「鳥居一頼の世語り」カテゴリーアーカイブ

君だけのうた

君だけの うたがある
哀しいときに
ふと口ずさむ うたがある
耐え忍ぶときに
嗚咽(おえつ)を堪(こら)える うたがある
懐かしむときに
涙枯れる うたがある

君だけに 響くうたがある
辛くて逃げ出したいときに
踏みとどまる うたがある
不安にかられたときに
払いのける うたがある
悔いるしかないときに
立ち上がり歩きだす うたがある

誰かと 歌えるうたがある
嬉しいときに
こころも踊る うたがある
愛を確かめるときに
勇気をもらう うたがある
仕合わせなときに
ともにわかちあう うたがある

君にしかわからぬ うたがある
人生を噛みしめる 
苦くて甘い うたがある
人生の迷いを晴らす 
目覚めに誘(いざな)う うたがある
人生を彩る 
こころ模様が刻まれた うたがある
人生に希望をもたらす 
意気に感じて動く うたがある

君だけのうたとともに
君は 明日を生きる

〔2020年6月20日書き下ろし。コロナ禍できっと歌や詩が、生きる力を与えている〕

腐っても鯛

本来上等なものは 
たとえ腐っても その品格を失わない
だから 腐っても鯛

本来上等ではないものは
腐ったら 捨てるしかない
だから 腐ったら生ゴミ

腐る前に 予兆がある
賞味期限が ひとつの目安
切れてしまえば 匂いを嗅いでみる
気に障らなければ 大丈夫と太鼓判を押す
悪臭がすれば ためらわずにゴミ箱イン

腐ったものが いつまでも居座っていた
国会は 腐敗臭に満ちていた
ガードした者たちは 嗅覚が麻痺していた
思考力も低下し 自らも腐って異臭を放っていた
でも自覚症状は ほとんどなかった
6月17日 国会を閉会した
腐っても鯛の名分は 守り果(おお)せた

すぐに ケチがついた 
18日14時51分 東京地検は
河井克行・案里議員を ようやく買収容疑で逮捕した
あいつが賭け麻雀さえしなければ…
国会での追及を逃れて 早々に幕引きできた
夕方の記者会見は 慣れた謝罪でジエンド
他人事のような振る舞いに 観ていてうんざりした
隠しおおせぬ綻びは 
東京地検の威信をかけて
白日の下にさらされることを 切望する

ひたすらに 〈信〉の一字を捨ててきた
腐っても鯛は 腐ってタダの生ゴミとなった
その品格すら 跡形もなく消されてゆく
その日は 決して遠くはない

〔2020年6月18日書き下ろし。これ以上なにをか言わん〕 

付記
安倍首相会見も…「大変遺憾」全く同じセリフ繰り返す
安倍晋三首相は18日、午後6時から通常国会閉会に伴う会見を行い、冒頭「わが党所属であった現職国会議員が逮捕されたことは大変遺憾であります。かつて法務大臣に任命した者としてその責任を痛感しております。国民の皆さまに深くおわび申し上げます。国民の皆さまの厳しいまなざしをしっかり受け止め、我々国会議員は改めて自ら襟を正さなければならないと考えております」と陳謝した。
しかし、代表質問で「総理総裁として具体的にどう責任を痛感しているのか」と問われると、答えは「わが党所属であった現職国会議員が逮捕されたことは大変遺憾であります。(中略)我々すべての国会議員は改めて自ら襟を正さなければならないと考えております」。全く同じ言葉を繰り返した。
「自民党総裁としてより一層襟を正し、国民に対する説明責任を果たしていかなければならないと考えています」と付け加えたものの「捜査中の個別の事件」を理由に「詳細なコメントは控えたい」。説明責任は果たさなかった。事件を巡っては自民党本部が振り込んだ1億5000万円の政治資金の一部が買収に使われた疑いが持たれている。安倍首相は「昨日、二階幹事長より『巷間(こうかん)言われているような使途に使うことはできないことは当然である』という説明が行われたと承知している」と話し、自身の言葉で説明しようとしなかった。(日刊スポーツ2020年6月18日)

世界の感染者800万人超える

3月11日 WHOは「パンデミック(世界的流行)」の状態と認定
1ヶ月後の4月16日 200万人
12日後の4月28日 300万人
13日後の5月11日 400万人
11日後の5月22日 500万人
10日後の6月1日  600万人
8日後の6月9日   700万人
そして8日後6月17日 800万人を超えた
およそ1ヶ月単位で 倍々になった異常な増加急曲線
死者は 2ヶ月前の13万7千人から43万9千人
3.2倍にも膨らんだ

