「鳥居一頼の世語り」カテゴリーアーカイブ

妖怪に取り憑かれた男

携帯の着信音が軽やかに鳴る

「どうしたい。相変わらずバカやってるかい」

「初っ端からのご挨拶、恐れ入ります。どうもこうも、バカやろうにも外出自粛のこのご時世。何もできずに悶々としておりました。こう暇だと変に大家さんが恋しくて、つい電話しちゃいました」

「いやいや、退屈しきっていたところだから、なんともありがたいね」

「ドイツのメルケル首相が、〈いまは距離だけが思いやりの表現です〉って、いいことおしゃいましてね。それでつい思いやりの電話をかけた次第です」
「嬉しいね。メルケルさんのその言葉、さすが一国の宰相然として、いいね。安倍さんじゃ絶対言えないね。風格が違いすぎるな。彼には、説得力を生む信の一字が欠落してる。せいぜい憲法改正しますって、風吹かぬ旗を振ることにご執心で、コロナ禍のこのご時世に、風を読むことすらできねえ、とんちき野郎だ」

「おやおや、あっしが思ってたとこに、ドンピシャリ的を射ましたね。さすが大家さん。そのとんちき野郎のことで、トゲが刺さってなかなか抜けずにイラつく感じで、モヤモヤしてたんです。なんで安倍さん、憲法改正に肩入れしてるんですかね」

「言ってみれば、岸の爺さんの霊に取り憑かれているってとこかな」

「今日はまた、不気味な事の始まりですね」

「母方の爺さんは岸信介。戦犯を逃れて、戦後すぐに政界でのし上がって首相になり、権力を振るい〈妖怪〉とあだ名された爺さんだった。1960年に日米安全保障条約改正に反対して、全国で580万人が参加する大きなデモになっていったんだ。6月15日には、11万人が国会を取り巻いて、その中にいた東大の学生だった樺美智子さんが警察隊と衝突して亡くなるという事件が起こったんだよ」

「60年安保闘争ってやつですか」

「学生のわしは日和(ひよ)っていたので、いまさら何も言われんが、それが闘争に大きな力を与えてちまって、アイゼンハワーの訪日はキャンセル。挙げ句の果てに7月には、岸内閣は総辞職に追い込まれちまった。そんな騒動の中で、安保条約は結ばれていくんだがね」

「岸さんとの因縁って、なんですか?」

「タカ派のような首相ではあったが、最低賃金制や国民皆年金など当時としては、社会保障制度をつくって、高度経済成長の礎を築いた人でもあったんだ。その岸さんはGHQが押しつけた新憲法なんぞ認められないねえと、改憲に意気込んでいたわけさ」

「安倍さんが、盛んに憲法改正を訴えるのは、もしかして弔い合戦?」

「そう考えるとわかりやすい。紆余曲折があってなかなかできずにいまに至るが、彼は結構粘着質だから、しつこいタイプだね」

「それに根に持つタイプ」

「広島の河井夫婦に1億5千万もの金を渡して、宿敵打倒を果たした参議院選は、見事だったね。その金の使い方の汚さがいま暴露されて、検察がどこまで立件できるかが鍵になっているね。ここでまた、東京高検検事長の定年延長を得意の閣議決定にかけて、自分に累が及ばぬよう、検察まで牛耳ようと躍起になっている。そこで踊っている森法相もとんだピエロ、滑稽極まりない。コロナも最初はひとごとだった」

「安倍さんも、いまじゃやってる感を見せているのに、世界のリーダーに較べたら、とんと評判が良くない。都合の悪いことには、人が死んでも知らぬ存ぜぬと隠してきたツケが回ってきてるんですかね」

「うん、周りが見限るタイミングを知って、内心焦っていると思うな」

「憲法改正って、口を開けば自民党の悲願だの、自衛隊は合法化すべきだのって、憲法をいいだけいじくって、平気で違憲してきた人に意見してやってくださいよ」

「コロナで予定が狂ってしまったことが、大誤算だったね。彼の頭の中じゃ、爺さん悲願の憲法改正、自分のためのオリンピックの開催。それしか、頭になかったから、前代未聞のコロナで遅れを取った。軽く考えていたんだね。ところが、甚大な事態になってきて、伝染病対策の備えのない体制では、だれもアイディアが浮かばない。それどころか災害対策のような前例踏襲の対策しか思いつかない閣僚たちや官僚に預けてしまった。それがそもそもの致命傷。やることなすこと後手後手で、効果が上がらないから強権で縛ろうと、自民党からどさくさ紛れに改憲を持ち出す始末。それにすぐ乗って改憲を口にする軽薄なところが、さらに顰蹙(ひんしゅく)を買うなんて思ってもいない。優先順位が全く理解できない男。どこまでいっても能力のない宰相気取りに、国の舵取りを任せているだけでも、コロナ以上の危険極まりない甚大なリスクを民は負ってるんだよ」

「あっしらから見ても、本気でやってるって気にならない。その場しのぎの、それも専門家って言葉を多用して、さもさもらしく持ち上げては、失敗したら責任をおっかぶせるくらいの人身御供かとも思えてならない。それだけ信用できないってことですかね」

