「鳥居一頼の世語り」カテゴリーアーカイブ

ゆらぎを生きる~道民児連民生委員児童委員初任者研修レポート その5

心揺さぶられて 戸惑い ゆらぐ
心乱れて 弄(もてあそ)ばれ ゆらぐ 
心騒いで 落ち着きなく ゆらぐ 

そのゆらぎを 引き受けなければならない
そのゆらぎは 理解を促す力となる
そのゆらぎが 生きることの証ともなる

いまゆらぎ始めている参加者に
そのゆらぎの意味を 問いかける
「あらがい動く」
あらがいなからも 世の中に添うことの真意は
動いてはじめて 見出されてゆく

心を揺さぶられたこの日を 覚えておいて欲しい
「きょうという日」
後回しにしてきたこと
途中で放り出してきたこと
先延ばしにしてきたこと
みんなやらなければいけないことだった
自分の弱さや不甲斐なさに気づきながら
一歩踏み出すことに勇気をもらった きょうという日
誰かが手を握った日のことを 覚えておいて欲しいと

慰藉(いしゃ)の手をもつ 民生児童委員は
慰藉の手に 導かれる人かも知れない
「ほころびを繕うということ」
うとましいと思っていた世間のしがらみの中で
自分もまた心ある人の 気くばり心くばり目くばりによって
生かされていることを 知らされる
人との心のほころびを繕う人こそ あなたなのだと

慰藉の心は 相手との心の距離を縮める
ラブレター「心の詩になる」
そんな心の詩を歌う人でありたい
「君だけのうた」
悲しいとき 辛いとき 嬉しいときに歌う 君だけの歌がある
励まし 勇気づけ 仕合わせにする力がある
人生に希望をもたらし 今日を生きる歌がある
カラオケに興ずる人たちに おもいを馳せながら
十八番(おはこ)を友にして 慰藉の手を差し伸べて欲しいと願った

どんな人にも どんなときにも 人は夢を見る
「夢のひとしずく」   
心のままに生きる水を 枯らしてはならない
日々の暮らしを慎ましく生きる人と 見る夢もある

「ゆらぎ」を朗読した
この研修の水脈をなす詩である
ゆらぎとは 分身との対話 本意との対立 本心の確かめ
ゆらぎつつ 生きる本質に迫ってほしいと 静かに訴えた

さあそろそろ出かけましょうか
見えない階段はどこにでもあり 活動のバリアかもしれない
「階段」
今日も団地の階段に挑む 私の体力づくり
どんなに崇高なおもいを持っていても
いま求められるのは この階段を上り下りする体力なのだ
この階段の先に 私を待っている人がきっといる
その笑顔に会いたくて 一段目に足をかけた
いつもここが 私の仕事のスタートライン
私とあなたのかかわりは ここからしか始まらない
そこに私は 何を求められるのか
民生委員の日々の労苦に 心惹かれる

ようやくエピローグを迎えた
やはり 子どもから心離れない自分がいる
「この子らに」
「きみがただいるだけで」
ひとり静かに 声に出して読んで欲しいと預けた
「めんこいしょ」
ラストメッセージを朗読した
宇宙永劫の一瞬に 奇跡の命を生き 
人間社会に 人として生きるいまを
次代を生きる子らに どう引き継ぐのか
その課題に挑んで生きる人たちへの エールでもある
自らの誕生と注がれた親の愛を抱きしめる人たちに
福祉でひとづくりとまちづくりへの夢を託した