欧州と中東は ピークは一旦収まったようだが わからない
中国は 北京で2ヶ月ぶりに集団感染が発生 再び厳戒態勢を敷いた
米国は 200万人をゆうに超えた
経済活動再開の矢先に 黒人暴行死事件が起きた
これを契機に人種差別・コロナ・失業の三重苦の不満が 一気に爆発
トランプの分断を煽る挑発的な言動も 火に油を注ぎ
「Black Lives Matter」を掲げた抗議デモは 全米から世界に拡散した
新たな感染リスクを抱えて 収束はまだ見えない
ブラジルの政権は 感染防止に何の手立ても施さず 完全放置
ここ数日中に 100万人は超えるだろう
ロシアもインドも まだまだ収まる気配はない

この2週間ほぼ毎日 十万人以上の新しい感染者がカウントされる
これから南半球が 冬に入る
新型コロナの感染は 途上国を中心にさらに勢いを増すだろう
南米やアフリカ諸国の 爆発的な集団感染を憂畏(ゆうい)する
アフリカや中東などの難民や避難民のキャンプも 不差別にコロナにさらされる

数を見ながら 思いたい
その数に見合う対策は
その数に見合う治療は
その数を支える家族の数は
その数を支える人と資金と物資の数は
その数は単に数として積み上げられ数えられていく
際限なく増え続ける〈無機質な数〉

カウントされるだけでは 
〈その人の存在〉は無となる
そこに生きる・生きた一人ひとりの存在
生き残った者は
死に至った者を悼み
悲嘆を超えて 生き続けねばならぬ
彼らの痛みを想像し 
心を添えることこそが 共生への道標となる 
そう信じたい

悲惨な事態を回避する 
その努力を続けねばならぬ最中に
いがみ合うバカどもが 
子どもらの未来を 無惨に踏みにじる

〔2020年6月18日書き下ろし。無機質な数をどうとらえるのか、その想像力がいまこそ求められる〕

付記
「世界の難民、8千万人に 過去最多更新、全人口の1%」
【ジュネーブ共同】国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は18日、迫害や紛争の影響で国外に逃れた難民や難民申請者、国内で居住地を追われた避難民などの総数が、昨年末時点で7950万人に上ったと発表した。2013年末に戦後初めて5千万人を超えた後も、過去最多の更新が続いている。
グランディ難民高等弁務官は「世界人口の1%に相当する規模」と危機感を表明した。
内訳は国内避難民が4570万人、難民が2600万人、難民申請者が420万人のほか、難民の厳密な定義から外れるものの、政情不安が続く南米ベネズエラを脱出した国外移住者が360万人に上る。(北海道新聞2020年6月18日)

小さな音

世界で一番小さな音って?

アリが餌を巣に運んでいるときに
餌が地面を擦る音

ミツバチがホバリングしながら
花の蜜を吸う音

朝露に濡れた葉の雫(しずく)が
花心に落下していく音

貧しさに囚われし子らの涙が
世の風に舞い 大地に浸みてゆく音

〔2020年6月16日書き下ろし。自然の音の世界の豊穣さに比べ、なんと人間世界はさもしいのだろうか〕

東京アラッと

小池百合子東京都知事
時局を読むのは 見事だった
オリンピック延期を決めた途端に 
コロナ対策に 大きく舵を切った
首都ロックアウトは 強烈なメッセージでもあった
政権の尻を叩いて 非常事態宣言を促した
そこには 首都のリーダ然とした姿を見せていた

記者会見の語りも演出も 上手かった
安倍首相など どうあがいても足下にも及ばない
テレビカメラに送る ぎょろ目の視線はさすがだった
質問に的確に答える 威風堂々の立ち振る舞いは 
政治家の貫禄としたたかさを 如実にアピールした
コロナ対策で出遅れた 失地回復のギアアップは さすがだった

さもさもらしい大袈裟なことが大好きだった
「東京アラート」と銘打って 
都庁とレインボーブリッジの色を 赤や青にライトアップ
アラッと見せた ただそれだけのことだった
10日も経たずに解除して 放った一言
「これからは自粛ではなく自衛の局面に入った」
政治がなすべきことを放棄して
都民を突き放し 自己責任を強いてゆく
これも 政治家の冷酷さの一面だろう
その声の乾かぬうちに
15日には 解除後最多の48人が感染した