「妖怪爺さんの孫だけに、あなどれない策士だね。そこんとこでずいぶんやられてきた」

「なんですか、そこんとこって」

「一番は、集団的自衛権行使を禁じるっていうのを、憲法の解釈を変えるのに内閣法制局長官を代えて閣議決定するんだ。これで味を占めて、何でもかんでも法を無視して閣議決定する。特定秘密保護法、共謀罪、公文書改ざん、桜を見る会の私物化、検事長の定年延期、コロナ対策の全国一斉休校の独断決定、マスクの馬鹿げた配布も、そしていままた延長をかけるという緊急事態宣言と、一体何をやってきたんかと思うほどわけのわからんデタラメさが、この政権の正体だね」

「なんのために憲法改正するんですか? だって解釈変えて、法が違憲でないかどうかをチェックする内閣法制局が、はいその通りっていえば、みんないいですよってことになるんでしょ。憲法変えずに強引にやってこられたことを、なんで?」

「違憲だったわかってやってる確信犯は、それを合憲にするともっと強権を発動しやすくなるよね。集団的自衛権も、第9条を袖にする違憲だって憲法学者がこぞって反対したんだ。それこそ日本の法のエキスパートたちだ。それを無視して、御用学者の論を正論にするところが、この政権のしたたかさ。特定秘密保護法てえのは、漏れると国の安全保障がやばくなる情報を〈特定秘密〉にして、その情報を扱う者は調査・管理され、それを外部にでも知らせたり、外部から知ろうとしたりしたら罰せられるというとんでもない法律なんだ。スパイ監視法だね。余計に政権が何をしてもしでかしても、この法律で守られるという、とっても都合のいいもんをつくったというわけさ」

「戦前によく、治安維持法で国民を監視したことで、悪法っていわれたけれど」

「それが、共謀罪なんだ。改正組織的犯罪処罰法に含まれた〈テロ対策〉の共謀罪ってことなんだね。これは実際に犯罪を起こさなくても、相談や計画して準備していると疑われただけで捜査や逮捕ができるという、治安維持法の復活ともいわれた法だよ」

「それじゃ、大家さんとこんなやり取りしていて、不穏な者たちがよからぬ相談ぶってるってチクられると、取り調べられるってことですかい」

「その通り。この電話だってもう盗聴されているかもしれない。だって〈年寄りの反乱〉などと気勢を吐いたからね。人権や自由を侵害する恐れが強い法を、平気でつくってこられたのは、国会で論じることなく数の論理で強引に押し通してきただけのことでしょ。だからいまも国会は、何の役にも立ってはいない。一律10万円の支援を我が党が言い出しっぺですって、手柄の奪い合いをする程度のレベルの政治家たちに、一体何を期待できるっていうんだい」

「またまた怖いお話になってまいりましたね。これが怖い物見たさの楽しみです。ラインもメールも監視されるんですか? それって誰が決めるんですか?」

「捜査当局の腹一つだね。盗聴、盗撮、密告も重要な情報収集。だから、監視社会になるってずいぶん反対もしたけど、結局決まってゆく」

「監視社会って、いまのご時世そのものですね」

「そうだと思うよ。村から感染者が出たっていうんで、誰だと村役場にねじ込んでいく。小さな村ならではの互助の心が、簡単に打ち壊されていくのを目の当たりにすると、自粛を一見お願いしているように見える緊急事態宣言は、日本人の〈汚れを排除〉しようとする世間のおきて(心情)をうまく操作して、疑心暗鬼になるように集団監視させる。感染者を犯罪者に仕立てた大衆誘導のやり口は実に巧妙で、座布団一枚あげたいよ」

「好き勝手できるのに、なんでこのタイミングで改憲にこだわるんですか」

「優先順位がそもそもわかっていない。先に改憲ありきで走ってきただけに、何が何でも自分の代で道筋を付けたいという私的な願望であって、決して大義ではない。特に改憲に〈緊急事態条項〉を入れるといってるけど、これができれば内閣は国会のチェックを受けずに法律と同じ効力を持つ政令を出して、無条件に人権を制限することだってできちゃうんだ。自由な人の往来を禁止する罰則をつくって取り締まるってことは、いつでもやれちゃう。法律ができれば大義名分が立つから、当然取締りにあたる警察だけではなくて、みんなで堂々と取締りに参加することができるというわけ。法の番人にみんながなるってことなんだよ。それが戦前の国民を統制してきた〈非国民システム〉の再来ということだね」

「これって、劇薬みたいなもの?」

「劇薬か。使い勝手では薬にも毒にもなるが、多くは国民には毒になるだろうね。なんせどんな状況が緊急事態なのか、その判断やどんな法律で国民を縛るかは、その時々の政府の判断になるから、簡単には判断できないところが問題だね。それ以上にそれを提案しようというのがいまの内閣だけに、無理かな。さんざんいままでの汚いやり口を見てきただけに、信用できない者の話を、まともに聞けますかってところだね」

