「鳥居一頼の世語り」カテゴリーアーカイブ

楽観主義の末路

見通しが甘かった
五輪で忙しかった
五輪に影響ないから放置した

見通せなかった
デルタ株のまん延は想定外だった
1万人程度の感染は想定内だった

見逃していた
ベッドが早くにひっ迫した
乗り越えられると踏んでいた

見る気もなかった
事実を知るのが怖かった
都合のいいものしか見ない臆病者だった

見るのは好きだった
五輪で君が代を たくさん聞いた
世の困窮を見ると 出番だと気負い立った

見るに見かねてご意見します
旬が過ぎただけに 腐るしかない人です
やっぱりただの人でした
見かけ倒しの人でした
極楽とんぼの人でした
自分に酔う人でした
功績は 実力なくとも首相になれたことでした
功罪は 実力通りお荷物になっただけでした

楽観がまん延して 非常事態です
ない知恵絞って 唐突に入院規制をかけました
与党は反発 見捨てる時を計ります
先手を打ったつもりが 反撃喰らっています
これが命取りとなって 楽観政治は一気に崩れます
「内閣総辞職」
勧告 遅いくらいです

〔2021年8月4日書き下ろし。弱者が捨て置かれていく事態は静観できない。さすがにや与党も業を煮やす〕

付記
自民党からも撤回要求を決定 入院制限の政府方針に
自民党は4日、新型コロナウイルス感染症対策本部とワクチン対策PTの合同会議を開き、感染者が急増する地域で入院を制限する政府方針について撤回を求めることを決めた。患者の健康管理や隔離が難しいなどと指摘した。
この日の会合では、出席者から「自宅療養はさせないのが原則だ」、「医者でなければ症状を判断できない」などと政府方針に批判的な意見が相次いだ。会合後、ワクチンPTの事務局長を務める古川俊治参院議員が記者団の取材に、「自民党としては受け入れられない。撤回をお願いした」と話した。5日に予定されている与党と政府との会合でも撤回を申し入れる。(朝日新聞社2021年8月4日)

夢のない新生活

「夢のない新生活」
50代男性はそう取材に答えた
被災から1ヶ月
熱海は五輪の熱気などさらさらない
家をなくした被災者は
公営住宅入居見学会に訪れ呟いた

五輪が開催されて11日目
台風も東北に逸れ暴風水害もなかった
熱湯列島はメディアに煽られ熱闘列島と化した
残りの日程に事故や不運がないことを願うだけだ

五輪から遠く離れた時空間
東北は見せかけだけの復興五輪が終わった
徒労と無駄と無念さが残された
熱海は観光地の集客を諦めた
悲歎と憤怒と諦めが葛藤する
全国の災害被災地はニュースにならず
日々の暮らしの再建にひたすら汗する

五輪が終わればたくさんの廃棄物が吐き出される
選手村の改装で無用になった物品
五輪会場の整理と整備
湯水のように浪費した税金の収支決算と言い訳
感染拡大で医療機関から出た大量の医療廃棄物
開催に加担した者たちの責任追及と人員整理
廃棄すべき議員の選択作業も 粛々と始まる
彼らに「夢のない新生活」をプレゼントしたい

〔2021年8月2日書き下ろし。熱海の災害は遠い夏の日の出来事。五輪に熱狂させ忘却の彼方に捨て置かれる。政治とはご都合主義の人心操作に尽きる〕

IOCこそ政治である

AFPBB Newsは 8月2日11:46に配信した

陸上女子砲丸投げ 銀メダルを獲得した
米国レーベン・サンダーズ(Raven Saunders)は
表彰台で 抗議行動をした
「抑圧された人たち」との連帯を表す
腕をクロスさせた「X」のジェスチャー

IOCの最新の指針で 処分を受ける可能性がある
大会前 米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)は
抗議行動について アスリートを処分することはないと表明
抗議した選手へのIOCの処分は
「混乱のレベル、そして規則違反と五輪の価値との隔たりの程度に比例する」

IOCこそ処分の対象ではないか
混乱は 緊急事態宣言中に強引に開催させた政治的干渉と欺瞞のカオス
規則違反は 五輪憲章そのものの重大違反と五輪への信頼の失墜
五輪の価値の損壊と装飾だけでも 処分に該当する
その隔たりに比例するなら
肥大化した商業五輪こそ 糾弾されるべきだろう
五輪を娯楽化したIOCの功罪は 重罪に値する  