前回の都知事選では
「7つの0(ゼロ)」公約をアピール
達成は「ペット殺処分ゼロ」 のみ
改善は「待機児童ゼロ」
「満員電車ゼロ」「残業ゼロ」は 緊急事態宣言中のおまけ
検証困難「都道電柱ゼロ」「介護離職ゼロ」「多摩格差ゼロ」

築地市場の移転の大失態
その跡地問題も そのまま放置して
2期目の都知事選に向けた新たなスローガン
「東京大改革2.0」
中身は何か分からないブラックボックス

7月5日投開票日 小池都政の評価が下る
コロナ禍で その都民度と自衛力が試される
都民よ 賢くあってほしい

〔2020年6月15日書き下ろし。地方自治がこれからはもっと重要になる。都知事選は民主主義と地方自治を問う重要な選挙。都民の小池都政への検証が急がれる〕

不登校どうする?

携帯の着信音が鳴った

「もしもし、あっ大家さん、ご無沙汰してました。お変わりありませんか?」

「ここんと電話がないので、忘れられたかと、つい寂しくて…」

「のっけから、嬉しいことをおっしゃいますね。ありがとうございます」

「いやいや、そう言えばきっと喜んでくれると思いましてね」

「なんですか、そのおっしゃりようは」

「いやいや自粛生活が終わって、あんたも仕事で忙しくしていることだろうと電話のないのは良い便りと思いながらおりました」

「さすが年の功、お見通しで」

「仕事でお忙しいことは重々承知で、この電話いまはいいですかね」

「大丈夫です。ちょうど仕事の手がすいたところで、グッドタイミングです」

「電話をしたのは、ちょっと相談に乗ってほしいことがありましてね」

「私のような者でもお役に立つんですかい?」

「これといって相談する人もいなくて、あんたに電話した次第です」

「またまたおっしゃいますね。これまた嬉しいやら哀しいやら」

「相談というのは、子どものことです」

「えっ、隠し子ですか?」

「バカ言っちゃいけないよ。そんなこと口が裂けても言えません」

「身に覚えがあるってことですか?」

「いやいやそうじゃなくて、身の覚えもなにもこれっぽっちもありません。潔白です」

「さっきのお返し、ちょっとからかってみただけですよ」(笑い声)

「ほんとに人が悪い」

「それで、子どものことってなんですか?」

「そうそう、そこんところが今日の用件、話の腰を折らんでくださいよ」

「すいません。それじゃ正座してお聞きいたします」

「改まってもらうと話ずらいね。実はね、学校が始まって、近所の子どもらも元気に通い出したんだが、ひとり小学校に行けない子がおりましてね。うちのばあさんが親御さんから話を聞いてきて、そのお鉢が私に回ってきたという次第です。どうしたもんかと思っていたら、あんたが不意に現れて、電話をしたという次第です」

「まるで妖怪ですね。なにか用かいって」(笑い声)

「またまた腰を折りますね」

「すみません。腰も口も軽いようです。あっしにはもう小学生の子はいないので、なんとも分かりかねますが、子どもにも子どもの事情ってんもんがあるんでしょうね」

「まるで大人だね」

「今どきの子は、けっこうしっかりとした考えを持っている子もいますんで、学校に行けなくなったわけもいろいろあるようです。まあ、学校の先生に相談ぶつのが一番ですね」

「ばあさんもそう話したようだが、どうも学校行けなくなったのはいまさらの話ではないようです。担任の先生も新学期で変わって、一度も会ったことがないっていうんだね」

「コロナのお陰で、春休みからこっち学校もお休みになっていたから、余計に行きずらくなっているんですかね」

「前の先生とは、折り合いが悪かったこともあったようだが、新しい先生ならと少しは期待したようだけど、子どもはなかなか行こうという気持ちにはなれないっていうんだね」

「無理に学校にやろうとしても、かえって子どもは行きたがらない。あっしも児童委員で子どものことやら親御さんのことで相談に乗ることもあるんですが、いろいろと双方訳ありで、こればっかりは難しいですね。子どもの言い分もあるんでしょうけど、小さい子なら、うまくそのあたりの事情を話すことができずに悩んでいることもありましょう」

