らかな水のひと雫に端を発し、出羽の山々から天の恵みを集め、大きな流れとなって大地を貫き、四季に彩られた実り豊かなくにをかたちづくっています。
「第7回全国ボランティアフェスティバル山形」は、この最上川のうねりのように、多様な“個”が交流し、手をつないでいくことによって、真の豊かさが実感できる社会づくりに向けた大きな力となることを願って開催します。
分科会/テーマ別のつどい(32会場)、2ワークショップ

第8回全国ボランティアフェスティバルみやざき/平成11年10月23日~24日/宮崎県
テーマ/来(こ)んね いっちゃが 仲間じゃが!! 小さな輪 大きく広げるボランティア
開催趣旨
少子高齢化や国際化、高度情報化の急速な進展に伴い、人々が支え合い安心していきいきと暮らせる社会づくりやボランティア活動への関心は年ごとに高まり、住民参加による活動や企業の社会貢献活動等がかつてないほど広がりを見せています。
一方、特定非営利活動促進法(NPO法)等の施行や、昨年の栃木県、高知県などの風水害時におけるボランティアの活躍により、ボランティアやNPO活動に対する社会的期待が大きく膨らんできています。
このような期待に応え、ボランティア活動がわが国の社会と私たちひとり一人の日常生活の中に定着していくためには、ボランティアセンターとボランティアコーディネーターの整備、豊富な情報システムなど意欲と活動を結びつける環境整備が求められています。
人々が活動を通して自己実現を図るとともにお互いを認め合い、支え合い、温もりを大事にしたみんなで参加してつくる「共生」社会は、誰もが望むところです。
「第8回全国ボランティアフェスティバルみやざき」は、九州では初めての開催で、全国からボランティア活動に関心のある人、日頃ボランティア活動を実践している人々が集い、『来(こ)んね いっちゃが 仲間じゃが!! 小さな輪 大きく広げるボランティア』をテーマに、ボランティアプラザやテーマ別のつどい等を通して情報を交換し、交流を図ります。
このフェスティバルは、『体験・交流・楽しさ・多彩・手づくり・広がり・親子孫三世代』をキーワードにして、「ボランティア相互の交流促進」と「誰もがボランティア活動に参加できる気運づくり」を通して21世紀に向けて心豊かな地域社会づくりをめざしてのボランティア活動の輪が大きく広がっていくことを願って開催します。
分科会/テーマ別のつどい(38会場)

第9回全国ボランティアフェスティバルとくしま/平成12年9月23日~24日/徳島県
テーマ/藍・あい・愛 渦になれ 輪になれ ボランティア
開催趣旨
近年ボランティア活動に対する社会的な関心はますます高まりを見せ、その活動も福祉・保健、教育、まちづくり、環境保全、国際協力、災害救援などあらゆる分野に広がっています。
一方、特定非営利活動促進法(NPO法)に基づく法人格の付与や、また、2001年ボランティア国際年が一つの契機になり、各地でボランティアをはじめとする民間非営利団体の活動を促進するための環境整備が図られています。
新しい世紀の私たちの暮らしを心豊かにするために市民、企業、行政が協働し合い、社会貢献・ボランティア活動をなお一層広げ福祉コミュニティづくりと参加型社会づくりに取り組むことが課題となっています。
藍のふるさと徳島は、ボランティアセンターの前身である善意銀行の発祥の地として知られ、福祉教育の原点でもある子供民生委員制度や、もてなしの風土など先人が築かれた良き伝統を生かしながら、21世紀に向けて豊かな社会づくりの取り組みを進めています。
「第9回全国ボランティアフェスティバルとくしま」は、地域の特性をいかし県民をあげての開催とするために、県内各地での分散型で開催します。
ボランティア活動に関心のある方々や日ごろボランティア活動を実践している多くの方々が全国から集い、「出会い」、「ふれあい」、「助け合い」の心を広げるとともに、鳴門の渦のように多くの人を巻き込んで、阿波踊りのようなパワーあふれる輪になって、共生社会を創りあげる契機となるよう願って開催します。
分科会/テーの別のつどい(39会場)

第10回全国ボランティアフェスティバルかながわ/平成13年9月22日~23日/神奈川県
テーマ/いいじゃん かながわ 一人ひとりがひらく ボランティアの世紀
開催趣旨
人口の高齢化や少子化、生活と環境との調和、世界規模での人や情報の流れなど、変化する私たちの社会は、たくさんの課題に直面しています。
こうした課題に、市民自らが取り組む様々な活動が大変活発になりつつあり、身近な問題から地球規模の課題まで、解決に向けて主体的に関わり行動するボランティア活動が、「共生の社会」の新しい担い手として期待されています。
かながわは、近代日本が開かれる窓口となった歴史を持ち、世界に開かれた交流の拠点として発展してきました。この進取の気風に満ちた県民性が、かながわの多彩なボランティア活動を育み、社会福祉、国際協力、環境問題、災害救援、人権擁護、まちづくりなど様々な分野で先進的な活動が活発に展開されています。
2001年は新しい世紀のスタートの年であり、世界中がボランティア活動への理解を深め、参加を容易にし、ネットワークを強化することなどをめざす「ボランティア国際年」(IYV)です。
この記念すべき年に開催される「第10回全国ボランティアフェスティバルかながわ」は、これまでのボランティアフェスティバルで積み重ねられた成果と精神を継承し、一人ひとりの主体性からボランティア活動が始まるという原点に立ちながら、ボランティア活動が直面する今日的な課題や今後の方向性などを語り合い、理解と交流を深め、21世紀の市民社会づくりに向けた新しいとびらをボランティアの手でひらく大会として開催します。
分科会/テーマ別のつどい(51会場)

第11回全国ボランティアフェスティバルやまなし/平成14年9月21日~22日/山梨県
テーマ/よっちゃばれ 甲斐へ 生(い)き活(い)きと つなげよう ボランティアの心(おもい)
開催趣旨
21世紀幕あけの年、2001年「ボランティア国際年」の取組みが、世界で、日本で繰り広げられました。人びとが当たり前のようにボランティア・市民活動に参加できる社会、世界が平和で共生できる世紀の実現をめざし、力強い歩みが開始されました。
「人は石垣、人は城」という人と人との連帯感を重視し、ボランティア活動をすすめてきた、山紫水明の地やまなしにおいて、「第11回全国ボランティアフェスティバルやまなし」が開催されます。
ここで、全国のボランティア・市民活動に関心のある人、また活動を実践している人びとが県民と交流を深め、テーマ別のつどいなど多様なプログラムを通じて、熱いボランティアの心(おもい)を、生き活きとつなぎあわせることを願っています。
そして、山梨の「県民ボランティア運動」がすすめてきた、市民・企業・行政が各々の役割を果たし、ともに支えあい、結びあい、主体的に地域社会を築いていく活動が全国に広がることをめざします。
山梨県を訪れた人びとが、地域の伝統や文化、また地場産業との活発な交流を図り、感動が広がり友情が深まる大会として開催します。
分科会/ブロック別開催(県内6ブロック、48プログラム)

第12回全国ボランティアフェスティバルいしかわ/平成15年10月11日~12日/石川県
テーマ/来まっし石川 つなげよう心の輪 あんやとね あったかボランティア
趣旨
近年ボランティア・市民活動への関心が高まり、活動分野も福祉から教育、環境、国際、そしてまちづくりなどへと広がっています。
今やボランティア活動に参加経験のある人は、国民のほぼ3割、継続的に活動するボランティアは約740万人を数えています。また、市民活動の特徴ともいえるNPO法人も、全国で1万法人を超え、確実に増加しています。
このような活動は、個人や地域、文化の多様性を尊重し、誰もが希望をもって暮らしていくことができる共生社会を目指しているものといえます。
「第12回全国ボランティアフェスティバルいしかわ」の開催地である石川県は、美しい自然や加賀百万石の歴史の中で培われた伝統と文化を持ち、福祉分野でも昭和初期から地域の助け合い活動を推進した善隣館という地域活動の拠点が今も息づき、ボランティアやまちづくりの拠点として活動を続けています。
このフェスティバルでは、石川県が目指す「個性、交流、安心のふるさとづくり」を、全国から集うボランティア・市民活動を実践している人々や関心のある人々に伝え、情報交換や交流を深めることで、全国にボランティア活動への理解と活動の輪を広げます。
分科会/ブロック別開催(県内8ブロック、39テーマ)

第13回全国ボランティアフェスティバルびわこ/平成16年9月25日~26日/滋賀県
テーマ/湖国から 広がる笑顔 地域のきずな
趣旨
「第13回全国ボランティアフェスティバルびわこ」の開催地である滋賀県では、『人と地域が輝く「くらし安心県」の創造と実現』を基本目標に、人が大切にされる県、人間らしさ、自分らしさが尊重され、お互いの権利を認めあい、共に支えあう希望と活力ある福祉社会の実現をめざしています。
また、糸賀一雄氏を中心にして設立された近江学園は、知的障害のある人の発達保障、さらには人権と個性を尊重する県民意識の醸成にまで影響を与えてきました。
こうした歴史を背景として、県内各地域では、ノーマライゼーションの理念の実現に向けた各分野でのボランティア・市民活動の取り組みがみられます。
また、全国的なボランティア活動の広がりの中からも、NPOや各種市民活動の取り組みや協働の輪が各地で着実に広がってきています。
このフェスティバルを共生社会への「きづき」「きっかけ」「きずな」の場として捉え、人がほほえみ、地域がほほえみ、社会がほほえむ、そこに安心が生まれる、「共に生きるよろこび」を全国に発信する機会となることを期待して開催します。
分科会/テーマ別のつどい(県内3ブロック、40テーマ)

第14回全国ボランティアフェスティバル火の国くまもと/平成17年10月29日~30日/熊本県
テーマ/燃えよボランティア 火の国の集い 熱(あつ)か心わがまち
開催趣旨
私たちの社会は、世界規模の問題から日常生活の問題まで多くの課題に直面しており、その解決に向けて多くのボランティアが活躍し、今後、その活躍がますます期待されています。
ここ火の国くまもとは、阿蘇や天草に代表される美しい自然を背景に、これまでボランティアの歴史を積み重ねてきました。
これらは私たちの誇りとするところであり、その精神を継承しユニバーサルデザインを基本理念として、パートナーシップによる、より良い熊本づくりを目指して行きたいと考えます。
現在、ボランティア活動は保健、医療、福祉、教育、環境問題、災害救援、地域づくり、国際協力など多くの分野で活発に取り組まれています。
私たちは、一人ひとりの活動を豊かにして、誰もがボランティア活動を行い、誰もが必要とするサポートを受けられるような地域社会の実現を目指し、「第14回全国ボランティアフエスティバル火の国くまもと」を開催いたします。
分科会/テーマ別のつどい(県内6ブロック、41テーマ)

第15回全国ボランティアフェスティバルぐんま/平成18年11月3日~4日/群馬県
テーマ/笑顔のかけ橋
開催趣旨
現代社会は、急激に進行している少子・高齢化、国際化や高度情報化による社会経済情勢の変化等、様々な課題を抱えております。
また、人々の生活スタイルや社会的ニーズも多様化してきており、心の豊かさや生きがいのある生活、自己実現にもつながる社会貢献活動などに多くの人の関心が向けられ、多様なボランティア、市民活動が行われており、新たな地域社会の担い手として、その活躍がますます期待されております。
ここ群馬県は、上信越国境に連なる山々とそこを源とする利根川に代表される美しい自然に恵まれ、いにしえより豊かな文化を育み、早くから尾瀬を守る活動に取り組むなど、ボランティアの歴史を積み重ねてきました。
多くの人があたりまえのようにボランティア・市民活動を行い、「ひとと人、こころと心がつながり合う」地域社会を創造するため、「第15回全国ボランティアフェスティバルぐんま」を開催いたします。
分科会/テーマ別のつどい(県内5ブロック、46テーマ)

第16回全国ボランティアフェスティバルあいち・なごや/平成19年9月22日~23日/愛知県
テーマ/愛を知り 夢を育む ボランティア
開催趣旨
今日の社会では、多発する災害、児童虐待やいじめ問題等、分野を問わず様々な問題を抱え、ボランティア・市民活動への関心と期待は高まるばかりです。
また、2007年は、多くの団塊の世代の方々にとって新たなスタートの年でもあり、生きがいのある人生を送るための手段としても、ボランティア・市民活動は注目されています。
ここ愛知県では、2005年に開催された愛知万博で、延べ15万1千人ものボランティアが活躍されるなど、多くの県民にボランティア・市民活動への意識が高まったところです。
この機運を継承するためにも、安心・安全なまちづくり等、今日的な課題に応えた地域性あふれるプログラムや、新たなボランティア・市民活動のあり方を発信していくことを基本に「愛を知り 夢を育む ボランティア」をメインテーマに掲げ、「第16回全国ボランティアフェスティバルあいち・なごや」を開催いたします。
分科会/テーマ別のつどい(県内6ブロック、52テーマ)

第17回全国ボランティアフェスティバルにいがた/平成20年9月20日~21日/新潟県
テーマ/ボランティア 深まるきずなに トキめいて
大会趣旨
少子化・高齢化の進展や社会の成熟化により、社会的課題が複雑多様化する中で、地域の問題を自らの課題として主体的に取り組むボランティアの役割に対する期待が高まっており、その活動分野は、福祉、環境、教育、まちづくり、国際交流など、身近な活動から国際的な活動まで様々に広がっている。
ボランティア活動は、特定の人だけが行うものではなく、誰もが地域社会の一員であることを心に留め、一人ひとりが社会のこれからを想い行動することが求められており、そのことが、共につくる心豊かな社会の創造につながるものと考える。
たび重なる災害に見舞われた新潟県で、その経験を踏まえつつ、日常的なボランティア・市民活動のあり方を幅広く考え、議論を深める場とするため「第17回ボランティアフェスティバルにいがた」を開催する。
また、次代を担う子どもたちにボランティアの意義を理解してもらい、将来的な視点でのボランティアの掘り起こしに取り組むとともに、ボランティア活動の即戦力として、団塊の世代をはじめとしたシニア層のボランティア活動への関心や意欲を高め、行動につなげる取り組みを行う。
分科会/22テーマ

第18回全国ボランティアフェスティバルえひめ/平成21年9月26日~27日/愛媛県
テーマ/しみいるチカラ! 愛媛から
大会趣旨
これまでのボランティア・市民活動を振り返りながら、誰もが安心・安全に暮らせる社会づくりを実現させるために必要な、これからのボランティア・市民活動について理解を深め合う。そして、活動の充実・創出・持続を目指すとともに、多くの人々に活動の大切さを愛媛から発信する。
分科会/31テーマ

第19回全国ボランティアフェスティバルひろしま/平成22年9月25日~26日/広島県
テーマ/つながる民力 いかしあう民力
趣旨
これまでの活動分野の枠をこえて、新たな地域課題に対応していくための協働を探り、支え合いの新たなしくみや手法による活動を興し、さらにはその活動をどのようにつなぎ、後継者へ伝えていけばよいのかについて議論をすすめる。
また、これからのボランティア活動・市民活動がより力強く進められ、地域で暮らす、誰もがどんなときにでも気にかけ合い支え合う”新しい力”を広島から全国に発信する。
分科会/22テーマ

