阪野 貢 のすべての投稿

母と赤いかくまき

薄暗い街灯の光をよぎって雪が降る
闇の中を斜めに雪は舞う
母は赤いかくまきに幼子をつつんだ

家路を急ぐには歩きにくかった
雪は激しくなり行く手を阻む
母は赤いかくまきで幼子を守る

二人の幼子は母の服を握って歩く
母は幼子の肩を抱く
母は赤いかくまきで幼子をくるむ

窓外の降り積もりそうな雪の朝
赤いかくまきを着た母を想った
母のぬくもりの中にいた
遠い記憶の欠片を拾う

※角巻(かくまき):四角い形をした毛布の肩掛け。背の高さに応じて三角に折って着る。別に帽子をかぶることが多い。おもに、東北地方などの寒冷地で、外出の際に、女性が防寒用として用いる。

〔2021年12月17日書き下ろし。本格的に降り出した雪の朝、赤い角巻の母を鮮明に覚えているのはなぜか。不思議な感覚だった〕

詩と代弁者

代弁者になることを否定された 

経験がなければ 言葉は心に響かぬ
経験しなければ 言葉は心に届かぬ
経験してこそ 言葉は心を動かす

様々な人生を 追体験することは不可能
書けるわけがない
出会いから学び 心に感じ言葉にする
書かない限り始まらない

悩みを 言葉で引き受ける
戸惑いを 言葉で引き取る
失意を 言葉で引き動かす
意欲を 言葉で引き出す
喜びを 言葉で引き担(かた)ぐ

事に関わる多くの人生模様を
言葉の力を信じて
いまもめげずに書き続ける

〔2021年12月16日書き下ろし。他者から頂いた体験をうまく詩にもまとめただけの精神論と酷評された。そこに真実が見えぬとすれば、まだまだ未熟な詩である。それでも書く〕

学生まちづくりに動く

ラベンダーは 札幌の南区が発祥の地と熱く語る
ふるさとが大好きな学生だった
2019年6月 地域おこしのイベントに参加した
閉店したメガネ屋さんの壁を 黒板仕様にするペンキを塗った
子どもから高齢者まで 楽しそうに参加した
突然紙芝居が始まったり うどんの屋台まで出てきた
単なる壁塗りではなく 楽しいコミュニティがそこに現出した
仕掛けたまちづくりコーディネーターの企画力に驚かされた

8ヶ月後 コロナが道内にも流行する兆しが出始めた頃だった
南区の果樹園の協力をもらって 友だちとアップルパイを作った
果樹も地域の特産物だった
地元の活性化に挑んだ高校生は 販売して収益を得た
ボランティアでしてるのに お金を得ることに戸惑った

2021年藤女子大学に入った
7月東京五輪の前後 道内はまん延防止法が発令されていた
地元でラベンダー祭りが開催され参加した
札幌市大の主催する「高齢者と広場で話そう」イベントにも参加した
9月後期の授業で ボランティアに関する科目を受講した
いままでのボランティア活動は 苦にならなかった
いままでの活動をふり返りながら ボランティアを考えた

高校生の時から
人と物をつなぐ不思議な力を持っていた
着想も良かった
行動にも迷いはなかった
学習能力も高かった
新しい発見が次のモチベーションとなっていた

まちづくりの担い手となる若い旗手の芽が育つ
彼女は純粋なおもいを素直にカタチにできる
彼女は一途におもいを実現する行動力がある
彼女なら人を魅了し人が集まる
彼女への期待を込めて
仲間を募り団体を立ち上げることを助言した
想定外のことでビックリしていた

地域の活性化は 柔らかい創造力と逞しい行動力を求めている
ボランタリーな活動から多くを学び 大きく成長する可能性を感じた
アップルパイの収益金は 活動資金の造成になると助言した
その資金を地域で回していくことも 彼女ならできるだろう

ボランティアの世界は 学ぶ力を妨げない
もっと自由に楽しく 思う存分やるといい
明るいキャラクターと 天性の行動力が頼もしい
人と物をつなぐ 確かなネットワーク力も半端ない
地域でやるべきことを見出す 大事な存在となった
心底ふるさとを愛する人に心寄せ 仲間の輪ができることを願う

ひとりからしか ことの始まりはない

〔2021年12月14日書き下ろし。ボラをテーマにした講座で出会った藤女子大生のアクティブな活動にボランティア学習の豊かさを学んだ〕

折り合いを付ける

ふと自身に問いかけた

譲歩する
頑なさが拒んだ
強引に主張を通した
思慮の浅さが災いした

妥協する
相違を埋められなかった
変質する言動が許せなかった
決裂は必然だった

歩み寄る
突っ張るしかなかった
考える余地は残されてなかった
走り続けるしかなかった

どう自分と折り合いをつけてきたのか
道を探して苦悩し葛藤した日々
道を見つけ邁進し躍動した日々
道を間違え挫折し失望した日々

わが身が可愛かった
わが心を守りたかった
わが意に納得したかった

こうありたい
こうしたい
こう生きたい
そう思いつつも
己と曖昧に折り合いをつけながら
ようやく生きてきた
己と不器用に折り合いをつけながら
どうにか生きてこられた
己に甘い折り合いをつけながら
これからは生きていこう