「今度4年生の女の子。3年生の時に何かいじめられたことがきっかけで、学校に行くのを渋りだしたそうだ。親は先生にも相談したらしいが、いじめた子らと握手をさせて、さあおしまいと解決した気になっていたらしい。でもその後も陰で続いていたようで、親はまた先生に相談するんだが、さっぱり埒(らち)があかなくて、そのうち子どもがいやなおもいをするなら、学校に無理して行かせることはないと思ったんだね。でも子どもは子どもで、勉強のことがだんだん気にかかってきて心配しだした」

「親もきっと気が気ではなかったでしょうね。勉強が遅れたらどうしようと心配にはなるわね。特に3、4年生って、大事な学年だっていわれていますよ。国語や算数の基本中の基本をマスターしなければ、そのあとは〈落ちこぼれ〉になってしまうって。だから親の気持ちも子どもの気持ちも痛いほどよく分かります」

「そこで新学期、クラス替えで担任も替わるから行こうって、親子で話していたそうだ。ところがどっこい、コロナがやってきて3ヶ月も突然休みになってしまった。学校からは宿題がたんと出されたが、実は母子家庭でね、母親は一日中仕事に出ている。子どもはいつも留守番。だから母親の本心はせめて日中は学校に通ってほしいと思っていたんだが、いじめで不登校になっちまって、困っていたんだね。だから宿題を見てあげることもできず、早く学校が始まってくれれば、この子も立ち直れるだろうと期待していたんだ」

「ところがいつまでも学校が始まらない。宿題も思うようにできない。さて子どもはどんどん不安になっていく。学校が始まっても勉強についていけない、またいじめにあうかも知れないと思うと、だんだん気が重くなって、行きたくない、行けないって考えてしまったんでしょうね」

「さすがだね。私もそう考えた。だからこの子のことが不憫(ふびん)でね。何かいい方法はないかとおもい、あんたに相談した次第」

「一つは、学校の先生はスーパーマンじゃないってことですね」

「なんだい、それは」

「正義の味方で、どんな難事件も解決する能力の高い人ではないということです。ごく普通の大人です。教育者として特別な才能を持っているわけじゃない。世の中、先生、先生と持ち上げるから勘違いする人が出てくる。教育のことなら専門家なんだから何でも知ってるって。そんなわけないでしょう。仕事ですから、専門ともなればそれなりの知識や技術はありますよ。仕事上必要なことですよね。看護師さんや介護士さんは、国家資格を持っていらっしゃる。命を預かる仕事ですから、当然です。でも学校の先生は、教育系の大学出れば教員免許が出るだけです。大学出たくらいで、特別なものを持っているわけがない。直接子どもの生き死にに関わる仕事じゃないから、覚悟が足りない。だからしっかりと自分を磨きながら現場で経験を積んでいかない限り、一人前にはなかなかなれない。だからスーパーマンじゃない、ただの人です。〈ただものじゃない人〉になるには、子どものいのちとこころをしっかりと護るという覚悟が必要だと思うんですね。世間では、学校の先生だからという過度な期待感があって、学校のことや子どものことなら、なんでも解決できるものと勘違いされているんじゃないですかね。勉強を教えることが仕事だとおっしゃる方も多くいますが、肝心なところが抜け落ちているように思います」

「だから」

「不登校やいじめの問題がなかなか解決できないのも、子どものことを棚に上げて、こっちが悪いあっちが悪いって、責任の押し付け合いばかりしているからじゃないでしょうか。お互い出来ることと出来ないことがある。家庭の事情も親の仕事もそれぞれですから、せめて先生は先生なりに一人ひとりの子どものおもいを受けとめられる人であってほしいですね。分かったふりをする先生は、子どもには見透かされていることを知っておくべきでしょう。そんな先生に相談しても埒はあきません。だから余計にこじれていくんですね。親は我が子のことしか頭にないから、こうしてほしいああしてほしいといろんな注文をつけます。それができないとクレーマーになって、いいだけ先生を責め立てる。そうされないように、できるだけ防波堤を築いて自衛しなければならない。一概には言えませんが、先生と親との信頼関係はそもそも無理かもしれません。なにか利害関係になっているようで、間に挟まれた子どもたちが心配になります」