第20回全国ボランティアフェスティバルTOKYO(「ボランティア国際年+10」記念)/平成23年11月12日~13日/東京都
テーマ/市民(わたしたち)がつくる、強くしなやかな社会
コンセプト
・ボランタリーな活動の本質・原点とは
~ボランティアフェスティバルが始まっての20年を振り返る~
この20年にあった様々な動きのもと、変化を遂げてきた“ボランティア”の考え方。そもそもボランティアとはどういうものか。これからのボランティアの役割やあり方を考える。
・江戸から学ぶ、「東京」らしさ
時代の移り変わりの中でいま一度、「東京」らしさや特色に焦点を当てる。持続可能な都市であった「江戸」や「江戸しぐさ」、古いものと新しいものとの融合といった部分、また、地方との役割、島嶼(とうしょ)との関係、国際都市としての東京なども捉えていく。
・これからの「つながり」のあり方
地縁型のものやテーマ型のものなど、地域には様々なつながりが存在している。しかし、今、つながりが薄れ、様々な課題が生じている。愛媛、広島と続く「チカラ」。今、どのようなつながり方が求められているのか、つながりの原点とは何か、そしてつながりが生む「チカラ」について考える。
・市民の社会参加におけるあるべき姿
市民の社会参加という言葉を聴くことが多い。誰しもが地域に関わることが求められているのではないか。その様々なあり方について考える。
主旨文
3月11日、私たちはたくさんのものを失いました。
しかし、震災の痛みの中で、人と人とのつながりで動くボランティアが、この苦難を乗り越える力として大きく役立っていることも日々感じています。
そして、今までよりずっとずっとたくさんの人が、「私は今後、社会とどう関わっていけばいいのだろう」と考え、動き始めています。
これからの社会をより強く、しなやかで、暮らしやすいものに
今、ボランティア活動をしている人は、新しい仲間をみつけたり、普段疑問に思っていることが解決できるかもしれません。また、これからボランティアについて考えたい人は、自分らしい関わり方をみつけることができるかもしれません。
ひとりひとりが自分らしさを大切にして、様々なかたちでボランティアに関わっていくことが、これからの社会をより強く、しなやかで、暮らしやすいものにするんだ、全国ボランティアフェスティバルTOKYOは、そんな発見ができる2日間にしたいと考えています。
分科会/56テーマ、7フィールドワーク

第21回全国ボランティアフェスティバルみえ/平成24年9月29日~30日/三重県
テーマ/三重からみえる 未来の絆
コンセプト
・東日本大震災をうけ、再確認された地域社会のつながりの重要性
2011年3月11日に発生した東日本大震災は未曽有の大災害となった。1年以上経過した今でも、復興への道のりはまだまだほど遠いと言える。
しかし、私たちは支えあい、その逆境に打ち勝つ「絆」の大切さにも気づくことができた。
社会を支える絆を強く結び、そこから生まれる力を三重大会から発信していきたい。
・「これまで」を「これから」へ
近年の大会では、多様な社会課題を解決し、地域社会・市民社会を創造していくボランタリーな力に焦点があてられてきた。また、東京大会では第20回大会という節目で、20年を振り返り、ボランタリーな活動の本質・原点をあらためて考える機会となった。
三重大会では、そのような過去からの成果や課題をこれからの「未来」につなげていくことが重要であると考える。
三重大会を通して、一人ひとりが社会をつくる市民としての力を高め、未来へとつながる絆を創っていくことを目指したい。
分科会/30テーマ

第22回全国ボランティアフェスティバル高知/平成25年11月23日~24日/高知県
テーマ/時代を拓く 市民力(シチズンパワー)ぜよ
開催趣旨
近年、人と人とのつながりが薄れつつあるなかで、多くの人たちが改めて人のつながりの大切さに気づき始めています。私たちは、本当の意味で豊かで暮らしやすい社会を目指していくためには、ひとりひとりが様々なかたちでボランティア・市民活動に参加し、市民の力を高めていかなければならないと感じています。
近代日本の扉を開いた志士たちのふるさと、高知で開催する「全国ボランティアフェスティバル高知」では、市民力を持った参加者の皆さん同士がつながり、その市民力が新たな時代を拓く、その息吹を感じることができる大会にしたいと考えています。
分科会/23テーマ、1フィールドワーク

第23回全国ボランティアフェスティバルぎふ/平成26年9月27日~28日/岐阜県
テーマ/おいでよ志(みんな) 大地(ちいき)を潤す 清流となって
コンセプト
・私達を取り巻く現状
人口の減少・少子高齢化・世帯構成の変化、廃屋・放置農家・手が入らない山林・シャッター街の増加など、今後ますます共同体の破壊や伝統文化の衰退が進んでいく危険性がある。また、「孤立」、経済の低迷や雇用形態の変化等による「貧困」が社会的な問題になっているとともに、虐待、自殺、いじめなど「権利侵害」にかかる様々な問題も起こっている。
・わたしたちは何をめざすか
こうした、深刻化する現代社会の問題を直視し、課題を明らかにして、市民自ら実践、そして多世代・多地域・他分野との連携・協働による取り組みを行いながら、地域における問題解決能力を向上していくことが重要である。
このフェスティバルでは、各地域での実践や活動者の想いを「一粒の水滴」としてとらえ、岐阜に集い(研究協議することにより)、個々の活動を向上させるとともに、協働化(ネットワーク)することにより(大きな流れを生み)、その結果、豊かな地域社会づくりへとつながる(この実績の繰り返しを「歴史」と呼ぶ)。
こうした「清流」の力を確認し(清流となって)、「地域力」を高める方策を学び、全国に発信する。
・地域力の再構築
多世代・多地域・多分野との連携・協働
地域課題を基盤にした実践力を高める教育
歴史・文化・自然などの再発見・発掘と伝承
分科会/26テーマ、3フィールドワーク

第24回全国ボランティアフェスティバルふくしま/平成27年11月21日~22日/福島県
テーマ/“ありがとう” 未来につなごう ふくしまから
コンセプト
(1)全国のボランティアのみなさまへの感謝
東日本大震災以降、ご支援いただいている全国のボランティアの皆さまに「ありがとう」の気持ちを表すとともに、「ありがとう」の言葉が持つチカラ、ボランタリーな活動の原点を再確認する。
(2)復興に向けた取り組みのあり方を考える
東日本大震災以降、様々な復興支援の取り組みが行われているが、今、そして今後どのような取り組みが求められているのかを考える。
(3)未来へつなげる
現在の福島県の状況や東日本大震災での経験を風化させることなく未来につないでいくとともに、震災の経験を踏まえ、新しい社会づくりにつなげていく。
分科会/20テーマ、2フィールドワーク

〇「全国ボランティアフェスティバル」の主催は「全国ボランティアフェスティバル推進協議会」(第1回~第17回。第18回以降は地元実行委員会が中心)であった。その全国段階の構成団体は当初、全社協、中央共同募金会、日本赤十字社の3団体であった。また、後援団体は厚生省、文部省、社会福祉・医療事業団であった。それゆえに、「社協関係のボランティアフェスティバルという傾向があった」(注⑥)と言われる。第4回から「広がれボランティアの輪」連絡会議が後援団体に加わり、第18回からは主催者の一員になっている。それにより、第4回以降は、30以上、40から50前後の分科会(会場、テーマ)が設定されることとなる。それは、ボランティアの活動領域の拡張と多様化、課題認識の進展を意味する。その背景には、国(厚生省、文部省等)によるボランティア政策の推進があった。そういうなかで、行政や活動支援組織の「補完」「代替」そして「動員」などによる「ボランティア管理」(注⑦)が指摘されることにもなる。
〇なお、上に記した各大会の開催趣旨文からキーワード(初出時)を拾い上げると、例えば次のようになる。「やさしさ」「ぬくもり」「福祉のまちづくり」(第2回)、「ボランティア元年」「社会貢献活動」(第5回)、「ボランティア休暇制度」(第6回)、「NPO法」「参加型社会」(第7回)、「NPO活動」「共生社会」(第8回)、「ボランティア国際年」「市民社会づくり」(第10回)、「ボランティア・市民活動」(第11回)、「ノーマライゼーション」(第13回)、「ユニバーサルデザイン」(第14回)、「安心・安全なまちづくり」(第16回)、がそれである。
〇「1990年代に『ボランティア』は政策・言説・制度のレベルで、未曾有の隆盛期を迎えた」(注⑧)と言われる。2000年代に入ると、「新しい公共」「市民社会」「協働」「NPO」などの言葉が多用される。そうした時代背景や状況のなかで、「やさしさ」「ぬくもり」あるいは「自己実現」のボランティアは、それを自明の前提としながら「社会参加」「市民活動」のボランティアに移行する。とりわけ1998年12月に「特定非営利活動促進法」(NPO法)が施行されると、「ボランティア」に替わって「NPO」という言葉が大きく注目されることになる。そしていま、政策的かつ実践的に活動領域の急速な拡張が図られるなかで、改めて、新しい視点・視座からボランティア・市民活動の社会的位置づけや役割・機能が問われてきている。「ボランティア全国フォーラム2016」のテーマ「ボランティア・市民活動の未来をみすえる」が含意するところであろうか。ただ、新たな「ボランティア管理」や「ボランティア活動の統制」だけはご免(めん)こうむりたい。それは、ボランティア・市民活動の主体性や自律性、批判性や変革性などの性格を変質させたり、活動そのものを否定することになる。
〇最後に、「ボランティア全国フォーラム2016」の概要を示しておく。参加者はスタッフを含めて547名を数えた。

ボランティア全国フォーラム2016/平成28年11月5日~6日/東京都
テーマ/ボランティア・市民活動の未来をみすえて
趣旨
現在、多発する災害における被災者支援や、介護保険制度・生活困窮者自立支援制度等の国の新しい制度改革に伴い、ボランティア・市民活動に対する関心が高まっています。
一方で、地域の生活課題や個人、家族の福祉ニーズが多様化・複雑化・深刻化してきている状況下では、ボランティア・市民活動の「理解・普及」に加え、ボランティア・市民活動を分析的に協議し、また情報共有する場が必要かつ重要です。
そこで、ボランティア・市民活動を地域で牽引していく団体や個人の方々の全国的な実践交流、情報共有・相互研鑽の場となることを目的に、「研究協議」の要素に重点をおいたボランティア全国フォーラムを今年度から新たに開催します。
本フォーラムでは、「ボランティア・市民活動の未来をみすえる」をテーマに、第1日目ではボランティア・市民活動の変遷、今、そしてこれからを全体で共有し、2日目の分科会の5つテーマにつなげます。2日目の分科会では、5つのテーマ(①協働、②福祉教育・市民教育、③財源、④グローバル、⑤ユース)を主軸として、先駆的な事例などを発信しながら、今課題になっていること、それを解決するための手法などについて各分科会で共有します。最後に分科会の登壇者によるトークセッションを行い、企画意図なども併せて見ていくことで別視点から分科会を紐解きます。
過去24年間にわたり開催してきた「全国ボランティアフェスティバル」は「ボランティア全国フォーラム2016」に引き継がれました。
分科会/①まちの元気はみんなでつくる~多様な協働が生み出す地域力~、②ボランティアへのやる気を起こす“スイッチ”を探そう~福祉教育・市民教育の視点から考える~、③非営利組織を育てる財源について考えよう~出し手と受け手の「思い」をひとつに~、④グローバル社会におけるボランティア活動~日本から世界、そして日本へ~、⑤Youth Empowerment~ユースのパワーを社会に~


①「広がれボランティアの輪」連絡会議は、あらゆる国民が「いつでも、どこでも、誰でも、楽しく」ボランティア・市民活動に参加できるような環境づくり、気運づくりを図る目的で、全国的なボランティア・市民活動推進団体や学校教育・社会教育関係団体、青少年団体、協同組合、労働団体、マスコミ系社会事業団等によって1994年6月に結成された。ボランティア・市民活動への全国的な参加よびかけ、ボランティア・市民活動のあり方に関する懇談会やシンポジウム、フォーラムの開催、提言活動等の広報・啓発活動を推進している。事務局は、全社協/全国ボランティア・市民活動振興センターが担当している(「広がれボランティアの輪」連絡会議ホームページより)。
②1975年8月に設置された中央ボランティア・センターを改組・強化して再発足した。初代所長は木谷宣弘。2010年4月に、現在の全国ボランティア・市民活動振興センターに名称変更した。
③「全国ボランティアフェスティバル」の最後の大会となった「ふくしま大会」では、開催に当たって、「全国ボランティアフェスティバルの目的」について次のように記している(福島県社協ホームページより)。それは一面では、24年にわたる開催(経緯や経過、事情や背景)を通じて収斂され、明確化されたものであり、また今後の課題でもあると言えよう。
全国ボランティアフェスティバルの目的
(1)ボランティア・市民活動に関する全国的な情報交換・研究協議の促進
・全国各地からの参加者による情報交換・研究協議を通じた全国的な活動の現状・課題の相互確認と今後の各地域における活動充実・強化への寄与
・関係者(団体間・実践者間・研究者間等)の交流を通しての全国的な実践交流・研究交流の関係強化
(2)開催都道府県のボランティア・市民活動推進基盤の強化等
・開催プロセスを通じた実行委員会構成団体や各事業企画運営者間のネットワーク強化
・運営・参加関係者の情報交換、研究協議、交流等による県内実践活動の充実強化
・幅広い県民へのボランティア・市民活動のPR効果(理解と参加の促進)、運営ボランティア参加を契機とした活動者の広がり等
・地元への経済効果(宿泊滞在、地元物産展示・販売、観光等)
④『ボランティア活動10年のあゆみ―全国ボランティア活動振興センター10年史―』全社協、1988年3月、20~21ページ。
⑤『ボランティア活動年報〔1989〕〔1990〕〔1991〕』全社協・全国ボランティア活動振興センター、1989年版/1990年3月、116~118ページ、1990年版/発行年不明(1991年3月?)、137~143ページ、1991年版/1992年3月、145~149ページ。
⑥『全国社会福祉協議会百年史』全社協、2010年10月、454ページ。
⑦岡本栄一「ボランティア活動の歴史的考察―時代の変遷からその意義を問う―」『社会福祉研究』第112号、鉄道弘済会、2011年10月、65~73ページ。
⑧仁平典宏『「ボランティア」の誕生と終焉―〈贈与のパラドックス〉の知識社会学―』名古屋大学出版会、2011年2月、419ページ。

附記
①本稿のタイトルに記している、全国ボランティアフェスティバルの24年間の参加者総数「101万人」については、〈1〉『全国社会福祉協議会百年史』全社協、2010年10月、339ページに掲載されている第1回から第17回までの参加者数(全体会・分科会・ふれあい広場参加者)、〈2〉「地域福祉・ボランティア情報ネットワーク」(全社協ホームページ)にアップされている第18回から第23回までの参加者数(第18回は全体会・分科会・ふれあい広場参加者、第19回~第23回は一般参加者・関係者)、〈3〉『第24回全国ボランティアフェスティバルふくしま 報告書』2016年3月、2ページに記されている参加者数2,305名、を合計したものである(延べ101万721名)。
②2016年12月に公表された「地域力強化検討会」の「中間とりまとめ」をめぐって、原田正樹先生(日本福祉大学)から次のようなコメントをいただいた。先生のいつもながらの心遣いに感謝し、紹介しておくことにする。

「中間とりまとめ」に対する私の見解は、『月刊福祉』2月号(※1)にまとめておきました。ご高覧いただければ幸いです。基本は、2008年の「地域福祉のあり方」報告(※2)ですので、枠組みは変わっていません。ただ「国民の社会福祉活動への参加の指針」(※3)は、そろそろ変えなければいけないと思っています。1993年から一度も見直されていないのですから。とはいえ全国ボランティアフェスティバルも、ボランティア推進7カ年計画(※4)も、この指針が背景にあったわけですから、政策との関連を見ておかないといけないと思います。全国ボランティアフェスティバルも、事務局体制の変遷を見ておくことが重要だと思います。まして皇室が参列していたボランティアフェスティバルとは何だったのか。いずれ歴史的な評価が為されると思います。この極めて「日本的なボランティア」が、どのように発展していくのか、そこが福祉教育・ボランティア学習の意義にもつながると思います。

※1 原田正樹「地域共生社会の実現に向けて」『月刊福祉』第100巻第2号、全社協、2017年2月、42~47ページ。
※2 『地域における「新たな支え合い」を求めて―住民と行政の協働による新しい福祉―』(これからの地域福祉のあり方に関する研究会報告)全社協、2008年6月。
※3 「国民の社会福祉に関する活動への参加の促進を図るための措置に関する基本的な指針」(厚生省告示第117号)1993年4月。
※4 「ボランティア活動推進7ヵ年プラン構想」全社協・全国ボランティア活動振興センター、1993年5月。
③第20回(TOKYO)から第24回(ふくしま)までの分科会のテーマについて纏めておく(『報告書』より)。一瞥すると、地域・社会づくりをめざすボランティア・市民活動の「広さ」(範囲)を痛感するが、問われるのは「強さ」(批判的思考、ソーシャルアクション等)である。
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謝辞
本稿をアップするにあたっては、全社協/全国ボランティア・市民活動振興センターと富山県社協/地域福祉・ボランティア振興課には格別のご高配を賜りました。ここに記して深く感謝の意を表します。