「いまのやり方でともかく収束に向かうようだったら、そんなもんはいらないわ」

「優先順位ってのは、そこんとこなんだ。いまの事態をできる限り有効な手を打って収束させることしかないだろう。まだまだ予断を許さない事態に有効な手をドンドン打たねば国家じゃない。医療者への感謝と支援はよく口にするけど、受け入れの病院の経営は6月には資金ショートするところも出てくるという。もっと深刻な問題があっても、厚労省は何の手立ても講じていない。出来の悪いマスクの配布より、こっちが先だろう。改憲論議はその後にしたって遅くはない。朝日の世論調査でも72%は、国会での改憲論議は急がなくてもいいってのに、暢気に論議しますっていう神経が全く理解できない。困窮者や労働者支援と経済の立て直しに集中すれよと言いたいね」

「その通り。改憲論議もすぐに改憲しますってしろもんじゃないでしょ」

「国民投票だのなんだのと手続きがあるから、おいそれとはいかんだろう。任期中には無理だとあきらめないのが、あの男の執着心だ。もう死に体にも関わらず、最後のあがきの改憲願望。ここは断(た)っていただきましょう。そもそも第9条をいじるなんて、そこからして反対が国民の6割以上もいるんだよ。自衛隊だって、現憲法でも認められているにも関わらずに、だ。そうするには意図があるわけで、集団的自衛権との絡みで〈軍隊化〉を目指してるんだろうね。日米安保条約も60年の還暦を迎え、核の傘下によって守られてるっていうけどそうかい? 本当にアメリカ追従の路線でいいのか、今一度考える節目の年かな。〈核時代の創造力〉(大江健三郎)を取り戻すときだと思うな」

「彼はいったい何様になりたいんですかね」

「憧れは絶対権力者。ロシアのプーチン、もしかして中国の習近平かもしれない。トランプは、金に執着する商人だからモデルにはならんだろう。この秋の大統領選挙でどうなるかわからんしね。残念ながら、今回安倍さんの指導者としての資質の低さが世界に知れ渡ってしまった。ドイツのメルケルの政治力が評価されるのは、ナチスや旧東ドイツの独裁政権による私権制限がトラウマになっていたことから、〈緊急事態法制〉という規制力の強い法ではなく、〈感染予防法〉で対応できるとふんで適用したんだ。それでも行動制限はかかったけど、93%が支持してるんだね。ナチスのよる独裁の負の歴史を踏まえて、やみくもに国民の自由制限や思想統制をするといった愚策は選ばない。その政治哲学と政治力学、そして倫理観のもとに、民主主義社会を維持しようとするメルケルの気概に満ちた〈ことば力〉が、国民を説得する。そんな指導者に触れて、国民には誇り高く映ったに違いない。そこが大きな違いじゃないかな」

「いまの指導者を誇れるかどうかという一点ですね」

「その通り。それぞれの価値観があるから、一概にどうこうとは言えないにしても、いまの国の指導者を誇ることができるかどうかで、国の行く末や国民の政治への意識の高さが左右される。このタイミングで出た改憲問題は、政治家のレベルの低さがまたも出ちまっただけのこと。情けない政治家を擁する国であることだけは、確かめられたかな」

「一つひとつのことの善し悪しを判断する前に、もっと基本にあるのは自分たちが選んだ政治家が、果たして誇れるに足る人材であるかどうか、ですね」

「このコロナ禍は、議員としての器量を見極める試金石だ。選挙後は一切顔を見ることのない〈雲の上の人〉を下界に降ろすことが、肝心だね。だからこそ、いま政府や政治を批判する声をないがしろにしてはならないんだ。本当に命や暮らしに危機感を感じているいまこそ、民の声を丁寧に上げていかなければならない。それこそが民主主義を守る闘いともいえるね。60年や70年の安保闘争よりももっと熾烈を極めた〈命と暮らしを護る国民闘争〉の渦中にいるのだと、そう思うと政治家たちはきっと焦るだろうね」

「その命や暮らしを護るためには、憲法こそが政治の根幹であり、あっしらの拠り所であるということですね」

「さすが、だんだん読みが深くなったね。こうして大事な話ができるのも、きっと今できる〈年寄りの反乱〉かもしれない。ただ政治の世界には、たくさんの〈妖怪〉が出番をいまかいまかと待っているから、油断大敵。常に政治を、政治家を監視しなければならないよ。それが国民の義務ってもんだ」

「おっと、監視されるんじゃなくて、こっちからしっかり監視する。いいですね。それが監視社会をぶっ壊すことになるってことですね。合点承知しました。今日も長々と講義をいただきまして有難うございました。次を楽しみに、今日はこれで失礼します」

「ありがとよ。あんたもコロナに罹らぬように、ましてや罹ったと思って動くのも大事だね。早く収束することを願って、わしも要介(ようかい)護にならぬよう昼寝とします。はい、さいなら」