参加者と参観の役員 そして運営されたスタッフに
コロナ禍で 研修が無事出来た事への感謝と健勝
これからの活動への期待を込めて 〆とした

※「慰藉(いしゃ):悩み、苦しみ、不安などを慰めいたわること」

※「あらがい動く」:「鳥居一頼の世語り」2020年9月1日アップ
※「きょうという日」:「鳥居一頼の世語り」2019年7月17日第1回の記念の日
※「ほころびを繕うということ」:「鳥居一頼の世語り」2019年7月25日アップ
※「心の詩になる」:「鳥居一頼の世語り」2020年8月16日アップ
※「君だけのうた」:「鳥居一頼の世語り」2020年6月21日アップ
※「ゆらぎ」:「鳥居一頼の世語り」2020年8月27日アップ
※「階段」:「鳥居一頼の世語り」2019年10月18日アップ
※「この子らに」:「鳥居一頼の世語り」2019年12月31日アップ
※「きみがただいるだけで」:「鳥居一頼の世語り」2020年8月11日アップ
※「めんこいしょ」:「鳥居一頼の世語り」2019年9月14日アップ
※参考「自助・共助・公助」:「鳥居一頼の世語り」2020年9月19日アップ
※参考「後ろめたさ」:「鳥居一頼の世語り」2020年9月18日アップ
※参考「改革への道」:「鳥居一頼の世語り」2020年12月16日アップ
※参照「民生委員信条に生きる」:「鳥居一頼の世語り」2021年3月19日アップ
※参照「正しく怒ろう」:「鳥居一頼の世語り」2021年3月20日アップ
※参照「先の景色を見る」:「鳥居一頼の世語り」2021年3月22日アップ

〔2021年3月29日書き下ろし。参照の3つの詩は、厳しい現実を事実に基づいて描いた詩である。民生委員児童委員には是非とも読んでいただきたい〕

心ない世間~道民児連民生委員児童委員初任者研修レポート その4

なぜ引き受けたのか
人は 心ない人たちに 傷つけられる
人は 妬(ねた)まれて 嘖(さいな)まれる
なぜなのか その理由(わけ)すら分からず 自責の念にかられる

なぜ引き受けたのか
人は たじろぎ立ち止まり 考える
人は やる気も失せて 辞めるタイミングを探る
そこまでして やらねばならない理由が 薄らいでいく

でも なぜ引き受けたのか
人は 人から受けた恩を世間に返すと 考えた
人は 世間のしがらみから逃れられないと 腹をくくった
だから もう少し我慢しようと 諦めるしかなかった

ときに民生委員は 世間の風をまともに受ける
世間の無理解から生じる 偏見と批判の的となる
納得することが出来ぬまま 沈黙する
諍(あらが)うことを避け 感情を抑え品性を保つ

引き受け手がいない
後継者が育たない
短期間でリタイヤする
綺麗事ではすまされない 厳しい現実の前に 
民生委員は立ち尽くす

葛藤しながらも 強く心動かすものは何か
薄っぺらな同情心や憐憫の情ではない
その地でともに生きることへの渇望を 汲み取るだけのこと
福祉の崇高な理念や制度での救済ではない
その地にともに果てるまで 暮らし続けるだけのこと
微力であるがゆえに 為すべき事をするだけのこと
その地がともによき故郷となるよう 働き続けるだけのこと

まずは具体的な問題を処理しよう
「無報酬です」
「自治会は地域の自治組織」
無理解や誤解から 批判めいた発言をする地域の人
疎ましさを感じつつ モチベーションも下がる
だから せめて反論の根拠を示しておきたい
2編の詩は 自治会役員と民生委員の違いを明確に論じる
一人ひとりに じっくりと読み込んで欲しいとお願いした

「融和の心」
取り上げたエピソードは 世間の困りごとを
民生委員に押しつけて 高みの見物の決め込む世間の実態
それでも 生きる痛みや喜びを分かちあう融和の心を
地域に根づかせることを「人生の恩返し」にしようと挑む
「恩はいただいた方に返すのではなく世間にお返ししなさい」
そのことばが重い

人間の心の闇は 周りには何も見えない
コロナ禍で自死する人も多く 十代の自死も痛ましかった
全国の民生委員も参加する 自死を防ごうという運動は続く
道内では いのちの電話相談の限界も報道された
深い悩みの淵にあった 自死未遂者との語らいから生まれた
「自死からの目覚め」
気がかりな少年の自死に関心を向けさせた
いじめにより孤立した少年が選んだ自死の現実
「乾いた笑い」
あえて朗読をしてもらった少し表現の硬い詩
「生きたいという心」
自死を思いとどまって欲しいという 切ない願いを込めた