IOCの存在そのものが 疑惑の塊
選手を処分する権威は すでにない
選手を擁護する理念は すたれた
選手へのリスペクトも 消え失せる

〔2021年8月2日書き下ろし。不信の塊となったIOCは組織延命に走る。五輪を煽るメディアは政権批判を封印し、情報操作の片棒を担ぐ〕

冬期札幌五輪の招致反対

東京五輪2020から 何を学んだのか
批判が 金メダルで弛(ゆる)むようなら思う壺だ
IOCは何をしたのか
五輪憲章を踏みにじった金儲けの祭典は 忘れてはいけない
政権は何を強いたのか
コロナ対策を疎(おろそ)かにして 開催に前のめりなった挙げ句に
緊急事態宣言を全国に発出した失態を 今秋まで覚えておこう
どれだけの犠牲を払ったのか
莫大な血税を搾取(さくしゅ)され 借財を抱えなければならない
コロナで生活が困窮し 愛する人の命を奪われた
踏んだり蹴ったりされながら 規制強化に知事会が動く
危機管理不能で不信を纏(まと)う者らの迷走は エンドレスか

2030冬期五輪
札幌は誘致に動いた
何のためにやるのか
誰のためになるのか
何が得られるのか
どれだけの市税が浪費されるのか
いつ誰がどんな犠牲になるのか

鴨が葱を背負って IOCを喜ばす
血税が浪費され 市民は臍を噛む
誘致市長は対立の禍根(かこん)を残して 金満五輪に加担する
市議会も道議会も 誘致に賛同するならば
果たして 道民の反応はいかがなものか
次の選挙は 五輪誘致の是非で論議せよ
東京の二の舞は 御免被(こめんこうむ)る

30年まで残り9年 
アフターコロナの世界の変貌(へんぼう)は 予見できない
10年周期で現れる新型ウイルスが 世界を脅かす
天変地異に見舞われ 自然環境は悪化する
大地は渇き作物は育たず 土地を棄て死の旅路への流民となる
政治や社会の問題が噴出し 内戦とテロが頻発(ひんぱつ)する
政治不信が募って 不安定な政権は腐敗していく
経済は低迷して 不景気と失業でさらなる社会不安がまん延する
世界は貧富の格差が拡大し 飢えと紛争は絶えることがない
多くの貧しき民の屍(しかばね)を踏んで 金の亡者たちは儲けに走る
世界に娯楽をもたらすスポーツイベントは いつの世も繁盛する

IOCの悪しき実態があからさまにされた
だれも美辞麗句に惑わされることなく 幻想は抱かない
だれも平和の祭典などと口にはしない
もうだれも人間尊重とは決して思わない
そこにあるのは 搾取する者とされる者の醜い関係だけだ
アスリートは 搾取する側の思惑の中で生かされる
競技場は 権力者とIOCの道楽の場と化してゆく
札幌五輪は その延長線上にしかない

地球の温暖化は 決して侮れない
そのことだけは 覚えておこう
地球上のすべての命が 危険に晒される
10年は 世界が変わるには十分な時間だ
いまよりも悪くなる想定の下に 
政治も経済も動かなければならない
暮らしと福祉が蹂躙(じゅうりん)されぬよう 
指導者は覚悟しなければならない
その覚悟のなさが いまの事態を引き起こしている
この批判こそ いつの選挙でも示威していこう

欲に塗(まみ)れた五輪など 決して許されない
札幌冬季五輪の誘致に
断固反対を表明する

〔2021年8月1日書き下ろし。札幌にマラソンを持ってきた汚いやり口を見る。駆け引きはすでに始まっている。いまから明確に五輪誘致反対を表明する〕

付記
IOCのからくり露呈「冬季」意欲の札幌どうする?
五輪とパラリンピックを開くために、開催都市は巨額の財政負担を強いられ、納税者に押しつけられる。ホスト国が借金を背負い込んでも、国際オリンピック委員会(IOC)は穴埋めする義務を負わない。コロナ禍で1年延期になった東京五輪で、日本国民は開催都市契約の内容がいかにIOCに有利に結ばれているかを痛感した。そのからくりは世界にも伝わったはずだ。(中略)
昨年1月、札幌市の秋元克広市長はスイスのIOC本部を訪ね、バッハ会長に30年冬季五輪招致への意欲を伝えた。札幌は会長から称賛され、相思相愛の空気が漂った。直後に世界をコロナ禍が覆い、動きは止まっている。東京五輪の迷走を経て、日本国民は五輪に懲りてノーを突きつけるのか。とくに札幌市民、北海道の人々は傍観は禁物だ。ブリスベンの例は外堀があっという間に埋まることを教えてくれる。(朝日新聞2021年7月31日)