〔2021年12月14日書き下ろし。その時々に自身とどう向き合ってきたのか。ふりかえると面白いわが人生かな〕

古い資料を捨てる

ようやく捨てる時が来た
ファイルに綴じられてきた古い資料
手に取られることもなくなった古い資料
利用価値からも開放された古い資料

いつか使うかもしれないという呪縛症
ないと困るかもしれないという心配症
取りあえず残しておこうという保管症
いつでも捨てられるという先送り症

煮え切らない態度が思慮を欠いていまがある
大事だという思い込みが度を超していまがある
集めた時の思いを忘れられずにいまがある
知的財産を捨てる事への罪悪感でいまがある

ボランティア運動に関する貴重な実践記録は廃棄した
段ボール5個に詰められた資料は輝く時を失った
いま研究資料も講義の教材も無用となった
数十年に渡る世相の変遷は関心事の蓄積だった
教育・福祉そして社会への尽きぬおもいの足跡だった

すでに自室の収容スペースは限界を超えた
机下にもびっしり積まれ足の置き場がない
いずれ大きな本箱1つを処分しなければならない
介護用ベッドを入れるスペースが必要となる
元気なうちにベッドの使用勝手に慣れる策略だ
ベッドの周りに何を配置するのかは構想中
好きな書籍で埋もれるのもいいと思案する

福祉の授業で子どもたちからもらった手紙と感想文
きっと老いの暮らしを慰めてくれるだろう
捨てがたい人生の宝物は千通をゆうに超える
処分は残った者に任せよう

優柔不断で今日まで置かれた古い資料
断捨離を決してどれから処分しようか
そこからすでに迷いが生じる

〔2021年12月13日書き下ろし。まずは段ボールの用意から始めようか〕

仕事納めとオミクロン株

今日で遠方に出かける仕事を終える
9月末の「緊急事態宣言」解除まで予定が狂った
日程は晩秋以降に集中した

正月明けまでは家に籠もる
来週本の校正が入ってくる
2月納品の段取りがついた

積み残した仕事を片付けよう
ひとつ終わればまたひとつ始まる
エンドレスの仕事に感謝する

2年ぶりの穏やかな年の瀬は素直に嬉しい
12月に入り札幌市内の感染者はゼロから5人
オミクロン株の蔓延までしばし猶予がある

年が明ければ3月初めまで動き回る
オミクロン株は邪魔立てするに違いない
移動規制を強いられ仕事は頓挫する
道民の暮らしも圧迫されて忍従を強いられる
経済は失速し10万円など焼け石に水となる

願わくはそうならぬように尽力せねばならぬ
緊張が弛んだいまこそ油断大敵と心得たい
市政も道政も不安を払拭し安心を担保しなければならない
最悪の事態への体制は万全なのか明らかにしなければならない
札幌五輪誘致で民意を軽んじはしゃいでいる場合ではない

仕事納めは新たな事態への準備を始める日となる

〔2021年12月12日書き下ろし。穏やかに過ぎる年の瀬の緩やかな時間の流れを噛みしめたい。そして次に備える〕

共有の本質

錯覚に過ぎない
一時の同意でしかない
自己決定の保留

諦めに過ぎない
一時の同調でしかない
自己意思の妥協

場の空気に過ぎない
一時の同一でしかない
自己意識の依託

思い込みに過ぎない
一時の同行でしかない
自己実現の停止

曖昧な理解に過ぎない
一時の同異でしかない
自己欺瞞の表出

浅き思慮に過ぎない
一時の同和(どうか)でしかない
自己完結の放棄

他者との関わりに過ぎない
一時の同化でしかない
自己存在の懐疑

〔2021年12月11日書き下ろし。共有するということの本質は、己の弱々しい存在そのものであるかもしれない〕

連携という誤謬

連携します
連携しましょう

連携
なにげなく使われている普段着語
拘束する何ものもない形式語
汗かくことまでは求めない適当語
異業種との会議でよく使われる体裁語

連携
行政の計画書の文末に鎮座する責任軽視語
学校・機関・団体でも頻繁に使われる適切語
電話一本かけただけでも連携となる無用語
会議に参加しただけでも連携となる無力語
イベントに名前を貸しただけでも連携となる無能語

