「鳥居一頼の世語り」カテゴリーアーカイブ

学生諸君へ生きるを問う

感動ポルノに仕立て上げられた人たちは
非難されないためにも
求められる姿を演じ続けなければならない
欲と金に塗れたIOCの為に

この世界は健常者と障がい者の二種類しかいない
真実か?
健常者の定義は?
そもそもなぜ分けるのか?

匿名であることでしか存在しないゴースト
虚構の世界にすがるしかない哀れなゴースト
嫉妬だけが生きる理由

痛みを分かち合う想像力を鍛えよ
人と人とがつながる確かな力に変えよう
子どもが大人を信じられる世界に変えよう

社会の常識を疑うことで差別と対峙できる
社会の公正を疑うことで偏見と対峙できる
そこから自分が何ものなのかを知る

空気を読むことにしゃかりきになる徒労感
空気に従うことに無抵抗になる隷属感
空気に逆らうことをあきらめた無力感
ならば問う
空気を拒否する意思はあるか

遠慮圧力及び同調圧力
仲間はずれになることへの恐怖
逃げ出せない苛立ちへの自己説得
囚われ者としての集団への固執
集団からの離脱は
抗いから始まり自由への渇望となる

没個性を悩むならば
自己を見つめる可能性は無ではない
重要なのは他人事の評論ではなく
自己の失敗を認めて自らの言葉で語ることだ

軌跡の時空間を共有し共生する
〈わたし〉という唯一無二の存在
世界との関わりの中でその存在を輝かそう

自分らしさとは何か
自分の考えや表現に責任を持つこと
そこに自分の〈生きる〉を常に問う

〔2022年1月2日書き下ろし。授業ノートに書き記した学生へのコメント。授業の核心が少しカタチになる〕

若き君を謳う

君が謳う詩を贈ろう
優しさが満ちる世界を
夢見て挑む君への詩を贈ろう

君に託す詩がある
どんなにか苦痛に満ちた世界でも
心が躍動(おど)る詩がある

君に聴かせたい詩がある
どんなにか不遜に満ちた世界でも
勇気を振り絞り立ち上がる詩がある

君が歌う詩がある
どんなにか不信に満ちた世界でも
明日を逞しく生きる詩がある

君と歌える詩がある
どんなにか名のなき人が満ちた世界でも
手を離さず苦難に踏み出す詩がある

君が心動く詩がある
どんなにか地球をいたぶる世界でも
いのちを包み込む人たちの詩がある

君が君でいるための詩がある
どんなにかいのちの奇跡を信じる世界こそ
いまを生きる喜びの詩がある

君があなたと幸せになる詩がある
どんなにか出会いの不思議を紡ぐ世界こそ
ふたりで人生を豊かに彩る詩となる

〔2022年1月1日書き下ろし。新年に若者たちに伝えたい。君自身の心の詩を歌う人となれと〕

へこたれず前に

これだけ暮らしが厳しい最中第6波が押し寄せる
とてつもなく不穏な流れが世界を覆う
辛抱強く耐え忍んで1年を終えようとするいま
のっぴきならない事態に立ち向かうしかない
総力挙げて地球の悲鳴を受けとめざるをえない

薄っぺらな政治家集団は血税をドブに捨てる
重ね重ねの失政で困窮者をいたぶり排斥する
貫く政治理念もなく国防意識をむやみに振りかざす
平和を求める沖縄の声は米兵も国も無体に葬る
東京五輪のぶざまな後始末も後の祭りとほっかぶりする

公文書改ざんを命令され自死した赤木俊夫氏の民事裁判
国家は賠償裁判で曝かれることを恐れて事実を葬る
認諾という姑息な手段で罪なき人を三度殺す
連綿と同じ過ちを繰り返して政界ゾンビを養う

ズレた政治感覚は元に戻らず明日の危機をもたらす
間がさしても官僚たちは詭弁を弄して生き残る
壊れた政治倫理は正しい判断を拒み続け
揺れ動く軸足は支持する民を失い続け
政治不信を確実に次代に引き継ぐ