TOKYO4058

五輪は メダルラッシュに湧き上がる
コロナの悪いイメージ 封印されて
メディアは 連日加担する

日の丸のプレッシャーは 半端ない
五輪の魔物は すっと心に入り込む
期待に反して 実力出せずに敗退する

勝てば勝ったで 世界のアホども
SNSで中傷誹謗を 繰り返す
人格破綻者 匿名投稿意気地なし

人流は減ったと 都合のいい情報流布させ
五輪開催してるから バカな奴らは街に出る
安心安全 楽観バイアスモードに泥酔中

ワクチンとホームステイの効果あり
根拠は 視聴率ドラマ並みの10%台 
五輪に夢中なんて 嘘っぱち

インド株は パアーアップして全国席巻
感染者 ついにTOKYO4千人を突破する
IOC 五輪の影響ではないと責任回避

東京五輪は 中止すべきだ
五輪憲章の 人間の尊厳すら護れない 
悪の権化のIOCは 弾劾に値する

〔2021年7月31日書き下ろし。倍々ゲームの如き感染者は増加する。首都圏は軒並み過去最高の感染者数をカウントする。五輪中止しかない。全国12,248人も最高感染者数〕

付記
東京都で過去最多4058人の感染確認 初の4000人超え
東京都は31日、新型コロナウイルスの感染者が4058人、死者3人が報告されたと発表した。1日の新規感染者数は過去最多を更新し、4000人を超えたのは初。都内の累計患者数は217,968人になった。このうち現在入院している重症患者は95人。新規感染者数(1週間平均)は、31日時点で前の週に比べて117・0%増え、2920・0人となった。 これまでにないスピードで感染者数が増加している。
年代別では、20代が1484人、30代が887人、40代が583人、50代が398人などとなっている。65歳以上の高齢者は106人だった。死亡したのは60代の男性1人と70代の男性2人。(東京新聞2021年7月31日)

瓦解する統治

支配する者と支配される者が いなければならない
支配する者は 搾取を常とする
支配される者は 懇願を常とする

制裁する者と犠牲となる者が いなければならない
制裁する者は 都合のいい法を作る
犠牲となる者は 不都合な法に縛られる

富む者と貧しき者が いなければならない
富む者は 人生に執着する
貧しき者は 人生を諦める

奉仕する者と奉仕される者が いなければならない
奉仕する者は 甘い汁を吸い続ける
奉仕される者は 甘い汁を餌に飼い続ける

支配する者と支配される者は 共に心を病む
支配する者は 強欲に嘖(さいな)まれる
支配される者は 絶望に嘖まれる

制裁する者と犠牲となる者は 共に心を病む
制裁する者は 正義だと信じ込むしかない 
犠牲となる者は 災禍だと受け入れるしかない

富む者と貧しき者は 共に心を病む
富む者は 醜さを隠しきれない
貧しき者は 卑しさを隠しきれない

奉仕する者と奉仕される者は 共に心を病む
奉仕する者は 裏切られぬよう用心する
奉仕される者は 噛まれぬよう用心する

かくして腐敗国家は 何事もなく統治される
支配する者は その力を偉大にして権力を示す
支配される者は 不当な権力の犠牲を強いられる  

ようやく腐敗国家は 土台が揺らぎ始めた
支配する者に 最後通告の時が迫る
支配される者は 自己防衛を強化する

すでに腐敗国家は 危機に陥った
支配する者は 化けの皮が剥がされ瓦解する
支配される者は 解放の拳を天に突き上げる 

〔2021年7月31日書き下ろし。「辞めない、自分はできる」根拠なき楽観と自信が崩れていく音が聞こえてきた〕

本音が聞こえた

五輪やってる最中に
なんでこんなに増えるんだ
ゴリ押し続けた 挙げ句の果てに
金メダルを取っても 盛り下がる

五輪やってる最中に
どいつもこいつも言うこと聞かない
黙って家に ひっこんでろ
呑兵衛が コロナを巻き散らかす 

五輪やってる最中に
1万人に超えようが 無視していい
安心安全なんか くそ食らえ
どこでも勝手に動いて 罹ればいい

五輪やってる最中に
ルール違反があっても 仕方ない
性悪だから コンドームも用意した
見つからぬよう 隠れてすればいい

五輪やってる最中に
悪口少しは減ったが 影薄い
五輪で支持率アップを 目論見た
コロナ爆発で怒り心頭に発し こん畜生!