「親に先生の言うことは絶対だって、私らの頃にはそう教わって、先生に叱られて叩かれたと親に言えば、お前が悪いとまた叩かれて、しまいには先生に感謝したくらいだからね。いまは、体罰教師で訴えられるから、叱り方も難しいね」

「あっしらも、よく叩かれた口ですが、その後の先生がすまんかったと謝ったときには、なんだか不思議でしたね。先生もまた自分のいたらなさを責めていたのかと、いまはそう思っています。叩かれたときは〈こんちくしょう!〉ですがね。でもその先生好きでしたよ」

「先生はスーパーマンでなくていいと思うね。出来ること出来ないこと、苦手なこと得意なこと、人としてあって当たり前のことなんだから。子どもたちにもそんな姿を見せながら、まずは先生と子どもとの信頼関係をつくることが一番じゃないの。それこそ教育のプロとしてわきまえなければならないことだと思うけどもね」

「おっしゃるとおりです。子どもの問題の起こった学校の記事なんかを読みますと、子どもをかばうというよりは、自分たちのやったことを正当化することに躍起になっているって気がしてなりません。コロナ禍で勉強の遅れを取り戻すには、先生を増やさなければならないって言っていますが、問題は数ではなくて〈質〉ですよね。教えるだけなら、家庭教師のアルバイト学生を動員して、雇い入れればいいんじゃないですか」

「面白いね、その発想。学生もバイトがなくて困っているという話、一挙両得じゃないか。学生も教育系の学生にこだわることはないね。いろんな学部の学生たちが、授業を通して子どもたちに、先生じゃ伝えきれない〈学ぶ〉ことの面白さを伝えられるかも知れない。若い新鮮な感覚で、学校の閉鎖的で保守的な空気が変わるかも知れない。そんな改革をするなら、いまかも知れないね」

「学習サポーターって、いままでも学生が学校でボランティアしてましたからね。これを学生の就学援助というカタチで一律お金を配るんじゃなくて、別に労働対価として当たり前に学業と両立する仕事を与えるところに、意義がありますね」

「いままでどおりの学校では、子どもの多様性に先生が対応できないから、そのしわ寄せが不登校であったり、いじめといった問題がうまれる土壌をつくってきたかも知れない。だいたい世の中は、現状維持ではやりきれないという過飽和状態になったときに、英断を持って改革を為そうとする波が起こるね。その中核には、必ず若者たちがいるという歴史的な事実に気づくべきだよ。明治維新をやり遂げていくのも若者たちだった。この間の話で、60年安保闘争も挫折はしたが、確かに若者たちの新たな時代を創ろうとした息吹は感じたね。学校への〈子どもたちの反乱〉が起こってからずいぶんたつが、学校という閉鎖的な世界を開ける力は、若者たちが子どもたちと真剣に〈学ぶ〉ということを通して、お互いに成長し合うことが、いまこそ大事なことかもしれない。ただ世迷い言と一笑されてしまいそうな話になってしまったが、さっきの話に戻しましょうか」

「そうですね。きっと子どもが抱えている心配事って、一人だけじゃないと思いますね。率直に学校の先生と話し合うことと、それ以前に学校の方で子どもたちの不安を解消するための手立てを講じて受け入れなければならないのが、本来の仕事ですね。だから、そんな子がいることを前提に、他の子どもたちにも不安が起こらぬよう親にも話しておくべきことです。何せ2ヶ月も時間があったのですから、たっぷり教育書も読んで、教師としての資質の向上をはかったことでしょうから、是非その成果を見せていただきましょうか」

「学校に行けないで心配してる子に、あんたならどうする」

「あっしは、頭で考えるくらいならすぐに動く方ですから、深刻がらないで子どものもとにすっとんでいって、膝をつき合わせてお互い納得するまで話をしますね」

「おっしゃるとおり、そこだね。でも危ないね。マスクしてソーシャルディスタンスは取らなきゃいけないよ。親の相談の前に、心配な子どもの情報は持っているのだろうから、本来教師はそうあってほしいね。まあ、そこんところはしてない様子。まずは親が行くしかないが、仕事は休めないから、電話でお願いしてもらいましょうかね」

「あっしも、なにかお役に立てるといいんですが。新米の民生委員児童委員のあっしには、学校の敷居は高いもんだと行けずにおりましたが、それを承知でまずは気負わず動くことにいたします」

