「鳥居一頼の世語り」カテゴリーアーカイブ

校長室の風景(その7) 「きずな夜学校」

社協に肩入れしてもらって 
子どもたちの福祉の学習も 楽しく様変わり
お返しするのが 世間の義理
それは社協の事業に 加担すること
校長室は 作戦会議室に 早変わりした

地域福祉を進める事業を 企画した
地域の人財を活用した 生涯学習
教育委員会の お株を奪って 
社協が主催の 生涯学習はいかにあるべきか
簡単明瞭 そこで暮らすことの豊かさは 文化にあり
人と関わり合うことから生まれる 福祉文化を発信しよう

事業名は「きずな夜学校」
無機質な公民館の研修室は そぐわない
会場は 六年生の教室をあてた
地域の方々は 子どもの教室で学べることに興味津々
習字や図画の作品やら お道具類やらであふれ
懐かしい机と椅子の感触
35人定員で 45人が応募した
急遽 隣の教室から 補填する会場づくり

夜学校は3日間 一日二時間
科目は 六科目
故郷の風景写真を撮る 地域在住の写真家の作品鑑賞と解説
近くの精神科の病院長には 認知症の講義
障がい者と花樹栽培をしている造園家には 鉢植え花の育て方
町内会の運営で 全国的に評価された実践紹介を 会長さんに
地域の助け合い活動は 社協のスタッフから レクチャーとお願いを
子どもと福祉の学習は 校長の得意分野です
  
夜7時から9時まで
2階の教室と玄関をつなぐ動線は 夜のしじまに光がもれる
福祉は 特定の人の問題だけではない 
日常の暮らしにある 当たり前の人とのつながりであることを再発見した
福祉文化と気取らずに 地域を豊かに耕している人に注目した
会場の教室は 夜学校を演出する最高の舞台となった
子どものいない教室は 子どもの文化であふれていた

講師は 校長室で講義を終えて一休み
会話は 初体験の楽しさで盛り上がる
社協スタッフが おずおずと薄謝を差し出す
中身は 図書券
講師はそのまま校長に手渡し 使ってほしいと申し出る
ありがたく 手を出し頂戴する

後日 学校図書館の運営を一手に担う 
図書ボランティアに 図書券を手渡す
子どもたちに読んでほしい児童図書を 一番承知しているボランティア
ボランティアが 主体的に本を選ぶ
それが 活動を継続させる重要なポイント
だからいつも生き生きしている うちの図書館ボランティア 
もう一つの 文化活動支援のあり方

校長室は 地域の文化振興の推進室にも様変わる
そこに 社協が絡むと もっと面白く市民と福祉を考える
福祉教育推進室にも 変幻自在
そのことを 校長が知るか知らぬかで 
市民や子どもの福祉の学習に 雲泥の差がつく

〔2019年10月4日書き下ろし。登別市社協とのコラボ企画した事業の一つ。校長室は様々な推進室になると面白い。面倒くさい、わずらわしいと思った瞬間、校長室は閉鎖される〕

校長室の風景(その6) 「押しかけた子どもたち」

中学校で 全校生とボランティアについて学習した
質問すると 一人が答えた後
「同じです」「同じです」「同じです」
失笑がもれる
「同じです」「同じです」 繰り返される「同じです」
百人ほどの子が答えた後に
「私はこう思う」と 一人の女の子が答えた

校長室に入りかけたそのとき 
数人の子どもたちが 話をしたいと押しかけた
校長は 子どもたちの勢いに押され 許可した 
子どもたちと校長室で さっきの顛末について話し合った
子どもらの顔も言葉も 真剣そのものだった
全校生に出した質問は 決して難しい問いではなかった
彼らは 調子に乗って からかい嘲笑したのだ
いかに その態度が不謹慎だったのかを 詫びながら
私たちに何を伝えたかったのかを 聴きたい
それが 押しかけた理由だった