追記(1)
ボログ読者の要望により、全国ボランティアフェスティバルの参加者数について紹介します(附記①参照)。/2017年1月30日
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追記(2)
熱心なブログ読者(盟友)から、次のような感想をいただきました。感謝申し上げます。本人の承諾を得て紹介します。/2017年2月1日

極めて貴重な資料だと思いました。とても参考になります。貴兄のご指摘どおり、官製のボランティアの危うさを良く示しているような気がします。近年は災害が起きるたびに、多数の人が参加することが当たり前になり、さらにはその力を日常にまで求められる構造になりつつありますね。昔、「小さな親切、大きなおせっかい」という言葉がありました。また、誰かが言いましたが、「日本にはホームレスになる自由もない」ということも思い出します。

高校福祉科教育の原点に立ち返る:教師の思いと願い―資料紹介―

高校福祉科創設の経緯
1985年2月:理科教育及び産業教育審議会答申「高等学校における今後の職業教育の在り方について」で「福祉科」の設置が提言された。
1986年4月:静岡県三島高等学校の家庭科に「福祉コース」が設置された。
1987年4月:兵庫県立新宮高等学校と鹿児島県城西高等学校に「福祉科」が設置された。
1987年5月:「社会福祉士及び介護福祉士法」が制定され、介護福祉士国家試験の受験資格が取得できる高等学校の教育課程の条件が提示された。
1987年6月:文部省(調査研究グループの「福祉科部会」)によって「福祉科について―産業教育の改善に関する調査研究―」がまとめられた。
1999年3月:高等学校学習指導要領が改訂・告示され、専門教育に関する教科「福祉」が創設された。
2000年度:新教科「福祉」現職教員等講習会が開催された(2002年度までの3カ年、1,517名修了)。
2000年度:「福祉」の高等学校教員資格認定試験が実施された(2002年度までの3カ年、173名合格)。
2001年度:大学の新教職課程で「福祉」教員の養成が始まった(2000年度、課程認定を受けた大学は88校、114課程)。
2003年度:教科「福祉」が実施された。専門教育に関する教科7科目(社会福祉基礎、社会福祉制度、社会福祉援助技術、基礎介護、社会福祉演習、社会福祉実習、福祉情報処理)としてスタートした。

〇2016年8月、中央教育審議会(第8期:2015年2月~2017年2月)の初等中等教育分科会/教育課程部会/教育課程企画特別部会/産業教育ワーキンググループが、次期学習指導要領の改訂に向けた審議を取りまとめ、公表した。そこでは、高校福祉科に関して次のように整理されている。
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〇この「まとめ」は、①医療的ケアなどの福祉ニーズの高度化と多様化、②福祉実践における倫理観やマネジメント能力・多職種協働能力などの育成、③ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)・介護ロボットなどの福祉機器の活用といった高校福祉科の現状と課題に対応せんとするものである。
〇いま、福祉・介護ニーズの多様化・高度化が進むなかで、専門的な福祉・介護人材を量・質ともに安定的に育成・確保し、その資質の向上を図ることが求められている。しかし、福祉・介護現場の労働環境・処遇は依然として厳しい。また、福祉・介護に関する専門的職業人を養成する高校福祉科(「福祉系高校」「特例高校」等、注①)を取り巻く環境は決して楽観を許さない。
〇こうした時に求められるのは、高校福祉科の存在意義について再確認したり、高校福祉教育の原点に立ち返ることである。本稿では、そのための資料紹介を行うことにする。
〇高校福祉科の存在意義については、例えば、前述の「産業教育ワーキンググループにおけるヒアリング」(2016年1月実施)で、保住芳美先生(川崎医療福祉大学)が以下のような意見の開陳を行っている。そこでは、職業学科としての高校福祉科の「擁護」の視点から、15歳で将来のキャリアの方向性を決定し、自己啓発・学習に励む生徒の意欲や姿勢が重視されている。高校福祉科の存在意義や存在価値は、高校福祉教育と市民福祉教育(サービス・ラーニング)、教養教育とキャリア教育・職業教育、ソーシャルワーク教育とケアワーク教育、高校福祉科と福祉系等大学、等々の有機的関連性や連携・統合のあり方などについて追究するなかで問われるべきである。またその際には、歴史的かつ批判的な視点や思考が肝要となる。
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〇周知の通り、高校福祉教育は、国民的教養としての福祉教育と専門教育としての福祉教育、そして福祉系大学等への進学などが意図あるいは想定されてその推進が図られてきた。
〇2016年8月、「平成28年度全国福祉高等学校長会第22回総会・研究協議会並びに福祉担当教員等研究協議会」が新潟県南魚沼市(主管・八海高校)で開催された。「研究主題」は、「『福祉教育』の原点をもう一度考える―高校福祉教育が目指すもの―」であった。この全国福祉高等学校長会は、1993年11月25日、埼玉県春日部市(ホテルのレストラン)で開催された「第1回全国福祉系高等学校連絡協議会(仮称)」に遡る。
〇以下では、多くの紙幅を費やすが、「第1回全国福祉系高等学校連絡協議会」と「第2回全国福祉系高等学校連絡協議会並びに平成6年度全国福祉科高等学校長会・学科主任会」(1994年7月31日~8月1日、日本出版クラブ会館)の「記録報告」、第1回(1995年10月、主管・三島高校)から第5回(1999年11月、主管・ベル学園高校)までの「全国高等学校長協会家庭部会福祉科高等学校長会総会・研究協議会並びに学科主任等研究協議会」の「大会報告」を紹介する(注②)。高校福祉科教師の熱い思いと強い願いがひしひしと伝わってくる。高校福祉教育の原点に立ち返り、総合的かつ客観的な現状分析・評価に基づいて、将来を展望するきっかけになれば幸いである。
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①福祉系高校/介護福祉士養成課程の基準を満たす高等学校および中等教育学校として、文部科学大臣および厚生労働大臣の指定した学校。修了時に介護福祉士試験の受験資格を得ることができる。
特例高校/介護福祉士養成課程の基準を満たす高等学校および中等教育学校として、文部科学大臣および厚生労働大臣の指定した学校。修了後、9月以上介護等の業務に従事した場合に、介護福祉士試験の受験資格を得ることができる。
2015年度現在、福祉系高校は102校・102課程、特例高校は28校・28課程を数えている。
②下の表は、「第2回全国福祉系高等学校連絡協議会並びに平成6年度全国福祉科高等学校長会・学科主任会」と第1回から第10回までの「全国高等学校長協会家庭部会福祉科高等学校長会総会・研究協議会並びに学科主任等研究協議会」の開催期日、主管校、研究主題、そして各年度の加盟校数を一覧にしたものである。第1回大会(1995年)から第6回大会(2000年)まで研究主題が同一であることに注目しておきたい。
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付記
参考までに、日本社会福祉教育学校連盟が作成する「日本における社会福祉・ソーシャルワーク教育・研究の鳥瞰図」(2016年6月版)を付記しておく(学校連盟ホームページより)。
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備考
〈ディスカッションルーム〉
(88)矢幅清司「高校福祉科教育に関する資料」(平成7年度~平成22年度)/2020年3月12日/本文

コミュニティ・スクールと地域づくり:その光と影―仙台市立七北田小学校「地域共生科」の実践紹介―

〇学校教育に関して、国や教育委員会の主導のもとに、「地域に開かれた学校」から「地域とともにある学校」(づくり)への転換が図られている。それは、学校・家庭・地域・行政(教育委員会)の四者が一体となって、四輪駆動で進められている。その有効なツールのひとつに学校運営協議会制度と学校支援地域本部事業がある。

〇学校運営協議会制度は、一定の法令上の権限や責任を持ちながら、保護者や地域住民が学校運営に参加するための制度(仕組み)である。2004年9月に導入された。学校運営協議会は教育委員会の下部組織として各学校に設置され、その指定は教育委員会が行う。学校運営協議会の委員は、教育委員会が任命し、その身分は非常勤特別職の地方公務員である。学校運営協議会の主な役割は、①校長の作成する学校運営の基本方針の承認(必須)、②学校運営に関する教育委員会または校長に対する意見(任意)、③教職員の任用に関する教育委員会に対する意見(任意)、である。これらの承認や意見は委員の合議による。学校運営協議会を設置している学校は通称「コミュニティ・スクール」と呼ばれる。
〇国や教育委員会はいま、コミュニティ・スクールの普及啓発や導入促進に積極的に取り組んでいる。その一環として、2011年2月に、コミュニティ・スクールを指定する教育委員会の教育長を中心に「全国コミュニティ・スクール連絡協議会」が創設された。また、2012年3月には、文部科学省によって「コミュニティ・スクール企画委員会」と「コミュニティ・スクール推進員」(CSマイスター)が設置されている。さらに、2015年12月には、中央教育審議会によって、「全ての公立学校においてコミュニティ・スクールを目指すべきであり、現在任意設置となっている学校運営協議会の制度的位置付けの見直しも含めた方策が必要」である旨が提言された(「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について~学び合い、高め合う教員育成コミュニティの構築に向けて~(答申)」)。
〇2016年4月現在、コミュニティ・スクールの指定校数は2,806校を数える。学校種別の内訳(括弧内は全公立学校に占める割合)は、幼稚園109園(2.6%)、小学校1,819校(9.3%)、中学校835校(8.9%)、義務教育学校(小中一貫校)7校(31.8%)、高等学校25校(0.7%)、特別支援学校11校(1.0%)、である。294市区町村および9道県の教育委員会がコミュニティ・スクールの指定を行っている。そのうち114市区町村が域内全ての小・中・義務教育学校をコミュニティ・スクールに指定している。
〇学校運営協議会制度を導入した学校では、その成果として、①学校と地域が情報を共有するようになった、②地域が学校に協力的になった、③地域と連携した取り組みが組織的に行えるようになった、④特色ある学校づくりが進んだ、などが挙げられている。その反面、①制度に対する一般の教職員や地域住民の認知度や関心が低い、②制度を導入する地域や学校種別に偏りがある、③学校運営協議会では学校側からの説明や報告が多くなりがちで、協議が形骸化している、④学校運営協議会の取り組みを計画的・継続的に進めるための人材育成や財政的な措置が不十分である、などが指摘されている。

〇学校支援地域本部事業は、地域住民等の参加により、学校の教育活動を支援する仕組み(本部)をつくり、さまざまな学校支援活動を実施する。とともに、その活動を通じて地域住民の生涯学習や自己実現を促し、地域の連携を強化し、地域の教育力の向上を図るものである。2008年度に国の委託事業(都道府県・指定都市に委託、都道府県は市区町村に再委託)としてスタートし、2011年度からは国・都道府県・市町村が3分の1ずつ負担する補助事業として継続されている。学校支援地域本部は、原則として中学校区に設置され(標準は1中学校、2小学校。1学校毎の設置や複数校区をまたぐ設置も可能)、基本的には「地域教育協議会」「地域コーディネーター」「学校支援ボランティア」によって構成される任意団体である。地域教育協議会は、学校支援の方向性について議論し、情報共有、共通理解を図る。地域コーディネーターは、学校側とボランティアの連絡調整を行い、学校のニーズに応じてボランティアを派遣する。学校支援ボランティアは、学校管理下における学習支援、部活動指導、環境整備、登下校安全確保、学校行事支援などの活動に参加する、ものである。
〇2015年8月現在、学校支援地域本部事業を実施する市町村は642を数える。学校支援地域本部の設置数は4,146本部、本部事業を実施する学校数(括弧内は全公立学校に占める割合)は小学校6,568校(32.4%)、中学校3,039校(31.5%)、高等学校35校(1.0%)、特別支援学校70校(6.6%)、である。
〇学校支援地域本部事業の推進を図るためには、①本事業に対する学校・教職員や保護者、地域住民等の理解の促進、②学校支援地域本部の設置状況の地域格差の改善、③地域コーディネーターや学校支援ボランティアの資質・能力の向上と養成・確保、④生涯学習関係機関・団体との連携・協働による地域の教育力の向上と地域の活性化、などの方策を講じる必要があるとされる。

〇2014年度において、コミュニティ・スクールの指定を受けている小・中学校のうち、学校支援地域本部事業にも取り組んでいる学校は約4割を数える。今後、「地域とともにある学校」づくりや「学校とともにある地域」づくりを学校ぐるみ・地域ぐるみで推進するためには、コミュニティ・スクール(地域住民等の学校運営への参加。意思決定機関)と学校支援地域本部(地域住民等による教育活動等への支援。実施機関)の連携・協働を進め、その機能の統合化・一体化を図ることが求められている。

〇以上が、学校運営協議会制度と学校支援地域本部事業についての概要と動向である(図1、図2参照)。

コミュニティ・スクールと地域づくり/9月1日

〇個性的で魅力的な学校づくりや地域づくりには、各学校や地域の特性や実態に応じた柔軟性と多様性が確保されることが必要かつ重要となる。柔軟性と多様性が学校や地域の豊かさを創るのである。
〇国や教育委員会による学校運営協議会制度と学校支援地域本部事業の取り組みは、保護者や地域住民の学校経営への参加を促す。とともに、具体的な内容とマニュアル化された方法を「上から」示すものでもある。その徹底の仕方によっては、画一的で硬直的な学校づくりや地域づくりが進められ、学校や地域がコントロールされる契機となる恐れなしとしない。すなわち、学校運営協議会制度と学校支援地域本部事業は、この両義的性格を持ち合わせているのである。校長が取り仕切る学校の運営基本方針の承認や学校管理下における学校支援ボランティアの取り組みは、住民の参加・協力と住民に対する管理・統制の両義性が想起される。唐突な言い方であるが、政治的・経済的・社会的分野における「地方分権」(権限移譲)や「規制緩和」の“光”に照らされて大きく伸びる“影”に留意したい。
〇住民は地域の主役である。しかし、学校づくりや地域づくりに関しては「素人」である。そこで先ずは、住民が学校運営協議会制度や学校支援地域本部事業について関心を持ち、理解を深めるための取り組みが必要かつ重要となる。加えて、学校運営協議会委員や学校支援ボランティアなどがその役割や責任を果たすために、如何にして意識・態度の育成と資質・能力の向上を図るかが問われることになる。そこに求められるのは、主体的・自律的な「人づくり」とそれを推進する「教育づくり」である。それは、上意下達の管理主義システムではなく、ボトムアップの民主的なシステムや体制に基づくものでなければならない。それ故にまた、活力ある学校づくりや地域づくりには、「協調」「協働」する住民に加えて、監視や批判、要求をリードする「自律した」「闘う」住民の存在が必要かつ重要となる。
〇学校経営や学校支援においては、学校や地域の現状や実態を踏まえ、教職員や保護者・地域住民等の思いや願いが適切に反映されることが肝要である。そのためには、例えば、如何にして教職員と保護者・地域住民の対等な信頼関係と共働体制を構築するか、教職員の専門性を重視するとともに保護者・地域住民のエンパワメントを形成・支援するか、PTAや青少年団体等の社会教育関係団体をはじめボランティア団体や自治会といった住民組織などのネットワーク化を図るか、なども問われることになる。そこに通底する視点や考え方のひとつは、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)のそれである。教職員と保護者・地域住民等が社会的に豊かにつながり(「ネットワーク」)、それに基づいて互いに信頼しあい(「信頼」)、お互いさまの支え合い(「互酬性の規範」)によって学校や地域の諸問題が解決され、より良いガバナンス(共治)が進み、学校や地域の活性化が図られるのである。
〇また、加えて、特別支援学校におけるコミュニティ・スクールの導入が少ない現状を考えるとき、如何にして学校と地域が共働し、基本的人権(教育を受ける権利、教育を受けさせる義務等)の尊重や、ノーマライゼーションやソーシャルインクルージョンの思想に基づいた共生の学校づくりや地域づくりの推進を図るかが厳しく問われる。
〇いずれにしろ、学校の教職員や保護者、地域住民などによる内発的で自律的な学校づくり(学校経営)や地域づくり(地域経営)を進めるためには、いま改めて学校運営協議会制度と学校支援地域本部事業の意義やあり方などについて厳しく検証する必要がある。