悲痛なテーマが続く
心痛なおもいが会場を包む
現実の問題から 目を背けることなく向き合う
その力を どのように引き出すのか
ナーバスに陥った心情のまま
ここで終わっては この研修の意味はなくなる
あらがいながらも 活動を続けることの意味を見出さねばならない
それこそが ファシリテーターとしての役目だった

※「無報酬です」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年3月10日アップ
※「自治会は地域の自治組織」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年3月11日アップ
※「融和の心」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2019年7月27日アップ
※「自死からの目覚め」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2019年10月31日アップ
※「乾いた笑い」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年11月13日アップ
※「生きたいという心」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年11月23日アップ
※参考「泣き寝入り」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年11月8日アップ
※参考「命を断つ子ら」ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年11月30日アップ
※参考「もう泣かないで」ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年12月10日アップ

〔2021年3月28日書き下ろし。ナーバスになった心境からどう立ち上がるのか、研修は終盤へと向かう。テキストでは紹介できなかった子どもの自死についての詩を参考に記す〕

子どもと生きる~道民児連民生委員児童委員初任者研修レポート その3

「妻の旅支度」は 強烈なインパクトを与えた
80代の夫婦が 添い遂げる実話を描いた詩である
病に冒され 余命3年と宣告された妻は
一人残される夫のために 千日のカレンダーを作り
そこに 家事一切を教えるプログラムを書き込む
覚悟の旅支度は 夫へのレッスンに費やされた
妻の愛の深さと夫の純情さは 静かに情感を揺さぶる
地域で慎ましく生きる老夫婦と オーバーラップしたかも知れない

今回は 民児協担当者の参加はなかった
「気概を持って」は割愛した
ただ道内の市町村単位民児協の担当は その9割余が行政である
2~3年で異動する担当者の気概の有無は 活動を根底から揺るがす
この詩を紹介する意図だけは 伝えた

シナリオ「自分のネットワークを作ろう」は出来なかった
初めて一人で地域を回るのは どれだけ勇気がいたことだろう
初めて一人で当事者と対面したときには どれだけドキドキしたことだろう
そんなときサポートしてくれる先輩がいたら どれだけ心強いことだろう
新人をどのように育てていくのかによって 人材の確保が左右される
道民児連の抱える 人材育成と定着の課題に直結するキーワード
「ひとりぼっちにしないさせない」ことに尽きる
「男女ペアの訪問活動」
「特別じゃない」
「マップづくりと新任民生委員」
この三本は 道内の民児協に出向き 人材を育てる取り組みを取材した
その中で「特別じゃない」を朗読してもらった
定例会での発言に尻込みする新任たちへの配慮は
決して特別なことではなかった
思っていることを 腹にためることなく吐き出すだけだった
この詩は 参観している役員の方々へのメッセージでもあった
他の二本も 長い間継続されてきた取り組みが
いかに人材の育成と定着に寄与しているかを如実に語っている

子どもについて 児童委員への問題提起を綴る
「まっすぐな まなざし」
数年に渡り 学級・学校崩壊と関わった
学校経営を揺るがす問題行動を起こした子らが
小学校を卒業するときに贈った詩である
弾けてしまった子らにも 
まっすぐなまなざしを向けて 生きていくことを信じたい
祈りの詩(うた)ともなった
「ふくしとは」
母子家庭の母と子を描いた詩である
「ふだんの・くらしの・しあわせ」づくりを読む
その一節「ただね 靴が小さくなって 歩くと少し痛い」
想像力を喚起することを強いた
貧しさを静かに訴え 堪える子どもの吐いた言葉を
受けとめる感受性が 求められているのではないかと

