「鳥居一頼の世語り」カテゴリーアーカイブ

核の下のしるし

核の傘下で ぬけぬけと平和を唱う
核の傘下で 核廃絶の声を弄(もてあそ)ぶ
核の傘下で 改憲の気勢を上げて武装を強化する

核兵器を数えて 威嚇し合う
核兵器の開発を 競い合う
核兵器の威力を 誇り合う

原発の危険を承知で 再稼働する
原発のゴミの処理に 金をばらまく
原発の無駄を隠して 騙(だま)し続ける

放射能が 世界を覆(おお)う日は 遠くはない
放射能が 世界を席巻するのは 核戦争だけではない
放射能が 人類を滅亡させるのは 自明の理である

核の世界に生きるということ
人類規模で 生存のしるしが消去する
地球規模で 自然のしるしが壊滅する
宇宙規模で 惑星のしるしが消滅する

〔2020年11月25日書き下ろし。しるしという言葉が瞬間核と結びついた。核に絡む国策は全て失敗している。核の傘下の改憲と軍事化はなぜかを問い続けたい〕

憎しみの果てに

際限なく向けられる 卑劣なことば
容赦なく叩きつける 非情なことば
感情的に吐き出される 下劣なことば

攻撃的なことばが 心を嘖(さいな)む
常道を失ったことばが 心を裂く
品格の欠片すらないことばが 心を殺す

人はなぜ醜い言動に 身を任すのか
人はなぜ残酷な仕打ちが できるのか
人はなぜ憎悪を抱いて 生きていけるのか

憎しみが湧き上がる情動
恨みか 怒りか それとも支配か
逆らう者への 許しがたき逸脱行動
不寛容さが 己の人格となる  

憎しみの果てに見る風景
快感か 歓喜か それとも支配か
自己制御の効かない 過激な妄想
ブーメランの如く 己を刺す

人間失格!

〔2020年11月25日書き下ろし。なぜ憎まなければならないのか。その果てにあるのは何か。憎しみの言動を制御できずに暴走する。対象が子どもなら傍観できるか〕

つまずきの詩

浅はかさだった
そう気づくには 遅すぎた
もっとこうすればよかったと
分かるには 若すぎた

無頓着だった
そう気づいたのは 後の祭りだった
こんなに迷惑をかけるなんて
分かって 唇をかんだ

無能だった
そう気づいたのは 慢心だった
それほど自信たっぷりだったなんて
分かって 鼻を折られた

失敗だった
そう気づいて 後戻りは無理だった
それだけ甘くみていたなんて
分かるまで 時間がかかった

つまずくのは 誰でもある
だから 後悔先に立たずと 慰める
つまずいたのは 自分のせいだ
でも 納得できないもう一人の自分がいる
つまずいたのは 仕方ない
なぜか 諦めきれないもう一人の自分がいる

いい子ぶらずに 悔しいと素直に吐けばいい
体裁なんか気にせずに 畜生って叫べばいい
体面なんてくそ食らえ ダメなやつだって泣けばいい

つまずきはきっと
自分を見つめ直す チャンスかも
つまずきはもしかして
自分を変える チャレンジかも
ただ 人とのつまずきは
自分の人生の ダメージかも

自分のせいなら乗り越えられる
人のせいなら…後に引く

〔2020年11月23日書き下ろし。つまずくにはわけがある。自分のせいなのか誰かのせいなのか。ただつまずいたことには変わりない。問題は、人生をやり直すには、時間の猶予がなくなったことかも〕

大人の都合

校則ってなぜあるの?

それはね
先生が子どもを指導しやすくするためにあるの
そしてね
ひとりでも余計なことをしないようにするためにあるの
だってね
ひとりでもおかしいっていったらやりにくいしょ
だから
先生もおかしいと思うだけで変えようとはしないんだよ

もっと言おうか
先生ってほんとは弱虫なんだ
教育者って偉そうにしているけれど
子どもがおかしいと思った校則でも
決して子どもの側に立って闘わない
無駄なエネルギーは使わないってとこかな
難しい言葉で言うと 日和見的な先生が多いってこと

そうなんだ
やっぱり人の子 反対して一人ぼっちにはなりたくない
いままでのルールでやってきたものを変えようなんて
周りの恨み辛みを浴びるのは 目に見えているからね
そこまで分かっていて 子どものためにやるって先生いる?

