阪野 貢 のすべての投稿

民意17年の重み

社協の認知度は低かった
何をしているのか知らなかった
市民と福祉をつなぐ道は険しかった

社協は市福祉部局の出先機関と思われていた
市に人件費も人事権も握られていた
社会福祉法人として苦渋の年月を重ねていた

2005年一大改革に打って出た
市民と協働して策定する地域福祉実践計画
道内では事例はなかった
道外も五万人規模の事例は皆無だった
市民主導の計画づくりそのものが挑戦となった

50余名の委員が各校区から選出された
会議は定刻に始まり2時間で終わる
時間厳守で集中審議を促した
市民参画の揺るぎない態度形成をもたらした

市民アンケート調査は連合町内会の支援を得て実施した
全世帯に配布し回収率6割弱は前代未聞の快挙であった
社協の存在と社会福祉をアピールする手法でもあった
地域座談会も全地区で開催して民意を聴き集めた
手探りの拙い計画づくりではあったが
市民と協働するスタート地点となった

あれから17年の歳月が流れた
コロナ禍で第4期の策定委員会が開けず
第3期計画を1年延ばさざるを得なかった
去年の6月からようやく委員会が動き出した

この17年で求めたものは何か
何を得ようとしたのか
何を得たのか
何が得られなかったのか

この17年で変わったのは何か
何が変わったのか
何を変えようとしたのか
なぜ変わったのか

この17年で変わらなかったのは何か
何が変わらなかったのか
何を変えようとしなかったのか
なぜ変わらなかったのか

その解を第4期計画に求めてきた
これからの5年は予断を許さぬ時代が始まる
変わるべきものを変える
変わらなければならぬものを変える
変えてはならないものを確かめる
いま新たな「きずな計画」が立ち上がる

変えてはならぬことだけは明らかだった
市民一人ひとりの暮らし方を問う「きずな計画」
市民と福祉をつなぐ「きずな計画」
市民が福祉を実践する「きずな計画」

変えた事実も明らかだった
17年の実績は市民も社協もその福祉力を逞しく育てた
社協は市民の民意をきずなに束ねる福祉でまちづくり
社協を市民が民意で支えて築く福祉でまちづくり
社協が市民と民意で創る明日に福祉でまちづくり

わたしがこのマチ登別で
幸せに暮らし続ける理由を添えて
市民の信頼と希望を注いだきずな計画は
新たな役割と展望を持って
市民が躍動する計画となる

〔2022年1月3日書き下ろし。登別市民の願いと希望を第4期きずな計画に託す〕

学生諸君へ生きるを問う

感動ポルノに仕立て上げられた人たちは
非難されないためにも
求められる姿を演じ続けなければならない
欲と金に塗れたIOCの為に

この世界は健常者と障がい者の二種類しかいない
真実か?
健常者の定義は?
そもそもなぜ分けるのか?

匿名であることでしか存在しないゴースト
虚構の世界にすがるしかない哀れなゴースト
嫉妬だけが生きる理由

痛みを分かち合う想像力を鍛えよ
人と人とがつながる確かな力に変えよう
子どもが大人を信じられる世界に変えよう

社会の常識を疑うことで差別と対峙できる
社会の公正を疑うことで偏見と対峙できる
そこから自分が何ものなのかを知る

空気を読むことにしゃかりきになる徒労感
空気に従うことに無抵抗になる隷属感
空気に逆らうことをあきらめた無力感
ならば問う
空気を拒否する意思はあるか

遠慮圧力及び同調圧力
仲間はずれになることへの恐怖
逃げ出せない苛立ちへの自己説得
囚われ者としての集団への固執
集団からの離脱は
抗いから始まり自由への渇望となる