自分の考えを言葉にするときに その言葉は同じでも
実は考え方や感じ方は 全く同じではない
まわりに流されることなく 自分の考えを表す言葉を大事にしてほしい
「同じ」という回答は 考えを他人に委ねて 思考停止していることと同じ
ボランティアは 自分の意志や考え方を 確かめながら活動すること
そのことを他人に委ねてしまっては そこからは何も学ぶことはできない
ボランティアという学びへの 大事な心構え
彼らには その愚弄さに気づいてほしいと 伝えた
空気に流されて まわりに合わせる 情けない態度に憤り
おかしい ちがうよという 心の声に押されて 
君たちは ここに来た
だから 正直私は君たちに救われたと 感謝した
三十分の時間が あっという間に過ぎた
校長は 不機嫌そうな顔をずっと崩さず 子どもたちを学級に戻した
校長との別れの際には 謝辞はなかった

翌日 臨時の全校朝会がもたれた
校長は 生徒の態度について 君たちは決して悪くないと弁護した
講師をこき下ろすのは 構わない
ただ 校長の憤りは 直接講師にぶつけてほしかった
しかも 校長室に押しかけた 子どもたちの真摯な行動を 見事にないがしろにした
彼らこそ この学校で誇れる生徒であり 教育の成果でもあるはずなのに
校長自ら 生徒のとった自発的な行動を否定し 無視した
子どもに 卑屈さを教えることは 決してしてはいけない 
校長として あるまじき態度だったと
校長室にいた子の一人が 親に泣いて訴えた

校長室 選ばれし者の指定席と 勘違いしてはならないところ
校長室 子どもたちの声を素直に聴く人がいて はじめて存在するところ
校長室 あたったかい空気が流れる 教育的空間そのもの

そう願いたい

〔2019年10月3日書き下ろし。一部の子どもたちの行動こそ全校生に訴える価値ある行動であり、教育の成果を共有する機会だった。怒りの感情は理性的判断を狂わせる〕

校長室の風景(その5) 「ヒヤリング」

学校経営計画は 各校務分掌の年間計画と
すでに 前年度末に出来上がっているのが 普通である
着任した校長は 前任者の経営計画を継承して 新年度を運営していくのは 
長い間の慣習であり 異論なく踏襲されてきた
だから 教員も 3月に概ね新年度体制ができているから
4月異動してきた新メンバーには 出来上がった計画のまま 
校務分掌計画を進めていくことに 何の異存もなかった

新しい校長は 従来の慣習をよしとせず 改革を断行した
前任者の経営に 迎合できないことへの 自己表明でもあった
自分の経営が 1年先送りになることの悔恨を 抱きたくなかった
校長室に運び込んだパソコンの荷を解き 
その前に座り 経営計画の策定に取りかかった
学校教育の全体構造の見直しから始まった
道徳教育 生徒指導 特別活動 ボランティア学習 情報教育 総合的な学習の時間
それらを構造化することで 学校教育が俯瞰される
年度初めの職員会議の朝まで たった3日間 
勝負に出た

学校経営の基本方針は
「“むずかしいことをやさしく やさしいことをふかく ふかいことをおもしろく” 
豊かな学校教育の創造をめざす」と 井上ひさしの言葉を引用した
さらに 全ての教育実践は
「子どもを粗末にしない共育」に 結びつくことを明記した
ボランティア学習の重点教育目標は この学校で初めて提起された
「様々な人たちとの出会いやふれあい活動を通して 誰もが人として当たり前に生きる
ことの大切さを“まごころ”として体験的に学び 個々の共感性と共生観を高める」

職員会議に 提案された
3月末に用意された計画の全面的な見直しを 余儀なくされた
それをベースに 各学年学級の経営計画が立てられていく
それも 従来の飾り物のような形式的な内容に陥らぬよう 
領域別かつ学期毎に区分された様式を 具体的に提示した
すべての取り組みには 評価が付帯されることも 補足した
さらに 学期末にはオープンで経営評価を行うことを 通告した
ぬるま湯に浸かってきた教員集団は 大いに戸惑った
4月は 学級経営も校務分掌も かなり煩雑になる時期であり
厳しい仕事を強いることは承知の上で 取り組ませた
それが出来なければ 1年間の実践は 
その場しのぎと批判されても 返す言葉はない
あだ花となるだけの 今までと変わらぬ仕事となる
教育に携わるのは その一つひとつの仕事が 
どのように深く 学校全体の活動とリンクしていくのか 
その中で 一人ひとりがどのような役割を担い責任を果たしていくのか
自分のポジションを確かめ その覚悟を示すのが 4月であり 
具体的な自己表明のカタチが 学年学級経営計画なのである

