「学校と地域/福祉と教育」カテゴリーアーカイブ

阪野 貢/私の「まちづくりと市民福祉教育」実践と研究―研究業績:著書・論文・その他一覧―

阪野 貢 (さかの みつぐ)

宝仙学園短期大学保育科  専任講師・助教授・教授(1973年4月~1997年3月)
中部学院大学人間福祉学部人間福祉学科  教授(1997年4月~2013年3月)
中部学院大学大学院人間福祉学研究科 教授(2003年4月~2013年3月)
NHK「社会福祉セミナー」講師(福祉教育等担当)(1997年8月~2009年1月)
皇學館大学大学院社会福祉学研究科 非常勤講師(2002年4月~2011年3月)
福井県立大学大学院看護福祉学研究科 非常勤講師(2003年4月~2021年3月)
文教大学生活科学研究所  客員研究員(2013年4月~2021年3月)
市民福祉教育研究所  主宰(2012年6月25日~2020年12月31日)
市民福祉教育研究所  顧問(2021年1月1日~)
日本福祉教育・ボランティア学習学会  名誉会員(2023年11月4日~)

※学歴・職歴と主な学会活動、社会活動及び「福祉教育」関連の著書・論文




附記
「『市民福祉教育』として構築し、推進することが求められている」(この人に聞く⑬)
日本福祉教育・ボランティア学習学会監修『ふくしと教育』通巻14号 大学図書出版、2013年2月、38~41ページ。



 

市民福祉教育研究所/2023年のブログ/年間レポート

市民福祉教育研究所/2023年のブログ/年間レポート 

統計情報
〇2023年における記事の表示数は21,317回、訪問者は12,933人、「いいね」表示数は51回を数えました。
全期間(2012年6月25日~2023年12月31日)における記事の表示数は301,337回、訪問者は149,979人を数えました。
〇2023年における記事の投稿数は76本を数えました。
全期間(2012年6月25日~2023年12月31日)における記事の投稿数は1,481本を数えました。

注目記事
〇2023年において最もよく読まれた記事は次の通りです。末尾の数字は表示数です。
(1)市民福祉教育の実践と研究/2012年6月28日/2,169回
(2)ホームページ/ アーカイブ/2012年6月28日/1,382回
(3)「ボランティア拒否宣言」(1986年)再考:ボランティア活動は主体的・自律的で相互実現を図る活動である―資料紹介―2018年10月6日/629回
(4)二項対立の思考:「分かりやすさ」の罠―仲正昌樹を再読する―/2017年12月25日/459回
(5)自治会は地域の自治組織(自治会役員と民生委員 その2)/2020年3月11日/456回
(6)大橋謙策の福祉教育論:アーカイブ(3)老爺心お節介情報/2020年5月28日~2023年12月18日/375回
(7)福祉教育の歴史と理念/阪野 貢/2019年9月29日/374回
(8)暗い谷間と怖い時代に生きた・生きる「ものいえぬ」農民の思い:怒り、悔しさ、叫び、そして祈り―佐藤藤三郎の『山びこ学校』と『まぼろしの村』の底流をなす“教育”と“村づくり”の思想―/2018年5月5日/334回
(9)社会的処方とリンクワーカー:お医者さんが取り組む“オモロイ”はじめの一歩―西智弘編著『社会的処方』読後メモ―/2020年11月27日/331回
(10)大橋謙策「地域福祉実践の神髄―福祉教育・ニーズ対応型福祉サービスの開発・コミュニティソーシャルワーク―」/2018年4月4日/330回

読者の所在地
〇2023年における読者の所在地は41ヶ国です。括弧内の数字は表示数です。
人気の国は、日本(19,993回)のほか、アメリカ合衆国(1,051回)、韓国(32回)、台湾(32回)、イタリア(29回)、ノルウェー(27回)、ベトナム(23回)、カナダ(16回)、フランス(12回)、シンガポール(11回)、等です。

備考
〇 このウェブサイトは、2022年1月1日より、顧問/阪野貢、主宰/田村禎章・三ツ石行宏、サイト運営協力者/村上進によって運営・管理されています。

サイト運営協力者/村上 進

サイト運営協力者


村上 進(むらかみ すすむ):Susumu Murakami
Colleagues of the Institute for Citizen Welfare Education