〇ところで、学校と地域の連携・協働をめぐってはこれまで、学校と地域を並列的あるいは領域的に捉える傾向があったといってよい。例えば、福祉教育に関して言えば、「学校における福祉教育」と「地域を基盤とした福祉教育」という思考がそれである。学校や地域における豊かな学びと快適な暮らしを創造するためには、地域ぐるみの学校経営支援と学校ぐるみの地域経営支援の「共働」を必要不可欠とする。筆者がかねてより主張してきている「市民福祉教育」が含意するところである。
〇ここで、学校と地域の連携・協働(相互支援)のもとで、全学年に「地域共生科」という新たな教科を設定し、「社会の中で、よりよく生きる力」を育むためのカリキュラムの研究開発を行った仙台市立七北田(ななきた)小学校の取り組みの概要を紹介することにする。それは、市民福祉教育のあり方や、「地域とともにある学校」づくりや「学校とともにある地域」づくりの方向性などを追究するためである。
〇地域共生科についての研究開発は、2009年度から2011年度の3年間、文部科学省の「研究開発学校制度」による学校指定を受けて行われたものである。2009年9月には、「七北田小学校支援地域本部」(通称:にこにこ本部)が設置されている。2010年度からは、「生活科」(第1学年~第2学年)の授業時数の約半分と「総合的な学習の時間」(第3学年~第6学年)の全授業時数が地域共生科の授業時数に充てられている。なお、七北田小学校は、1873(明治6)年に創立された古い歴史を持つ学校であり、2016年5月現在の児童数は648名、学級数は23学級(特別支援学級を含む)を数えている。

◆地域共生科の目標
地域社会の具体的な事象や課題に対する学習と地域社会づくりの体験活動を通して、地域社会に対する愛情を深め、地域社会の課題に対して主体的に取り組み、さまざまな価値観や考えをもつ人々と共生するために必要な基礎的・基本的な知識及び技能を身に付けさせるとともに、他者の考えや社会的価値観と照らし合わせながら、自ら考え判断する能力や、社会貢献活動のための基礎的な能力を育成する。
◆地域共生科で育みたい力
地域共生科で育みたい力は「社会貢献力」「思考力」「知識・技能」である。社会貢献力は、地域社会を構成する人々や事象に関心をもち、その一員として地域社会の課題に主体的に取り組み貢献する能力である。思考力は、地域社会の課題を他者の考えや社会的価値観と照らし合わせて自ら考え、話し合い、判断する能力である。知識・技能は、地域社会に貢献し、共生するための基礎的・基本的な知識・技能である。
◆地域共生科の学習ステップ及びサイクル
地域共生科は5つの学習ステップ及びサイクルをもつ。すなわち、地域を知る→地域を調べる→地域を考える→地域に発信する→地域で行動する……→地域を知る、である。実際の地域社会づくりに参画する活動を「地域で行動する」として、特に重視する。
◆地域社会と学校の学びの循環
児童に地域社会づくりの活動を体験させ、自分たちの活動が地域貢献につながっているという意識をもたせる。これにより児童の自己肯定感を高め学習の社会的意義を実感させる。また、このような児童の活動の積み重ねが、地域社会の活性化や地域社会のよりよい地域社会づくりにつながるものと考えている。さらに、児童の活動は地域の人たちの地域貢献への意欲を喚起し、学校に対して、地域の教育力を積極的に提供していただけるようになると考えている。これを「地域社会と学校の学びの循環」と呼び、地域共生科の授業を進める原動力とする。
◆各学年の学習プログラムの概要(学年/授業時数/単元名/活動の概要)
1年/50時間/まつりだ わっしょい!! inななきた~子どもの力で 地域を元気に~/地域の人々とともに、“まつり”をつくる。地域の人々を明るく元気にするには、どうしたらよいか考え、自分たちで作ったおみこしを担いで地域に飛び出す。
2年/50時間/見せるぞ! おにいさん・おねえさんパワー~つくろう えがおの町~/幼稚園や保育園(所)に行き、小さい子どもとのかかわり方を学ぶ。園児を楽しませる遊びを考え、園児や園のために自分たちでできることに挑戦する。
3年/70時間/おじいちゃん おばあちゃん わたしたち~いっしょに笑おう いっしょに学ぼう~/地域のお年寄りと交流したり、アンケート調査を行ったりして、お年寄りを理解する。お年寄りと共に学び合い、高め合えるような教室をつくる。
4年/70時間/すぎだっちゃ! 七北田~見つけよう 伝えよう 私たちのふるさと~/地域の昔のくらしを調べたり、歴史の跡を辿ったりして、ふるさとのよさを理解する。創作劇などの表現活動をとおして地域の人々にふるさとの魅力を伝える。 
5年/70時間/よりよい未来を思い描こう~つくろう! 素敵な自分 素敵な地域~/地域を支える人々の生き方や願いにふれ、理解したことをコミュニティFM局の番組から発信する。そして、よりよい地域社会づくりのために自分たちができることを考え、実行する。
6年/70時間/私たちでつくろう 住みよい七北田~“つながろう! みんなの街”プロジェクト~/地域社会の課題を調べ、関係機関などと連携しながら、地域社会の活性化に貢献する。活動をとおして地域社会における共生の意義を理解する。
特別支援/70時間/わたしたちの町~地域の人となかよくなろう~/地域で活動する人々とふれあい、地域とのつながりを深める活動に取り組む。
◆学習・指導の形態と指導方法
グループ編成
地域共生科では地域社会づくりに参画する体験活動を学校内外で多く実践していくことから、友達や顔見知りの方々に限定されない学習が日常的に展開されていく。学校内においても、より多くの他者とかかわり、他者の考え方を吸収したり受け入れたりする経験を積ませるために、意図的に学級枠を外したグループ編成を行う。
「パートナー」の導入
地域共生科では、パートナーと共に学習する時間を設けている。パートナーとは、児童と共に一つの目標に向かって話し合い、共に創り上げていく大人のことである。パートナーは、話合いの中で児童の考えが一般的な常識から外れることのないように導く役割も果たす。パートナーには児童が気付くことのできない視点から意見を述べてもらい、より現実味のある話合いにしていくようにする。また、児童の自己満足で終わる学びではなく、社会でよりよく生きるための資質と能力を養うことを目指していることから、パートナーを活用することで児童は思考を深めると共に、より現実に生きる考え方を学ぶことができるのではないかと考える。
パートナーを交えた話合いにおいては、折り合いながらよりよい考え方に変えていく合意形成の場や、友達やパートナーの考えを聞きながら自分の考え方を批判思考する場が生まれていくことをめざしている。大人ならではの支援や巧みな切り返し等を期待すると共に、児童に意図的・計画的に深みのある思考の場を与えたいと考えている。
オリエンテーション、振り返りの確実な実施
児童に地域共生科の学習の意義を理解させ、一年間の学習の見通しをもたせるために、学習の始めに「地域共生科 学習の手引き」を活用しながらオリエンテーションを行う。
最終的に自己の生き方についての考えを深め、自己を生かす能力を養うことをめざすことから、学びの各段階に児童が自分自身を振り返る場を設ける(自己評価・他者評価)。パートナーから賞賛してもらったり、児童が互いに認め合ったりする場を意図的に位置付け、有用感を得ること、またその積み重ねによって児童自身の自己肯定感が高められていくことを意識した指導を行っていく。
◆評価方法の基本的な考え方と具体的な評価の方法
評価方法の基本的な考え方
指導と評価の一体化を図ることを念頭に置き、地域共生科における児童の学習や体験活動の様子を適切に評価する方法を確立し、児童の変容や成長を評価し、自己の課題の把握や自己肯定感の高揚につなげる。
具体的な評価の方法
信頼される評価にするために、評価の観点、方法を教師間で確認する。学習段階の中で、重点を置いて指導することを中心に評価する。
児童の発表や話合いの様子、学習や活動の状況などの観察による評価。児童のレポート、ワークシート、ノート、作文、絵などの制作物による評価。児童の学習活動の過程や成果などの記録や作品を計画的に集積したポートフォリオ。評価カードなどによる児童の自己評価や相互評価。教師やパートナー等の記録による他者評価、などの評価方法を適切に組み合わせる。

〇七北田小学校の取り組みについて先ず注目されるのは、新たな教科「地域共生科」を設定し、「社会の中で、よりよく生きる力」を確実に育むためのカリキュラムや学習内容、指導方法、評価方法などについての研究開発である。「社会の中でよりよく生き、よりよい社会をつくる能力」の育成を図るためには、全教科・全領域における取り組みを総合的・有機的に進めることが必要かつ重要となる。地域共生科の設定は、学校と地域の連携・協働体制を継続的なものにするであろうが、運営の仕方によっては教育の画一主義や硬直化をもたらす可能性もある。それは、子どもや保護者、地域住民などの日常の生活現実に根ざしたカリキュラム形成などに、保護者や地域住民が如何に関わるかを問うことでもある。保護者や地域住民がそのカリキュラム形成に関わる際には、文部科学省が進める道徳の「特別の教科」化をめぐる動きについても思い起こしたい(小学校は2018年度、中学校は2019年度から完全実施)。一定の価値観や規範意識の押し付けについてである。
〇いまひとつ注目されるのは、「体験活動と学習の重視」「地域社会と学校の学びの循環」「パートナー(ゲストティーチャーとは異なる)の導入」である。これは、学校内での授業や学びのあり方に再考を促すものであり、教職員や保護者、地域住民などの関係を問い直すものでもある。ただ、その際、子どもの体験活動が一面的で抽象的な社会貢献や地域づくりを促すだけのものでは意味がない。また、保護者や地域住民の学校支援活動が同じく一面的で限定的な学校経営や学校づくりを期待(依頼)するだけのものでも意味がない。そこには、学校と地域の豊かな「共働」関係は生まれない。学校や地域住民が抱える多様で厳しい生活課題と向き合い、その歴史的・本質的な要因を考究し、その解決策について追究するなかでこそ、地域コミュニティを構成する様々な個人(子ども、高齢者、障がい者、外国籍住民等)や組織・団体などとの真の「共働」関係が構築されるのである。


(1)コミュニティ・スクールと学校支援地域本部事業については、文部科学省のホームページと次の文献を参照。
①金子郁容・鈴木寛・渋谷恭子『コミュニティ・スクール構想―学校を変革するために―』岩波書店、2000年12月
②文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室『コミュニティ・スクール事例集』2008年3月
③佐藤晴雄編著『コミュニティ・スクールの研究―学校運営協議会の成果と課題―』風間書房、2010年3月
④コミュニティ・スクールの推進等に関する調査研究協力者会議『コミュニティ・スクールを核とした地域とともにある学校づくりの一層の推進に向けて~全ての学校が地域とともにある学校へと発展し、子供を中心に据えて人々が参画・協働する社会を目指して~』文部科学省初等中等教育局参事官付、2015年3月
⑤文部科学省初等中等教育局参事官付『コミュニティ・スクール 2016―地域とともにある学校づくりのために―』(コミュニティ・スクールパンフレット)2016年
⑥文部科学省初等中等教育局参事官付『コミュニティ・スクールって何?!~魅力からつくり方まで、お教えします~(「学校運営協議会」設置の手引き)』2016年7月
⑦佐藤晴雄『コミュニティ・スクール―「地域とともにある学校づくり」の実現のために―』エイデル研究所、2016年8月
(2)仙台市立七北田小学校の「地域共生科」については、文部科学省の「仙台市立七北田小学校報告書(要約)」(『平成23年度研究開発実施報告書(平成21~23年度指定)』所収)を参照。

鳥取県智頭町「杉下村塾」10年の歩み:河原利和のレポート―資料紹介―

〇筆者(阪野)は、本ブログの「ディスカッションルーム」(61)に「地域経営実践者としての寺谷篤志の挑戦、その記録:鳥取県智頭町地域経営講座「杉下村塾」を中心に―資料紹介―/2016年6月28日」をアップした。早速、ひとりの読者から、「杉下村塾」10年間の取り組みの概要(内容)について知りたい、という連絡をいただいた。
〇そこで本稿では、10年間「先生徒」(岡田憲夫の造語)であった河原利和(当時・智頭町地域づくりアドバイザー/とっとり政策総合研究センター研究員)が『平成10年度CCPT活動実践提言書』(1999年10月)に投稿しているレポートを紹介することによって、ひとまずそれに応えることにしたい。「私と杉下村塾―興味本位の参加から価値認識の参加へ―」(第10回杉下村塾特集/論文集:1~13ページ)がそれである。また、河原は、日本海新聞(1998年10月26日)で「1997年の提言書の主な評価を箇条書きで整理」している(『平成10年度CCPT提言書』、254ページ)。杉下村塾やそこでの「学び」(「地域共育」)について分析・評価するためのひとつの視点や枠組みとして、参考に供しておくことにする。
〇なお、杉下村塾は、発足時から10年、10回の期限を設定して開講された。最終回は、1998年10月23日から25日にかけて開講されている。以下では先ず、その開講案内とプログラムを紹介する。ちなみに参加者(「先生徒」)は26名であった。その名簿には、大学教員(岡田憲夫、杉万俊夫)や地域計画コンサルタント、郵便局長、学生・大学院生などが名を連ねている。彼・彼女らの住所は、鳥取県内が12名(46%)で最も多く、東京、京都、大阪、神戸、岡山、広島、愛媛などである。

▼第10回「杉下村塾」の概要
修正15時

加筆訂正16時

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▼「杉下村塾」10年の歩み―河原利和のレポート―
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▼河原利和「『智頭発』22世紀へのメッセージ」―『平成9年度CCPT活動実践提言書』の評価―
10年の記録17

〇いわゆる「地域リーダー」(住民リーダーや専門職・準専門職)の育成・確保が地方公共団体や各種の民間団体、それに大学などによって行われている。その分野は多岐にわたり、名称や形式、内容や方法なども多様であり、「百花繚乱」の様相を呈している。それは、激動する政治・経済・社会情勢のなかで、地域が抱える課題が多種多様であり、また深刻化していることへの対応(範囲・程度等)によるのであろう。
〇本稿で紹介した杉下村塾の「地域共育」事業・活動の系譜につながる組織に、「(一般社団法人)日本・地域経営実践士協会」(理事長/岡田憲夫、理事/平塚伸治・多々納裕一・寺谷篤志)がある。それは、「身の丈にあった地域経営による主体的なまちづくりについて、自己研鑽するための地域経営実践士(まちづくりの匠)を社会に普及させること」(定款第3条)を目的に、2013年3月に設立されている。そこでは、地域経営実践士の養成・研鑽のための「地域経営まちづくり塾」が、毎年開催されている。
〇まちづくりにおいては、こうした地域リーダーの養成とともに、一般住民に対する「まちづくりの主体形成」(関心・理解・参加)が必要かつ重要であることは多言を要さない。住民主体形成に目配りしたリーダー養成と、リーダー養成に目配りした住民主体形成のあり方が問われるところである。
〇上に紹介した河原のレポートは、「地域社会を単なる感情論で捉えるのではなく、地域に科学を持ち込むことが重要である」(第2回)としている。確かで豊かなまちづくりを推進するためには、大いに首肯するところである。ただ、地域に科学を持ち込むことによって、一般住民と地域リーダーや専門職との間に緊張関係が生じることになる。それを乗り越えるためには、両者の水平的なネットワークや「共働」のシステムを構築することが必要かつ重要となる。
〇ここで、コミュニティワークで言う「主体の転換」について想起しておきたい。「主体の転換とは最初の段階ではコミュニティワーカーが地域に介入し、地域住民を援助の『対象』として位置づけていく。しかし、コミュニティワークの展開のなかで、少しずつ地域住民が力をつけていくことで、専門職の関わりの度合いを薄めていき、最終的には『住民主体』で地域福祉が推進できるようにするという考え方である。(中略)今日、社会福祉の分野では従事者の高学歴化、専門職化が進んでいる。そのことによって『合理的な事業遂行のための協働』を押しつけられたのでは、地域住民の側は迷惑である。専門職によるパターナリズムや管理的統制が強くなることへの警戒」(原田正樹『地域福祉の基盤づくり―推進主体の形成―』中央法規出版、2014年10月、218ページ)が必要である。
〇この点は、「コミュニティデザイン」を説く山崎亮の言説に通底する(山崎亮『ふるさとを元気にする仕事』筑摩書房、2015年11月)。「住民はまちの主役であっても、まちづくりに関しては素人なのです」(193ページ)。「地域の課題を住民が主体的に考えて解決するための活動を手伝うのがコミュニティデザイナーなのです」(48ページ)。「地域の人たちから必要とされなくなること―それが僕たちの手掛けるプロジェクトの最終目標なのです」(171ページ)。留意しておきたい。