若い教員が 緊張した面持ちで
学年主任と共に 応接セットのソファーに座る
対面するのは 校長と教頭 教務主任
これから経営ヒヤリングが 始まる
学年経営計画を 学年主任が説明する
学年の各領域の指導計画から始まって 
学級計画に どのように反映されていくのかを
系統だって 論じなければならない
書かれた文言の 行間にあるおもいを 語ってもらうのが
このヒヤリングの場であり 目的である

校長室は 教員たちの熱いおもいを語る 空気に満ちた
若い教員は 大きく息を吐いた
初めての体験で 昨夜は何を質問されるのか 不安で寝付けなかったという
そばにいた主任も 長い間教員をしてきたが 初めての体験
同じように 内心ビクビクしていたと 実直に語った
ヒヤリングは これから1年の実践への道標を 自ら語ることでしかない
校長や教頭に伝えることで はじめて共感と共有という経営のベースが確立する
文言を書き連ねただけの 学年学級経営計画
忙しいと置き去りにされてきた 確認の時間
それをヒヤリングという場で 語り合うことの大切さを 優先した
校長室は 経営を語り合い おもいを共有する場なのだ

語り合うことで 覚悟が見える 覚悟が決まる 
そして 覚悟が 実践の目的となる 

〔2019年10月2日書き下ろし。学校教員が多忙であり、超勤など働き方が問題視されている。そこで、果たして学級経営に対して共通理解はなされているのだろうか。個々の教員のおもいを確認するヒヤリングの効果を提案したい〕

校長室の風景(その4) 「助けて!」

昼休みの清掃時間 
静寂な校長室に 突然起こった悲痛な叫び声
「こっちょ 助けて!」

三年生の男の子は 1階の会議室を友だちと掃除していた
会議用の長机が 窓際にいくつも積まれていた
なにかのはずみで その机が 倒れた子どもの頭の上に かぶさったという
机の角か脚の部分がぶつかり 下の長机と板挟みになってしまった
当たり所が悪く 出血した
周りの友だちも 本人もビックリした
血が顔に流れてきたから 余計にあせった

廊下に飛び出して 真っ直ぐ走って 左のドアが保健室
怪我をしたら保健の先生 当たり前に指導されていること
でも 子どもは右にまわって 校長室のドアを 泣き叫びながら開けた
「こっちょ 助けて!」
見ると 額の上と頭の後ろが出血していた

養護教員に すぐ応急手当を指示し 
教頭に 救急車を手配するよう連絡 脳外科に搬送を依頼した
母親に連絡し 担任の車で病院まで同行させる
子どもは 傷口を縫う代わりにテープで塞がれ 脳にも異常はなかった
子どもが戻って 大事に至らなかったことを確認して 安堵した

どうして校長室に飛び込んできたのかを 聞いた
「こっちょのこと 一番先に思いついたから」
「こっちょは すぐに助けてくれると思ったから」

校長室は いつも子どもで あふれていた
子どもが 危機的な事態に遭遇したときに 
とっさの判断で 校長室に向かったという事実に
彼らとの 日常的なふれあいの結果として 
この事態を 収拾できたことが 幸いだった
それ以上に あの切迫した子どもの叫び声が いまも鮮烈に心に残る
「こっちょ 助けて!」

悩んでいる子が 心の叫び声を 素直に声に出すには
その声を受けとめ 真剣に聴くことしかない
それが いま子どもたちが求めている 人間教師である
校長も 人間教師への道程を歩む 一人の教師にすぎない
校長室は その共育の場であることに 心したい 