没個性を悩むならば
自己を見つめる可能性は無ではない
重要なのは他人事の評論ではなく
自己の失敗を認めて自らの言葉で語ることだ

軌跡の時空間を共有し共生する
〈わたし〉という唯一無二の存在
世界との関わりの中でその存在を輝かそう

自分らしさとは何か
自分の考えや表現に責任を持つこと
そこに自分の〈生きる〉を常に問う

〔2022年1月2日書き下ろし。授業ノートに書き記した学生へのコメント。授業の核心が少しカタチになる〕

若き君を謳う

君が謳う詩を贈ろう
優しさが満ちる世界を
夢見て挑む君への詩を贈ろう

君に託す詩がある
どんなにか苦痛に満ちた世界でも
心が躍動(おど)る詩がある

君に聴かせたい詩がある
どんなにか不遜に満ちた世界でも
勇気を振り絞り立ち上がる詩がある

君が歌う詩がある
どんなにか不信に満ちた世界でも
明日を逞しく生きる詩がある

君と歌える詩がある
どんなにか名のなき人が満ちた世界でも
手を離さず苦難に踏み出す詩がある

君が心動く詩がある
どんなにか地球をいたぶる世界でも
いのちを包み込む人たちの詩がある

君が君でいるための詩がある
どんなにかいのちの奇跡を信じる世界こそ
いまを生きる喜びの詩がある

君があなたと幸せになる詩がある
どんなにか出会いの不思議を紡ぐ世界こそ
ふたりで人生を豊かに彩る詩となる

〔2022年1月1日書き下ろし。新年に若者たちに伝えたい。君自身の心の詩を歌う人となれと〕

市民福祉教育研究所/2021年のブログ/年間レポート

市民福祉教育研究所/2021年のブログ/年間レポート 

統計情報
◎全期間(2012年6月25日~2021年12月31日。以下同)における記事の表示数は251,924回、訪問者は121,342人を数えました。

〇2021年における記事の表示数は39,292回、訪問者は18,777人を数えました。

◎全期間における記事の投稿数は1,345本を数えました。

〇2021年におけるは記事の投稿数は511本(論文・研究ノート・レポート等は444本)を数えました。論文・研究ノート・レポート等(411本)の内訳は次の通りです。
「まちづくりと市民福祉教育」16本、「ディスカッションルーム」1本、「雑感」18本、「鳥居一頼の世語り」371本、「大橋謙策の福祉教育論」21本、「原田正樹の福祉教育論」14本、「論文/研究ノート/レポート」1本、「ブックレット」2本。

注目記事
◎全期間において最もよく読まれた記事は次の通りです。末尾の数字は表示数です。
(1)ホームページ/アーカイブ/2012年6月28日/38,580回
(2)市民福祉教育の実践と研究/2012年6月28日/30,099回
(3)福祉教育におけるアウトリーチ活動―福祉の(による)まちづくりの住民主体形成を推進するために―/2012年11月29日/8,589回
(4)問題解決学習と“はいまわる経験主義”―資料紹介―/2014年4月11日/7,701回(5)田村禎章/鳥居一頼(旧・阪野貢)/7,077回
(6)地域福祉推進の基本的視点―福祉教育実践の内容と方法を考えるために―/2013年6月22日/5,482回
(7)ソーシャル・キャピタルと市民福祉教育/2012年8月21日/5,262回
(8)二項対立の思考:「分かりやすさ」の罠―仲正昌樹を再読する―/2017年12月25日/4,732回
(9)大橋謙策「地域福祉実践の神髄―福祉教育・ニーズ対応型福祉サービスの開発・コミュニティソーシャルワーク―」/2018年4月4日/4,588回
(10)「滅私奉公」と「活私開公」―資料紹介―/2014年12月12日/4,055回

〇2021年において最もよく読まれた記事は次の通りです。末尾の数字は表示数です。
(1)ホームページ/アーカイブ/2012年6月28日/5,532回
(2)市民福祉教育の実践と研究/2012年6月28日/3,831回
(3)鳥居一頼の世語り:アーカイブ(3)/2020年7月13日/1,375回
(4)「ボランティア拒否宣言」(1986年)再考:ボランティア活動は主体的・自律的で相互実現を図る活動である―資料紹介―/2018年10月6日/1,297回
(5)二項対立の思考:「分かりやすさ」の罠―仲正昌樹を再読する―/2017年12月25日/1,290回
(6)大橋謙策「地域福祉実践の神髄―福祉教育・ニーズ対応型福祉サービスの開発・コミュニティソーシャルワーク―」/2018年4月4日/1,175回
(7)「滅私奉公」と「活私開公」―資料紹介―/2014年12月12日/769回
(8)「共生」と「共に生きる」:寺田貴美代「社会福祉と共生」再考―資料紹介―/2016年3月22日/738回
(9)中庸 第23章/2020年4月9日/630回
(10)追記/宇沢弘文と竹中平蔵という二人の経済学者:「定常状態」に関するワンポイントメモ―佐々木実を読む―/2020年3月11日/598回