五輪やってる最中に
医療機関は ひっ迫を覚悟する
まずは外国人優先で 治療に当たれ
俺の評判落とすとヤバい 訴訟も怖い

五輪終わった途端に
非難囂々(ごうごう)一気に吹き出す
世間は 全くいい気なもんだ
この借りは 必ず目にもの見せる

五輪終わった途端に
年寄りのワクチン接種は 大方終わる
あんたらの命は 最優先で守ってやった
だから決して恩を忘れず 選挙に走れ

〔2021年7月30日書き下ろし。夕方菅義偉首相の記者会見を聞きながら、信頼を失った男に去来するものは何かを想像した。正念場を潜り抜けて生き残るしたたかさに乾杯!緊急事態宣言とまん延防止法の発令決まる。日銭を稼ぐ仕事は奪われ、犠牲者がまた増える〕

五輪と同じ対策取りました

五輪と同じ スポーツです
五輪に負けぬ 防止対策取りました
屋内会場より広い 野外です
social distancing(物理的距離)は 完璧です

五輪と同じく スポーツを楽しみました
五輪に刺激され 体がムズムズして動きました
感染リスクの少ない 野外です
social distance(社会的排除)よりも 教育は交流です

五輪は 緊急事態宣言中にしています
五輪の影響など ここでは皆無です
学校も夏休みで 業務も一息つきました
ストレス発散して 英気を養います

五輪は 四千食の弁当を廃棄しても 家畜の餌にしたと言います
五輪は バレぬようヤバい情報は流しません
一体どこから 漏れたのでしょう  
壁に耳あり障子に目あり でも野外です

五輪は 汚点が見つかれば世間が辞職に追い込みます
五輪で死んだら 自己責任だと平気で開き直るでしょう
巷(ちまた)では 責任の取り方が問題にされます
知事が謝り 現役の処分は減俸程度で終わりでしょうか

「対策すれば、同じスポーツのゴルフも開催していいのではと判断した」
県教委は 規則に準じて軽い行政処分で済ませます
「五輪村と同様に対策すれば、店を開いていいのではないかと判断する」
民間は 重い罰則が課せられます
コロナの感染拡大は歯止めが効かず 緊急事態宣言再発令も検討中とか
今日も 店をたたむ判断をする人がいることでしょう

※「social distancing」:公衆衛生戦略を表す用語で、疾病の感染拡大を防ぐため、意図的に人と人との物理的距離を保つこと。特定の個人やグループを排除するという社会学用語の「social distance」とは区別して表記した。

〔2021年7月29日書き下ろし。ナイス判断。処分は粛々と規則に則って行われる。世間の批判をよそに、行政マンは護られていく。札幌は29日150人台の感染者、国は様子見〕

付記
山梨県教委幹部ら約12人がゴルフ・会食「五輪もやっているので」
山梨県教育委員会幹部らが今月25日、教育関係者ら計12人前後で昼食付きのゴルフをしていたことが、県教委などへの取材で明らかになった。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため長崎幸太郎知事は県民に、大人数での会食などを控えるよう要請しているが、参加した幹部は「東京オリンピックが感染対策を徹底して実施されている。対策すれば、同じスポーツのゴルフも開催していいのではと判断した」と釈明した。
県教委によると、保健体育課長や中北教育事務所の副所長ら職員3人と教員OBらは25日に県内のゴルフ場で午前8時半から約1時間の昼食を挟んで、午後2時半ごろまでプレーした。マスクや手指消毒、検温をし、食事も会話中はマスクを着用する「マスク会食」を徹底させたという。(毎日新聞 2021年7月28日)

五輪下感染列島ジャパン

稚内で 島の人たちに会った
利尻島と礼文島の人だ
島に来る人たちは マスクもせずに島内を歩き回る
島は感染してないから 安全地帯だと嘯(うそぶ)く
島の人たちには マスクは決して外せない日が続く

28日 全国最多9583人
東京都3177人 首都3県2498人
埼玉 千葉 神奈川 大阪は 緊急事態宣言を検討する
北海道も2ヶ月ぶりに200人超えの227人
要請しているまん延防止法は 五輪マラソンが終わるまで棚上げか
札幌市長は 緊急事態宣言レベルと危機感をあらわにする
知事はいつものポーカーフェイスで 要請のポーズを取り続ける 
国が躊躇している間に 道内の観光地はリスクを抱えるしかない
  