〔2019年10月2日書き下し。校長室に飛び込んできた子の思いは、校長との信頼関係に他ならない。人間教師への過程は、いまも続く生涯のテーマである。なお校内の子どもの事故は、未然に防止する対策を確認、リスク管理を徹底したことは必然であった〕

校長室の風景(その3) 「オープンザドア」

来客は 学校の玄関口のインタホンを押し用向きを伝え 解錠を待つ
あるいは 職員室の小さな小窓で 来客であることを伝える
さらに 玄関口に置かれた小机の来客名簿に
氏名・所属・連絡先・訪問目的・時間を記入する
入校手続き完了し 校長室へと向かう
どこの学校でも これくらいのレベルで 不審者対策
犯罪予防は 地域の人が出入りしにくい 
まるで 塀の中の学校にしてしまった 

一切の手続きがない 学校があった
職員室の小窓に顔を出して挨拶し 校長室に直行
アポがあってもなくても
校長が在室であれば いつでもウエルカム
誰が来ても 時間があればいつでも対応した
町内会役員 老人クラブ役員 PTA役員 保護者 民生委員・児童委員 
校長室の扉は いつも地域に開いていた
なかでも社協のスタッフは 子どもと福祉をつなぐ キーパーソン

地域の要望は 直接校長に伝わる
学校の要望も 直接地域に伝わる
地域の行事に 学校も参加する
学校の行事に 地域は支援する
教員が校務で地域へ出るときには 依頼毎が多い
学校を代表していくのだから 
失礼のないよう服装言葉遣いには 気を配る
ロッカーに着替えを用意してあるのは マナーのひとつ
地域や保護者の 教員の評判もいい

問題のある子について 児童委員と情報交換
地域での見守り活動 町内会や老人クラブと情報交換
地域行事への参加要請 文化祭への子どもの作品の提供や参観のアピール
学校行事への参加要請 老人クラブと新一年生で桜の苗木の共同植樹
事あるごとに 関係者が誘い合わせて集まってくる校長室

そこが 学校教育への信頼づくりの場となった
そして 教職員への信頼へとつながった
だから 地域は 学校が自分たちの学校だと 愛着をもって関わる
それは 子どもの社会的な育ちを サポートすることにほかならない 
さらに 子どもを地域と共に教育するという 地域連携のカタチとなる

〔2019年10月1日書き下ろし。校長室を舞台に様々な地域との連携が生まれていった。開かれた学校は、校長室から始まる〕

校長室の風景(その2) 「待遇」

地域との連携強化の旗印の下
福祉の授業で 市民がゲストで呼ばれ ある学校に行った
廊下ですれ違う教員たちは 怪訝(けげん)そうな目線を送って
立ち止まることなく 挨拶もそこそこに 通り過ぎる
時には 声も出さず黙礼もせず すれ違う
先に挨拶の声がけをするのは 
いつも ボランティアのゲストたち

授業がはじまるまで 職員室の隅のソファーで待機する
担任が迎えに来て 教室に出向いた
ただそれだけのことだった
校長からの ねぎらいのことばはなかった
そもそも 授業に顔を出すことも しなかった

校長室に通されるのは 学習支援の市民ではなかった
校長室に通されるのは 地域の有力者や 社会的地位のある人だった
そこで 茶菓子の接待を受け 歓談する
もちろん 校長は授業も参観
終わると 校長は謝辞を述べ見送る

市民ゲストは 後でそっと聞かされた
同じ待遇をしてほしいと 願っているのではない
ただ 学習支援の訪問活動している市内の学校で
教員の挨拶の違いが こうもあるのかと驚いた
その違いは 校長のゲストへの待遇のあり方を範として
訪問客に 差別化を促しているだけのことだった

市民ゲストは この学校が なぜ評判が悪いのかを知った
福祉の授業をしても 教員が後ろから監視の目を光らせる
質問に挙手することもなく 指名すると自信なげに答える
校内の空気は 殺伐とし 息苦しさを覚えた
この学校に閉じ込められている子どもたちの 苦痛を感じた