「そうすることも大事ですね」

「学校というところは、ただ勉強を教えるなら塾でも家庭教師でもできますが、人との関わり方や人としてのあり方、生き方は生身の人間同士がぶつかり合って、はじめて〈学ぶ〉ことができるってことですよね。勉強の成績しだいで人間の序列が決まるかのような教育は、やっぱりよくない。東大出て検察庁のお偉いさんになっても、賭け麻雀で自滅する姿をしっかり教えるべきでしょう。なぜそうなったのかって。偉人だけではなく反面教師もね」

「その通りだね。人間の能力を学力という物差しだけで測ろうとするいままでの教育が、少しでも変わっていくと嬉しいね。その前線で先生方には、子どもに信頼されるに足る人間力をつけてほしいと願うばかりだ」

「子どもばっかしじゃなくて、お年寄りも障がいのある方も、ここには心配ごとを抱えて困っておられる方がいらっしゃいます。まずは学校訪問、そして心配事の御用聞きも仕事の合間に精を出します。なんだか忙しくなりそうです」

「ありがたいね。あんたが近くにいるだけでどんだけ心強いことか。私もお世話になる身、よろしくお願いします」

「何をおっしゃいますやら。大家さんにはこれからもどんどん心配事を持ち込んで、あっしの知恵袋として、末永くお願いします」

「もう厄介事は勘弁していておくれ。楽隠居をしたいのだから」

「無理ですよ。なんせ世間がそれを許しません。世間が許してもあっしが許しません」

「おいおい、老い先短い年寄りになんてことを。まあ許してあげましょう」

「さすが情に厚い大家さん。今日もいい話をお聞きしました。ありがとうございます」

「こちらこそ、ありがとう。今度は顔を見せてください。今日はこれで」

「ごめんください」

〔2020年6月14日書き下ろし。学校が始まりました。心配な子どもたちへのフォローが気にかかります。〈忙しい〉という前提は、まずやめにしませんか〕

媚(こ)びよう

媚びるのはわけない
志を捨てればいい
そんなもんは 端っからないか

媚びよう 媚びよう
好き嫌いなんて二の次 どうとでもなる
自分だけ我慢できりゃ この世は極楽

媚びるのに 後ろめたさなんか何もない
相手の懐に入れば 上出来御の字
後は甘露をたっぷり味わうだけのこと

媚びよう 媚びよう
競争相手は 情け無用に蹴落として
自分だけに 浴びようスポット
すっぽと収まりつけば 向かうところ敵無し

媚びるのに 注意事項はただ一つ
凋落には 決してつき合わない
察知したら すばやく乗り換える
この不義理と決断が いのち綱
このスリリングさが たまんない

媚びよう 媚びよう
裏切り 寝返り 叛意(はんい)
なんでもありの この世界
ないのは〈信〉の一文字 この世界

媚びるだけでは 自分が誰だか 
行方不明と相成ります
たまに集(たか)らず 自前で遊ぶ
自由を満喫しながら 己を取り戻す 

媚びよう 媚びよう ドンドン媚びよう
知力・体力・忍耐力 底知れず
パワーのもとは 自己愛そのもの

今日も 生きながえたことへ感謝して
媚びて得た成果を 残高見ながら確かめる

〔2020年6月14日書き下ろし。正直者は媚びずに生きる。ただそれだけのことです。政権にまとわりつく疑惑の数々、ただただ恐ろしい闇世界〕

根比べ

まあ頑固な子だった
言ったら聞かない
強情張って 意地を通す

まあ口達者な子だった
ああ言えばこう言う
屁理屈こいたら 太刀打ちできない

まあ尊大な態度の子だった
上っ面を撫でられただけでも
恐れをなして ひれ伏した

まあまあ逃げ足だけは速い子だった
知らぬ存ぜぬと逃げ口上
取り巻きは その口裏を合わすしかなかった

まあまあ何事にも懲りない子だった
やる事なす事 批判を浴びても
へっちゃらな顔して 煙に巻いた
 
みんなまた 根負けしてしまった
その気を察して 
してやったりと にたりと笑う子だった 

〔2020年6月13日書き下ろし。総額31兆9114億円の今年度第2次補正予算が12日、参院本会議で与野党の賛成多数で可決、成立した。様々な疑問を残しながら、幕引きを急ぐ〕

丸投げ

ピッチャー振りかぶった
大きく弧を描いて 超スローボール
〈丸投げ〉です
審判は手を強く挙げて ストライクの判定
バッター三振
監督がダッグアウトを勢いよく飛び出しました