「人流は減少している。心配ない」
たったそれだけの根拠で 五輪中止はないと強弁する
説得力が皆無のリーダー 信頼を失った言葉はいつも霧散する 
外出自粛と移動の制限 五輪も家で少人数での応援を要請するだけ
一方で五輪は粛々と進み メディアはこぞって熱狂ぶりを毎日煽る
空回りする感染対策と 狂気の果ての東京五輪

夏の大移動が 感染を拡大する
観光地は軒並み 感染者を増やす
1日1万人は もう目の前だ
医療現場は病床が圧迫され 緊急医療も手術も縮小される
医療者の献身的な治療は 限界を超えていくだろう
五輪をやっている場合かと 当たり前の批判が表面化する
不安を増幅させる事態の収拾まで どれだけの犠牲を強いるのか
都合のいい数字を切り貼りするのは すでに見透かれた
リスクの限界数値を 示すしかないだろう
社会の認識を変えるカンフル剤は いとも簡単
「五輪中止」

〔2021年7月28日書き下ろし。熱波が続く。その最中に病気に罹るのは辛い。稚内の二十代の若者も夕方熱中症に罹ったと本人から聞いて驚いた。いのちを護るにも、ひとりでは難しい。まずは身近な者たちが今一度予防策を確認して実行しよう〕

歪む線路

稚内を出て1時間
当然 車内放送が流れた
この先の線路に 歪みが見つかった
点検のために 幌延駅に臨時停車する

炎天下にさらされた線路は
最北の鉄道を苛(さいな)める
18:45 日が陰り 冷気も流れる時間帯になった

特急宗谷の折り返し運転で
20分も同じ原因で 稚内到着が遅れた
戻り道のタイミングで またも歪みが見つかった
保線車輌が到着するまで どのような展開になるのかわからない
状況を見守り待つしかない

1ヶ月以上 雨がない
道北地域は かってない30度の灼熱を浴び続ける
草地は2番草を諦め 早々に刈り3番草に期待をかける
牛飼いには かなりのダメージだ
冬の餌が減るのを 覚悟した 
畑も 生育がおぼつかない
畑は日に焼かれ 雑草だけが繁茂する

アナウンス入る
保線区から18:50に出て 現地には19:30到着予定
安全点検完了まで どれだけの時間を要するのか不明
復旧の目処が立ちにくければ と不安がよぎる
旭川までの まだ3時間の行程が残っている
代替えのバスを用意するにも 一番近いのは稚内
手配に手間取れば 1時間以上はかかる
ただ乗客数が 50人にも満たないのが幸いか
コロナ対策を考えると 2台用意が必要か
とりとめもなく 緊急時の対応を想像する

夕飯は車内で 弁当をつまみにビールを飲んだ 
腹は 明日の朝まで十分持つ
水も充分ある
いまは 状況の変化と指示を待つだけの身でいる

アナウンス
19:27 保線車現地到着し点検開始
復旧の時間の目処は不明

JR北海道は 道北で線路が歪むとは想定外だったろう
列車は札幌行だが 旭川で乗り換える人もいる
このままでは 列車の連絡は難しい
旭川泊まりを 覚悟しなければならない
その宿泊費は JRは負担しない

数えたら 27名が現在4車輌に乗車中
それぞれの思惑を抱えた列車の囚われ人は
次のアナウンスを 待つ 
19:56 現在点検中 終了時間未定
まだかかる様子

20:20 20分後に出発見込みを伝える
安堵する
20:37 まもなく発車のアナウンスで
20:40 幌延駅を2時間遅れで出発する

途中臨時停車して 保線員を拾う
突発的な事態に素早く対処し 現場で復旧作業に当たる
厳しい仕事に 感謝しかない
旭川に2時間以上到着が遅れると 
特急券払い戻しの事態となる
JRは今度は時間との勝負となる
 
この日旭川は 36・2度
133年の観測史上一番高かった
市内の江丹別は36・9度
旭川市内は 今月100名以上が熱中症で緊急搬送された

2時間を17分オーバーして 旭川駅に着いた
特急券の払い戻しとなった

この熱波 いつまで続くのやら
歪むのは線路か 地球か 

〔2021年7月27日書き下ろし。今朝仕事の関係で旭川から夜送る予定でいたが、アクシデントのため、切り替えて明朝アップする〕