※治安維持法(1925年制定):敗戦までの20年間、思想や大衆運動を弾圧した。当初は共産・無政府主義者を対象にしたが、改定を重ねるなどし、戦争に異を唱える人や自由主義者、宗教家らに適用を拡大した。治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟によると、当局発表で約7万人が送検され、作家の小林多喜二ら拷問死した約90人を含め、少なくとも400人強が獄死した。

〔2020年5月4日書き下ろし。長文になり、読むのに疲れたことでしょう。二人の会話から改憲にまつわる問題を汲み取っていただければ…〕

正しく生きよう

確かなことは 
今世紀最大危機が 世界を襲ったことだ
誰かの不幸が 慰められるのではなく 
責められることに なぜ苦しめられるのか
仕方なく子どもを預け 
現場に立つ 医療者たち 福祉人たち 
危険を承知で いまも働く
あまたの人が 苦渋に満ちた決断を強いられる 
そこに 冷ややかな目線と差別の言葉が 
無慈悲にも 胸を突き刺す

いつも 
こうして排斥してきた
民の哀しくむごい歴史が 繰り返される
危機に遭遇して 
その人間の卑しき本性が 見事に現れるコロナ禍
歯を食いしばり 怒りを抑えて 寛容を示そう
そうしなければ あまりに切ない世の中だから
生まれてきたわけに いまはただ心を砕こう 
人として生きる座標軸を 失わぬようにするために
日本国憲法の下で 正しく生きよう

〔2020年5月3日書き下ろし。心ない中傷が後を絶たない。それでも現場で頑張る人たちが、人としての生き方あり方を示し続ける。憲法は人権を護れるのか〕

携帯が手放せない

新米ママは 育児で悩む
公園デビューも 果たさぬうちに
コロナ禍で 外出自粛が広がった
頼りにしている実家の母は スマホじゃない
テレビ電話で話せたならと ないものねだり
東京からは 呼び寄せできぬ 
育児の相談 顔見てできる相手もおらず 
携帯で検索かけて 情報収集
世の中の不安と 育児の不安のダブルパンチで 
今宵も眠れぬ夜を 迎える
連れは テレワークなど無縁の会社で働きずくめ
疲れ果て 育児パパなどどこかの世界の夢物語
薄明かりの中で 静かに吐息を吐く乳飲み子に
起こされるまで しばしの添い寝が 今日のお駄賃

スマホで ラインのやり取りするのが 一番の慰め
誰かとつながっていないと やりきれない
いつ明けるともわからない コロナ禍の重苦しい空気を
せめて 誰かとつながることで 不安を払いのけたい
家族の無事や 友の無事を確かめたくて 
世代を問わず つながることで 心の不安と負担を軽くする 

入力が 絵文字ばかりじゃつまらない
元気? 大丈夫? と尋ねて 絵文字で戻るOKマーク
だから 声聴くことが一番と
長電話無料契約を有効活用
携帯を 耳に長時間当てるのは 無謀なこと
だからスピーカにして あたかもそばにいるかのように
お茶しながら 四方山話に 花を咲かせる

携帯の 人をつなぐ大きな力
携帯で 人がつながる確かな喜び
携帯がなければ 
もしかして ひとり残され 不安に駆られているかも
携帯があれば 
もしかして 誰かと一緒に この惨禍を乗り越えられるかも

だから携帯で 思う存分おしゃべりを楽しもう!
きっとそれが いま求められる新しいきずなづくりかも
 
〔2020年5月1日書き下ろし。私はガラ系。妻はスマホを充分活用している。80歳の師が一昨日スマホに代えたとメールがきた。このブログも今日操作を覚え見られるようになったとメールがきた。現代を生きる師にすでに置いていかれる〕

道産の食と人を誇る

2月 ビニールハウスで育てられた 知内産のニラが出荷された
しゃぶしゃぶが 一番シンプル 甘みも抜群 ポン酢でいただく
道産豚の餃子の具にすると 香り立ち 食欲をそそる
十勝の大豆を使った 中札内村産の木綿豆腐を湯豆腐にして 
そこにニラを入れるのは 我が家の定番
当然出汁昆布は 北の離島の礼文昆布

米は メジャーになった〈ゆめぴりか〉
あきたこまちや新潟のコシヒカリにも 匹敵する
10年来長沼町の米農家から直接購入 
自宅の小さな精米機で 食べる分だけ精米する
炊きたては おかずいらず
塩むすびなら 米のおいしさを見事に引き出す

コロナ禍は 道内の食料生産と供給を 窮地に陥れる
すすきのの歓楽街や 市内の多くの飲食店の灯が消えると
消費されることなく残され 市場は機能不全を起こす
だから 酪農業は生産調整するか 出荷をセーブする
漁師は それが難しい
旬の魚を獲らねば 暮らしが立たない
冷凍可能な魚もあるが やはり旬で味わいたい
4月 群来のニュースが流れた時には こころ踊った
さっそく市民生協コープで物色し 数の子が入ったニシンをゲット
いつもなら 白子で膨らんだオスが並ぶ
数十年ぶりに 軽く塩を振った焼きたてを しみじみと味わった   

