三つのケア

1995年2月5日 建築家のH女史と 
常呂町(現在北見市~カーリングの日本のメッカ)で
まちづくりに関わる仕事を ご一緒した

台湾生まれの彼女は 雪の北海道は初めてだった
防寒衣に身を包み
娘さんのスノトレ(雪道でも滑らぬように工夫された冬用シューズ)を借用
さらに アイゼンのような仕様の滑り止めを 千歳空港で購入して 靴に装着してきた
その夜 常呂のまちの雪祭りを 案内した
歩行に多少の難儀を感じる 彼女をエスコートして
仲間と祭りを 楽しんだ

翌朝 ホテルで朝食を ともにした
そこで 初めての雪祭りは 
とてもファンタスティックだったと 嬉しそうに語る
そこに 3つのケアがあったと 教えてくれた

ひとつは 雪祭りを楽しむための 万全の準備をしたこと
ふたつは エスコートしてくれたので 安心して歩けたこと
みっつに 自分を指さし “わたし”といって にこっと笑った

わたしが 冬の北海道を楽しもうと思わない限り
外に出るための 準備や人は不用だと

ケアの基本は 自立 
その人の そうしたいという意思を 尊重すること
多少の不便さを ひとがケアすることで 
まちはもっと やさしくなれる

外に出たいというおもいを 叶えるための “ひと環境”を 
24年後の今 どれだけ整えてきたのだろうか
まちづくりの基本も ここにあったことを
いま 思い返していた

〔2019年8月22日書き下ろし。不便さもまた、やさしさを広げる要素となる〕