阪野 貢 のすべての投稿

嘘つき

女は 可愛いらしく嘘をつく
男は コロリとだまされたフリをする
女は ニコリと笑顔を返す
男は ニヤッとかしずくフリをする

男の嘘は 見苦しい
男の嘘には 笑えない
男の嘘ほど 始末に悪い

男は 嘘つきだった
男が 嘘を嘘と言ったら…
真実に なるのだろうか
男が 嘘を嘘の嘘と言ったら…
真実に 近づけるのだろうか

遠い昔 カルカッタと呼ばれた地に
マザーテレサに 逢いに出かけた
バスの車窓から垣間見た
ヒンズー教徒が群がる聖なる巡礼地 
ガンジス河のほとり

異教徒である男が 
嘘で固めた 言葉の屍(しかばね)を
ガンジスの河原で 荼毘(だび)に伏し
その灰を流したら 
言霊(ことだま)は 転生するのだろうか

〔2020年5月16日書き下ろし。男たちの嘘が世界を覆う。悪夢の終わりはあるのか〕

捨てると捨てられる

捨てる
捨てるだけのものは 持ち合わせてはいない
捨てきれないでいるものは 少なからず持っている

捨てる
捨てるしかないものを 未練たらしく持ち続ける
捨てるところがないものは 仕方なく捨てたフリをする

捨てる
捨てなければならないものは さっさと捨てて身を軽くしたい
捨てても悔いのないものは その価値(あたい)はすでに切れている
捨ててこそ あたい(私)は生き延びる

なになに 捨てたのは「壱千万の民(私たち)の声〕だって
あたい(私)の価値(あたい)を 見せつけた
この思いっきり すごいね えらいね さすがだね

ちょっと 待って!
捨てるのは 思ったほど簡単じゃない
あたいが捨てたつもりでも 
ほんとは 捨てられているってことになってない

お役御免って 周りが言えば
捨てられるって 惨めなことかもしれない
お役御免って 先に言えば 
潔(いさぎよ)しと カッコつくかもしれない

でも ほんとはもう捨てらちまったって
よく聞く 巷(ちまた)の話だよ

〔2020年5月16日書き下ろし。身の引き方の潔さって、政治家にあったっけ?〕

お疲れさん

やればやるほど 空回り
やる事なす事 後手後手で
やる事なす事 不評を買った

やればやるほど 疲れが丸見え
語れば語るほど やる気は失せた
語れば語るほど 支持率落ちた

動けば動くほどに 本気は萎んだ
もがけばもがくほどに 根気も消えた
あせればあせるほどに 仲間が減った

出せば出すほどに 軽く見られた
支援のお金で 立て直し
支援のお金の 出し惜しみ
支援のお金は いまは手切れ金と相成った

休んでもいいですよ
潮時です
次の人に託しても 誰も困りません
あなたがそこにいるので みんな困っています

もう休んでいいですよ
潮時です
あなたなりに 頑張りました
かなり白髪(しらが)が 増えてきましたね

責任? 十分果たしました
これ以上 何も求めません
これ以上 無理をしないでください
これ以上 無駄なことはしないでください
これ以上は 期待してません

あなたが頑張ってきたことは 忘れません
精一杯 仲間のために尽くしました
オリンピックまでは 持ちこたえられないって
みんなわかっています
改憲も キッパリとあきらめてください
これも人生と 割り切るしかないでしょう
これからは 音楽と読書で 喜楽にしてください

ほんとに ご苦労さんでした
心から お疲れさんでした

〔2020年5月15日書き下ろし。昨夜の記者会見を見て、やさしく諭してあげたい。周りは退場のタイミングを計るしかないかと〕

無上なるもの

悄然(しょうぜん)と 立ち尽くす
視界が遮(さえぎ)られ 
鬱蒼(うっそう)とした静寂な森に入るように 
光明の見えぬ不安と恐怖心で 足がすくむ
それでもなお 半歩進まねばならぬ

世界を覆った 残忍な新型コロナウイルス
自然の脅威に 晒され振り回される
誰かまわず無差別に 音なき殺戮を繰り返す 
このまま立ちすくんでいれば 多くの死者を見送る
躊躇(ためら)い 苦悩(なや)みながらも
もどかしさを振り切って
半歩前に踏み出し 闘いに挑む

その勇気は
信頼という名の無比なるもの
その決断は
確信という名の無二なるもの
その行動は
信託という名の無我なるもの

そこで為される施政こそ
共存共生という名の無上なるもの

〔2020年5月14日書き下ろし。いま指導者に求めたい。前に進むための指導力がほしい〕

憤怒とことば

憤りを口にする
露わな憤怒(いかり)の感情は 
自制の効かぬ己を 貶(おとし)める
憤りを口にする
勢いで発せられたことばで 
暴力的な汚辱(おじょく)に 己が塗(まみ)れる 