札幌円山公園のサクラ開花宣言の前日 みどりの日
近くのスーパーマーケットで 旬の魚を求めた
苫小牧沖の大きな子持ち黒ガシラ 破格の値段!
煮付けにしよう
増毛の浜で上がった甘エビ 
炊きたてのゆめぴりかの上に並べて 生甘エビ丼にする
生寿司のパックに 目がいった
毛ガニ いくら ボタンエビ ホタテ ホッキ貝 シャケ など
ついでに 大好きなイカの塩辛が安かった 
お茶漬けの具材に 重宝する
森町に単身赴任で暮らしたときには
「イガー、イガー」と 
朝っぱらから イカ売りのスピーカーで起こされる
鍋を抱えて走り イカ売りの車を探す
朝から イカそうめんにして食す
イカゴロや足や耳は 塩からの具材にするか 
塩を振って冷蔵庫に放っておき 夜バターで炒めて酒の肴に変わる
近年イカの不良で 塩辛も高くなった
いまは 新鮮なイカを買うのも躊躇する

コロナ禍で 意気消沈してられない
気力と体力を維持しアップさせるには 北の海の幸が一番
買い込んだ食材で 久しぶりの贅沢を決め込む
食卓に並んだ 海の幸を肴に
酒は釧路の地酒福司 
2月に会った釧路の友からの贈り物
妻の優しい味付けに 煮付けた黒ガシラは絶品 唸る
デザートは 隣町の江別の洋菓子店
〈ガトー・ド・ノポロ〉のゆりねのモンブラン 
上品な甘さと口当たりのいいやわらかさ
お店で二人で食べれば 1万円では足りないリッチな食事
外出自粛で 自宅での楽しみ方が一つ増えた
いい気分転換になった 

道産子でよかった
新鮮な食材が 身近に豊富にあることに尽きる
その食材を用いた 料理のバラエティーは半端ない
生産者の地道な研究と労働に支えられ 
多くの調理職人の味覚と創造力 そして確かな技によって
食する喜びを 与えていただく
彼らが決して 窮地に陥らぬよう 
北の食文化が 未来永劫豊かに紡がれるよう
祈らずにはいられない
 
いただいた食材の命に感謝
食材を精魂込めて 市場に送り出した方々に感謝
それを食品加工したり 搬送し販売する方々に感謝
さらに食に関わる 全ての人に感謝
そして コロナ禍で一日を無事終えたことを
妻と共に感謝したい

食する事への感謝とは 
いま生かされている喜びを 強く心に刻むことでしかない

〔2020年5月1日書き下ろし。道産の食と人を自慢したい。それが活力の源であることは間違えない。命と暮らしを支える皆さん、コロナ禍に負けず頑張ってください!〕

現代政治用語集

〈長期政権とコロナ禍〉
いつか 民からつけがまわるのではなく
先に 民につけをまわすこと

〈井戸塀の政治家〉
金と権力にたかる しがない者たちとは
縁もゆかりもない 夢の政治家

〈記者会見〉
借り物の言葉で 民への不誠実さを
つまびらかにするところ

〈予算委員会〉
よさんかいと言われるくらい
いい年こいた議員たちが 
スキャダルを 真剣に暴こうとするところ
相手も暴かれぬよう 必死にこらえ強弁する
楽しいバトルは 民心をゴシップ漬けにして
民意のレベルを下げることに 力を注ぐところ 

〈国会議員〉
上級国民の最たるおひと
世渡りと集金力に長けた 選ばれたおひと
いまは血筋がものをいい 親の地盤を継ぎしおひと
仕事はしなくても 仕事が出来なくても
席を温めているだけで 仕事のふりができるおひと
身を切る歳費カットは 好まぬおひと

〈国会〉
立法は 質より量の数の論理が横行し
常に 数に勝る党が制するところ
議論は飾りで 民意は及ばぬ 立ち入り禁止ゾーン
国会中継は うまく演出された出来合いレース
だから 余計に民心は遠のき 
してやったりのしたり顔は 誰がするのか 
おわかりでしょう

〈政治資金〉
国会議員選挙の時に必須な金
公示前に 地元の有力者に現金をばらまいても
罪には問われない クリーンな資金も含まれる
1億5千万円の政治資金を元手に戦った 
注目度も高い 広島の元法相の一件 
検察の度胸試しに 乞うご期待!

〈選挙区〉
選挙の時だけクローズアップされる 地盤というところ
お金と地位を生み出す 美味しいところ
品格を問われるほどの悪さをしても 
支援者は見限らない 居心地のいいところ

〈長期政権〉    
次代を担うに相応しい人材が 誰もいないこと
代わり映えのしない面々が居並び 
ダラダラと歳を喰いながら 互いに称え合い 
不気味に常態化した 異様な集団

〈族議員〉
政策課題に特化した委員の集まり
大企業や特別な政治団体からの
潤沢な政治献金を当てにして
おこぼれにあずかる者たちも 属(族)する

〈与党と野党〉
議員の数の違いで 色分けされる
金回りがいいと 人も集まり与党となり
金回りが悪いと 野党のままでいるしかない
だから趣旨替えしてまでも 与党に鞍替えする
これを裏切りとは言わず 時流に乗るという

