学費を稼ぐ

シフトは 夕方17時からだった
パチンコ店の閉店は23時半
帰宅はいつも 夜中の2時を回った
朝起きられなかった
2講目の終了間際に顔を出した
後輩たちは いぶかるようにして見ていた
昼休み 補講した

バイトで学費も生活費も稼いでいた
決して遊び呆けていたわけではない
無理がたたった
卒業は 単位不足で半年延びた
余計な学費の出費がかさんだ
もしも単位が取れなかったら
さらに 半年留年になる
自分でまいた種とはいえ 厳しい日が続く
授業の最終日 卒業できそうだと
安堵の顔を浮かべた

親に負担をかけまいと バイトに比重をかけて
本分を危うくする 苦学生
卒業までの苦労が 人生の糧になると
そう信じて働く 苦学生
卒業後の 人生設計に夢を馳せ
自らを鼓舞する 苦学生

コロナ禍で 
バイト先を失い 路頭に迷う
学費も生活費も 稼ぐ算段が閉ざされた
コロナ禍で
大学にも行けず 授業も受けられず
授業料だけが 徴収される
コロナ禍は
人生設計の変更を 余儀なくさせて
休学・退学のカードを ちらつかせる
大学教育の根幹が 揺らいできている

緊急事態に対処できず オロオロと
後手後手の 目に余る対策ばかりの無能な政府 
口当たりのいい事に いいように惑わされて
学生の向学心と向上心を ないがしろにする
学生のいまと未来を 封じ込める 
学生の政治への関心と不信を 呼び起こす
  
学生諸君
政治に目覚めよう
現実に起こっている苦難から 目を背けてはならない
貧富の格差で 大学を追われる仲間が出るような事態に
無関心であってはならない
政治家の怠惰を直視せよ
政権与党の傲慢さを追求せよ
野党の無力さに言及せよ

学生諸君
想像力をたくましくして
いま命を守る最前線で 命がけで奮闘する
多くの人たちへの 感謝の念を強めよう
あたたかく感謝のことばを添えよう
学ぶことも遊ぶこともできぬ子どもたちへ 
あたたかいまなざしを向けよう

学生諸君
いま学びは 社会の中に満ちている
〈生きること 死ぬこと〉の意味を問う学びが ここにある
感受性を研ぎすまし いまこそ学びの本質に触れよ

大学人よ
学生を いまこそ学びの本質へと導かれよ

〔2020年4月27日書き下ろし。国のその場しのぎの対策が学生を圧迫する。大学人も傍観してはならない事態では?〕

付記
「学費が稼げない 飲食店や塾、バイト先相次ぎ休業 国に支援求める動きも」
新型コロナウイルスの感染拡大で休業要請が広がる中、大学生の主なアルバイト先だった飲食店や学習塾の経営悪化や休業が相次ぎ、自力で学費などを賄う道内の大学生が追い詰められている。(中略)
道東出身で、実家はパソコンなどの機器修理を行う自営業。個人客との対面業務がほとんどなくなったことで業績は悪化しており、「仕送りで親に負担はかけられない」。大学をやめなければいけないのか…。最悪の想定も頭をよぎり、男性は「バイト頼りの学生にとって死活問題」と話す。
今年4月に長男が道外の大学に進学した空知管内の男性(50)は、経営する飲食店の3、4月の売り上げが、新型ウイルスの影響で半減。長男の学費や生活費は、進学用の貯金で賄っているが、「従業員の生活を考えると、このまま先が見通せなければ貯金に手をつけることになるかもしれない」。男性は「自分の最終学歴は高卒で苦しい思いもしてきた。息子は大学を出させてあげたい」と涙ぐむ。
大学生が自ら国に支援を求める動きも出てきている。石狩市出身で早稲田大政経学部3年の高橋ゆいさん(20)は13日から、《1》経済的に困窮している大学生の支援《2》帰省できずに自宅で孤独になっている学生の精神的ケア―を求めるインターネット上の署名活動(http://chng.it/g88TR4KpVK)を開始。10日間ほどで4500筆を超える署名が集まり、24日には文部科学省などに提出した。高橋さんは「全国の大学生は政治に関心を持って自ら声をあげてほしい」と呼び掛ける。
大学生のアルバイト事情に詳しい北海学園大の川村雅則教授(労働経済学)は「生活のためバイトに依存せざるを得ない学生は多く、休業補償もないまま勤務日数を減らされると、学ぶ機会が奪われかねない。生活支援金の給付や学費の延納・分納を進めるなど、大学や国が支援する仕組みが必要だ」と話す。(北海道新聞 2020年4月27日)