憤りを書きとめる
憤怒は ことばに置きかえられ 
生じた理由(わけ)の 感情の整理が始まる
憤りを書きとめる
辛辣(しんらつ)なことばが 次々と吐き出され
憤怒が さらなる勢いを取り戻す

己の世の中への小さき憤り
非力ではあるが 無力ではない
己の小さき存在
ひとりではあるが 決してひとりではない
己から発せられ記(しる)されたことば
腐るかもしれないが 腐らしてはならない

憤怒を 批判力にかえて
人と世のあり方を問い続ける
ひとりではあるが 決してひとりにはならない

〔2020年5月13日書き下ろし。世相への憤(いきどお)りに憤怒(ふんど)のことばを綴り続けることしかできない〕

コロナ禍後の分断

生き残りし者たちは
生き残るに足る環境のなかでいた

生き残りし者たちは
ダメージも小さくストレスだけが大きかった

生き残りし者たちは
社会は以前には戻らないことを知っていた

生き残りし者たちは
すぐに暮らしを取り戻す体力を温存していた

ようやく生き残りし者たちは
いのちあることが唯一だった

ようやく生き残りし者たちは
仕事を失い暮らしの基盤を失った

ようやく生き残りし者たちは
カツカツの暮らしを余儀なくされた

ようやく生き残りし者たちは
高いつけを生涯負わされていくことを知った

生き残りし者たちと
ようやく生き残りし者たちとの
心の深い分断があからさまになった
支配する者と
支配される者との
貧富の確かな分断があからさまになった

コロナ禍後 世界は
新たな権力闘争の絵を描き始めた
新たな支配地図を描き始めた

コロナ禍後 世界は
支配する者たちの欲望が むきだしにされていた
支配される者たちの絶望で 打ちのめされていた 

〔2020年5月12日書き下ろし。コロナ禍後の世界をネガティブに想像することは、そうならないための叡智を求めていくことになる〕

雪隠詰め

男は 美食家だった
口に合うものしか 寄せ付けなかった
一度腹を壊してからというもの
毒味役を置いて 最善の守りを固めた
これは食べさせられぬ 
それは食べてはならぬ
彼らは忠実に 役目を果す
だから 快適な暮らしを 7年もの間続けられた

そんな者たちが いつか三密(密室・密集・密接)化した
雪隠の如く 汚臭が充満してきた
その場にいる者たちは その匂いにマヒして
時には ジャスミン香にも似て 酔った
雪隠で饅頭を食べる者も 後を絶たなかった
金と出世の勘定を 心置きなくできた
この世のものとは思えぬ 至福の味を知ったのだった 
雪隠虫も所贔屓(ところびいき)
男たちには 最上の居場所となった
この汚臭は 所構わず7年かけて 全国に拡散した 
誰もが 空気のように当たり前に吸っていた

コロナ禍が 突然巨大化し襲ってきた
軽く見て油断してたら 
相当ヤバイ事態に直面し 心底慌てた 
嘯(うそぶ)いてきた政(まつりごと)を 
だます甘露を降らせる手立てはないものかと
男たちは 雪隠で考えた
臭いものには 蓋をするのが一番
金のばらまきが得策だと 男たちはニタリとした
民の口に戸は立てられぬと 誰かが言った
口封じのマスクを スピード感をもって配ることにした

コロナは 終息の気配すらなく 
やること全て後手後手で
嫌気と不安と恐怖を 感じて生き暮らす
三密を避け 手洗いマスクの励行は 
普段から衛生管理の意識が高いゆえに 習慣化された
マスクを外して 腐敗臭に 鼻をつまんだ
マスクでは防ぎきれない この悪臭の元を突き止めた
コロナ禍で苦しんでいる最中に
男たちが仕掛けた 御身安泰を約束させる 腐った法案だった
「#検察庁法改正案に抗議します」に680万件 声をあげた
公務員の定年延長と 抱き合わせたこの法案
森迷走法相を外してまでも 
予算委員会を 強引に乗り切るしかなかった
優先順位が コロナ対策より先とは信じがたい
国会で論議すべき貴重な時間が割かれることへの
正しい憤怒なのだ
 
男たちは 雪隠の火事(やけくそ)で
反対の声を 無視することに決めた
雪隠詰めに陥り 逃げ場はなかった
雪隠で饅頭を食べた者たちは
ただ従うほかなく 性根も腐って悪臭を放った