だからこそ この学校には市民の目が必要だ
ボランティア仲間にも この学校への学習支援を頼もう
いま学校と地域が求める 地域連携というならば
この学校こそ 連携強化の対象だと 仲間に伝えよう
一人でも多くの市民が 関わることで 
学校の体質が改善され 子どもたちが学びやすくなるだろう
そう信じて 一市民(いちしみん)として動きだそう
それが ボランティアの「心・意気」だと 合点が行った
  
〔2019年9月30日書き下ろし。学校に特定の市民が参画する制度を進めているが、日常的に市民が学校に関わることで、子どもたちが守られる。閉鎖的な体質が改善されないのは、市民の受け入れを拒むことにある〕

校長室の風景(その1) 「待合室」

総合的学習の時間で 福祉を取り上げる学校も多い
内容や質的な問題は さておく しかない
教員は 福祉に関心がなくても やらされる
指導力は もちろんない者も確かにいる
だから 毎年その学年がしてきたことを 手っ取り早く繰り返す

そこで 社協に協力を依頼する
躊躇(ちゅうちょ)でもすれば 子どもへの学習支援を拒むのかとばかりに 威圧的な学校
社協からの依頼には 断りの言い訳を てんこ盛りする学校
でも社協は 学校からの依頼に 二つ返事で対応する
だって 大事なまちの子どもたち
そして 福祉を学ぶ機会を 決して逃してはならない使命感
だから 学校と喧嘩することは できるだけ避けていい人ぶる
仕方ないっしょ 人質論

ある町の 小学三年生の福祉の学習 
耳の不自由な人との交流学習を 学校から依頼された
その町には 障がい当事者が住んでおらず
隣町の社協に 今回もまた依頼した
隣町の社協担当者と障がい者 そして通訳ボランティア 
地元の社協担当者の4人で 当日学校を訪れた
授業まで30分ほど早く着いたので 校長室に通された
校長は 挨拶もそこそこに パソコンに向かった
応接セットのソファーに座る4人は 落ち着かない
校長室は ただの「待合室」となった
授業を終えた教員が迎えに来て 早々に退散した

招かれたゲストは 隣町から1時間余をかけて来たのです
ゲストに示した 校長のこの非礼 許せますか?
尊大な態度にしか 見えません
ゲストは 開いた口が ふさがらなかったでしょう
地元の社協は 恥ずかしくていたたまれなかったでしょう

ゲストが 訪問するのは 事前に承知のこと
ゲストが 校長室で待機するのも 了解済み 
ゲストへのねぎらいのことばもなく そそくさと 自分のデスクに座った
果たして どんな仕事をしていたのか 
善意に解釈して 緊急性のある仕事をしていたとしよう
ゲストの応対に 30分ほどの時間を割くことが できないほどの事態だったのか
ありえない そう断言しよう!
ゲストに対応することが 面倒くさかっただけだ これも断言しよう!
障がいのある人との関わりを 回避したいだけ これは深刻な問題だと 断言する! 
外部からの学習支援者への 感謝の気持ちなど ない これも断言できる!
利害関係のある者には こんな態度は決してしない これは断定できる!
非常識この上ない態度を 露呈したことすら自覚できず
ぶざまな失態を さらした瞬間だった
手持ちぶさたで 4人で会話することも はばかれる待合室
存在を無視した校長に ただただあきれるばかり
子どもと福祉の学習を深めようと 汗かく人たちの思いを 
平然とつぶしていく校長に
教育者以前の 人間としての資質を疑うのは 非礼であるか

ひとつわかったこと
この人が 校長の椅子に座っているという事実
もうひとつわかったこと
地域は 異動まで忍耐を強いられるという事実

〔2019年9月29日書き下ろし。福祉教育が根ざさない原因。校長という社会的立場を認識することもなく、非常識な態度を平然ととることへの警句〕

痛みは誰と分かち合うか

いつも 後出しじゃんけんが 得意だった
たいしたことは できないないと 高をくくっていたら
見事に 痛いところを 平気で突いてきた

いつもなら これくらいは我慢できると思っていたが
頼みにならない年金が これからどんどん下げられる 
現役世代の期待を裏切って 痛みを分かちあえと 強制する
誰と誰とで分かちあうって そりゃ貧しい民同士でしょうが
わかりきったことなんか聞いて どうするの
国のためだと 民のためだと 大義を通す高慢な面々