村上進氏(東京都在住)には、2012年6月25日の本ウェブサイトの開設から今日まで、その運営協力・支援を具体的・継続的にいただいています。
本ウェブサイトではこれまで、読者が読みやすい形式や内容を求めて、その修正や変更を繰り返してきました。また、すべてのデータが消失する危険にさらされたこともありましたが、その際にも迅速・丁寧に対応していただきました。
2025年2月20日には、サイトの安定的な運営を維持するために、サイトの移設(サーバーの移転、URLの変更等)をおこないました。その折には、全面的に村上氏のご支援をいただきました。
衷心より感謝とお礼を申し上げます。とともに、今後も引き続き、格別のご厚情とご支援を賜わりますよう何卒宜しくお願い申し上げます。
なお、フロントページの最初のヘッダー画像は、2013年9月に村上氏が撮影したスイスアルプスのブリエンツ・ロートホルン( Brienzer Rothorn)です。

                        市民福祉教育研究所
主宰/田村禎章・三ツ石行宏


主宰/田村禎章・三ツ石行宏

主 宰


田村禎章(たむら さだあき):Sadaaki Tamura

市民福祉教育研究所 主宰
President of the Institute for Citizen Welfare Education

東海学院大学健康福祉学部総合福祉学科 講師


三ツ石行宏(みついし ゆきひろ):Yukihiro Mitsuishi

市民福祉教育研究所 主宰
President of the Institute for Citizen Welfare Education

高知大学教育研究部人文社会科学系教育学部門 准教授


ユネスコ学習権宣言/サラマンカ宣言/ハンブルグ宣言

ユネスコ学習権宣言/サラマンカ宣言/ハンブルグ宣言


ユネスコ学習権宣言

学習権

学習権とは、読み書きの権利であり、問い続け、深く考える権利であり、想像し、創造する権利であり、自分自身の世界を読みとり、歴史をつづる権利であり、あらゆる教育の手だてを得る権利であり、個人的・集団的力量を発達させる権利である。/学習権は、人間の生存にとって不可欠な手段である。/学習権なくしては、人間的発達はあり得ない。/学習権はたんなる経済発展の手段ではない。それは基本的権利の一つとしてとらえられなければならない。学習活動はあらゆる教育活動の中心に位置づけられ、人々を、なりゆきまかせの客体から、自らの歴史をつくる主体にかえていくものである。

 

<ユネスコ「学習権宣言」(抜粋)「第4回国際成人教育会議」(フランス・パリ)1985年3月採択。国民教育研究所 訳>


サラマンカ宣言 ― インクルーシブ教育 ―

インクルーシブ教育

すべての子どもは誰であれ、教育を受ける基本的権利をもち、また、受容できる学習レベルに到達し、かつ維持する機会が与えられなければならず、/特別な教育的ニーズをもつ子どもたちは、彼らのニーズに合致できる児童中心の教育学の枠内で調整する、通常の学校にアクセスしなければならず、/このインクルーシブ志向をもつ通常の学校こそ、差別的態度と戦い、すべての人を喜んで受け入れる地域社会をつくり上げ、インクルーシブ社会を築き上げ、万人のための教育を達成する最も効果的な手段であり、さらにそれらは、大多数の子どもたちに効果的な教育を提供し、全教育システムの効率を高め、ついには費用対効果の高いものとする。

 

<ユネスコ「サラマンカ宣言」(抜粋)「特別ニーズ教育世界会議:アクセスと質」(スペイン・サラマンカ)1994年6月採択。国立特別支援教育総合研究所 訳>


ハンブルグ宣言 ― 成人学習 ―

成人学習

生涯にわたる過程という視点からみた青少年教育および成人教育の目的は、人びとと地域社会の自律と責任感を育み、経済・文化・社会全体の変化に対応する能力を強め、共存と寛容を促し、人びとが情報を得て地域社会に創造的に参加することを促進すること、てみじかに言えば、目の前に直面している自分たちの運命や社会の課題に対して、人びとや地域社会が自ら対処できる力を高めることである。成人学習の手法は、人びとの伝統、文化、価値、過去の経験に基づかなければならない。また実施にあたっては、市民の積極的な参加と表現を促すための多様な方法がとられなければならない。

 