新しい年
避けられない嵐を前に
逃げ場のない嵐を前に
民よ それでも前に進もう

新しい年
苦難の先に科学の力がある
そこに希望の一筋を見出したい
民よ へこたれず前に進もう

〔2021年12月30日書き下ろし。2021年も色々ありすぎた。せめて来年は一つでも不安が解消するように祈りたい〕

人はみなただ者にあらず

ただの人を語る者ほどただ者にあらず
世情をネタにして機知に富む
相手に合わせて言葉を操る

ただの人を生きる者ほどただ者にあらず
風流とは縁遠く思わせぶりを愉しむ
文学とは無縁とさりげなく書を置く

ただの人らしい者ほどただ者にあらず
同化すること同調することにたける
目立たず特徴なく世間に佇む

注目されることもない
期待されることもない
他人のおもいは素通りするだけ

他人に煩わされず暮らすのがいい
世間に恩義を感じず暮らすのがいい
金に困らない暮らしならもっといい

ただの人ならきっと気が楽そうだ
ただ者にあらず
人の役に立たないわけがない

ただの人らしく見せるのもいい
でもただ者にあらず
世間に関わるしか居場所はない

ただの人になりたくとも
決してただ者にあらず
己が許さない
世間に許されない

人はみな世間に生きる
人はみなただ者にあらず

〔2021年12月30日書き下ろし。世間でのその人の存在価値は、その心持ちに現れる〕

コンパスの会集まる

ハンセン病問題と教育を考える市民の会コンパス
仲間3人の小さな会だ
2年ぶりに29日午後から集まった

2013年10月ハンセン病問題を授業化するテキスト
「おまえ、もう学校に来るな!」を編纂する
関わった3人が新たに立ち上げた会だった

テキストは全道の小中高・大学等や全国の療養所 
都府県ハンセン病問題担当課へ
総数1万2千部がばらまかれた

テキストを使った授業の啓発のため
道の事業として道内4カ所を回った
年明けの札幌では道庁赤煉瓦会場で
「人権とハンセン病問題を考える教育セミナー」を開催した
教員を中心に全道各地から100余名が集まった

中学校教諭の手嶋和之さんが模擬授業を展開する
「まだ死ぬわけにはいかない」と題して
ハンセン病全寮協神美知宏会長が講演する
神会長を交え手嶋さん
ハンセン病問題に取り組んできた札幌弁護士会人権委員会の秀島ゆかりさん
75歳でハンセン病問題を市民活動に育てたはまなすの里代表の平中忠信さん
「学校でいかに人権とハンセン病問題を教えるか?」
パネルディスカッションは参加者を巻き込みヒートアップしていく
全国でも稀なハンセン病問題と教育のあり方を考える場となった

神会長がまとめた二つのこと
「ひとつは、ハンセン病問題は我が国最大の人権問題であり、療養所は人権侵害の現場である。誤った隔離政策を続けてきた国が、現在行っている療養所の職員の定数削減といった効率優先の合理化政策によって、十分なケアを受けることができなくなった被害者の尊厳をこれ以上ないがしろにすることは、あってはならない。
もうひとつは、国にとってハンセン病問題は、数ある福祉政策の一つではない。国は隔離政策の過ちを認めた加害者であることを忘れてはならない。
私たち当事者だけの運動では、未解決の深刻な課題を解決することは不可能であることを60年余の運動で痛感しています。市民の皆様が、本問題に対して無関心である限り、国の厚い壁を打破することはできないことを思い知らされています。
国の政策、社会の風潮を改めるためには、市民のみな様のご理解とご支援が必要です。
今日の意義あるセミナーが、そのきっかけになってくれることを願ってやみません」
最後に1985年5月8日独大統領ヴァイツゼッカーの演説を引用した
「過去に目を閉ざす者は、現在(未来)に対しても盲目となる」
公の場での彼の最期の言葉となった
14年5月9日道半ばで享年80歳の生涯を閉じた

コーディネーターはセミナーをこう閉めた
「2年前に多磨全生園で神さんともお会いし、テキストの表紙の絵と詩を書かれた鈴村洋子さん(道内出身)にもお会いしました。その方々からとても大事なことを学びました。憤りを感じながらこの60年、運動に身を挺してきたというお話をされておりましたが、その根っ子にあるものについて、先日亡くなったネルソンマンデラの言葉をお借りします。
『あらゆる人間の心の奥底には、慈悲と寛容がある。肌の色や信仰の違う他人を憎むように生まれついた人間などいない。人は憎むことを学ぶのだ。憎むことを学べるのなら、愛することも学べるだろう。愛は憎しみよりももっと自然に人のこころに根付くはずだ』
人のこころに根付いた愛の広さと深さを、ハンセン病回復者の方々から感じることができました」