付記
(1) 本稿をアップするに際して、寺谷篤志先生から丁重なメールをいただいた。先生によると、杉下村塾の特徴は、「科学者と社会人という構成にしたこと」「社会の基本的かつ本質的なことについて議論したこと」「地域主体と住民自治を貫いたこと」などにある。
(2) 第3回杉下村塾の開催期日は1991年8月30日~9月1日である。
(3) 総務省の「(第5回)人材力活性化研究会」(2014年7月10日)に提示された「地域リーダー育成に関する研修の実態把握アンケート調査」の結果概要を紹介しておくことにする。

「地域リーダー育成に関する研修の実態把握アンケート調査」について
【調査目的】
都道府県が実施している「地域リーダー」を養成する研修・講習・塾・セミナー等の実施状況についてアンケート調査により把握し、今後の基礎資料とする。
【調査対象・方法】
都道府県が実施している研修等について、企画担当部局を通じて関係各課に調査票を配布・回収した。
【調査期間】
2014年2月21日(金)~3月7日(金)
【回収数】
130件
【結果概要】
〇都道府県が実施する「地域リーダー」を養成する研修の事業としての開始年度は様々。最近の開始年度別では2011年度・11件、2012年度・23件、2013年度・24件。
〇研修形態はほぼ「通学型」。年間2回以上開催の研修が6割で、2日間以上の研修が半数以上。
〇受講対象は、「都道府県・市町村職員」を中心に、「地域住民等」「NPOや地域づくり団体」「高校生・大学生等」などと幅広いが、基本的には「都道府県内の参加」がほとんど。「県外から参加」「広く全国から参加」を受け入れる研修は少数。
〇研修内容は、「事業計画づくりやコミュニケーションなど地域マネジメント」や「リーダーシップなどの活動に関する心構えや哲学」を学ぶなどの学習型の研修がそれぞれ2割、「それぞれの地域活動の課題を取り上げ、その解決を図る」という課題解決型の研修も2割。
〇カリキュラムは、「講師の講演・講義」や「ケーススタディ」などの室内研修が主となり、「フィールドワーク」の割合は低い。また、「講師との対話やディスカッション」という割合は少ない。
〇修了生に対するフォローは約7割が実施。その内訳は「修了証の交付」が主となり、「フォローアップ研修」や「補助・助成」などの具体的な支援は少ない。
〇運営上の課題は「受講者」「財源」の確保という運営面の課題の回答が多い一方で、「ステップアップ研修」「修了後の地域づくりへの実践」「評価方法」というアフターフォローを課題とする回答も多くみられる。
〇現在実施している研修を「今後も継続する」と回答した割合は半数以上であるが、約3割の研修は「内容の充実」を希望。

なお、総務省/人材力活性化研究会は、2012年3月、『地域づくり人の育成に関する手引き』を作成・発行している。そこでは、「地域づくり人」を次のように規定している。「この『手引き」では、地域づくりに関わる全ての人を『地域づくり人』として位置づけ、その役割として、団体や活動等を統括する役割の人材を『リーダー』、各事業の担い手として主体的に活動する人材を『プレーヤー』、リーダーやプレーヤーをできることで支える人材を『サポーター』として位置づける」(2ページ)。

地域経営実践者としての寺谷篤志の挑戦、その記録:鳥取県智頭町地域経営講座「杉下村塾」を中心に―資料紹介―

〇筆者(阪野)は、本ブログの「雑感」(36)に「1%から始まる住民主導の内発的まちづくり―主体者意識に基づく『話し合い』と『学び合い』、そして『地域経営』―/2016年5月18日」をアップした。そこでは、「地域経営」の視点からまちづくりに取り組む鳥取県八頭郡智頭町(ちづちょう)の実践例の概要を紹介した。
〇智頭町には、地域経営の理念を創り上げ、それを実現するための仕組みを構築し、とりわけ「学ぶ場」づくりを重視しながら自律的・能動的にまちづくりに取り組む住民がいた。その一人が寺谷篤志(敬称略、以下同)である。寺谷は、「地域経営実践の猛者(モサ)である。パイオニアでもある」と評される(岡田憲夫「本書の中の本書の書評」寺谷篤志・平塚伸治/鹿野和彦『「地方創生」から「地域経営」へ―まちづくりに求められる思考のデザイン―』仕事と暮らしの研究所、2015年3月、8ページ)。
〇筆者は、先の拙稿で、寺谷を「稀有(けう)な挑戦的実践者」と評した。いま、幸運にも、寺谷から“学び”の機会を得ている。そして、寺谷については、「稀有」「挑戦」という言葉以上のものを次のような私信メールから痛感している。「智頭では誰もやらなかったこと、何にもならんことをするな、と言われ続けた。京都も一緒ですが、私にとっては地域社会が最高の投資先であり、そこでの希少価値を模索しての人生でした」。「CCPT提言書は、地域社会で住民が葛藤し格闘した記録です。まさに闘争の記録です」。「知識は価値です。地域での価値づくり、学びは、まちづくりにとって極めて重要なものです。ささやかな『杉下村塾』ひとつとっても、地域経営であったと思います」。「私にとって学ぶことはイコール実現することです。創造的な挑戦は誇りを創ります」。寺谷はまさに「モサ」である。飽くなき「探究者」である。
〇寺谷の智頭町におけるまちづくりは、1984年7月の「杉板はがき発案」から始まる。そのまちづくりが力強く前進したのは「智頭町活性化プロジェクト集団」(CCPT:Chizu Creative Project Team)の結成(1988年5月)であり、より確かなものになったのは「杉下村(さんかそん)塾」の開講(1989年8月~1998年8月、全10回)であろう。それらを基盤に、1997年度から「日本・ゼロ分のイチ村おこし運動」がスタートしている。それは、「住民主導による地域活性化運動」「住民主導による徹底したボトムアップの運動」「『物言わぬ住民』を『物言う住民』に転換する運動」などと言われる。こうした取り組みには、前橋登志行(CCPT代表)や岡田憲夫(京都大学名誉教授)らとの「共鳴」があり、「共働」があった。
〇さて、本稿のねらいは三つある。(1)寺谷が本ブログのためにわざわざ書き下ろしてくれたコメントを発信することである。(2)寺谷から拝受した貴重で膨大な資料の一部(『CCPT活動実践提言書』の各巻のタイトルと目次)を紹介し、原典に繋ぐことである。そして、(3)「学ぶ場」としての「杉下村塾」(第1回:1989年8月25日~27日)についての資料紹介である。

▼寺谷篤志「鳥取県智頭町の30年にわたる『地域共育』ドキュメント」2016年6月23日
〇内発的発展論/智頭ドラマ(1)
市民福祉教育研究所の阪野貢氏がそのブログで、2015年3月に発行した拙著『「地方創生」から「地域経営」へ』(共著)を、地域の教育学(まちづくりと福祉教育)の視点・観点から分析、「介錯」して下さった。そのお返しではないが、智頭町における1989年から1998年の「地域づくり」実践を文字で紡いだ『CCPT(智頭町活性化プロジェクト集団)活動実践提言書』をお送りした。多くの方々に住民(市民)自治と地域経営について考えていただこう、という思いからである。
私は、1983年に帰郷したころを起点に、地域づくりを展開してきた。明治大学の小田切徳美教授は、1990年ごろからの智頭町の活動を題材にして、地域づくりについて言及されている。そして、先生は、「『内発性』『総合性・多様性』『革新性』という装いを持ち、地域の新しい価値の上乗せを目標としながら、『主体』『場』『条件』の三つの柱を地域条件に応じて巧みに組み合わせる体系こそが、今日求められている『地域づくり』である(小田切徳美『農山村は消滅しない』岩波書店、2014年12月、71ページ)、と解析される。
各地で展開されている地域づくりは、人口移動の指標的施策が脚光を浴たり、「ふるさと納税」による特産品をいかに売るかといったものが注目されている。しかし、それらは、地域を本質的に活性化させるものではない。その地に住む住人が自負心を持ち、その地の文化を基盤に、「地域経営」の主宰者として主体的・創造的に地域づくりに取り組むことが肝要である。中央主導、官主導の「地方創生」には大きな死角があり、限界がある。その地域ならではのオリジナルでオンリーワンの取り組みと地域内循環を構築することが、地方の地域が生きる「道」である。そこに「誇り」が生まれ、真の「豊かさ」が実現する。
智頭町で私たちが展開してきた30年の活動は、内発的発展事例として、「黎明内発期」:住民による突破型プロジェクト方式(1983年~2004年、20年間)、「イベント展開期」:ゼロイチを基盤に町長主導による行政施策のイベント方式(2000年~2009年、10年間)、「起業発展期」:住民自治に啐啄同時(そったくどうじ、またとない好機:阪野)、移住人による起業方式(2010年~、6年間)、に時期区分することができる。しかしそれは、あくまでも事業や活動による表層的な区分であり、必ずしも地域づくりの本質を捉えたものではない。
それぞれの時期に、誰が、主体的に地域の規範を形成していったか。「黎明内発期」は、CCPTを中心とした学習活動をリードした私自身である。「イベント展開期」は、住民のアイディア等を積極的に登用し施策化した智頭町長・寺谷誠一郎氏である。「起業発展期」を代表するのは、「森のようちえん/まるたんぼう」の西村早栄子氏、菌本位制を謳う(自家製天然酵母を使った)田舎のパン屋さん「タルマーリー」の渡邊格氏である。実に多士済々の住人たちが、智頭町の地域づくりを牽引してきた(いる)のである。地域づくりは人なり、である。
地域づくりでは、一般的に過去の施策を分析して論ずることがあるが、リーダーとなった個々人の思考や思想に踏み込み、そこから次代の地域づくりのヒントを見出し、それを練り上げていくことが重要である。その一助となることを願って、智頭町における30年の地域づくりの記録の一部を公開することにした。市民福祉教育研究所のブログを通して、お蔵入りさせていた記録に光が当たり、広く社会に届けられることを期待したい。
追記
『定年後、京都で始めた第二の人生―小さな事起こしのすすめ―』(岩波書店、2016年5月)を上梓した。『「地方創生」から「地域経営」へ』の合わせ鏡として読んでいただくと、地域づくりの「事起こし」や「交流・情報」の必要性、「住民自治と地域経営」の重要性などについての理解がより深まるものと思う。

〇内発的発展論/智頭ドラマ(2)
【黎明内発期】
住民による突破型プロジェクト方式(1983年~2004年、20年間)
・杉板葉書/杉名刺の発案~杉をテーマにマネジメントし、智頭木創舎など起業する。
・杉下村塾/耕読会の開講~地域リーダー、住民、行政マン、科学者の学習の場をつくる。
・青少年の海外派遣の開始~住民一人1,000円の寄付で青少年を海外に派遣する。
・ひまわりシステムの実施~高齢者の見回りを役場、郵便局、社協と連携し展開する。
・千代川流域圏会議の発足~産官学民の組織を創り、流域の活性化を図る。
・ゼロ分のイチ運動のスタート~住民自らが集落・地区の活性化計画を策定し実行する。
【イベント展開期】
ゼロイチを基盤として町長主導によるイベント方式(2000年~2009年、10年間)
・石谷邸を核とした観光事業の開始~旧家の提供によって観光の核をつくり展開する。
・森林セラピーの基地の整備~森林をホスピタリーの観点から捉え住民運動にする。
・百人委員会の展開~住民有志100人が政策提案しその実現に取り組む。
・杉小判/民泊の開始~住民個々の資源(杉材・民家)を価値化する。
【起業発展期】
住民自治啐啄同時、移住人による起業方式(2010年~、6年間)
・森の幼稚園の開園~幼児を毎日森に連れて行き保育する。
・麻の栽培特区の認定~大麻の栽培特区を指定し、麻の実・炭を生産する。
・廃校を使った女性の起業~おむすびころりん・農家レストランを開業する。
・田舎のパン屋タルマーリーの開業~菌本位制によりパン・ビールを製造する。

▼『CCPT活動実践提言書』(1989年度~1998年度)智頭町活性化プロジェクト集団、1990年8月~1999年10月
〇一 覧

(1)『ちづ杉(サン)フォレストピア=1989 CCPT活動実践提言書=』1990年8月、167、56ページ。
(2)『新社会活動を求めて=平成2年度 CCPT活動実践提言書=』1991年8月、174、57ページ。
(3)『新ライフスタイル“憩住”への提言=平成3年度 CCPT活動実践提言書=』1992年8月、184ページ。
(4)『新・地域リーダー考「エディター」の提案=平成4年度 CCPT活動実践提言書=』1993年10月、219ページ。
(5)『ゴールは近づきゴールは遠のく―新しい助走にむけて―=平成5年度 CCPT活動実践提言書=』1994年10月、217ページ。
(6)『新しい波 農山村発―偉大なる疎・密“たすきがけ”のパートナーシップをめざして―=平成6年度 CCPT活動実践提言書=』1995年10月、215ページ。
(7)『社会システム創造の時代―小さく生んで大きく育む―=平成7年度CCPT活動実践提言書=』1996年10月、231ページ。
(8)『ゆうふくシステム智頭発21世紀へ―共有主義(コモンイズム)に向けて―=平成8年度CCPT活動実践提言書=』1997年10月、189ページ。
(9)『22世紀へのメッセージ―時間・空間・人間のスパイラル―=平成9年度CCPT活動実践提言書=』1998年10月、203ページ。
(10)『居合わせた者よ いきさつの語り部となれ―心・規範・社会システム―=平成10年度CCPT活動実践提言書=』1999年10月、255ページ。

〇目 次
(1)1989(平成元)年度
目次平成元年
(2)1990(平成2)年度
目次平成2年
(3)1991(平成3)年度
目次平成3年
(4)1992(平成4)年度
目次平成4年
(5)1993(平成5)年度
目次平成5年
(6)1994(平成6)年度
目次平成6年その2
(7)1995(平成7)年度
目次平成7年
(8)1996(平成8)年度
目次平成8年その2
(9)1997(平成9)年度
目次平成9年その2
(10)1998(平成10)年度
目次平成10年その2
〇備 考
『CCPT活動実践提言書』(巻数:全10巻、冊数:全10冊、総ページ数:2,167ページ、大きさ:30㎝)は、国立国会図書館、京都大学図書館、鳥取県立図書館、智頭町立智頭図書館に所蔵されている。国立国会図書館サーチでは、キーワード「CCPT活動実践提言書」で検索することができる。

▼「地域経営講座『杉下村塾』」『1989 CCPT活動実践提言書』1990年8月、7~17ページ
智頭7ページ
智頭8ページその2
智頭9ページ
智頭10ページ
智頭11ページ
智頭12ページ
智頭13ページ
智頭14ページ
智頭15ページその2智頭16ページ
智頭17ページ