<ユネスコ「成人学習に関するハンブルグ宣言」(抜粋)「第5回国際成人教育会議」(ドイツ・ハンブルグ)1997年7月採択。三宅隆史 訳>


ボランティア学習―日本青年奉仕協会研究室等

ボランティア学習―日本青年奉仕協会研究室等


ボランティア学習―日本青年奉仕協会研究室等

日本青年奉仕協会研究室
「ボランティア学習」とは、学習者が、ボランティア活動をとおして、さまざまな社会生活の課題に触れることにより、公共の社会にとって有益な社会的役割と活動を担うことで、学習者の自己実現をはかり、さらには自発性を育み、無償性を尊び、公共性を身につけ、よりよき社会人としての全人格的な発展を遂げるために行う、社会体験学習である。その学習内容は、教育的活動、社会福祉的活動、歴史及び社会文化の向上に寄与する活動、自然及び生活環境の保全、コミュニティづくり、国際社会への協力と貢献、その他の幅広い分野に渡っている。また、ボランティア学習においては、私たちの暮らす地域社会及び国際社会そのものを学習のフィールドとしてとらえる。こうした学習は、家庭、学校、地域、さらにはあらゆる地域社会において世代を越えて取り組まれることが大切である。
(JYVA「ボランティア学習ガイドブック」編集委員会編『地球人になろう―ボランティア学習ガイドブック―』日本青年奉仕協会、1991年3月、22ページ)

興梠 寛
ボランティア学習とは、人とのふれあいや自然とのふれあいをとおして、地域社会や地球社会にある多様な課題を知り、その解決のために果たすべき、公共の社会の一員としての役割を探るための社会体験学習である。学習者は、その課題を体験的に知ることによって、それぞれの発達年齢や個性に応じて、課題解決のための役割を担う。と同時に、自発的社会参加の芽を育み、公共性を身につけ、自己の実現をはかり、やがては自立した人間へと全人格的な成長を遂げることが期待される。また、その学習の対象となる社会課題は、社会福祉、教育、文化、スポーツ、国際交流と協力、自然と環境、保健医療、消費生活、人権、平和、地域の振興など、多様である。
(興梠 寛「ボランティア学習の理論」『たすけあいのなかで学ぶ―教師のためのボランティア学習ガイドブック―』日本青年奉仕協会出版部、1995年3月、12ページ)

長沼 豊
ボランティア学習の構成要素は、「ボランティア活動」と「学習」との関係のあり方から分類すると次の3つになる。

タイプ➀:ボランティア活動のための学習(目的としてのV活動)
タイプ➁:ボランティア活動についての学習(対象としてのV活動)
タイプ➂:ボランティア活動による学習(手段としてのV活動)

ボランティア活動と学習との関係は、ボランティア活動は
➀(Learning for Volunteer activity)では学習の目的、
➁(Learning to Volunteer activity)では学習の対象、
➂(Learning by Volunteer activity)では学習の手段、
ということになる。
(長沼 豊『新しいボランティア学習の創造』ミネルヴァ書房、2008年12月、145~146ページ)

 

(参照)
長沼 豊『新しいボランティア学習の創造』ミネルヴァ書房、2008年12月、145~146ページ。


高島 巌/ボランティア―それは生活であり、権利である―

高島 巌/ボランティア―それは生活であり、権利である―


ボランティアのはたらきの原点・ボランティアする心の原点

ボランティアのはたらきは
かまえたものであってはならない
ボランティアのはたらきは
活動ではない 生活なのだ
活動にはかまえがある
けれども
生活にはかまえはない
活動には限界がある
けれども
生活には限界はない

ボランティアのはたらきは
もてるものが
もたないものに
ではない
しあわせなものが
ふしあわせなものに
ではない
もてるものも
もたないものも
しあわせなものも
ふしあわせなものも
ともに考え
ともに学び
ともに生活しあうことなのだ

いそいではいけない
かまえてはいけない
たえることだ
まつことだ
いのることだ

人間はみな
ボランティアする権利をもっているのだ
その権利は人間にだけあたえられた
楽しき権利なのである

 

(参照)
高島 巌『子どもは本来すばらしいのだ』誠信書房、1963年1月。
阪野 貢/高島巌先生と木谷宜弘先生のこと:木谷宜弘「学校における福祉教育を考える―5つの柱―」(1979年10月)―資料紹介―/<ディスカッションルーム>(59)/2016年4月19日/本文


 

学校教育・サービスラーニング・福祉教育―中央教育審議会答申等―

学校教育・サービスラーニング・福祉教育―中央教育審議会答申等―


学校教育・サービスラーニング・福祉教育

中央教育審議会
〇サービスラーニングは、教育活動の一環として、一定の期間、地域のニーズ等を踏まえた社会奉仕活動を体験することによって、それまで知識として学んできたことを実際のサービス体験に活かし、また実際のサー ビス体験から自分の学問的取組や進路について新たな視野を得る教育プログラム。サービスラーニングの導入は、①専門教育を通して獲得した専門的な知識・技能の現実社会で実際に活用できる知識・技能への変化、②将来の職業について考える機会の付与、③自らの社会的役割を意識することによる、市民として必要な資質・能力の向上、などの効果が期待できる。
(中央教育審議会「用語集」『新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)』2012年8月、38ページ)