目詰まりではなく 糞詰まりの状態を自ら招いた
だからいま便秘薬が 男たちの常備薬となっていた

※甘露(かんろ):中国で,仁政が敷かれ,天下が太平になると,天が瑞祥 (ずいしょう)として降らせるという甘い露。

〔2020年5月12日書き下ろし。臭いものに蓋をする政治の世界が見事に出現している。検察庁法改正はその象徴である〕

からっぽの教室

卒業式も終業式も なかった
新学期を迎えても
迎える子どもたちの姿は なかった
新1年生の教室の 入学祝の飾りも そのままだった

整然と机が並べられ ただそこにあるだけだった
黒板も汚されることもなく きれいなままだった
からっぽの教室の空気は 乾ききっていた
静まりかえった教室は 刻を止めていた

子どもらの喧騒が 懐かしかった
子どもらの笑顔は いまはなかった
子どもらの甲高い声も 聞こえてはこなかった
子どもらの学ぶ姿も 戯れる姿も そこにはなかった 

子どものぬくもりのない からっぽの教室
子どもの明日を閉ざしたままの からっぽの教室
こどもの不安を閉じ込めたような からっぽの教室

教室から 13億人の子どもが消えた 
世界中に広がった 新型コロナウイルスは
持てる者と持たざる者の
持てる国と持たざる国の
教育の格差を さらに広げた

13億人の子どもの 貧富の格差が
子どもの未来を 小さくしてゆく
からっぽの教室のまま 
取り戻せぬ時間が 冷たく過ぎてゆく   

〔2020年5月11日書き下ろし。ユネスコの発表では177カ国・地域で全世界の72%、約13億人の子どもたちが就学の機会を奪われている。経済的格差の及ぼす影響は日本だけではない。一日も早く学校に子どもたちの歓声が戻ってくることを〕

母の日の朝

日曜の朝一番
ゆうパックで 母の日のプレゼントが届いた
この日郵便局の配達員は 日曜返上で 
今日中に配達を済ませばならぬと 職務に専念奔走する
玄関口で交わされる ご苦労さまと お気を付けて
この言葉がけしか いまの感謝のおもいは伝えられない

物流が滞っていた
札幌から京都に郵便で出したDVDは 1週間もかかった
ネット通販の荷物量が増加し 宅配が急増した
ドライバー不足と 宅配需要の急増で 
配達遅延と サービスの一部停止が 生じていた
日本郵便は 布マスクの配送が業務を過重にし 余剰の人員もおらず
現場は きっと逼迫(ひっぱく)してることだろう
2枚のマスクを配布しますといいながら 
1ヶ月経っても いまだ4%の配布率
郵便局の怠慢では 決してない
政府は アベノマスク配布に固執して 
方針変えぬ意固地さは 凋落の兆しそのもの
費用対効果も疑わしい いまさら配られても
さしてありがたみのないものを
仕事とはいえ 配布する人の心も折れよう
マスクより重要な〈もの〉の物流を 
止めぬようにせねばならぬ
だから 声だかに
STOP! アベノマスク

COOPは 救世主
1週間に1度の配達は 高齢者にはありがたい
重たいものもかさばるものも 玄関口まで届けてくれる
3月からの2ヶ月間 注文量も増えたであろう
ドライバーの体力的な負担は 比例する
宅配便も 同様に厳しい業務に堪えて奮闘中
送り主のおもいを届ける その誠意に
仕事とは割り切れない頑張りに
ただただ 頭が下がる

物流の現場を脅かす 新型コロナに晒(さら)されながら
物流を遅延なくするために 頑張る人たちが
24時間 物流システムを稼働させる
感染者が発生すれば 勤務していた事業所は一時閉鎖
川崎市の登戸郵便局では 2度にわたって業務停止に陥った
郵便物が22万通 ゆうパックが1万個 配達できずに滞留した
管轄の国交省は 感染予防策には手を触れず
生活必需品や食料品の 物流維持を唱えるだけで
具体的な方策は 企業任せの傍観行政
物流が崩壊すれば 医療崩壊以上に
直(ちょく)に暮らしは 甚大なダメージを被る
予備対策を講じることも 事態を想像することさえも面倒なのか
非常事態宣言下 国交省のサボタージュは目に余る

いま重要なのは 深刻な事態に陥らぬようにするための
暮らしの根幹に直結する 一歩先行く政策ではないか
民の暮らしとの生活感覚のズレが
さらなる国難への 道を開く

母の慈愛を 思い浮かべながら
コロナ禍で 暮らしを支える方々への
感謝の念を強くした 母の日 
顔を合わせることが できぬいま
宅配人(たくはいびと)は 
大事な母子のおもいをつなぐ

〔2020年5月10日書き下ろし。母の日の朝、妻への娘からのプレゼント。休まず頑張る人たちに感謝〕