制度をつくり 運用するのは
老後の暮らしなんか 全く心配しない裕福層とおこぼれ層
民の老後は 施し程度の雀の涙で済まそうと
手ぐすね引いて 待っていた 年金改革
殺さぬように生かさぬように ほどほどの不満とちっぽい満足を
バランス良く与えておけば それでいい

10%の消費税アップも 経済の落ち込みは想定済み
わけのわからぬ対策講じて やってる感を見せとけば
民は自力で難題を乗り切るだろうと 切り捨てる
日米貿易協定でアメリカ追従が より鮮明さを増し続ける中
民が求めもせぬ憲法改正へと 旗を掲げて世論を煽(あお)る
憲法改正の目的も どんな国にするのかも曖昧のまま 
名声ほしさのパフォーマンス
それより先に 為すべき課題は 目白押し
無能さを 晒(さら)し続けるのは
選ばぬ民への しっぺ返しか

見くびられ民たちは 
いつまで 従順にいられるのか
どこまで 現役世代の我慢が 続くのか
世直し運動の歴史は 絶えたわけではない
民の怒りが 静かに そして確実に 溜まり始めている

〔2019年9月29日書き下ろし。消費税10%を直前にして。5日今後の年金の試算が厚労省から戦略的に選挙後に発表された。準備金2千万円の話どころではない。現役に負担を強いて老いを生きることの心苦しさを痛感する〕

私にも……

認知症の母親を 抱えて
日々 介助に明け暮れている 女性を訪ねた
よく来てくれたと 歓待された

家に帰ってきて 自責の念にかられた
目を離せない老人を抱えて
女性は 家の中での生活を余儀なくされていた
もっと早くに 訪ねるべきだった
自分に もう少し相手をいたわる気持ちがあれば
一時(いっとき)私がその老人を見ている合間に 
買い物でも してきてもらえばよかったと
反省しきりだった
その話を 女性にすると 
心遣いに 感謝をされた
でも 外に出ることよりも 
あなたが来てくれたことが 嬉しかったという

小さな町の中で こんなふうに人が結びついていて
それぞれの抱えている悩みが 共有されていくところに
その地域での 助け合いの質を高めていく 道筋を見た
「わたしにもできることって こんなところにあったんですね」
初老の女性は 初めてボランティアの意味に気がついた

〔2019年9月20日書き下ろし。道北の小さな町でボランティア講演をし終わった後の会話。他人に関心をもつこととそこで何が出来るのかは、相手との関わりの中で見えてくる。ごく当たり前に認知症の方が家族と地域で暮らすためにできること〕

「こぶとりじいさん」の真相

さてと ふたりのじいさんのこと くらべてみようか
こぶをつけられてしまったのは どうしてだろう?

「いいおじいさんは お酒が好きで 歌も踊りも上手だったから 鬼にうけた」
(だから こぶを取られたんだね)
「でも もう一人は お酒も飲めず 歌も踊りも チョー下手くそだったから」
(それで鬼が怒って こぶをつけられてしまったんだよね)
「なんだ ただそれだけのこと」
(そう ただそれだけのこと いいとか悪いとかじゃなくて ただそれだけのこと) 
「でもどうして こぶをとってもらいたいって 思ったの」
(そこが このお話の大事なところだね)

飲んべえか 下戸か 
それだけで 大人は付き合い方が違ってくるんだ
「呑めば呑むほど酒の味 語れば語るほど人の味」
意地悪じいさんは お酒も飲めなかったし 
村のみんなと 楽しくおしゃべりしたことも きっとなかったしょ
だから じいさんのほんとの気持ちは 誰も分からなかったと思うよ
みんなの中にも おしゃべりの苦手な子っているしょ
みんなと仲良く遊べないからって ついつい意地悪してしまう
もしかして 意地悪してたの 村のみんなだったりして