わかってあげてよ
先生もしたいけれど 大人の都合で動けないことを
先生もほんとはしたくはないけど 大人の都合が優先します
先生もただのひと 面倒は避けたい大人の都合です

あっ忘れてた
校則ってさあ ほんとは先生を守るためにあるんだ
子どもたちを 事細かく縛る学校の憲法
これをかざせば 子どもは逆らえないって信じている
もともと指導力がないから こんなものに頼るんだよ
そのくせ個性を伸ばす教育なんて よく言うよね
いつでも 建前と本音の使い分けをするのが先生
まさに 大人のご都合主義そのもの

だから
壊すのは 無駄なことって諦めよう
先生には 没個性の子どもを育てることこそ
公教育だと思い込んでいる人が多いんだよ きっと
「子どもの権利条約」すら わかってないだろうな
学校にいる間は 我慢を学ぶ人生の試練だと思うしかないね
反面教師に出会って 人間を学ぶチャンスだと思うしかないね

結局
みんなおかしいと気づいていても 決して顔には出さない
ひとりでも 突然反抗しだしたら収拾がつかなくなる 
困るのは 学校の面子
その前に その声を潰すのが校則の役目
下手に反抗すると 指導という名の罰がある
逆らわず従順に 先生の言うことさえ聞けば
平穏な学校生活が 3年間保障されるんだ

だから
先生に聞こえないように 
小さな声で叫ぼう
校則なんてくそ食らえ!

〔2020年11月23日書き下ろし。中学校の校則は統制管理下にある。疑問を感じても変えようとしないのは、なぜか? 教師もまた統制管理下にあるのか〕

心守詩(こころまもるうた)

いまにも折れそうな
心を守りたい

傷つけられた心は
誰も知らない
涙流すしか
心は守れない

いまにも倒れそうな
心を守りたい

壊れそうな心は
誰も知らない
寄り添うしか
心は守れない

いまにもくじけそうな
心を守りたい

意気地のない心は
誰も知らない
頭を上げるしか
心は守れない

いまにも乾きそうな
心を守りたい

愛をなくした心は
誰も知らない
ぬくもりしか
心は守れない

心に響く詩があれは
たとえ 志がくじかれようと
立ち上がる力を 感じるだろう

心を開く詩があれば
たとえ 夢を見失いそうになっても
歩き続ける力を 取り戻すだろう 

心を守る詩があれば
たとえ 愛を失いそうになっても
人を信じる力が 生きる道を示すだろう 

〔2020年11月24日書き下ろし。辛い人へ、その心を守る詩を書きたい。それが私の願望であり役目だと悟った夜である。連載500回目の節目に謳う〕

生きたいという心

心平らなれば 寛容なり
心安らかなれば 諍(いさか)うことなし
心満ちていれば 幸せなり

心なければ 無なり

心失えば 闇なり
心渇けば 孤独なり
心折れれば 苦悩なり
心醜ければ 生き恥を晒す
心枯れれば 感動なし

心あれば 有なり

心弾ければ 動なり
心躍れば 自由なり
心挑めば 精気なり
心通わせば 信なり
心感じれば 生なり

人生を決して諦めない
そのおもいの強さと熱さが
生きたいという心を衝き動かす

〔2020年11月21日書き下ろし。こころの有り様が人生の豊かさを左右する。不遇であっても諦めない心こそ失ってはならない。自死を思いとどまって欲しいと〕

あだ花を咲かす

せっかくのGOTOトラベルも
コロナの波に押されて
あだ花となるのか

肝いりのGOTOイートも
マスクしながらの会食は
あだ花と散る定めか

羽田空港は 混雑していた
高速道路や新幹線のホームも
朝から混雑した
3密を避けて 旅を楽しむと
東京から行楽地へ向かっていく

不要不急の外出を控える
札幌市民は 自粛を余儀なくされる
後手に回った その場しのぎの対策
しわ寄せは 暮らしを直撃し脅かす

旅人は 
心苦しく思いながら
自衛しながら
自由往来する

あだ花は 
一時の喜びを与えただけで
感染都市に 花びらを散らす

あだ花を
愛でる余裕もなく
感染都市で はかなく散る

あだ花にならぬよう
GOTOキャンペーンを進めた者たちは
責任をとらず その判断を丸投げする
いつの世も 往生際の悪さが 
政治のあだ花となる

※あだ花(あだばな):咲いても実を結ばない花。外見ははなやかでも実質を伴わないもののたとえにもいう。咲いてすぐ散る。はかない花。

〔2020年11月21日書き下ろし。3連休が始まった。東京は感染者が過去最高の539人。キャンセルできずに旅に出る。どうぞお互いが無事でありますように、そう願うだけ〕

