かくれんぼ

子ども時代のかくれんぼを やめられない 高校生たち
彼らには その自覚は 全くない
それだけに 問題の根っこは 深かった

それは 二十数年前 全道規模のボランティア集会で 起こった
函館に集まった 高校生たちの分科会
参加した高校生を 後ろから見守るように 教師や一般の大人たち
正面に 進行役の高校生 その傍らに助言者の教師が控える
さも 彼ら自身の手で 運営されているかのような 舞台設定
教師の作った シナリオ通りの 進行
それは 司会役の子が 頭も上げず 原稿を読んでいたから すぐばれた

司会者が 意見を求めた
何人もの高校生は 振り返って 後ろに座る指導者を探す
教師は 発言を促すかのように 目と顎(あご)と手で 合図する
前に向き直し 自信なげに挙手して 発表する子ら
まるで 操り人形を見ているような 奇妙な風景

「私たちの学校では…」「私たちの活動は…」を 枕詞に始まる発表
学校という枠の中で 私たち“みんな”でした 活動報告
単なる 学校自慢のオンパレード
発表の練習成果が出て 子どもも教師も 嬉しそう

活動から 何を感じ 何を考え 何を学んだのか
個人レベルの意見が皆無な 分科会の流れに 誰も気づこうともしない
活動すれば ボランティアしていると 錯覚している教師や子どもたち
肝心要のところが欠落し 活動の目的化が進んでいた

ボランティア学習という世界から 逸脱(いつだつ)し乖離(かいり)した 虚構世界
教師に操られ その指示を受け ボランティアと称して活動する 似非(えせ)世界
ボランティアとは無縁な 学校への 統制を強いられる 隔離(かくり)世界
奉仕意識が蔓延(まんえん)する 学校ボランティアの 歪曲(わいきょく)世界

ボランティアの 自由意思を取り戻すために 呼びかけた
「おとなの後ろに かくれんぼするの もうやめよう!」
高校生自らが 企画し運営するフォーラムを 提唱した
その想いに共感した 行動力のある 各地の心ある仲間たちとともに 
「ヤングボランティアフォーラム」を 推進してきた

しかし ヤンボラの灯は いつの日か 途絶えた 
高校生たちが 学校に 連れ戻されたのだ
高校生たちは 学校に囲い込まれ 社会や人との関わりを 断たれた
高校生たちは 学校という世界を 疑うことなく楽しんだ
でもそれは
大人の背中に かくれんぼを しているだけの世界 だった

自信なげに 
「もう~いいかい~」
不安げに 
「まあ~だだよ~」
怯(おび)えながら
「もう~いいかい~」
遠ざかりながら 闇間に消えてく
「まあ~だだよ~」

〔2019年8 月6日初稿。広島原爆投下の日、子らの希望に耳を傾ける日〕