日本福祉大学
〇サービスラーニングとは、1980年からアメリカで始まった教育活動の一つであり、「社会活動を通して市民性を育む学習」です。具体的には、「見返りを求めない伝統的なボランティアの概念に基づくものの、しいて言えば『学習』を見返りとして、ボランティアサービスを提供する学生側とそれを受ける側とが対等の互酬関係に立ち、学生がボランティア活動の経験を授業内容に連結させ、学習効果を高めるとともに、責任ある社会人になる為に行うボランティア活動」といえます。
〇サービスラーニングでは、社会を見つめる基本的な力や課題について理解を深め、広い意味で仕事をするために必要なものの見方や判断力を身につけながら、市民性を育むことを目的としています。
〇サービスラーニングは、『学生が直接、自分自身で意味ある経験をすること』『その経験を教員の指導のもと熟考し、ふりかえり、分析すること』という二つの過程を結び付けた学習方法です。
〇サービスラーニングは、しばしばボランティア活動と混同されます。ボランティアは自発的な活動であり第三者の評価はありません。しかし、サービスラーニングは、あくまでも教育活動の一環であり、授業として評価を伴います。このように、大学教育としてカリキュラムに位置づけられた評価を伴う点が異なります。
(「日本福祉大学サービスラーニング」Webサイト)

筑波大学
〇サービスラーニングは、教室で学ばれた学問的な知識・技能を,地域社会の諸課題を解決するために組織された社会的活動に生かすことを通して,市民的責任や社会的役割を感じ取ってもらうことを目的とした教育方法、と定義されます。具体的な事例としては、教室でコンピュータ科学の知識・技能を身に付けた高校生・大学生が、小学生や高齢者にコンピュータの使い方を教えるという社会的活動を通して、地域社会で自分にできることを学び、市民としての責任を感じていく、といった教育実践を挙げることができます。
〇大切にされるべきは、教室で学んだ学問的な知識・技能を社会的活動の中で最大限に生かすこと、活動現場へ足を運ぶことを一度きりで終わりにせず何度も繰り返すこと、活動の中で見たこと・聞いたこと・感じたことをしっかりと振り返ることなどです。
(「筑波大学人間学群 サービスラーニング」Webサイト)

『新 福祉教育実践ハンドブック』
〇サービスラーニングは、「学習活動と社会貢献活動を意図的、計画的に結びつけ相乗効果を生むことにより、社会の主体としての市民を育むことを目的とした教育プログラム」といえます。
〇アメリカには、サービスラーニングを国家が推進する根拠となる法律「全国および地域サービス信託法1993」(National and Community Service Trust Act of 1993)があります。この法律においてサービスラーニングは、次のような4つの要件を備えたものと記述されています。
(a)児童・生徒や学生の社会貢献活動における教育的要素を高め、学校カリキュラム(教育課程)に組み込まれて行われる。
(b)初等、中等、高等教育機関と地域の連携によって行われる市民としての責任意識を育む取り組みである。
(c)地域ニーズに応じて綿密に組み立てられた社会貢献活動を通して、児童・生徒や学生たちの学習と発達を促す手法である。
(d)児童・生徒や学生たち、または参加者が、社会貢献活動をふりかえるための時間を組み込んだ取り組みである。
〇サービスラーニングを最も狭くとらえる場合、上記の4つの要件が同時に備えられていることが求められます。この場合、学校の取り組みとして行われる社会貢献活動であっても、課外活動として行われる取り組みは、サービスラーニングとはいわないことになります。
〇サービスラーニングを最も幅広くとらえる場合、上記の(d)の要件、ふりかえりを行っていればサービスラーニングといえます。
〇アメリカでは、「ボランティア」と「コミュニティサービス」という言葉を厳格に使い分けています。コミュニティサービスというのは地域貢献活動であり、サービスラーニングのなかで行われる教育活動そのもので、一定のノルマや枠組み、評価がともなう枠組みのなかで行うものです。
〇ボランティアとコミュニティサービスはしっかり使い分けることが大事です。サービスラーニングはコミュニティサービスをしっかりと使った授業であり、ボランティアを使ったものではないのです。
コミュニティサービスという意図的・計画的につくられた地域貢献の体験を使いながら授業をしていく。ここの違いをまず前提としてしっかり押さえることが大切です。
(上野谷加代子・原田正樹監修『新 福祉教育実践ハンドブック』全社協、2014年3月、114~121ページ)