読者の所在地
◎全期間における読者の所在地は66ヶ国です。( )内は表示数です。
人気の国は、日本(236,262回)のほか、アメリカ合衆国(13,205回)、大韓民国(1,207回)、中華人民共和国香港特別行政区(244回)、台湾(131回)、ドイツ(89回)、カナダ(82回)、イギリス(69回)、アイルランド(51回)、中国(40回)、等です。

〇2021年における読者の所在地は26ヶ国です。( )内は表示数です。
人気の国は、日本(37,402回)のほか、アメリカ合衆国(1,686回)、大韓民国(88回)、カナダ(24回)、台湾(14回)、イギリス(13回)、中華人民共和国香港特別行政区(10回)、オランダ(6回)、中国(6回)、アイルランド(6回)、等です。

備考
● このウェブサイトは、2021年1月1日より、市民福祉教育研究所の顧問・阪野貢(まちづくり、市民福祉教育)、主宰者・田村禎章(福祉教育、地域福祉)、鳥居一頼(地域福祉、学校教育)、共宰者・三ツ石行宏(福祉教育史、地域福祉)、宮脇文恵(福祉教育、教育福祉)、坂本大輔(地域福祉、福祉教育)、協力者・村上進(翻訳・教育支援)によって運営・管理されています。
● 市民福祉教育研究所では、2021年8月25日にロゴ、同年11月27日にキャッチフレーズをそれぞれ表示しました。
● 2012年から2021年の10年間の表示数等の推移は次の通りです。

へこたれず前に

これだけ暮らしが厳しい最中第6波が押し寄せる
とてつもなく不穏な流れが世界を覆う
辛抱強く耐え忍んで1年を終えようとするいま
のっぴきならない事態に立ち向かうしかない
総力挙げて地球の悲鳴を受けとめざるをえない

薄っぺらな政治家集団は血税をドブに捨てる
重ね重ねの失政で困窮者をいたぶり排斥する
貫く政治理念もなく国防意識をむやみに振りかざす
平和を求める沖縄の声は米兵も国も無体に葬る
東京五輪のぶざまな後始末も後の祭りとほっかぶりする

公文書改ざんを命令され自死した赤木俊夫氏の民事裁判
国家は賠償裁判で曝かれることを恐れて事実を葬る
認諾という姑息な手段で罪なき人を三度殺す
連綿と同じ過ちを繰り返して政界ゾンビを養う

ズレた政治感覚は元に戻らず明日の危機をもたらす
間がさしても官僚たちは詭弁を弄して生き残る
壊れた政治倫理は正しい判断を拒み続け
揺れ動く軸足は支持する民を失い続け
政治不信を確実に次代に引き継ぐ

新しい年
避けられない嵐を前に
逃げ場のない嵐を前に
民よ それでも前に進もう

新しい年
苦難の先に科学の力がある
そこに希望の一筋を見出したい
民よ へこたれず前に進もう

〔2021年12月30日書き下ろし。2021年も色々ありすぎた。せめて来年は一つでも不安が解消するように祈りたい〕

人はみなただ者にあらず

ただの人を語る者ほどただ者にあらず
世情をネタにして機知に富む
相手に合わせて言葉を操る

ただの人を生きる者ほどただ者にあらず
風流とは縁遠く思わせぶりを愉しむ
文学とは無縁とさりげなく書を置く

ただの人らしい者ほどただ者にあらず
同化すること同調することにたける
目立たず特徴なく世間に佇む

注目されることもない
期待されることもない
他人のおもいは素通りするだけ

他人に煩わされず暮らすのがいい
世間に恩義を感じず暮らすのがいい
金に困らない暮らしならもっといい

ただの人ならきっと気が楽そうだ
ただ者にあらず
人の役に立たないわけがない

ただの人らしく見せるのもいい
でもただ者にあらず
世間に関わるしか居場所はない

ただの人になりたくとも
決してただ者にあらず
己が許さない
世間に許されない

人はみな世間に生きる
人はみなただ者にあらず

〔2021年12月30日書き下ろし。世間でのその人の存在価値は、その心持ちに現れる〕

コンパスの会集まる

ハンセン病問題と教育を考える市民の会コンパス
仲間3人の小さな会だ
2年ぶりに29日午後から集まった

2013年10月ハンセン病問題を授業化するテキスト
「おまえ、もう学校に来るな!」を編纂する
関わった3人が新たに立ち上げた会だった

テキストは全道の小中高・大学等や全国の療養所 
都府県ハンセン病問題担当課へ
総数1万2千部がばらまかれた

テキストを使った授業の啓発のため
道の事業として道内4カ所を回った
年明けの札幌では道庁赤煉瓦会場で
「人権とハンセン病問題を考える教育セミナー」を開催した
教員を中心に全道各地から100余名が集まった