3人は今を語った
ハンセン病回復者への差別問題は家族訴訟というカタチで提起された
訴訟に声を上げられない多くの人がいることは事の深刻さを物語る
コロナ禍における感染者への憎悪が人権侵害と指摘されてもおさまらない
日本では人権問題が政治の場で語られるおぞましさと白々しさを感じる
ハンセン病回復者の道内出身の方は20名を切って風化の速度をあげる
学校の現場に外部から入っていけぬ壁は年々厚くなっていく

学校教育は人権を教えられるか?
学校は押しつけられた政策課題で苦しめられ悲鳴を上げる
学力テストの点数主義に追い立てられ指導時間の確保に注力する
登校拒否の数の調整をしつつ教える喜びのないまま仕事をこなす
いじめとも指導死とも向き合えぬまま教師は人権問題を回避する
状況は8年前より後退している状況は否めなかった

手嶋さんはテキストにこう記した
「子どもたちが夢や希望を持って将来像を描けるようにしていくためには、差別の構造を知り克服しなければならない。教師をはじめ大人たちは、子どもに人権侵害の歴史や事実があればしっかりとその正確な知識・事実を教え、伝えて、共有していかなければならない。子どもたちには、ハンセン病の学習を通して、自分たちが今持っている人権が奪われて人間としての尊厳を踏みにじられた人がいる現実に気づき、なぜ人権侵害が起きてしまったのか、その上で人権を護るためには何をしなければならないのかを学んでほしい。そして、さまざまな人々が共存・共生できる社会の創造のために、積極的な行動をとることのできる人間に成長することを期待していきたい」

平中忠信さんがテキストの巻頭言に記した言葉を噛みしめた
「私たちは教育に対して非力ではあるが無力ではない」
彼もまた2018年5月22日享年91歳で鬼籍に入った

〔2021年12月29日書き下ろし。ハンセン病問題に引き込んだ平中先生を想い出しながら、手嶋先生、元道共募事務局長木村昌次さんとの『これから』についての話題は尽きなかった〕