そして「この子よい子だ」を歌い出した
シンブルマザーの子育ての様子を
『竹田の子守唄』のメロディーに乗せた
♪「この子泣くなよ わが身がつらい この子笑えば 救われる」
「男の子守唄」は 最後の歌詞だけ披露した
♪「母の残り香 嗅ぐ子に添って メロディーあやしき 子守唄」
参加者が心で歌うことにより 
痛みを分かち合い響き合う場が 静かにつくられていく

子どもの問題は 教育福祉の課題でもある
学校が その機能を充分に果たしているとは言い難い
学校とのパイプ役であることも 伝えなければならない
「地域と学校のパイプ役になる」
さらに子育てで苦労する母親に 焦点を当てながら
社会の寛容性を呼び起こす 乳飲み子の存在を訴えた
「泣く子と寛容」
「乳飲み子は寛容の心の拠り所」と綴りながら
コロナ禍で子育てする母もまた 親として強く育つことを願った

子どもと生きる
子どもに教えられ 人としての道を学ぶ
子どもに信頼され 人としての道を歩む
子どもと生きる
子どものまなざしに 人としての誠心を問われる
子どものまなざしに 人としてのあり方を問われる
子どもと生きる
子どものいのちを 人として守らねばならない
子どもの明日を 社会として護らねばならない

※「妻の旅支度」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2019年10月28日アップ
※「気概を持って」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年1月25日アップ
※「男女ペアの訪問活動」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年10月29日
※「特別じゃない」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年10月27日アップ
※「マップづくりと新任民生委員」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年10月28日アップ
※「まっすぐな まなざし」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2019年7月29日アップ
※「ふくしとは」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年1月6日アップ
※「この子よい子だ」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年6月2日アップ
※「男の子守唄」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年6月9日アップ
※「地域と学校のパイプ役になる」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2019年10月24日アップ
※「泣く子と寛容」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年4月15日アップ

〔2021年3月28日書き下ろし。子どもを中心としたレポートになった。日本の子どもの置かれる貧困の問題にも焦点を当てた〕

うなずき~道民児連民生委員児童委員初任者研修レポート その2

今年の研修は グループワークを回避して
道内9カ所で ステージ型の展開を想定した
コロナで 研修時間も40分短縮され 
用意した教材(詩編)を消化するのは 至難の業だった 

昨年のステージ型では 舞台に上がった参加者数人に
朗読の後その場で 感想を聞き意見交換するカタチをとった
そうすることで 登壇した参加者のおもいは 
館内の参加者と共有され 共感が広がり一体感が生まれた

会場は広い会議室だった
14名は 長テーブルにひとりずつ座った
距離間は確保されたが 協議はままならない状況にあった
提示する一つひとつの詩編に おもいを語ることもできなかった

一人ひとりの心情に訴えることを 主たるねらいにした
40遍の詩編を制限された時間内に どれだけ伝えられるかを課題とした
民生児童委員とその活動に深く敬意を払いながら ここいることを伝えた
「心に響く詩 心を開く詩 心を守る詩」を描くことの己の役目を
「心守詩」により語った

プロローグは「コロナ禍から暮らしを護る」
道民児連の情報誌「アンテナ」に掲載された詩である
コロナ禍で厳しい人たちに寄り添う 全国の民生児童委員へのエールである
そして「はじめに」の章 シナリオ「稼いで半人前」は台詞の一部を紹介した
「仕事をして半人前 他人(ひと)様のために動いて半人前 これでようやく一人前」
委員の依頼を受ける場面を演じることができず やもえず割愛したのだ

「希望」という言葉が これほど意識された1年はなかった
「つながる つなぐ」
「小さな幸せを希望に紡ぐ福祉のまち」
福祉やまちづくりに関わる存在の尊さを訴えた
「地域で生きる 地域に生きる 地域が生きる」
そんなまちにする一人ひとりであることへの 希望を添えた