中学校教諭の手嶋和之さんが模擬授業を展開する
「まだ死ぬわけにはいかない」と題して
ハンセン病全寮協神美知宏会長が講演する
神会長を交え手嶋さん
ハンセン病問題に取り組んできた札幌弁護士会人権委員会の秀島ゆかりさん
75歳でハンセン病問題を市民活動に育てたはまなすの里代表の平中忠信さん
「学校でいかに人権とハンセン病問題を教えるか?」
パネルディスカッションは参加者を巻き込みヒートアップしていく
全国でも稀なハンセン病問題と教育のあり方を考える場となった

神会長がまとめた二つのこと
「ひとつは、ハンセン病問題は我が国最大の人権問題であり、療養所は人権侵害の現場である。誤った隔離政策を続けてきた国が、現在行っている療養所の職員の定数削減といった効率優先の合理化政策によって、十分なケアを受けることができなくなった被害者の尊厳をこれ以上ないがしろにすることは、あってはならない。
もうひとつは、国にとってハンセン病問題は、数ある福祉政策の一つではない。国は隔離政策の過ちを認めた加害者であることを忘れてはならない。
私たち当事者だけの運動では、未解決の深刻な課題を解決することは不可能であることを60年余の運動で痛感しています。市民の皆様が、本問題に対して無関心である限り、国の厚い壁を打破することはできないことを思い知らされています。
国の政策、社会の風潮を改めるためには、市民のみな様のご理解とご支援が必要です。
今日の意義あるセミナーが、そのきっかけになってくれることを願ってやみません」
最後に1985年5月8日独大統領ヴァイツゼッカーの演説を引用した
「過去に目を閉ざす者は、現在(未来)に対しても盲目となる」
公の場での彼の最期の言葉となった
14年5月9日道半ばで享年80歳の生涯を閉じた

コーディネーターはセミナーをこう閉めた
「2年前に多磨全生園で神さんともお会いし、テキストの表紙の絵と詩を書かれた鈴村洋子さん(道内出身)にもお会いしました。その方々からとても大事なことを学びました。憤りを感じながらこの60年、運動に身を挺してきたというお話をされておりましたが、その根っ子にあるものについて、先日亡くなったネルソンマンデラの言葉をお借りします。
『あらゆる人間の心の奥底には、慈悲と寛容がある。肌の色や信仰の違う他人を憎むように生まれついた人間などいない。人は憎むことを学ぶのだ。憎むことを学べるのなら、愛することも学べるだろう。愛は憎しみよりももっと自然に人のこころに根付くはずだ』
人のこころに根付いた愛の広さと深さを、ハンセン病回復者の方々から感じることができました」

3人は今を語った
ハンセン病回復者への差別問題は家族訴訟というカタチで提起された
訴訟に声を上げられない多くの人がいることは事の深刻さを物語る
コロナ禍における感染者への憎悪が人権侵害と指摘されてもおさまらない
日本では人権問題が政治の場で語られるおぞましさと白々しさを感じる
ハンセン病回復者の道内出身の方は20名を切って風化の速度をあげる
学校の現場に外部から入っていけぬ壁は年々厚くなっていく

学校教育は人権を教えられるか?
学校は押しつけられた政策課題で苦しめられ悲鳴を上げる
学力テストの点数主義に追い立てられ指導時間の確保に注力する
登校拒否の数の調整をしつつ教える喜びのないまま仕事をこなす
いじめとも指導死とも向き合えぬまま教師は人権問題を回避する
状況は8年前より後退している状況は否めなかった

手嶋さんはテキストにこう記した
「子どもたちが夢や希望を持って将来像を描けるようにしていくためには、差別の構造を知り克服しなければならない。教師をはじめ大人たちは、子どもに人権侵害の歴史や事実があればしっかりとその正確な知識・事実を教え、伝えて、共有していかなければならない。子どもたちには、ハンセン病の学習を通して、自分たちが今持っている人権が奪われて人間としての尊厳を踏みにじられた人がいる現実に気づき、なぜ人権侵害が起きてしまったのか、その上で人権を護るためには何をしなければならないのかを学んでほしい。そして、さまざまな人々が共存・共生できる社会の創造のために、積極的な行動をとることのできる人間に成長することを期待していきたい」