〇「まち」は、多様な個性を持つ地域・住民の創造性に基づいて内発的に発展し、持続可能な地域・社会への変革を実現する。「まちづくり」は、子どもも大人も、高齢者も、障害のある人もない人も、全ての住民(市民)が参加する「共働」(coaction)を基本理念とする。「まちづくり」には、“think globally, act locally”(グローバルに考え、ローカルに行動する)の視点や姿勢が必要である。要するに、「まち」の風土と歴史と暮らしは、新しい風を内から巻き起こし、外から呼び込むことによって、「豊かさ」へと変わるのである。
〇ここでは、「杉下村塾」についての記録のうち、次の一節を銘記しておきたい。「身の丈に応じて、つつましく、しかものびやかに」(岡田憲夫、12ページ)。「創造性は異質の組み合わせで生れる。創造性を養う方法として『複数の分野の経験』『外部との交流』『秀れた師との出会い』などが効果的である」。「地域は既に国際社会であり、地域の個性を主張することが即国際化である」(神田淳、13、14ページ)。いまからおよそ30年も前の1989年8月、鳥取県の山間の地「智頭町の最奥部の八河谷にある『杉の木村』の一個の裸電球の下に集まった」わずか22人の「ヒト」たちが議論した言説である。その後、彼らは各地で、「地域経営」の「起人」(17ページ)に育っていったのであろう。その「出会い・ふれあい・学びあい」の過程こそが、寺谷が言う「地域共育」である。

付記
(1)「日本海新聞」(鳥取市、1998年10月19日)に「最終回迎える智頭・杉下村塾/地域の「人」「科学する目」重視/柔軟に活性化策探る」という記事が掲載されている。

吉田松陰の「松下村塾」に倣って年一回開講されている「杉(さん)下村塾」が、今年も二十三日から三日間、智頭町八河谷の杉の木村で開かれる。主催は、智頭町活性化プロジェクト集団(前橋登志行議長)。発足時から十年の期限をつけており、今年が最終回だ。集団は「人」に焦点を当てた地域活性化を進めてきたが、「杉下村塾」の終わりとともに一つの区切りを迎えることになった。集団のこれまでを振り返ってみる。(西部本社・富長一郎)
平成元年スタート
集団は昭和六十三年に結成された。智頭杉を使った日本家屋の設計コンテストやログハウス群を築く「杉の木材イベント」、若者の海外派遣事業など多くのイベントを手がけた。近年は、郵便事業の新たな可能性を引き出した「ひまわりシステム」の創設に携わった。
「杉下村塾」が始まったのは、平成元年だ。当時、地域活性化は「一村一品運動」などの特産品開発や市町村の総合計画などで語られることが多かったが、集団は「人」で地域活性化を語ろうとした。インフラなどの「モノ」が地域を活性化するのではなく、人が活性化すれば地域もにぎわうとの考え方だ。
同時に「地域を科学する」取り組みを大学教授らの参加により、推し進めた。難しい問題を外部のシンクタンクなどに丸投げにするのではなく、自らで解決していった。丸投げにすれば、地域にノウハウが残らないからだ。この点が集団が異彩を放つところだ。
こうした考えに基づく「杉下村塾」だけに、ねらいは人の活性化だ。遺伝子を一つ組み換えるとまったく異なった性格となるように、地域の人が一人目覚めれば、そして「地域を科学する」目を養えば、その地域が大きく変化するのではないか。そんな思いが込められている。
2つの大きな特徴
集団には二つの大きな特徴がある。一つは、最近になって注目されているNGO(非政府組織)のような柔軟な手法を、早くから採用していた点だ。
NGOのような柔軟さとは、今夏に米子市で開催された「北東アジア経済フォーラム」がいい例だ。国交がない朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の第一線の官僚も参加し、経済交流について話し合った。
国交がない国同士の話し合いは、国レベルという公式ルートでは困難だ。しかし、NGOの旗のもとであれば、各国一流の研究者、官僚らが自由に集まり、具体策を立案することができる。そして、それぞれの国に戻って立案した策の具現化を図る。
「杉下村塾」はまさに、そのフォーラム的な存在だ。各地域の行政マンや有志が集まり、地域の活性化策を自由に論じ合い、さらに「科学する目」を養い、自らを高めていく。そしておのおのの地域に戻り、地域を変えていく。硬直した行政、古くからの習わしなどとは異なるシステムや手法で、閉塞した地域の状況を変えていこうとしたのが、集団の持つ「NGO的な柔軟性」である。
もう一つの特徴は、地域の人々、または地域の持つ力を引き出すことで活性化を図ろうとした点だ。
従来、過疎にはインフラを「たし算」することで、脱却を図ろうとしてきた。しかし、それは際限のないたし算競争をもたらした。田舎がたし算しても、都会がたし算すれば相対的には変わらない。
集団は人々の心に焦点を据えた活動を繰り広げることで、人々と地域の持つ力を引き出そうとした。地域の欠点をインフラで補うのではなく、普段見逃している地域の美点を改めて見つめ、魅力を引き出そうとした。「脱たし算競争」を実現しようとした。
融合し新たな力
「杉下村塾」は回を重ねるうちに、変化している。当初はスクーリング形式だった。手弁当で駆けつけた大学教授らが活性化に必要な方策を「教える」スタイルだった。これが五回目ごろから先生、生徒の区別なく、テーマを互いに論じ合う形式になっていった。
先生と生徒の立場がくるくる入れ替わる。集団いわく「先生徒」というスタイルだ。近年は「共有主義」を標ぼうしている。参加した「先生徒」たちが、ある概念を共有して「融合」し、新たな力を生み出す。「教える」「先生徒」「共有主義」と参加者も進化していっている。
集団の事務局長を務める寺谷篤さん(五〇)は「人々が融合したことで、新たな化学反応がこれから起きる。どんな反応が起きるかわからないが、地下のマグマが噴き出るような爆発があるのではないか」と話す。
どんな爆発になるのか。それがポスト「杉下村塾」であり、二十一世紀の地域活性化の端緒の一つになるかもしれない。そんな「爆発」を論じる最終回の杉下村塾のテーマは、「題名のない杉下村塾」だ。(『平成10年度CCPT活動実践提言書』1999年10月、255ページ)

(2) 寺谷の言説(「学習重視志向の地域経営実践論」)の基盤には、鶴見和子の内発的発展論がある。鶴見は「内発的発展論は教育学」であると言う。

内発的発展論というのはどこに行きつくかわからない。到達点がない(中略)。もうひとつは、これは教育学なんですよ。分野としては、社会学よりも教育学なんです。社会学でいえば、社会化の理論。というのは、その人間のひとりひとりの可能性を実現、顕在化していく、伸ばしていく。それが教育です。(赤坂憲雄・鶴見和子『地域からつくる―内発的発展論と東北学―』藤原書店、2015年7月、97~98ページ)

(3) 智頭町は面積の約93%が山林であり、「杉のまち」としても知られている。町の標語(キャッチフレーズ)は「みどりの風が吹く疎開のまち」である。1990年10月現在の人口は10,670人、高齢化率は20.0%、2016年6月現在のそれは7,466人、37.8%を数えている。なお、前後するが、2015年10月現在における全国の高齢化率は26.7%、鳥取県は29.8%である。

備考
「CCPT活動実践提言書」のPDFファイルの入手を希望される方は、「市民福祉教育研究所」のブログの「プラットホーム」からお問い合わせ下さい。ご要望があれば「宅ふぁいる便」等で送信させていただきます。

ユネスコスクール・ESD・子ども民生委員活動:大牟田市立中友小学校における福祉教育の取り組み―資料紹介―

〇「子ども民生委員」をインターネット検索すると、複数の学校(小学校)の取り組みがヒットする。徳島県石井町立藍畑小学校の「藍畑子供民生委員会」「藍畑子供民生委員活動」は、1946年12月に平岡国市が創案した子供民生委員制度の系譜につながるものとして有名である。福岡県大牟田市や高知県土佐清水市、熊本県天草市、島根県江津市二宮町などにおける「子ども民生委員活動」等の取り組みも注目される。なかでも、大牟田市立中友小学校のそれは、「ユネスコスクール」(注①)としての「福祉教育」を軸にした取り組みであり、興味深い。
〇周知の通り大牟田市では、2011年度から「ユネスコスクールのまち おおむた」を合い言葉に、市立のすべての小・中・特別支援学校(2016年4月現在、小学校20校、中学校9校、特別支援学校1校)がユネスコスクールに加盟し、「持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)」(注②)を推進している。
〇大牟田市におけるESDの取り組みは、エネルギー・環境学習、国際理解学習、世界遺産・地域学習、福祉教育などを通して、次のような児童・生徒の資質や能力の育成・向上を図るものである(注③)。
(1) 他者の立場や考えなどに共感し、協力して物事をすすめようとする態度
(2) 人・もの・こと・社会・自然などと自分のつながりを大切にしようとする態度
(3) 自分の発言や行動に責任をもち、物事に主体的に参加しようとする態度
(4) 情報や資料等をもとに公平に判断し、深く考え、肯定的に受けとめたり、代わりの案を考えたりする力
(5) 人・もの・こと・社会・自然などのつながりやかかわりを理解し、総合的に考える力
(6) 人の気持ちや考えを大切にしたり、自分の気持ちや考えを伝えたりする力
〇中友小学校は、ESD の一環として、「地域に根ざした福祉教育」を1、2年生の「生活科」と3年生以上の「総合的な学習の時間」において、6年間にわたり段階的・継続的に実施している。そういうなかで、5年生が「子ども民生委員活動」に取り組んでいる。それは、「他者との関係性・社会との関係性を認識し、高齢者世代・保護者の世代・児童の世代の3世代の交流を促進させ、世代間の『つながり』や『かかわり』を大切にした活動」(注④)である。そのねらいは、児童・生徒を地域社会をつくる担い手として捉え、学校と家庭、地域との信頼関係を深め、地域の教育力も高めることによって、豊かな共生社会を構築することにある。
〇筆者(阪野)はかつて、徳島県の子供民生委員制度(活動)について、次のように評したことがある。「子どもの生活と社会に根ざした子供民生活動は、『子どもと大人』『地域と学校』『福祉と教育』を限りなく接近させ、その組織的なつながりのなかで活動の究極の目標である『民生村造り』すなわち福祉コミュニティづくりを進めたのである」(注⑤)。中友小学校の取り組みはそれに通底するものであると言えよう。
〇以下に、中友小学校が発行した『平成26年度/ESD 「子ども民生委員活動」ハンドブック~「総合的な学習の時間」のステージで~』のなかから、「総合的な学習の時間全体計画」(資料1)、「ESD全体計画」(資料2)、「ユネスコスクール全体計画」(資料3)、「子ども民生委員活動」(資料4)を抜萃して紹介する。

中友小学校資料1/6月20日
中友小学校資料2/6月20日
中友小学校資料3/6月20日
中友小学校資料4/6月20日
〇以上から、中友小学校では、児童・生徒の実態に応じた横断的・総合的で、系統的かつ計画的な「地域に根ざした福祉教育」が展開されている。しかもそれは、ユネスコスクールの理念やESDのねらいにかなうものである。評価されるところである。言うまでもなく、ESDが求める「持続可能な社会」を構築するのは「ヒト」(子どもから大人までの「市民」)である。学校教育のねらいのひとつは、地域との「つながり」や「かかわり」のなかで、「地域に学び、地域に生かし、地域を創る」ことにある。改めて認識しておきたい。
〇学校福祉教育は、地域の「社会福祉問題」(中友小学校がいう「地域素材」)を学習素材とし、「体験学習」を重視する教育活動である。従ってそれは、本来、学校内で自己完結するものではない。また、児童・生徒の発達課題や生活課題に対応して全教科・全領域で取り組まれ、地域を基盤とした学校経営の視点を持つことが必要不可欠となる。すなわち、学校福祉教育は、学校教育の根幹に位置づくものであり、学校を挙げて体系的・組織的に取り組むべきものである。
〇さらに付言すれば、地域に根ざした学校福祉教育をより豊かなものにするためには、「住民の暮らし理解とまち学習」「生き抜く力と共に生きる力の育成」「市民性形成のための教育営為」「ICFの理念に基づくまちづくり」「地域を基盤とした福祉教育推進プラットホームの構築」などについて思考し、取り組む必要があろう。その際に問われるのは、行政や、社会福祉協議会をはじめとする関係機関・団体・施設などの意欲と力量であり、それらと学校との「共働」である。


① ユネスコスク−ルでは、ユネスコの理念(国際平和と人類の共通の福祉)の実現をめざして、(1)地球規模の問題に対する国連システムの理解、(2)人権、民主主義の理解と促進、(3)異文化理解、(4)環境教育などのテーマについて、質の高い教育が実践されている。2015年6月現在、世界182か国の国や地域に10,422校のユネスコスクールがある。日本国内の加盟校数は、2016年3月現在で939校を数えている。文部科学省と日本ユネスコ国内委員会では、ユネスコスク−ルをESDの推進拠点として位置づけている(「ユネスコスクール」文部科学省ホームページ)。
② ESDは、「現代社会の課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組む(think globally, act locally)ことにより、それらの課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出すこと、そしてそれによって持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動」である。言い換えれば、ESDは、地球上で起きている様々な問題が、遠い世界で起きていることではなく、自分の生活に関係していることを意識づけることに力点をおくものである。地球規模の持続可能性に関わる問題は、地域社会の問題にもつながっている。だからこそ、身近なところから行動を開始し、学びを実生活や社会の変容へとつなげることがESDの本質である(『ESD(持続可能な開発のための教育)推進の手引(初版)』文部科学省国際統括官付/日本ユネスコ国内委員会、2016年3月、4ページ)。
ESDは、2002年に開催された第57回国連総会において、我が国が提唱した。また、2005年から2014年を「国連持続可能な開発のための教育の10年(DESD:United Nations Decade of Education for Sustainable Development)」とすることが決議され、以降、ユネスコを主導機関として世界的にESDの推進が図られている。
学習指導要領に関しては、2008年3月(小・中学校)と翌2009年3月(高等学校)に公示されたそれにおいて、「持続可能な社会の構築」の観点が盛り込まれた。以後、ESDの普及・促進が図られることになる。
「ESDと福祉教育・ボランティア学習」に関しては、『日本福祉教育・ボランティア学習学会 研究紀要』Vol.14(2009年11月)で、「持続可能な社会をつくる福祉教育・ボランティア学習―いのち・くらしとESD」が特集されている。参照されたい。
③「『ユネスコスクールのまち 大牟田』について」大牟田市教育委員会ホームページ。
④ 『平成26年度/ESD 「子ども民生委員活動」ハンドブック~「総合的な学習の時間」のステージで~』大牟田市立中友小学校、2014年10月、2ページ。
⑤ 阪野貢『戦後初期福祉教育実践史の研究』角川学芸出版、2006年4月、29ページ。

謝辞
本稿をアップするにあたって、大牟田市立中友小学校の校長・本村勝則先生と教頭・上田幸子先生には格別のご高配を賜りました。ここに記して深く感謝の意を表します。  
                                                                            

高島巌先生と木谷宜弘先生のこと:木谷宜弘「学校における福祉教育を考える―5つの柱―」(1979年10月)―資料紹介―

いま、筆者(阪野)の手もとに、雑誌『ボランティア』(富士福祉事業団発行)が10冊ほど収められた手製のファイル(「高島先生の思想と哲学」)がある。雑誌の各号には、「わが国ボランティアの先駆者」(三浦富雄)と評された高島巌先生(1976年5月没、享年78)の原稿や関連記事が掲載されている。筆者は、1975年頃から児童養護施設・双葉園にお邪魔するようになった。そして、園長の高島先生から直接、「いそいではいけない/かまえてはいけない/たえることだ/まつことだ/いのることだ」という“ボランティアする心の原点”についてご指導いただいた。およそ40年も前のことである(注①)。
『ボランティア』の1979年10月号(「福祉教育を考える」)に、「日本のボランティアの父」(大橋謙策)と評される木谷宜弘先生(2012年10月没、享年83)の一文が載っている。それは、1979年8月に開催された「学童・生徒の福祉教育を考えるつどい」における木谷先生の報告(「まとめ」)である。その2年前に、「学童・生徒のボランティア活動普及事業」がスタートしている。その点において、この報告には、木谷先生の福祉教育への熱い思いや強い願いが込められている。以下に、編集者による前書きと木谷先生の報告を紹介する。