民生児童委員に委嘱された時の心情は それぞれが事情を負う
「青い手帳」は 静かに個々で振り返ってほしいと預けた
「群像」は 関わる人たちの時代背景やその人生を辿(たど)る
長編の詩文は 関わる人へのイメージを膨らませる手がかりとしてお願いした
そして やりくりがしんどい中 香典を包む一途な生き方をする老いた姿を描いた
「義理を果たす」の一部を紹介し 心にとめていただいた
貧しくとも 夫婦が受けた世間の義理を欠くことをよしとしない
頑なな老女の生き方に 夫との霊魂の交感すら感じられるすごみに 
衝撃を受けた エピソードでもあった

さまざまな人が 暮らしや身の困難を抱えながらも 地域で暮らし続ける
その人たちの姿を 参加者の朗読で進めてゆく
ステージは「助けあいの本質とはなにか」を問いかけてゆく場面に変わる
「助かるわ」は「助かるわ 助かったわ なんもさ お互い様」
愛ことばの往来が ぬくもりのあるまちをつくる
「日々是好日」は 独り暮らしをしている人をほっとけない
世間でお節介といわれても 頑張る人の姿を描き出す
マイクは読み手が交替する度に消毒され拭かれ手渡される

そうして ほっとけない人たちの日常の当たり前の動きが
地域のお世話役さんとして 目にとまってゆくのである
「小さな希望のともしびをかかげてください」
民生児童委員のこころづもりと腹づもりを解いてゆく
「人生の棚卸し」
「持ちつ持たれつ」
参加者は詩の朗読を聴きながら テキストに集中してゆく
参観する10人の役員の方々も 一体となって集中してゆく
彼らの強いうなずきが 研修への期待感となって醸し出されてゆく
そのうなずきこそ かけがいのない現任者のおもいの発露であった

※ステージ型(劇場型)のワークショップの成果については、2020年3月28日にブログ「鳥居一頼世語り」にアップした「舞台を創る」を参照されたい。
※「心守詩」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年11月24日アップ。連載500回目記念の日
※道民児連の情報誌「アンテナ」№209
※ 「コロナ禍から暮らしを護る」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年5月25日アップ
※「つながる つなぐ」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年6月5日アップ
※「小さな幸せを希望に紡ぐ福祉のまち」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2019年8月21日アップし、テキスト掲載のため2020年11月改訂する)
※「青い手帳」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2019年12月10日アップ
※「群像」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2019年7月19日アップ
※「義理を果たす」:雑感(84)鳥居一頼のサロン(5):「義理を果たす」2019年6月19日アップ
※「助かるわ」:(80)鳥居一頼のサロン(3):「助かるわ」2019年4月20日アップ
※「日々是好日」:「鳥居一頼の世語り」2019年12月2日アップ
※「人生の棚卸し」:「鳥居一頼の世語り」2019年11月16日アップ
※「持ちつ持たれつ」:「鳥居一頼の世語り」2020年10月21日アップ

〔2021年3月27日書き下ろし。うなずきは同意と確信を与えてくれる。研修はまだ中盤にさしかかったところである〕

聖火が走る

東京五輪の聖火リレーが 福島県を起点に始まった
世論の盛り上がりを欠く スタートになった。
そもそもは 国威発揚のために ナチスドイツが始めた
戦後は 平和の理念を継承するセレモニーとなった

エンブレム盗用疑惑
ベルギーのデザイナーが 自作を盗作されたとして訴訟を起す
国立競技場案の白紙撤回
設計デザインが 多額の建設費用がかかるとの批判を受けた
JOC会長竹田恒和の招致疑惑
マラソン会場の札幌移転では 札幌が謂れない批判を受ける
誘致運動に尽力した者たちの 不名誉な退陣
挙げ句の果ては 組織委員会長森喜朗のジェンダー騒動
全く収まる気配のないコロナ感染が 追い打ちをかける 
さらに厳しい経済不況に 暮らし向きはよくなる兆しがない