 

(参照)
原田正樹/地域の課題に取り組む―サービスラーニングを理解する―/<原田正樹の福祉教育論>アーカイブ(2)講演録(1)/2021年3月2日/本文
上野谷加代子・原田正樹監修『新 福祉教育実践ハンドブック』全社協、2014年3月、114~121ページ。


 

ICFの視点と福祉教育―ICFの構成要素間の相互作用―

ICFの視点と福祉教育―ICFの構成要素間の相互作用―


ICFの視点と福祉教育

ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health, 国際生活機能分類)は、2001年5月にWHO総会で採択された。 ICF の前身である ICIDH(国際障害分類、1980年)が「疾病の帰結(結果)に関する分類」であったのに対し、ICF は「健康の構成要素に関する分類」であり、 新しい健康観を提起するものとなった。

※ICIDH(1980)
病気・変調(disease or disorder)が機能障害(impairment)を引き起こし、その機能障害が能力障害(disability)を引き起こす。そして、機能障害と能力障害が社会的不利(handicap)の要因になる、という考え方。

※ICF(2001)
心身機能・構造(body functions and structures)だけでなく、活動(activities)や参加(participation)も含めて、それらに問題を抱える状態を障害として捉える。そのうえで、環境因子(environmental factors)と個人因子(personal factors)という要素を入れ、それらが障害に影響を与えている、という考え方。

ICFは、障害を3つのレベルで把握しようとする点はICIDHとなんら変わらないが(ICIDH/ICF=機能障害/心身機能・構造、能力障害/活動、社会的不利/参加)、「生活機能」というプラス面からみるように視点を転換し、さらに環境因子や個人因子の観点を加えたことが評価される。すなわち、障害のみの分類ではなく、生活機能と障害の分類となり、あらゆる人間の生活と人生に関することのすべてを対象とするものとなったことや、障害は本人(当事者)の問題として捉えられていたものを、環境によって社会的不利がつくられるという批判のもとに、環境因子と個人因子を「背景因子」として取りあげたこと、などに留意したい。

2006年12月、第61回国連総会において採択された「障害者の権利に関する条約」(Convention on the Rights of Persons with Disabilities)では、障害者(当事者)については、handicappedやdisabledではなく、一貫して、Persons with Disabilities (障害のある人)という表現を用いている。

 

(参照)
阪野 貢『Lecture Notes  地域福祉・まちづくり・市民福祉教育』市民福祉教育研究所、2021年7月、8~10ページ。


 

障がい者差別の諸相―障がい者は「役に立たない」という烙印

障がい者差別の諸相―障がい者は「役に立たない」という烙印


障がい者差別の諸相―障がい者は「役に立たない」という烙印

(1) 障がい者は「役に立たない」という烙印
誰かに対して「役に立たない」という烙印を押すとき、そこには自分は何かの役に立っているという認識(ときに思い上がり)がある。誰かの役に立つことは、役に立たない人を見つけ、その人を見下すことにもなる。

(2) 障がい者は「遠慮すべきである」という暴力
障がい者に「遠慮すべきである」というとき、その人の命や人生に大きな影響を与えることにもなる。遠慮や謙遜は美徳であるといわれる。しかし、人に命や人生に関わる遠慮を強いるのは暴力である。

(3)「障害は個性」「みんなちがって、みんないい」という言葉
「障害は個性」「みんなちがって、みんないい」という言葉は、障がい者との共生をめざす文脈で語られる。しかし、この言葉は、障がい者と情感的に仲良くするための言葉であり、障がい者差別と闘う言葉ではない。

(4)「障がい者も同じ人間である」というフレーズ
「障がい者も同じ人間である」というフレーズは、障がい者(少数者)に、障害のない人(多数者)の考え方や価値観を押しつけたりする言葉ともなる。そのフレーズは、すべての人に認められている参加と平等の権利は、障がい者にも十全に認められなければならない、という意味内容で使われるべきである。

(5) 障がい者の「差別と区別は違う」という定型句
「差別と区別は違う」というのは、障がい者差別が起きたときにも出てくる定型句である。差別は不当にする・されるものであり、区別は不利益が生じないようにする・してもらうものである。不利益が生じる区別は差別であり、そもそも障害の有無や性別などの属性を理由に不利益を押しつけることは犯罪である。

 

(参照)
阪野 貢/言葉とフレーズと福祉教育 :福祉教育は障がい者から感動や勇気をもらい、自分を演じるための教育的営為か? ―荒井裕樹を読む―/<雑感>(144)/2021年9月19日/本文