外出と歩数

歩くということは
こうも疲れるものなのだろうか

用向きで久しぶりに街中に出た
重い荷物をバックに背負った
肩にかかった重さは腰にも感じる

滑りやすくなった横断歩道は
転ばぬよう用心深く渡ると赤に変わる
マスク越しの呼吸は息苦しい
すぐに眼鏡は曇り視界不良となる
しまいに眼鏡を手に持ち歩くしかない

用向きは終わり家路につく
混み合った地下鉄に乗った
シルバーシートが空いていてよかった

暗くなった家路を急ぐ
向こうから人が来るまでマスクを外す
来たら素早くマスクして過ぎれば外す
眼鏡が曇らぬことと呼吸を楽にする対策だ

帰宅してスマホの歩数記録を見た
9000歩
これだけでこの疲労感はなんだろう

歩き疲れた身体は
休息だけを求める
歩き疲れてしまうと
ひたすら無気力となる
歩き疲れてしまったら
言葉すら浮かばない

妻からの心配の声をよそに
食後すぐに布団に入った
初めてのことだった
老いは確実に身体を支配してゆく

〔2021年12月28日書き下ろし。また一つ老いるを如実に体験する〕

七つの感情

この1年どんな感情を持って
自分と向き合ってきたのだろうか

喜び
緊急事態宣言が解除され仕事が再開した
部屋に閉じ籠められた閉塞感は
一気に開放され躍動した

安心
お世話いただく機会が多くなった
マネージメントされることに感謝の念が強くなる
与えられた大事な仕事を丁寧に仕上げる

信頼
大きな仕事は1年かがりだった
師の信頼を受けて二人で書き上げた
褒めてもらうと少年のような気分だった

不安
加齢は体調の変化を促す
原因不明の湿疹で悩まされた
腰痛は定期的にやってきて横臥を強制した

驚き
新型コロナウイルスは突然感染者数を激減させた
専門家はだれもその理由を明かせなかった
いまオミクロン株は欧米を席巻し日本に迫る

悲観
衆議院議員選挙の惨めな結果
予想を裏切り自民独走立憲沈没
理念なく挙手するだけの甘い仕事が続く

怒り
多くの詩作の動機そのもの
まずは牛乳を飲んで落ち着こう
それからしっかり怒りを吐き出そう

〔2021年12月27日書き下ろし。七つの感情をどうコントロールするのか。世の中への怒りが独り合点にならぬよう、自戒をこめよう〕

希求の初校正終える

こんなに書いてしまったのか
そのボリュームに圧倒された
二人で取り組んだ1年の集大成
男の50年の軌跡を初校の重さに感じた

福祉への人生観が盛り込まれた
50年に渡る男の軌跡
福祉施設の劣等処遇の世界に挑み
一途に当たり前の生き方を追い求めた

介護保険制度の前夜から深く関わった
20余年に渡る男の軌跡
措置から契約への大きな変革に挑み
導入された儲け主義の市場原理と渡り合う

社会福祉法人の経営改革を訴え続けた
20余年に渡る男の軌跡
老人福祉施設の旧態依然とした経営を憂い
全国のトップランナーは身を粉にして果敢に動く

自らの足下を見つめ直す時を迎えた
50年に渡る男の軌跡
次代に引き継ぐための経営検証と展望を込めて
「希求」をテーマに1年かけて書き記す

ブレることなく福祉理念を貫き通した
50年に渡る男の軌跡
次代に「和顔愛語」の仁愛の道の委ねる
目をしょぼつかせて二人は校正を終えた

〔2021年12月26日書き下ろし。師の50年の経営の検証と展望を「希求」と題し、二人で取り組んだ愉しき日々が終わり、一抹の寂しさを感じながらも安堵する〕

防げないオミクロン株と沖縄海兵隊

防げないオミクロン株
恐れていた市中感染が始まった
見極められない感染対策
苦労してここまできたのもつかの間
欧米の感染拡大を見るにつれ
かなり強い感染力で列島を制覇するのも近い
正月明けから2週間後の数値が怖い
結果は緊急事態宣言発令も想定されよう

沖縄は米海兵隊のクラスターに侵される
いまも占領軍気取りでルール無視する者たち
海兵隊員の素行の悪さは評判通りか
検疫対象外で国内も自由に往来する
土も水も空気も海も汚され続ける沖縄は
この先も米国の統制続く占領地
いまも思いやり予算でたかられる
いまはコロナ水際戦線をにたり顔で突破する
泣き寝入りを強要する卑屈な者らは迷惑顔して
怒ったふりしてカタチばかりの抗議で済ます

〔2021年12月25日書き下ろし。来日する米軍兵士は、フリーパスで遊び回る。沖縄の脅威はなくなることはない。国内の米軍基地もその傘下にあり日本政府は制御不能。コロナでさもしい米国とへつらう日本のみじめなつながりがくっきり見える〕

付記
福岡でオミクロン株市中感染 京都、大阪でも新たに5人
福岡県は25日、新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」に、県内に住む20代男性が感染しているのを確認したと発表した。九州でのオミクロン株確認は初めて。男性に海外渡航歴はなく、感染経路が不明で、市中感染とみられる。25日は福岡のほか、京都府で3人、大阪府で2人の市中感染とみられる事例が新たに確認された。
市中感染は3府県のほか、東京でも確認されている。年末年始の帰省や旅行で人の移動が増え、感染拡大に拍車がかかることが懸念される。
福岡県は26日から県民を対象にした無料のPCR検査を始める。男性は18~20日に大阪や京都などを新幹線で訪問した。(共同通信社2021年12月26日)

たぎる情熱を

逆巻く流れに身を委ねし若者よ
交わした誓いに殉じる若者よ
愚弄されようと立ち向かう若者よ
力の限り人生を切り拓こう

くじけることなく身をたぎらせよ
老獪な生き方を拒み夢をたぎらせよ
無尽に湧き出る創造力をたぎらせよ

新しき人生にいまの決心を刻もう
二人の世界は愛を信じる心が試される
新しき人生に希望を託そう
二人の世界は愛を明日へのパワーに変える
新しき人生に果敢に挑もう
二人の世界は愛の試練を自らに与える

愛するたぎる情熱を決して失ってはならない
音楽へのたぎる情熱を決して失ってはならない
夢へのたぎる情熱を決して見失ってはならない

幸せは二人が感じること
幸せは二人で育て紡ぐこと
幸せは二人で確かめ合うこと
二人に幸あれと祈る

イブの日に入籍した二人に
祝福の詩を贈る

〔2021年12月24日書き下ろし。若者が慎ましく結婚した。逞しく生きてほしいと願う〕