東日本大震災からの復興と コロナに打ち勝った証しと吹聴したが
IOCと放映権をもつNBCの 一蓮托生の利権に巻き込まれ
開催しかカードはなかった それだけのこと
東京五輪は 目的も廃れ汚点も暴かれ 何もかも冷え込むばかり
世界の開催への期待感も 果たしていかばかりであろうか

五輪の聖火に 希望を託すにはあまりにも心許ない
お祭り気分を味わうには 違和感ばかりでほど遠い
聖火は 47都道府県をめぐる(島根県はパスか)
約1万人のランナーがリレーして 7月23日の開会式で点火される
その予算と動員する人員も半端ない
とんでもない税金が 泡銭のように消えてゆく

開催の社会環境の条件のひとつ
コロナ対策としてのワクチン接種
ワクチンの確保や接種時期 対象の決定などが論議されるが
誰が注射を打つのか その人員の確保がままならない
職種規制で 医師と看護師しか認められていないのだ
日常の医療を差し置いて 人員を確保するなどありえない
開催までの接種人口は いまだ未確定

札幌では新規感染者の増加に加え 変異株が感染拡大をうかがう
27日から来月16日まで 外出・往来自粛が要請される
全国も解除後1カ月足らずで 同じ轍を踏むことだろう
そのとき 聖火リレーも立ち止まるしかない
国民の不安の火種では 聖火は灯せぬことを知る

それだけのことを 知らせるために
聖火は 規制された沿道を走る
 
〔2021年3月26日書き下ろし。心寂しい限りの聖火リレーの風景。ドン詰まる気配を感じざるをえない〕

真剣なまなざし~道民児連民生委員児童委員初任者研修レポート その1

90分の初任者研修が始まった
民生委員になって 1年前後の14名が参加した
道独自のコロナ感染対策の影響で
道内で実施予定の研修は すべて中止となった
規制解除のお陰で 1年ぶりに再開した

本来研修は グループワークを中心とした
130分のワークショップ形式で 実施してきたものである
感染予防が徹底されて ようやく実施にこぎ着けた
受け入れた市民児協関係者の熱意と誠意ある協力に感謝したい
また今回は 市内の地域単位の民児協の役員も参観してもらった
この研修プログラムが新任だけではなく 現任者にも活用できるのではないか
その可能性を見極めていただくために 10名の役員に足を運んでもらった
さらにこのプログラムを一般化して
単位民児協でも活用できる「研修マニュアル」を作成するために
登別市社協から二人の若手社協マンに協力を依頼し 参観してもらった
学びに対する若い感覚と 社会福祉士としての専門性をもって作成に挑む

人間関係を円滑にするために情緒性をいかに高めるのか
活動へのモチベーションをいかに高めるのか
個々が問題意識を確かめながら課題を明らかにする
テキストに自作の40編の詩が用意された
ただ 参加者同士の会話すらできなかった
学校形式に机が配置され 講義調にならざるを得なかったのだ

最初に〈8926〉という数字を板書した
毎日加算されてきたコロナで命を落とした人の累計である
数ではなく 一人ひとりの人生に心馳せてほしいと願った
犠牲者の冥福を祈りながら
詩「さよならも言えずに」の朗読から始める

次の詩「背負い込んだ重さ」は 自己葛藤から始まる
この研修に参加するまで
たくさんの不安と疑問を抱えて 活動してきたであろう
せめて その心の負担を少しでも軽くして
先の見通しが立つのならと 小さなおもいを抱きながら
民生委員を引き受けた時の心境から 迫ることにした
しくじりの詩でもある
自身の気の重さが 相手の重さになることへの気づき
冷めた言葉が 相手の弱くなった心を刺すこと
事務的な対応が 相手の警戒心を高めること
相手に添うという 難しさを引き受けながら
少なからず 負担はなくなることはない
しんどい関わりから 与えられる人としての〈学び〉は
迷いに始まり 人の道へと誘い
情に始まり 情感を豊かに耕し
出会いに始まり 人生をさりげなく彩る