平中忠信さんがテキストの巻頭言に記した言葉を噛みしめた
「私たちは教育に対して非力ではあるが無力ではない」
彼もまた2018年5月22日享年91歳で鬼籍に入った

〔2021年12月29日書き下ろし。ハンセン病問題に引き込んだ平中先生を想い出しながら、手嶋先生、元道共募事務局長木村昌次さんとの『これから』についての話題は尽きなかった〕

外出と歩数

歩くということは
こうも疲れるものなのだろうか

用向きで久しぶりに街中に出た
重い荷物をバックに背負った
肩にかかった重さは腰にも感じる

滑りやすくなった横断歩道は
転ばぬよう用心深く渡ると赤に変わる
マスク越しの呼吸は息苦しい
すぐに眼鏡は曇り視界不良となる
しまいに眼鏡を手に持ち歩くしかない

用向きは終わり家路につく
混み合った地下鉄に乗った
シルバーシートが空いていてよかった

暗くなった家路を急ぐ
向こうから人が来るまでマスクを外す
来たら素早くマスクして過ぎれば外す
眼鏡が曇らぬことと呼吸を楽にする対策だ

帰宅してスマホの歩数記録を見た
9000歩
これだけでこの疲労感はなんだろう

歩き疲れた身体は
休息だけを求める
歩き疲れてしまうと
ひたすら無気力となる
歩き疲れてしまったら
言葉すら浮かばない

妻からの心配の声をよそに
食後すぐに布団に入った
初めてのことだった
老いは確実に身体を支配してゆく

〔2021年12月28日書き下ろし。また一つ老いるを如実に体験する〕

七つの感情

この1年どんな感情を持って
自分と向き合ってきたのだろうか

喜び
緊急事態宣言が解除され仕事が再開した
部屋に閉じ籠められた閉塞感は
一気に開放され躍動した

安心
お世話いただく機会が多くなった
マネージメントされることに感謝の念が強くなる
与えられた大事な仕事を丁寧に仕上げる

信頼
大きな仕事は1年かがりだった
師の信頼を受けて二人で書き上げた
褒めてもらうと少年のような気分だった

不安
加齢は体調の変化を促す
原因不明の湿疹で悩まされた
腰痛は定期的にやってきて横臥を強制した

驚き
新型コロナウイルスは突然感染者数を激減させた
専門家はだれもその理由を明かせなかった
いまオミクロン株は欧米を席巻し日本に迫る

悲観
衆議院議員選挙の惨めな結果
予想を裏切り自民独走立憲沈没
理念なく挙手するだけの甘い仕事が続く

怒り
多くの詩作の動機そのもの
まずは牛乳を飲んで落ち着こう
それからしっかり怒りを吐き出そう

〔2021年12月27日書き下ろし。七つの感情をどうコントロールするのか。世の中への怒りが独り合点にならぬよう、自戒をこめよう〕

希求の初校正終える

こんなに書いてしまったのか
そのボリュームに圧倒された
二人で取り組んだ1年の集大成
男の50年の軌跡を初校の重さに感じた

福祉への人生観が盛り込まれた
50年に渡る男の軌跡
福祉施設の劣等処遇の世界に挑み
一途に当たり前の生き方を追い求めた

介護保険制度の前夜から深く関わった
20余年に渡る男の軌跡
措置から契約への大きな変革に挑み
導入された儲け主義の市場原理と渡り合う

社会福祉法人の経営改革を訴え続けた
20余年に渡る男の軌跡
老人福祉施設の旧態依然とした経営を憂い
全国のトップランナーは身を粉にして果敢に動く

自らの足下を見つめ直す時を迎えた
50年に渡る男の軌跡
次代に引き継ぐための経営検証と展望を込めて
「希求」をテーマに1年かけて書き記す

ブレることなく福祉理念を貫き通した
50年に渡る男の軌跡
次代に「和顔愛語」の仁愛の道の委ねる
目をしょぼつかせて二人は校正を終えた

〔2021年12月26日書き下ろし。師の50年の経営の検証と展望を「希求」と題し、二人で取り組んだ愉しき日々が終わり、一抹の寂しさを感じながらも安堵する〕