20キロの石が 氷上を曲がりながら滑る
曲がる(curl)ことから カーリングと命名された
円上のハウスと呼ぶ盤上での 陣取り合戦
円の中心から より寄り近いところに
石を置いた方が ポイントを得る
敵の石と味方の石の位置関係で 勝負は決まる
ハウスに敵の石が5個入ろうが
味方の石が敵の石よりも中心により近ければ勝つ
シンプルなカウントの仕方だが 複雑な戦略や戦術がうごめく
1エンド敵味方四人ずつ交互に2投して 計16投の攻防戦だ
点数を取ると次のエンドは先攻になり 最後に石を投げる後攻が有利になる
先攻後攻を戦略的に替えながら 10エンドまで戦い決着をつける
今週 北の最果て稚内(わっかない)市で
「カーリング日本選手権2021」が開催されている
今夜 男子の決勝トーナメントをテレビ観戦した
ナイスプレーに一喜一憂しながら 心から拍手を贈った
なにせ対戦が 予選1位の高校生チーム「常呂ジュニア」と
全日本選手権2連覇中の「北海道コンサドーレ札幌」
10エンドで決着がつかず延長戦に入る
最後はベテランに押し切られてしまったが
まだ次の戦いが残されている
ワンサイドゲームにはならない布石が 午前中にあった
予選で 高校生がベテランチームに勝っていたのだ
それだけに 最後まで予断を許さぬ戦いだった
善戦した実力は フロックでは決してなかった
石を滑らせるときに 軸足を蹴る力加減でスピードを調整する
投げ方は 石を時計回りにするか反時計回りにするかで
回転の仕方が変わり 目標の位置によってコースを変える
目標のところまで石を誘導するには
ブラシを使って氷上をこすり 氷を溶かすスイーピングで
ハイドロプレーニング現象を起こす
これで5メートル近くも距離を伸ばすことができるのだ
思い描いたように 石が曲がりながらターゲットに向かってくる
相手の石の進路を邪魔するために ガードの石を置いたり
ガードの裏に回り込んで ハウスに入れてきたり
敵の石のそばに 置いてみたり
相手の石を 豪快にハウスからたたき出したり
置かれた石をギリギリにかわして 有利なところに石を動かす
一投毎に めまぐるしく局面が変化する
その都度 素早く戦術を決めて対処する
ミスショットが出ると すかさず突いてくるしたたかさ
ラッキーショットで逆転して 想定外の展開に身を乗り出す
アイスコンディションも 時間の経過と共に変化する
ストップウォッチを片手に 石のスピードを測りながら瞬時に判断する
氷を読み切る力が勝敗を分けるだけに 科学的に分析もするのだ
久しぶりに「ガラス越しのスキップ」をエンジョイした
ゲームの進行に合わせて 攻防の局面が変わるたびに
どんな戦略を持って 次はどこに投げるかという戦術を
言い当てるのが 観ていて面白いのがカーリングだ
その戦略や戦術を短時間に読み取り
まるで作戦を指示する者(スキップ)のように振る舞うことから
「ガラス越しのスキップ」と言われる
経験やセオリーだけでは読み切れない
ゲームの醍醐味が カーリングの魅力だ
それにもまして 若い高校生が堂々と日本選手権をかけて戦う姿は
他のスポーツとは全く違う「対等に大胆に挑む」素晴らしさを見せつけた
2時間テレビ観戦しながら ただただ感動と感謝しかなかった
※カーリング(curling):ストーンと呼ばれる円盤状の重さ20㎏の石を氷の上に滑らせるように投げ、約40メートル先のハウスと呼ばれる円の中心に近づけて得点を争う競技。進路をブラシで掃き、スピードや方向を調節する。四人一組の二チームで対戦。スコットランドで始まる。
※ハイドロプレーニング現象: 雨に濡れた道路や水たまりなどをクルマで走行するときに、タイヤと路面の間に水が入り込んでクルマが水の上を滑り、ハンドルやブレーキが利かなくなる現象。
〔2021年2月12日書き下ろし。35年前札幌真駒内アイスアリーナでの日本選手権を思い出しながら、その後のルールの大きな改正と戦略戦術の変革についていけないにもかかわらず、こうして2時間も高校生の戦いに夢中になれただけでも有難かった〕