〈女性議員〉
女性の議員の割合は 世界でも最低レベル
ただ 市川房枝さん 土井たか子さんとは
究極にいて 勘違いする者も少なくない
女性タレントで票集め 
愚策を続けることしか能がない
これは 男社会の限界か

〈適材適所〉
めぼしい人材のいないことを 
かばうかに見せて 暗に認めること

〈未来志向〉
コロナ禍の いまはさておいて
当てにならぬものを 信じ込ませようと
未来に希望をと ただ見させるだけのこと
見せ金もどきの 不毛な願望志向

〈前例踏襲〉
コロナ禍の 緊急事態に対応できずに
持ち出しては 笑われる死語

〈10万円の一律給付〉
1万円は 天引き消費税
実質9万円
あくどい商人もどきの やり口 だまし討ち

〈責任は私にある〉
決して責任をとらない 反意語
ごまかし はぐらかし 言いつくろうスキル
身につけていなければ 
トップの座には 居座れない
神輿は タダでは担がせない 
忖度させる政治力
責任は私にあると発して従えさせる
不思議な呪縛の言葉

〈政治判断〉
知見なく 科学的根拠にも乏しく
熟考していたと さも見せかけた独断専行
判断を誤れば 取り巻きが尻拭いをさせられる

〈政治力〉
金力と支配力
情報力と隠蔽力
多数決の乱用力と異見無視力

〔2020年4月29日書き下ろし。現代政治事典風にご時世を論じて見ました。ただ虚しさが募ります。いつか呪縛が解かれますように〕

新人介護士たちよ

懸命に いま為さねば成らぬことに取り組む
いまさら弱音は吐けない 吐かない
命じられ指示されたことを こなすだけで精一杯
命と暮らしを 支えることの厳しさを
笑みを絶さず 折れそうな心を追い払い
んっと 両足突っ張って 今日も踏ん張る

昨日と変わらぬ 無事な一日
ホッと 心を和ますことで
奪われそうになる 平常心を必死に守る
おいそれとはくじけない 強い心が芽生え育つ
かなわぬ先輩の働く背中を見て ついてゆくだけ
関わる人へのケアは 手抜きできない介護の職責
元気で気丈に生きる盲老人から 笑顔のプレゼント
喜んでいただくことこそ 乗り切る活力の源
嬉しくて 頑張る自分を褒めてあげたい
そう新人よ 君たちの頑張りこそが 希望なのだ

まごころを尽くすことを 学び続ける
健気にも この非常時に身体を張る新人たち
泣きたいときも 苦しいときもあるだろう
嫌なことも 行きたくないときも きっとあるだろう
存分に腹の内を隠さず 上司に先輩にぶっつけよう
そう新人よ 負けないぞと こころひとつにするために

〔2020年4月29日書き下ろし。養護盲老人ホームでは、耳からの情報しか入らない。丁寧な情報提供とストレスの発散を、介護士に求められる。老人福祉施設のクラスターが広がっています。ガンバレ! 全国の新人介護士! お願いします先輩介護士!〕

腰痛と老化準備学習

朝いつものように顔を洗う
突然ビビッと神経的な痛みが走る
腰が砕け その場にうずくまる

その朝から 布団と友だちになった
処方された痛み止めで 小康状態
椅子に座る姿勢が 鬼門となった
ノートパソコンを タブレット入力に変え
寝床で パソコンを胸元に置いて
タッチペンで 一文字一文字叩く
入力スピードは 格段に落ちるが
退屈な寝床での作業も 
これはこれで  愉しめる

近い将来の 良き疑似体験
座るという日常動作が 不能となれば
食べることさえ 苦痛に変わる
立つか寝るしかない
頭と指が動くうちは
リクライニングベッドの上で 読んだり書いたりするしか
余生の楽しみはないだろう
音声入力も魅力ではあるが
滑舌が悪くなると予想して 誤字がきっと多くなる
最終手段に残しておいて
まずはボッコ打ちに慣れておこう

老いの道半ばでの準備は
機能低下の その時になっては遅すぎる 
習得までには 手間と体力と時間がかかる
いまから最悪の事態に備えて
身体に覚え込ませることが 老化準備学習

腰痛は ポジティブな老化準備学習プログラムを提供する
腰痛で 当たり前の暮らしの有り難さを痛感する
腰痛が 行動制限をかける厳しさを味わおう

腰痛は 時間をかけて 薬と治術とストレッチでいずれ快復する
ただ 人はいかに現金な生きものかを よくわきまえている
だから 痛みに見合う老化準備学習を続けることが 課題となった 

いま世界を席巻しているコロナ禍は 叡智そして仁心を失った
傲慢な人間世界への 自然の脅威そのもの
だから その痛みに見合う共生共存への学習と対策が 喫緊の課題となった

〔2020年4月28日書き下ろし。遅筆です。痛みから何を学び生かすのか。私利私欲を離れ、人それぞれが学びの本質に迫ることが重要ではないだろうか〕

学費を稼ぐ

シフトは 夕方17時からだった
パチンコ店の閉店は23時半
帰宅はいつも 夜中の2時を回った
朝起きられなかった
2講目の終了間際に顔を出した
後輩たちは いぶかるようにして見ていた
昼休み 補講した