こちらから見ても
明らかなボールです
監督の抗議は正当ですが
どうしたんでしょうか?
監督がすごすご戻ります
審判はマイクを要求しました
無観客の客席に向かって 何か説明するようです

「ただいまの判定について、ご説明します。
〈丸投げ〉の場合は、国会答弁でも問題なく
すべてストライクとなります。
なお、ピッチャーは経産省、
キャッチャーは電通に、限定されております。
〈丸投げ〉は、このバッテリーにしか適用されません
経産省ルールブック付録第1条〈丸投げ〉に、明記されています。
文句のある方は、ご確認ください」

審判の的を射ない説明に 納得せざるを得ませんね
後付けルールが たくさん出てくる内閣ですから
皆さんも安心して このゲームをお楽しみください
いま経産省のスポークスマンから 緊急通告が入りました
持続化給付金の支給は 至急にならず
大幅に遅滞するとのことです
なにか〈丸投げ〉に対して クレームがつけられたようです
余計なことをする人がいるようですね
関係者の皆様には くれぐれも落ち着いてお待ちください

突然ですが この番組はただいま打ち切られました
「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」の
提供でお送りしました
皆様 ごきげんよう さようなら

一瞬で テレビの画面が 黒一色に変わった

〔2020年6月12日書き下ろし。新型コロナウイルス対策の持続化給付金の事業を請け負った「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」と電通、発注側の経済産業省との親密な関係、なんだこれ? 国会を早く閉会しなきゃ、闇には葬れない〕

コロナ禍で頑張る民生委員児童委員

道内の感染拡大の大きな山は 4月だった
14支庁でゼロだったのは 日高だけだった
GW後の波も起こり 非常事態宣言の解除も遅れた
それでも 胆振・渡島・留萌・宗谷・十勝・根室はゼロ
日高・檜山・上川・釧路は1人だった
多くは石狩管内262人(内札幌222人)だった

東北6県と新潟県の面積に匹敵する北海道
5月の感染の中心地は札幌だった
それでも非常事態宣言を続けた
多くの管内では 身近な地域に感染者がいなくても
学校は休校 観光業界も接客業界も閑古鳥が鳴いた

民生委員や児童委員も 
市町村からの対応要請を受け
活動の自粛を余儀なくされた
「みつける・つなげる・みまもる」
基本的な活動にも 大きな影響を与えていた
三密を避けるために
定期的な会合も研修も 中止や延期をするしかない
だから余計に 委員間の情報交換が必要となった

感染へのリスクを減らし 活動を維持することが求められた
訪問して 通常通り活動の出来たところは幸いだった
訪問できず 電話などでの対応を強いられたところは
特に新任委員には 大きな試練ともなった
顔の見えない電話だけでは 状況の把握力は低下する
それでも 定期的にかけ続けなければならない
電話代も バカにならない

外出自粛の影響か
地域包括支援センターへの相談では 
高齢者虐待の問題が増えた地域もある
独居老人が倒れて 室内で発見され入院措置をとる
親族がすぐに 内地から駆けつけることが出来ない事態も起こっている
休校中だったことで 家庭での児童虐待も見過ごされた危険性もある

コロナ禍で 個々のニーズが抱える地域課題に寄り添い
従来通りにはいかない支援の手を どう差し伸べていくのか
これからも 新しい支援のあり方を探る 試行錯誤が続く

単位民児協や民生委員・児童委員の皆さんにより
いのちと暮らしを守る活動が続けられている
がんばってほしい!

※単位民児協(たんいみんじきょう):すべての民生委員・児童委員は、市町村の一定区域ごとに設置される「民生委員児童委員協議会」(略称:民児協)に所属し活動をしている。この市町村の一定区域ごと(町村は、原則として町村全域で一つの区域)に民児協を設置すべきことは民生委員法に規定されていることから、この民児協を「法定単位民児協」と呼ぶ。一方、市、区、郡、都道府県・指定都市の段階にも民児協組織は設置されている。その範囲は法定単位民児協の区域よりも広域であり、その域内にある法定単位民児協の連合組織であることから「連合民児協」と呼ばれている。

〔2020年6月11日書き下ろし。道内180市町村で札幌市を除き一万人近い委員が委嘱されている。単位民児協の数は420に及ぶ。気くばり目くばりの日々が続く〕