それにくらべて 鬼とでもすぐに仲良くできるじいさんは
明るくて 酒は好きだし 歌はプロ並み 踊りも達者(たっしゃ)
きっと 村の人気者だったに ちがいない
いつも笑顔の人と 苦虫をかみつぶしたような顔の人
みんなは どっちと仲良くしたい?
誰とでも仲良くしなさいって よく言うけど
大人はずるくて つきあいやすい人を選ぶんだ ほんとだよ
だから 明るくてつきあいが上手だから いいじいさん
もうひとりは つきあいが苦手で 不機嫌そうにしていたから
村の人には 嫌われもんだったんだね
人は みんながみんな 明るく元気で健やか元気なわけないしょ
ほんとは 心の中に困ったことがあっても 
明るくふるまうことって 君にもないかい
人は 一人ひとり心のようすも 人とのつきあい方も みんなちがうんだ
感じ方や考え方 話すときの表情やことばづかい 態度 みんなちがうしょ
それは 性格がちがうだけのこと 人がらがちがうとも言うよ
二人のちがいって そこなんだ
それを比べて いいとかわるいとかって おかしくない
君がみんなに 意地悪な子だって見られたら とっても悲しくなるしょ
ほんとは みんなと仲良く遊びたい
でも 無視されて心が傷つけられると思うと 遊べない
悩んで苦しむほどに つらかったと思わない?
自分を守るためには ひとりぼっちでいるしかない
それで 村の人は 相手にしようとしなかったというわけ

とってもいやなおもいを ずっとしてきたじいさんが
鬼に会いに行くって 信じられる?
「こぶ」が とっても嫌で嫌でしかたなかったんだね
そのこぶのおかげで みんなが意地悪すると思っていたのかも知れない
あの明るいじいさんだって こぶに悩んでいたしょ
その二人が 同じ悩みを持っていたというのも 面白いね
こぶは 二人には劣等感そのもの
こぶのおかげで 顔がみにくいと 思っていたんだよ
かげで笑われたり バカにされたりしていたと 思っていたかもしれない
姿形(すがたかたち)が みんなとちがうことで 
君のまわりにも いじめられてる子って いるかも
こぶのない顔になりたいって 
子どものころから ずっとおもい悩んできたことが
鬼に こぶを取ってもらえるって聞いて
小躍りするくらい喜んで 山に登っていったんだね きっと
結果 チャレンジは 見事に大失敗!    
でも 勇気をふりしぼって危険をかえりみず 鬼に会いに行ったじいさん
すごい行動力のある人だと 思わない?

二つこぶをつけて里にもどった 悲しくてやりきれないじいさんを
村人たちは その心の傷に塩を塗るように 
罰が当たったと よってたかって 笑いものにしたんじゃないかな
なぜって?
他人(ひと)の失敗や不幸をあざわらう
いやしくてみにくい こころさもしく育った 
つまんない大人が たくさんいるからさ

そんな人間には 絶対なってほしくない
人をいい悪いって 性格で決めつけてはいけないってこと
自分の心で その人なりをしっかりと観て 判断する人に育ってほしい
もうひとつ 人はだれでもみんなと姿形がちがうことで 
二人のじいさんのように 悩んだり いやな目にあうこともある
でも なつ(NHK朝ドラ「なつぞら」のヒロイン)のように 困難にめげず
こころを強くやさしく耕す 開拓者に育ってほしい
子どもの君に きっとそう伝えたかったと思うんだ

北の大地に昇る朝日と目覚めの風に 元気をたくさんもらって 
君の人生を彩(いろど)る 大好きな人たちと 
はじける笑顔で 夢に向かって 大きく生きよう! 
いまを生きるじっちゃんから 未来を生きる君への伝言です 

〔2019年9月28日書き下ろし。なつロス・十勝ロスの始まりの日。まとめは、祖父柴田泰樹の心情を勝手に代弁する〕