バイトで学費も生活費も稼いでいた
決して遊び呆けていたわけではない
無理がたたった
卒業は 単位不足で半年延びた
余計な学費の出費がかさんだ
もしも単位が取れなかったら
さらに 半年留年になる
自分でまいた種とはいえ 厳しい日が続く
授業の最終日 卒業できそうだと
安堵の顔を浮かべた

親に負担をかけまいと バイトに比重をかけて
本分を危うくする 苦学生
卒業までの苦労が 人生の糧になると
そう信じて働く 苦学生
卒業後の 人生設計に夢を馳せ
自らを鼓舞する 苦学生

コロナ禍で 
バイト先を失い 路頭に迷う
学費も生活費も 稼ぐ算段が閉ざされた
コロナ禍で
大学にも行けず 授業も受けられず
授業料だけが 徴収される
コロナ禍は
人生設計の変更を 余儀なくさせて
休学・退学のカードを ちらつかせる
大学教育の根幹が 揺らいできている

緊急事態に対処できず オロオロと
後手後手の 目に余る対策ばかりの無能な政府 
口当たりのいい事に いいように惑わされて
学生の向学心と向上心を ないがしろにする
学生のいまと未来を 封じ込める 
学生の政治への関心と不信を 呼び起こす
  
学生諸君
政治に目覚めよう
現実に起こっている苦難から 目を背けてはならない
貧富の格差で 大学を追われる仲間が出るような事態に
無関心であってはならない
政治家の怠惰を直視せよ
政権与党の傲慢さを追求せよ
野党の無力さに言及せよ

学生諸君
想像力をたくましくして
いま命を守る最前線で 命がけで奮闘する
多くの人たちへの 感謝の念を強めよう
あたたかく感謝のことばを添えよう
学ぶことも遊ぶこともできぬ子どもたちへ 
あたたかいまなざしを向けよう

学生諸君
いま学びは 社会の中に満ちている
〈生きること 死ぬこと〉の意味を問う学びが ここにある
感受性を研ぎすまし いまこそ学びの本質に触れよ

大学人よ
学生を いまこそ学びの本質へと導かれよ

〔2020年4月27日書き下ろし。国のその場しのぎの対策が学生を圧迫する。大学人も傍観してはならない事態では?〕

付記
「学費が稼げない 飲食店や塾、バイト先相次ぎ休業 国に支援求める動きも」
新型コロナウイルスの感染拡大で休業要請が広がる中、大学生の主なアルバイト先だった飲食店や学習塾の経営悪化や休業が相次ぎ、自力で学費などを賄う道内の大学生が追い詰められている。(中略)
道東出身で、実家はパソコンなどの機器修理を行う自営業。個人客との対面業務がほとんどなくなったことで業績は悪化しており、「仕送りで親に負担はかけられない」。大学をやめなければいけないのか…。最悪の想定も頭をよぎり、男性は「バイト頼りの学生にとって死活問題」と話す。
今年4月に長男が道外の大学に進学した空知管内の男性(50)は、経営する飲食店の3、4月の売り上げが、新型ウイルスの影響で半減。長男の学費や生活費は、進学用の貯金で賄っているが、「従業員の生活を考えると、このまま先が見通せなければ貯金に手をつけることになるかもしれない」。男性は「自分の最終学歴は高卒で苦しい思いもしてきた。息子は大学を出させてあげたい」と涙ぐむ。
大学生が自ら国に支援を求める動きも出てきている。石狩市出身で早稲田大政経学部3年の高橋ゆいさん(20)は13日から、《1》経済的に困窮している大学生の支援《2》帰省できずに自宅で孤独になっている学生の精神的ケア―を求めるインターネット上の署名活動(http://chng.it/g88TR4KpVK)を開始。10日間ほどで4500筆を超える署名が集まり、24日には文部科学省などに提出した。高橋さんは「全国の大学生は政治に関心を持って自ら声をあげてほしい」と呼び掛ける。
大学生のアルバイト事情に詳しい北海学園大の川村雅則教授(労働経済学)は「生活のためバイトに依存せざるを得ない学生は多く、休業補償もないまま勤務日数を減らされると、学ぶ機会が奪われかねない。生活支援金の給付や学費の延納・分納を進めるなど、大学や国が支援する仕組みが必要だ」と話す。(北海道新聞 2020年4月27日)

自然死

寿命だったとあきらめたい
盲腸もとうの昔なら 命尽きていた
いまの時代の寿命とは
医療の手を尽くしても
延命治療も万策尽きて 快復不能
その尽くし方が 問われてる

高度な医療機器と専門の医療者との
マッチングがなければ
手遅れと言われて あきらめる
助けられたはずだと あきらめきれずに 地団駄を踏む
それでもそれが 命の定めと受け入れて
寿命が尽きたと あきらめる

