社会的不条理が跋扈

福祉教育と教育福祉の研究者のひとりに村上尚三郎先生がいる。先生は、筆者(阪野)にとっては、長きにわたってご懇篤なるご指導と格別のご高配を賜っている恩師のひとりである。
村上先生は現在、大阪の某短期大学の学長を務められているが、その大学のホームページにアップされている「学長メッセージ」は実にシンプルである。それゆえにアピール性が強い。「現在、社会的不条理が跋扈。人間関係における不調和がもたらすいじめ問題が、その最たるものである。」というのがそれである。「真実」はいつもシンプルであり、人によって作られるのであろうか。
「跋扈」(ばっこ)とは、強くわがままに振る舞うことを意味する。また、「いじめ」は、なにも子どもの世界だけの問題ではない。大人の世界におけるそれは、時と場合によっては組織的であり、卑劣極まりないものがある。
市民福祉教育は、社会福祉問題を解決するための実践や運動に主体的・能動的・自律的に取り組む住民主体形成を図るための教育活動である。市民福祉教育の実践や研究にかかわる者にまず求められるのは、一人ひとりの住民の、日々の暮らしにおける“悩み”や“苦しみ”、“怒り”や“悲しみ”、ときには“憎しみ”などの想いを、「社会福祉問題」のなかに広く、深く読み解くことである。また、福祉や教育に携わる者として忘れてはならないものに、「正義」と「倫理」がある。ある意味では、正義とは他者に対して公正で道徳的であることをいう。倫理とは他者に対して真摯で裏切らないことをいう。強く、深く留意したい。