参加者の表情が少しずつ真剣味を帯びてきた
ようやく 60頁に及ぶテキストに入ってゆく
「情緒は私を支配する。論理よりも強く」(伊藤整)
そのことを確かめるために
情緒感を揺さぶる本題へと向かっていった

※「さよならも言えずに」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年12月8日アップ
※「背負い込んだ重さ」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年12月6日アップ

〔2021年3月25日書き下ろし。4ヶ月前に刷り上がった研修テキストのお披露目は、会場や時間、方法の制約の中でようやく実施された。その様子をレポートしていきたい〕

バスに乗る

子どものようだった
修学旅行にでも行くような気分で
バッグに荷物を用意した

子どものようにふるまった
手慣れた旅の支度も新鮮な気分で
バッグの荷物を確かめた

子どものようにはなれなかった
仕事ができる高揚した気分で
二つ目のバッグに書類を入れる

子どもにはなれなかった
1年ぶりの待ち焦がれた気分は
二つ目のバックにおもいも入れた

子どもにはできないことだった
遠くで待つ学ぶ人の気分を
二つのバッグに期待と一緒に詰めこんだ

子どものように
素直に楽しく学び合う気分を
二つのバッグが運んでくれる

都市間バスの人となる

〔2021年3月22日書き下ろし。今冬仕事が全てキャンセルされた。道の移動制限が解除されて初めて23日2泊3日の旅に出る。会えてよかったと言って頂ける仕事にしたい〕

感染リバウンドの兆し

菅首相は 再び緊急事態宣言を出さぬよう
しっかりと対策を行うのが 責務だという
責務を果たせず 感染を抑えられなかった 
懲りずに経済の立て直しと 一途に五輪を目指す

5つの対策を掲げるが 効果は期待薄か

1 飲食を通じた感染防止
春の陽気に誘われて 一旦緩むと戻せない
飲食店だけ規制をかけるが 不満と不安がやるせない
娯楽施設やスポーツイベント 緩い規制で五輪開催の環境づくりか

2 変異株の監視体制の強化
監視しているのか 見えない体制
保健所も行政も 検査と対応で手一杯
内地から来た変異株 これから道内席巻する
監視の先にある防疫体制の強化は あるやなしや

3 感染拡大の予兆をつかむための戦略的な検査の実施
戦略は 感染拡大を抑えるためにさまざまな視点から
総合的に技術や科学を動員することに尽きる
ならば問う
いままでの戦略は一体何だったのか
科学をご都合主義的に利用してきたツケが回っていく

4 安全・迅速なワクチン接種
欧州は変異株でリバウンドしている
ワクチンの輸入供給にも影響は必至
楽観的な情報を流して やってる感を演出する
開始の目処さえ曖昧で 確実性は先送り
いつまでに必要な接種が終わるのか
その目処さえも付けられぬ
迅速でがなく遅速を旨とすべきか
  
5 次の感染拡大に備えた医療提供体制の強化
日本医師会が その政治力を発揮する 
医師会は 会員に対し医療体制強化に強制力はない
いままでも散々やってきたはずなのに
なぜ体制が整備されないのか 
その要因は すでにお偉い方々には承知のはず
リバウンドに堪えきれぬいま 具体的にどうするのか
ベッド数より 医療者の離職対策にこそ注力しよう

5つの対策の なんと薄っぺらなことか
いままでの対策の 上書き程度で茶を濁す
宮城県を例に 地方からリバウンドが起きている
道内も長期対策期間が解除されて
内地から持ち込まれた変異株や
施設 病院 そして学生たちに広まるクラスター
解除前より数値は上昇して 下げ止まりを呈する

リバウンドの足音が
春の陽気とともに 大きく響いてきた

〔2021年3月22日書き下ろし。実行再生産数(一人が何人に移すのかの指数)が下がらぬままに、緊急事態を解除した。5つの対策で抑制できずにきたなかで、リバウンドは当然起こる。学習能力の低い者たちが、解散選挙に足早に備える〕