何の予兆もない突然死 
残された者には 
強烈な茫然自失の感情の後に 深い悔恨が襲う
どうすることもできない 無常と無情の感情に導かれ
定められた寿命だと あきらめさせる

コロナ禍は
死に逝く者にも
死を送る者にも
大きな禍根を残して
現世に生きること 死ぬことの意味を
悲歎のうちに問いかける

過去病原菌により
幾多の大量死をもって
その制裁を受けてきた人の世も
長い闘いの果てに
医療科学•技術の発達と 医療者への信頼により
病原菌の根絶や その共生を実現し 
長寿社会を獲得してきた

新型コロナは 移動する人を媒介に
世界中に撒き散らかした
医療だけではなく
経済も 産業も 教育も 福祉も 
みな機能低下と機能不全を起こし
もとの暮らしには戻れないほどの
痛烈なダメージを 与え続ける
収束の見通しすら 全く立たない
厳しい試練の連続と負の連動

人の死は 個人の死ではなく 
社会を構成する人の死となった
新型コロナによる 人智の及ばぬ自然の猛威に平伏し
自然死として 受け入れなければならないのか
それでも 幾多の犠牲を乗り越える道筋に
自然から授けられた 変化に強靱に対応する
人類の生命力が 蘇ってくるのだろうか
この危機を読み切れない ジレンマからの脱出は
人間のたゆまぬ叡智しかない それしかない
それを どのように結集するのか

自国の利欲に凝り固まった
米中ロシアの権化が統治する 世界であってはならない
消毒液まで飲まそうとする 狂った指導者に追従する
日本の腰巾着もどきの指導者も 覚醒し覚悟せよ
うそいつわることなく 公正明大な言動を示すしか道はない
その覚悟なくして 右往左往するだらしなさが
いっそう不安と恐怖を増幅させ 亡国の僕となる
世の政治家よ その政治生命をいまこそかけよ

コロナ禍の病死が 自然死としてカウントされぬよう
最善の対策を取るには 前代未聞の事態への
最悪を想定した想像力こそ求められる
その信託に応えるのが 政治家本分たれと知るべし
その姿カタチは いま全く見えないのは
安全地帯へ 待避しているからか
なにもせぬなら バッジを外せ
いやがおうにも いま頼れるのは
情けないほど 劣化した者たちしかいない
これが戦争に比する 残酷な事実である

〔2020年4月26日書き下ろし。腰痛を再発。半年ぶりに寝ながら執筆。書くことでポジティブになれるのは幸いだ。辛口は痛みにより辛辣になる〕

あんぽんたん

アホンダラが撥音化したことば
あんぽんたん
愚か者 あほう バカとののしることば
あんぽんたん
でも どこか憎めないことば

街をうろつき闊歩する者たち
湘南の海で戯れるサーファーたち
あんぽんたん
決して懲らしめているわけではない
やさしくいさめたい

あんぽんたん
コロナ禍で
ものの道理は知っている
どうしなければならないのかも知っている
それでもどうにもならない衝動が 
抑えられない感情が 
街へ海へと駆り立てて うごめき繰り出す

あんぽんたん
そう言われても どっちゅうことはない
切羽詰まった逃げ道を 
いきり立った怒りのはけ口を
これからどうなるのかわからない不安を
もし罹ったらどうしようという恐怖も
避けられず 逆らえない コロナ禍で
生きることへのやりきれなさを 
素直に吐き出しぶっつける

あんぽんたん
街に海に 逃げ場を求めて徘徊する
発散しないと 身体が腐ってくるような
発散しないと 心のダメージ広がるような
追い詰められて いてもたってもいられない
自虐な行動に 走る 走る 
制御不能な 暴走行為
恐怖からの 逃走と迷走

あんぽんたん
身の危険を 敏感にキャッチして
身の置き所が どこにもないことを知りながら
身勝手な行動だと 叱られ叩かれようが
せめて仲間とつるんで その恐怖から逃れたい
いつか罹って動けなるかも知れない 
そのときはそのときとあきらめようか
変に粋がり強がって 弱気を隠す臆病もん

あんぽんたん
ひとりぼっちでいるのは 哀しい
ひとりぼっちでこもるのは 苦しい
あんぽんたん
集まることは 恐怖心からの解放
群れ合うことは 絶望への思考停止

きょうもどこかで あてのない逃げ場を探して
囲い込まれた世界で 右往左往を繰り返す
その先に 立ち向かう希望が見えてくるまで
陰鬱な空気にあらがい 悲運と闘い続けるのだ

※はつおん(撥音):国語の音節の一。語中または語末にあって一音節をなす鼻音。[m] [n] [ŋ] [ñ] などの音。「ランプ」「遊んだ」「りんご」「パン」などのように仮名では「ん・ン」で表記する。はねるおん。
※あんぽんたん(安本丹):愚か者。あほう。ばか。多く,人をののしっていう語。

〔2020年4月23日書き下ろし。若者たちはこの尋常でない世界を敏感に察知して、その恐怖心からの逃避のために無謀な行動を起こすのだろうか。その衝動をどう抑えるのか。非難ばかりでは難しい〕