ただいまとおかえり

玄関の鍵を開ける
ただいま
おかえりの声はない
誰も居ない家
外気と同じ寒さを感じる 

ただいま
習慣づけられた挨拶
待つ人がいなくても 
声に押されて 玄関に入る 
靴箱に置かれた消毒液が 日常になる

ストーブをつける
冷えた身体と部屋を暖める
母と妹が戻るまでの留守番
宿題をして ゲームで遊ぶ

ただいま
母の背中で妹の元気な声
おかえり と大きな声で返事する
ただいま きょうもいい子にしてた
母のその一言が 一番嬉しい

お腹減ったっしょ
いますぐ用意するね
お願いね
妹を下ろして コートを脱ぐ

今日も遅かったことを詫びながら
母は3人の無事な1日を喜ぶ
夕餉は出来合いのものだけど 美味しい
「感染リスクを回避できない場合」の仕事しかない
明日もまた リスクに厳しく晒される
決して子どもたちに移してはならない
子どもが健康でいることが いまは一番

明日も無事に帰宅したい
「ただいま」「おかえり」
無事の挨拶が続きますように
子どもの寝顔に 願掛けをする

〔2020年11月20日書き下ろし。道内は今日300人を超えた。コロナ第3波の真っ只中で、リスクを回避できない仕事で頑張る母と留守番の子らとのコロナの闘いは続く〕

眼光紙背に徹す

専門の書物は もう読めない
学生相手の教材研究
一つの字句 一つの事柄
分かりやすく 講義をするのに苦労した
消化不良で授業に臨み 恥をかく

専門の書物は 飾り物
課題研究 気取ってみても
一つの字句 一つの事柄
つまずき転んで 中途で挫折
難解な解釈避けて 放棄する

専門の書物は 代打役 
求めるよりも 求められるがままに
一つの字句 一つの事柄
テーマに合わせて 用語を重ねる 
かくて専門は もどきに変わる

専門の書物は お蔵入り
ストックされた見識も 怪しくなり
一つの字句 一つの事柄
テーマに合わず 自動消去
かっての専門は 専門外に鞍替えする

眼光紙背に徹す
そうありたいと 願いし日も確かにあった
そうしたいと 向き合う喜びの日もあった
歳を重ねて その力の貧弱さを知る

不意を突くように
書き出した文章が 
深意を語れと命じる
眼光紙背に徹せよと
書き手に求める
またまた こうして難渋する

その思考回路から逃れられず
いつまでも あがき続ける

※眼光紙背に徹す(がんこうしはいにてっす):書物を読んでただ字句の解釈にとどまらず、その深意を読み取る。

〔2020年11月17日書き下ろし。読み書きするということ。表現することの難儀をいつも抱えながら、恥ずかしながら言葉と遊ぶ。蔵書は目の肥やしか、見栄か〕

唯々諾々

はいはい 仰せの通り ごもっとも
はいはい あなたが大将 逆らいません
はいはい お好きなようにしてください

刃向かっても 太刀打ちできない
しっぺ返しが おぞましい
いのちの保障も ありません

言うこと聞くだけで 波風立たず気楽です
口を閉じて黙っているのが 身のためです
先読みで動くと 後ろから罵声が飛びます

唯々諾々
どんなことでも言うがままです
決して見捨てないでください
命預けた人生です

唯々諾々
どんなに世事に疎くても
どんなに勘違いしていても
どんなに人間味がなくても
おそばにいつも傅(かしず)きます

どんでん返し
選挙で負ければ ただの人
バッジを外せば ろくでなし
脅し文句も 糠に釘

仕返し
ようやく 呪縛が解けました
これで 思考解除されました
これから 悪行をばらします
どうぞ 首を洗ってお待ちください
えっ 洗ってくれと
どこまでも図々しい恥知らずだこと

おっと待って
その言葉 唯々諾々してきたあんたに
熨斗(のし)を付けてお返しします

※唯々諾々(いいだくだく):何事にもはいはいと従うさま。他人の言いなりになるさま。

〔2020年11月17日書き下ろし。蛇ににらまれた蛙のような政治家が世にはびこる。その呪縛から逃れる術はあるのか。一月解散は予定通りか〕