「学童・生徒の福祉教育を考えるつどい」から 
「学童・生徒の福祉教育を考えるつどい」が、8月7、8日、東京・大手町のサンケイ会館で開かれた。全国から約300名の関係者が参加したが、行政、社協、ボランティア推進機関担当者にまじって、小・中・高校教諭など学校関係者が出席者の半数を占め、なかでも多くの小学校長が出席して注目された。
つどいでは、福祉教育の重要性が強く叫ばれるようになった今日、これからの、小・中・高校生に対する福祉教育を、どう進めればよいのか。社会福祉、社会教育、青少年団体などで、いままで推進されてきた実績をふまえて、そのありかたを中心に、お互いの理解を深め、発展の方策をさぐった。
ここに紹介するのは、このつどいを主催した全国ボランティア活動振興センター・木谷宜弘主幹の、福祉教育についてのコメント(中略)である。
(「福祉教育を考える」『ボランティア』第14巻第5号・通巻第161号、富士福祉事業団、1979年10月、3ページ)

学校における福祉教育を考える――全国ボランティア活動振興センター主幹・木谷宜弘
「福祉には教育の支えが必要だ」と、かねがね思っている。それは、福祉の風土づくりという「百年の計」に相当する大仕事は、人間の意識変革なしには成立しえないからである。そして、この人間の意識変革は、教育活動によってなされていく。
「福祉教育」という言葉が使われるようになったのも、このような観点からで、この言葉の概念規定が論議されたのは、昭和45年度全国社会福祉会議であった。翌年に「福祉教育とは、憲法にもとづく社会的基本権としての、生活上の福祉の確保をさまたげる諸問題を、地域社会における住民が、みずからの問題として、自覚的に認識し、その解決のための運動を、継続的に展開するのを援助するための、教育的活動である」と定義づけられた(注②)。その対象は、一般成人に対して行われるものと、児童、生徒に対して行われるものとに分けられるが、学校における福祉教育は後者の教育体系の一部であるといえる。
社会福祉の分野においては、実践が理論に先行することが常で、学校における福祉教育も、その実践は終戦直後にはじまった。昭和22年、福島県(徳島県:阪野)でスタートした「子ども民生委員制度」は今日の社会福祉協力校の前身であった。「すべてのお友だちを幸福にしよう」という合言葉のもとにすすめられたこの制度は、後に、全県下の小・中学校はもとより、一部県外にまで波及した。
昭和24年、中央共同募金会委員会が、「国民たすけあい共同募金、学習指導の手引」を製作して、中学、高校に配布し、教師の協力を求めることによって、学校における福祉教育の必要性について、一石を投じた。昭和25年、神奈川県において、「社会福祉研究普及校制度」がはじめられた。この制度は、学校教育の荒廃が目立つようになった昭和40年ころから、他県へ波及しはじめ、昭和50年には、10県に広がっていた。
全国社会福祉協議会が、この制度の実現に取り組んだのは、昭和46年ごろからであったが、実際に、国庫補助が実現し、都道府県社協の協力によって、全国普及がはじまったのは、昭和52年度からであった。現在、3年目を迎え全国に638校(うち国庫補助対象校は288校)の小・中・高校がこの実践に参加している。
今回、厚生省、文部省、青少年育成国民会議の後援のもとに開催した「学童・生徒の福祉教育を考えるつどい」は、以上のような歴史的経緯を背景として実施されたもので、当日、参加した学校教師、社協職員、行政関係者、ボランティアなど300名の、貴重な実践、経験をふまえて、その中から、学校における福祉教育の今後のすすめ方、発展方策を明らかにしようというものであり、このつどいの開催とこれからの実践は、福祉と教育が1つの目標をめざして協働するという点で、画期的意味をもっている。それだけに難問も多く、じっくり腰をすえてかからなければならない「運動」であると心得ている。

5つの柱
小・中・高校生の福祉教育について、重要な点だけを、とりまとめますと、5つの柱になるようであります。
まず第1は、福祉教育の概念をどうとらえるか、ということです。これには、いろいろ論議もございますが、一応福祉教育と学校教育との「教育」という観点からみた概念は、一致してきているようであります。人間教育――心を豊かにする人間教育、あるいは市民教育、全人教育を、1人1人の主体性を確立しながら、思いやりのある、そういう態度や考え方を身につけていく。こういう点では、学校教育も福祉教育も共通である、ということが打ち出されています。
これは両者における大事な基盤です。その基盤が共通し、かつ目標等も共通するものではありますけれども、しかしまた、福祉固有の視点というのも存在するわけでありまして、その視点からいいますならば、学校教育の学習全教科、またその他学科外の活動などを、もう一度見直して、それにより福祉の理解、あるいは人権というようなものの感覚を、もっと身につける必要があるのではないかと思うのであります。
長年にわたる社会的な風潮が作られるなかで、人間の、1人1人の人権が尊重されるという状況が、だんだんと家庭や学校、地域社会の中で培われる機会がなくなってきています。で、こういう感覚を、体験学習を通して身につけさせる。学校教育に、努めてそういうあり方なり視点を持ち込むことが、学校教育全体を完成させていくということにもなるのではないでしょうか。
福祉ということは、ずいぶん変わってまいりました。昔の救貧的な福祉という考え方ではありません。気の毒だとか、かわいそうだということではなくて、すべての人たちと共存していく。そういう社会をどう作るのか。お互いに自立し、助け合える、そういう社会をどう作るのか。また、そういうものは、与えられるものではなくて、1人1人が参加し、そして求め作り出していく、という主体的な態度や考え方が、身につかなければならないことなのです。そういう意味で、福祉というものの視点を、もう一度学校教育の中で考えていただくことが、とても大事だと思われます。
2番目に、福祉教育の方法という立場から考えてみましょう。福祉教育というものは、実践と学習とを並行していくところに特徴があります。体験学習ということばが、そういう意味で、よく使われているわけですが、その「体験学習」を、あまり狭くとらえてはならない。つまり障害者、老人らと交流することが、体験学習だというふうに、狭く、それだけに限定してとらえてはならない。福祉の視点から考えてみた場合、教科の全般において、さまざまな体験学習を織り込むことができるように思います。
また、行事中心という考え方も大切ではありますが、日常生活との関連を考えていく、日常生活全般にわたって、体験学習を考えていく必要があるでしょう。生活実践のなかで、そういうものを積み上げていく、ということが大事です。
学校内だけで完結するということも、それだけではいけないのではないか。やはり家庭、地域社会、そういうところへ目を向けていくということも、大事でしょう。ボランティア実践を、単に奉仕するということではなく、その精神的な基盤である福祉の視点、あるいはお互いが自立し合い、その自立を助け合う、こういうふうな精神的な基盤についても、考えていかなければならない。そういう体験学習、実践と学習のくり返しのなかで、教育指導側は、それを積極的に推進する必要があるでしょう。
福祉教育の方法の2つ目として、学校の年間計画の中に、福祉教育を正確に位置づける。そういうことの設計図を作ることが、大事だということも打ち出されています。そして3つ目には、子どもの成長、発達の段階に応じたプログラムが、大事だということです。とくに子どもの自主性、主体性を、どう育てていくかという場合、今日の子どもたちの実態のなかで、これはなかなか難しい点もあるようです。
いったいどうやって、そういう自主性、主体性を培っていけばいいのか。福祉教育という観点のなかで、そこで出されております手がかりは、1つは共鳴と共感というものが、そういうプログラム、あるいは体験学習の中に織り込まれることによって、子どもたちは、その中から呼びさまされていく、ということが見られるのではないでしょうか。それからまた、異年齢間の交流、同学年同士ではなくて、学校でも縦の学年の交流、あるいは社会的に、老人や障害者や青年や、さまざまな縦の年代層の交流というのも、1つの手がかりになると思えるのです。
そこで、教科の中に、そういう福祉というものの視点を織り込む、そういうプログラムを織り込むと同時に、教科の中から、逆に体験学習を引き出していくということも、考えていくべきではないか。それを身近な問題から考えていく。そして取り組むということで、社会的な弱者というのは、けっして社会に存在するだけのものではなく、学校の同じクラスの、同じ仲間でも、いわば落ちこぼれがどんどん出ているのであって、こういう状況のなかで、そういう問題を考えることができるのではないだろうか。
あるいは、皆がどんなに健常だと思う状態であっても、医学的にはノイローゼになっていたり、苦しみ悩むそういう状況を、多くの子どもの中に見られるわけで、そういう状況の子どもたちに対する相互のかかわりあいという問題を、生活の中で、学校生活の中でも、いわば福祉の視点のうちに、問題としてとらえることができるでしょう。
柱の3番目は、これはどうしても、まず学校の先生がたの、意識の問題で、教師間の合意づくりを、どう進めたらよいかということです。
これは非常に、重要なポイントでありますけれど、難しいものを含んでいるといえそうです。教師のかたがたの、意識統一というものは、いっぺんに図れるわけではない。やはりそこに、非常な情熱を傾ける先生がいらっしゃらねばならない。そういう核になる先生が、まず自らの情熱を燃やすことによって、周囲を高めていく。影響を及ぼしていく。こういう存在になることが、大事ではないかということです。
郷土学習というのが、教師集団で深められていて、いろいろ例示されています。そして、その郷土学習などのなかから、学習全教科における福祉の視点を皆で考え、共通の理解が広がっていくことが期待されます。
なおまた、学級運営という側面から考えた場合、これは1人の先生の問題ではなく、すべての先生の問題になってくるでしょう。そういう1つの困難を突破した経験も語られていますが、こうして先生自身を変え、そこで当然子どもたちが変わり、非常に大きな影響力、あるいは説得力が生じることになります。子どもたちと一緒になって、福祉体験をすすめていくなかで、そういう変化を、大きく子どもたちの生活の中に生かし、影響を与えた例はたくさんあります。
4番目の大きな柱は、「学校と地域社会」ということばで表現できると思います。今日の社会は非常に閉鎖されている。縦割りになっている。管理化され、制度化がすすんでいる。したがって専門化、分化されている社会であって、ともするとお互い閉鎖的な存在になりやすいわけです。
社会福祉の分野では、今「施設の社会化」ということが、非常に強く叫ばれています。しかし家庭自体も、社会化していないのではないか、というふうなこともいわれております。学校とて、社会に開かれた存在として、開放される、開かれていくことが大事ではないでしょうか。そして、ともにそういう視点で考えた場合、お互いに結びつく接点が、生まれてくると思うのであります。
そこで学校としては、外に出て行く―福祉体験の場合、よく施設を訪問するという形で、交流が見られるわけで、それも1つのやり方ですけれども、学校の中に地域的なそういうものを呼び入れる、福祉的な資源を招き入れていくということも、大事なことではないでしょうか。老人であるとか障害者を学校に招いて、子どもたちの先達、先生として、いろいろな点での指導をしてもらうということも、逆にあっていいのではないでしょうか。
あるいはこれが、学校が地域活動に参加することにつながる。その場合、地域参加プログラムを企画する段階から、学校の先生が参加していくということが大事であり、地域社会側の配慮も必要でしょう。同時に、何といってもPTAが、その媒介となってもらいたいものです。福祉教育を課題として、PTAとともに考えるというふうなことが大事でしょう。それを通じて家庭の教育、地域社会における教育機能を進捗させることも、大いに重要でありましょう。
福祉と教育は、今相互に支え合って、はじめて相互に完結し合えるという関係にあると思います。そういう意味では、相互にどう理解し合うかという努力が必要です。よそゆきのつきあいではなく、ふだん着のままのつきあいが大事です。日ごろの人間関係づくりを、心から進めていくということが大事です。
そういう努力は、学校だけではなくて、地域社会側の努力も求められるわけです。地域社会の側としては、さまざまな社会的な問題、福祉の課題を、学校も共有化していく努力を、積極的に働きかけていく必要があると思います。確信をもって学校に呼びかけていく。誠意をもって働きかけていく。こういうことによって、学校も機能を果たすことになります。
誠意ある働きかけ、そして小さな働きかけが、割りと少ないのではないでしょうか。及び腰で、ただ頭を下げながら、働きかけるというふうな状況が見られるのではないでしょうか。そういう意味では、地域課題、福祉課題は、すべて現場にある人たちの、共通の課題と思います。それと取り組む、あるいは学習する、話し合う、そういう点を共有化していく必要があります。
そういう場合、やはり社会福祉協議会の果たす役割は、非常に大きいようです。とくに情報などを提供すること、また、いろいろな関係者を融合し、組織化する、一緒に協働し合える状態を作る、そういう共通の土俵作りに、力を尽くしている。それらをもっと掘り下げること、あるいは連絡調整というふうな問題について、より努力をする必要があるでしょう。
5番目の柱は、そういう福祉教育をするための条件づくりということです。いくつかの大事な側面が打ち出されているのですが、その1つに、今回のように全国のかたがたが話し合うという機会を持てたことが、ずいぶんと大きな支えになるようであります。学習や経験交流の場を、小地域から全国規模の地域まで、できるだけ頻繁に持つべきではないか。福祉と教育の、両者の立場の人たちが、ともに机を囲んで勉強し合い、経験を交流することが大事であるということです。
ところでこういう場合、かなり行政官の席などが目につきます。けれどもこれは、公民相互の努力により、その結果の、現場で活動する人々が、よりお互いに結びつくことによって、そういう立場の席は埋ずめていけることになるでしょう。いや両者の、もっとスムースな接近も、必要であると思うのです。福祉教育といった場合に、これは「手づくりの運動」というのが本筋だからです。弾力的に、創造的に取り組むべきです。あまり教科書的に、画一的にすすめるものではありません。
最後に、学校においても、地域社会の中にも、こういう福祉教育という視点をふまえる人が、いよいよ必要ではないかと思われます。これからはそういう人づくりを、何としてもすすめていきたい。そういう意味で、制度的にも、たとえば福祉教育主事の配置であるとか、あるいはコーディネーターの整備というふうなことを、考えるべきだと思います。
以上、今回の集いにおける出席者の発言、提案の大筋を咀嚼し、「学童・生徒の福祉教育」を考える5本の柱として、まとめてみました。
不十分ではありますが、ご報告として申し述べました。
(木谷「学校における福祉教育を考える」『前掲誌』4~8ページ)

以上から、読みすぎの感なきにしもあらずだが、福祉教育(学校における福祉教育と地域を基盤とした福祉教育)を捉える視点として、(1)形成的固有の視点、(2)問題解決の視点、(3)人間教育の視点、(4)生涯学習の視点、(5)市民主体の視点、(6)生活実践の視点、(7)市民運動の視点、という7つの視点を押さえておきたい。このような視点から、福祉教育の基本的な性格や特徴、構造や機能などについて多面的・多角的かつ複合的に分析・考察することが求められる。なお、7つの視点のうち、例えば(1)は、福祉教育は歴史的社会的背景と必要性のもとに形成され、それ自体としての固有性を備える教育活動である、という視点である。(7)については、木谷先生は、福祉教育は「じっくり腰をすえてかからなければならない『運動』である」。「運動を進めていくためには、運動の思想、哲学というものがなければなりません」(木谷「どう進めるか―学び合いながら―」『前掲誌』12ページ)、という。市民運動としての福祉教育「運動の思想、哲学」の構築は、今日も、ひとつの大きな課題として残されている。また、木谷先生が使用する「福祉の風土づくり」「郷土学習」という用語は、「福祉のまちづくり(運動)」につながるものとして注目しておきたい(注③)。