付記
緊急事態、2カ月半ぶり全面解除「まん延防止」視野に
政府は22日、新型コロナウイルス感染拡大に対応するための緊急事態宣言を約2カ月半ぶりに全面解除した。首都圏は飲食店への営業時間の短縮要請を1時間緩和し、午後9時までとする。新年度に向けて人出の増加が予想され、感染力が強いとされる変異株の広がりが懸念される。政府は宣言の前段階で集中的な対策を取る「まん延防止等重点措置」の発令を早くも視野に入れている。
飲食店に対する時短要請は宣言解除により、命令や罰則などの強制力を伴わないものになる。国や自治体は飲食店に引き続き感染対策強化を求めるが、実効性が課題になりそうだ。
(北海道新聞2021年3月22日)

先の景色を見る

ただただ辛かった
逃げ出しかった
投げ出したら どんなにか楽になるだろうか
捨ててしまったら どんなにか救われるだろうか

ただただ悔しかった
堪えられなかった
諦めたら どんなにか気が晴れるだろうか
見限ったら どんなにか気が済むだろうか

前に行のも 後ろに引くのも
もう無理だった
やめるにやめることもできず
腹をくくるしかなかった

男との関係が 強いストレスだった
上司にへつらい部下を見下す男は 有頂天だった
人格も感覚も価値観も 許し難かった
利己的で狡(こす)い男と 仕事するのは限界だった

男の卑劣なパワハラは 高圧的で攻撃的だった
脅され 中傷され 疎(うと)んじられた
人格は否定され 苦役以外なにものでもなかった
同僚は 累が及ばぬよう無関心を装った

男に退職を強要されながらも
見返してやろうと 意固地になった
反骨心だけが 唯一の支えだった
孤立無援の闘いが 続いた

胃はキリキリ痛み出し
食欲は減退し
寝ることも阻(はば)まれた
心の病を発症する寸前だった

嫌われたには 理由がある
仕事のできない男への反論が 発端だった
世渡りに長けた男の力量は スカスカだった
男は無能さを指摘され プライドが汚された

もう潮時かも知れない
男の思惑で辞めるのは 癪(しゃく)だった
負け犬のように追い払われるのは 癇に障った
だから自らを鼓舞し酷使して 最後の仕上げをする
それがいま 自らを奮い立たせるモチベーションだ
それこそが 自らを堅持するアイデンティティーだ

始末をつけて 男の鼻を明かした
ポジティブに生きるために 
辞表を叩きつけた

その先に見る景色は 
辛苦が歓喜に変わり 次の仕事へと挑む姿だ
呪縛は解かれ 自由を求める姿だ
抑圧から逃れ なりたい自分になる姿だ
 
〔2021年3月20日書き下ろし。不本意に辞職された人に、悔しさをバネに新しい世界に挑む人もいるだろう。辞職願を出したひとりとしてその心中を察する〕

一筆啓上

マスク着用の件につきましては
決めたのはそちらさんです
もろにピント外れの感覚に
呆れかえっています

もう議員をお辞めになり
豪邸に隠棲する潮時です
誰にも害は及びません
そうなれば諸手を挙げて感謝いたします

〔2021年3月20日書き下ろし。麻生さんの発言への一国民の率直な回答です〕

付記
麻生太郎財務相全発言
「(緊急事態宣言を)これくらい長くやっていると、なんとなく…いわゆる…。なんだろうね。どれくらいやってるかね。マスクなんて暑くなって、口の周りがかゆくなって最近えらい皮膚科がはやっているそうだけど。(マスクは)いつまでやるんだね?真面目に聞いてるんだよ、俺が。あんたら新聞記者だから、それくらい知ってんだろ。いつまでやるの?これ。マスクはいつまでやることになってるの?」(2021年3月19日閣議後の記者会見)