① 高島巌先生は、「児童福祉一筋の道」を歩まれ、1951年5月に制定・宣言された「児童憲章」の草案を起草したひとりである。また、「母の日」の制定に尽力されたことでも知られる。筆者が初めて双葉園を訪ねたとき先生は、開口一番、「双葉園の印象はどうですか。双葉園がこの“まち”にあることに違和感を感じられたのであれば、それは私の“負け”です」と話された。いまでも鮮明に覚えている。「施設の社会化と地域化」が議論されていたときである。
2代目園長の星野卓郎先生と3代目園長の高島昭子先生にも、格別のご指導やご支援をいただいた。双葉園にお邪魔すると、必ず玄関にはスリッパが一組並べてあった。そして、先生が出迎えてくれた。おいしいお茶をいただきながら、豊富な経験に基づく「児童養護」の理論と実践や福祉マインドなどに関する話をお聴きするのは、筆者にとっては“学び”そのものであった。また、贅沢で至福の時間でもあった。懐かしく思い出される。
② 1971年5月、全国社会福祉協議会の福祉教育研究委員会(委員長・重田信一)によって報告された「福祉教育の概念について―福祉教育に関する中間答申―」である。
「福祉教育とは、憲法にもとづく社会的基本権としての生活上の福祉の確保をさまたげる諸問題を解決し、かつ、住民の生活における福祉を増進するために、地域社会における住民が、それをみずからの、および、住民共通の課題として認識し、そのうえにたって、福祉増進の住民運動を自主的・継続的に展開するのを側面的に助けることを目的としておこなわれる教育活動である。」(阪野貢『市民福祉教育をめぐる断章―過去との対話―』大学図書出版、2011年1月、70~81ページを参照されたい。)
③ 市民運動としての「福祉の風土づくり」運動は、京都市(1973年)や横浜市(1974年)が先導的な役割を果たし、1970年代半ば以降、市民(住民)と行政の協働によって展開された。学校教育における「郷土学習」に関しては、小学校では1968年改訂(1971年度実施)、中学校では1969年改訂(1972年度実施)の学習指導要領から、「地域学習」という用語が使用されるようになった。なお、「郷土」は心情的な要素をもち、「地域」は客観的な意味をもつ用語である。

補遺――「ボランティアのはたらきの原点」「ボランティアする心の原点」(高島巌)
ボランティアのはたらきは
かまえたものであってはならない
ボランティアのはたらきは
活動ではない 
生活なのだ 
活動にはかまえがある
けれども
生活にはかまえはない
活動には限界がある
けれども
生活には限界はない

ボランティアのはたらきは
もてるものが
もたないものに
ではない
しあわせなものが
ふしあわせなものに
ではない
もてるものも
もたないものも
しあわせなものも
ふしあわせなものも
ともに考え
ともに学び
ともに生活しあうことなのだ

いそいではいけない
かまえてはいけない
たえることだ
まつことだ
いのることだ

人間はみな
ボランティアする権利をもっているのだ
その権利は人間にだけあたえられた
楽しき権利なのである

高島巌『子どもは本来すばらしいのだ』誠信書房、1963年6月

静岡県における福祉教育の取り組み:「地域福祉教育」の推進をめざして―資料紹介―

本稿は、あるブログ読者からの求めに応じて、静岡県における福祉教育の取り組みについて、歴史的に重要なトピックを中心に概観するものである(注1)。

1 学校における福祉教育の展開
▼「社会福祉研究普及事業」「社会福祉協力校事業」
〇静岡県における「学校福祉教育」の制度的展開は、1967年度からはじまる。県民生労働部(1969年度から民生部)によって創設・実施された「社会福祉研究普及事業」がそれである。1977年度に国庫補助事業の「学童・生徒のボランティア活動普及事業」が制度化され、全国的に実施される10年前のことである。
〇当時、神奈川県では、県民生部によって1950年度から「社会事業教育実施校」(1967年度から「社会福祉研究普及校」)事業が継続的に展開されていた。また、長野県では、県社会福祉協議会(以下、「県社協」)によって1963年度から「社会福祉普及協力校」事業が実施されていた。静岡県における学校福祉教育への取り組みは、神奈川県と長野県に次ぐ先進的なものであった。
〇静岡県の社会福祉研究普及事業は、1973年度に県教育委員会に全面的に移管され、翌1974年度をもって廃止された。
〇その後、静岡県では1977年度から、福祉教育の全国的展開が図られるなかで、新たに県社協によって「社会福祉協力校」事業が実施されることになった。その目的は、「小学校及び中学校・高等学校の学童・生徒を対象として、社会福祉への理解と関心を高め、社会奉仕、社会連帯の精神を養うとともに学童・生徒を通じて家庭及び地域社会の啓発をはかる」ことにあった。
〇社会福祉協力校事業の指定校数は、例えば1977年度第1期から2006年度第25期までで693校(小学校396校、中学校223校、高等学校74校)を数え、事業対象となる県内953校の小・中・高等学校の約73%を占めた。また、多くの指定校では、全国的な傾向と同様に、「訪問・交流活動」「収集・募金活動」「清掃・美化活動」の“3大活動”や「疑似体験」「技術・技能の習得」「施設訪問(慰問)」の“3大プログラム”を中心にした体験活動が実施・展開された。それは、「思いやりの心」や「ともに生きる力」を育むことを目標とするが、安易な疑似体験や施設訪問だけでは「貧困な福祉観の再生産」(原田正樹)を促すのではないかと問題提起されることになる(されている)。
〇この社会福祉協力校事業は、1987年度に「社会福祉教育実践校」事業、1991年度に「福祉教育実践校」事業、2007年度に「地域福祉教育実践校」事業などと名称変更を重ねながら、継続的に実施・展開された。また、県社協は、事業・活動の推進を図るために、各種の調査・研究活動をはじめ、連絡会・講演会・セミナー等の開催、実践報告書や副読本の発行、教材ビデオの製作などを行った。

▼「福祉教育実践校フォローアップ事業」「ボランティア活動・福祉教育推進担当者連絡会」
〇社会福祉協力校事業のなかで、「福祉教育実践校フォローアップ事業」と「ボランティア活動・福祉教育推進担当者連絡会」が注目される。前者は、指定終了後の学校に対してその活動を推進するために、1990年度から実施された。ちなみに、1990年度には20校の小・中・高等学校が助成(5万円)を受け、1999年度までの10年間でその学校数は、新規指定だけで314校を数えた。後者は、ネットワークの強化を図るために、県民生部、県教育委員会、県社協、それに県ボランティア協会の4者の実務担当者による定期的な情報交換や研究協議の場として、1985年度から1997年度にかけて継続開催された。福祉教育のネットワーク化は、依然として今日的な課題でもある。

▼「高校生ワークキャンプ」「サマーショートボランティア計画」
〇1977年度、静岡県では、他県に先駆けてもうひとつの福祉教育事業が実施された。学校外の福祉教育実践としての「高校生ワークキャンプ」事業がそれである。第1回の高校生ワークキャンプは、静岡市奉仕活動連絡協議会と日本青年奉仕協会によって開催された。その目的は、ボランティア活動についての学習や実践を通して、ボランティア精神の育成を図ることにあった。1977年7月、2泊3日の日程で、清水市少年自然の家で実施され、参加高校生は38名を数えた。第2回は、県社協と静岡市奉仕活動連絡協議会の共催により、1978年8月、3泊4日の日程で、県立中央養護学校で実施された。参加者は定員60名のところ120名を数えた。
〇それ以降、高校生ワークキャンプは、1991年8月に開催された第15回まで、県社協をはじめ市町村社協、県ボランティア協会、社会福祉施設などの連携・協力のもとに、県下各地で実施された。第1回から第15回までの参加者は4,808名、開催地区は106ヵ所を数えた。
〇こうした高校生ワークキャンプのほかに、静岡県では、県ボランティア協会によって、1982年度から福祉教育や社会参加活動の推進を図る事業・活動の一環として「サマーショートボランティア計画」が実施された。それは、在学青少年や一般社会人などを対象に、「夏休みや夏季厚生休暇を利用し、未体験の世界へボランティアとして挑戦し参加する事により、参加者に生きる尊さや、自分自身の生き方を考え、福祉に対する眼を育くむ機会を得ること」をねらいとした。第1回は、県下44ヵ所の受け入れ施設に、460名を超えるボランティアが参加した。
〇高校生ワークキャンプとサマーショートボランティア計画では、参加者の自主的・主体的な取り組みが期待された。しかし、活動メニューは、高齢者や障がい者との交流活動をはじめ、社会福祉施設や養護学校での「奉仕活動」、まちの「点検活動」などに限定されがちであった。したがって、一般高校生の関心や理解を広げたり、参加高校生のボランティア活動への日常的・積極的な参加を促すにはおのずと限界があった。また、ワークキャンプがどれほど地域社会と結びつき、地域社会に対してどのような働きかけをしたかという点についても疑問が残った。
〇以上の社会福祉協力校事業やワークキャンプ事業などが実施・展開されてきた主要な場は、社会福祉施設であった。多くの施設が福祉教育事業を受け入れ、また独自の展開を図ってきた。なかでも「天竜厚生会」の取り組みが注目される。天竜厚生会では、1981年度に地元天竜市の委託を受けて福祉教育事業に取り組み、5年間でおよそ1万3,000名の参加者を数えた。以後、福祉教育のハンドブックや実践報告書の作成、福祉教育プログラムの開発など、福祉教育の実践と研究に積極的に取り組んでいる(注2)。

▼「三島高等学校家庭科福祉コース」
〇学校における福祉教育の展開で忘れてはならないものに、1986年度の、三島高等学校家庭科「福祉コース」の開設がある。全国で最初の取り組みであった。ちなみに、1987年度には、兵庫県立新宮高等学校と鹿児島県の城西高等学校に「福祉科」が設置されている。その後、2003年度から、高等学校学習指導要領の改訂によって専門教育に関する科目「福祉」が創設され、高校福祉科教育が全国的に実施・展開されることになる。

2 地域を基盤とした福祉教育の展開
▼「小地域福祉教育推進事業」
〇静岡県における「地域福祉教育」の本格的な展開は、1998年度からはじまる。県社協によって新設された「小地域福祉教育推進事業」がそれである。
〇その背景には、1990年代以降、社会福祉基礎構造改革の推進が図られ、市町村における在宅福祉サービスを軸にした地域福祉が実体化するなかで、その主体形成が以前にも増して強く求められる社会的状況があった。また、いじめ、不登校、学級崩壊などの学校病理現象が広がり、子ども・青年の生活や発達の歪みが顕著になるなかで、「生きる力」(文部科学省)や「社会力」(門脇厚司)の育成が要請された。それは静岡県においても例外ではなかった。
〇小地域福祉教育推進事業は、具体的には、1996年12月から1998年3月にかけて開催された県社協の「福祉教育推進検討会議」の提言によるものである。検討会議では、1977年度からの福祉教育実践校事業の取り組みを総括し、それに基づいて福祉教育の新たな展開とりわけ地域ぐるみの福祉教育の推進方策について研究・協議された。そこでは、学校福祉教育(「福祉教育実践校事業」)の成果と課題、今後の重点方策について、次のように整理・報告された。

福祉教育実践校事業の成果と課題
【成果として】
①県内学校総数の4割以上が実践校活動を実施した。
②体験学習活動が定着した。
③指定校実践の中で地域と連携し、学校教育目標と融合した先駆的取り組みが出てきた。
④新規指定校教員と当該社協職員合同のオリエンテーションの場が定着した。
⑤指定校教員と社協職員合同の情報交換・研修の場である連絡会の開催が定着した。
⑥実践校活動の記録である報告書の作成が継続的になされてきた。
【課題として】
①学校内での推進体制(公務分掌等での位置付け)
②体験プログラムの目的、効果の検証のための作業
③学校教育目標と融合した活動展開や「総合的な学習の時間」での実践
④社協からの具体的取り組み方法の提示不足
⑤市町村社協対象の研修会や研究協議、個別支援の充実
⑥学校の実践活動への具体的支援の強化
⑦福祉教育推進計画の策定や地域福祉活動計画への位置付け
【今後の福祉教育推進の重点方策として】
①地域総体で福祉教育に取り組むための方策として「小地域福祉教育推進事業」の実施。
②中・長期的な課題に対応するための計画策定の検討を行う「福祉教育推進計画策定検討事業」に取り組む。

〇こうした「成果と課題」を踏まえて、小地域福祉教育推進事業は、「教育課題や地域課題が複雑化している近年、学校指定による取り組みに加え、地域総体で福祉教育に取り組む必要があるため、モデル的な小地域を設定して福祉教育の推進を図る」ことを目的に創設された。第1回は、1998年度から1999年度までの2年間で5地区(沼津市愛鷹地区、焼津市豊田地区、藤枝市西益津地区、島田市伊久身地区、小山町藤曲・落合地区)が指定され、1地区あたり20万円が助成された。第2回は2000年度から2001年度にかけて4地区、第3回は2001年度から2002年度にかけて2地区がそれぞれ指定された。
〇小地域福祉教育推進事業の実施は、学校しかも指定校中心の学校福祉教育から、地域を基盤とした地域福祉教育の新たな方向性を生み出した画期的なものであった。しかし、指定地区と県社協や市町村社協との連携・協働体制は必ずしも十分なものではなかった。その結果、指定校制度に基づく学校福祉教育を推進してきた市町村社協や、福祉教育と直接的あるいは主体的にかかわってこなかった小地域にとっては、その取り組みに苦慮することになる。

▼「静岡県における福祉教育推進に関する基本的な指針」
〇県社協は、「小地域福祉教育推進事業」の推進をより確かなものにするために、1999年12月に次のような「静岡県における福祉教育推進に関する基本的な指針」(以下、「指針」)を策定した。
静岡県平成11年答申
〇この指針は、1998年12月から1999年12月にかけて開催された「福祉教育推進計画策定検討委員会」によって策定されたものである。指針では、地域の社会福祉問題を素材に、福祉のまちづくりの実践・運動主体の形成を図ることが「福祉教育の目標」とされた。また、「福祉教育指導者」「福祉教育推進員(アドバイザー)」の発掘・育成・登用や「福祉教育推進計画」の策定などの方針が示された。抽象的かつ総花的になりがちな指針にあって、特筆されるところである。

▼「福祉教育指導者養成研修事業」
〇県社協は、上記の指針を受けて、2003年度から「福祉教育指導者養成研修事業」に取り組んだ。それは、地域福祉教育の指導者養成研修をめざして、地域福祉教育の基礎・基本の学習とそれに基づく実践プログラムの研究・開発を行うものであった。具体的には、初年度の「基礎研修」と2年度目の「スキルアップ研修」によって、参加者の地元社協との連携・協働を図りながら、実践プログラムの開発・企画・展開・評価が行われた。参加者は、2003年度は7地区から20名、2004年度は5地区から11名、2005年度は6地区から13名をそれぞれ数えた。

▼「静岡県の地域福祉教育推進に係る基本指針」
〇2000年以降、地方分権改革や教育改革が推進されるなかで、「地域福祉」の主流化や「新たな支え合い」の拡大、「総合的な学習の時間」の導入や「ゆとり教育」の見直し、そして「教育再生」の実行などが図られた。福祉教育に関しては、ICFの視点の導入、「ふりかえり」(リフレクション)の重視、地域ぐるみの展開、地域福祉(活動)計画の策定などの「福祉教育実践の新潮流」が見られるようになった。
〇そういうなかで、県社協は、地域福祉教育の新たな展開をめざして、2012年3月に次のような「静岡県の地域福祉教育推進に係る基本指針」(以下、「新指針」)を策定した。
静岡県平成24年報告1静岡県平成24年報告2静岡県平成24年報告3
〇この新指針は、2010年10月から2012年3月にかけて開催された「静岡県地域福祉教育推進委員会」によって策定されたものである。委員会では当初、「地域福祉教育推進計画」の策定を企図していた。しかし、新指針は、「県内福祉教育関係者の総意としての『計画』に至っていない」という判断から、「福祉教育関係者に向けた提案」として纏められている。それは、「計画」から“提案”としての「指針」にトーンダウン(後退)したことや、内容的にも静岡県における「福祉教育実践の新潮流」への具体的対応が不十分であった点などにおいて、いくつかの課題を残すものとなった。


(1) 本稿は、拙稿「静岡県における福祉教育の史的展開」『市民福祉教育の探究―歴史・理論・実践―』(みらい、2009年、43~63ページ所収)の一部を抜粋・要約し加筆・修正したものである。
静岡県における福祉教育の史資料については、『福祉教育の明日を拓く―静岡県福祉教育40年史資料集成―』(静岡県社会福祉協議会、2007年11月)を参照されたい。
(2) 「天竜厚生会における福祉教育の取り組み―資料紹介―」(「ディスカッションルーム」(15):2013年7月18日投稿)を参照されたい。