連携
異業種や他団体そして市民との連携を標榜する建前論
無駄に時間は経過していつしか置き去りにされる消去論
一抹の期待も消散して課題が取り残される瓦礫(がかい)論
付けとけば訳知り顔に見られる曖昧論

連携
表面(おもてづら)を繕うだけのたわいない言葉
格好をつけるだけの中身のないお飾りの言葉
分かったふりしていい人ぶる使い勝手のいい言葉
相手との心地よい無干渉な距離間を維持する口当たりのいい言葉
そこから先には決して踏み込ませない柔らかな意志表示の言葉

連携
内実のお粗末な連携もあり
行動が伴わない連携もよし
後退を繰り返す連携しかり

連携
懲りずに連呼し失速する連携らしさ
共にをカタチに見せかける連携もどき
目的に執着すらしない連携くずし

連携の本義を確かめてほしい
複合的に補填し合い問題解決に動く
連携の先にある連動を見出したい

連携できっかけをつくってしてほしい
行動へのモチベーションを絞り出す
連携から連動への強い道筋を創りたい

連携の悪しきレベルを超えてほしい
協働の理念と行動は頓挫させてはならない
連携から連動へのエネルギーへと転化させたい

連携から連動へ
連動から連帯へ
連帯への願いと行動を枯渇させてはならない

〔2021年12月10日書き下ろし。連携を連動させて、さらなるおもいは連帯へと連なる運動論か〕

依頼と変更

インタビュー原稿の依頼
過去をインタビューされる側で
する側が2人の変則企画

締め切りが締め切りで
3人とも無理を伝えた
次号に延期した

通り一遍のことでは物足りない
読者もきっと興味は湧かない
魅力ある面白いものにならないか

インタビュアーがこの面子なら
わたしにインタビューではなく
わたしがインタビューする
それならもっと刺激的な中身になる

立場を逆転させた
現役の二人の福祉や教育への思いを引き出す
それでもいまひとつ何かが足りない

地域福祉のど真ん中で実践する社協マン
プラスワンしてもっと刺激的にする
想像しただけでワクワクする

企画を編集者に提案した
今までの企画ではなくなった
掲載枚数も倍に膨れた
面白がってゴーサインが出た

連載企画のイメチェン
活きのいいバリバリの40代
福祉と教育のいまと明日を熱く語る

そこを引き出すセンスがあるのか
旭川で4人が揃う1月31日まで
手ぐすね引いて待つとしよう

〔2021年12月9日書き下ろし。仕事への情熱を燃やす3人の実践者の熱いおもいを伝えたい〕

戦争ときずな計画

12月8日 80年を迎えた太平洋戦争開戦の日
戦争の犠牲となった多くの兵士と国民に哀悼の意を捧げます
犠牲と苦渋を強いられ残された遺族の痛みとその後の苦難を想像します
間違えを正そうともせず負ける戦いを命じた者たちを糾弾します
戦争反対者を密告し非国民と嘲り排除した者たちの護身は否定できません
常に戦争を商売にして軍人や政治家と結託して儲けた者たちを許せません
その歴史の教訓から学べぬ者たちがいまも政治の要にいることを批判し続けます
懐古主義者が平和憲法を統治に都合のいい改正を目論むことに反対します
議会政治の根幹をなし崩した者たちへの糾弾と批判はやむことは決してありません

戦争体験した世代がこの国の礎となる
平和な暮らしの中で人として幸せに生きたい
この願いを実現するために貧困にもめげず
一生懸命働きさらに働いて経済を成長させた
自衛の為の自衛隊もしっかりと平和憲法を遵守する

80歳以上の高齢者は戦争の過去を忘れてはいない
予科練で青春の挫折を味わった亡父も94を数えていただろう
世界中の紛争を見聞きするたびに身につまされ憤りを覚える
どれほどか人間は愚かで残虐なのか悪の限りを尽くす

登別市の第4期きずな計画はカタチを成してきている
策定に参画し地域を福祉で耕してきた戦前戦中派の委員の方々
17年間地域で平和を築き上げてきた戦前戦中派の委員の方々
その労苦に感謝しつつ平穏な日々を送っていただくために
次世代の市民は平和な社会を築くために誠心誠意努めたい

戦争ときずな計画は対極にある
武器を持つ手は福祉を拓き耕す手に変わる
誹謗する醜い心は福祉で浄化され寛容の心に変わる
病んで老いて死にゆく身は福祉の支えで平穏無事を保つ
子どもらも若者たちも福祉から平和を学ぶ
次世代は福祉で平和な社会と暮らしを体現する人となる

その指針として地域福祉実践計画きずなを市民と共有したい
平和を希求してやまない市民の願いを知恵と行動に結集する
ここに生まれてよかった暮らしてよかったと語り継ぎたい
きずなのきずなたる大きな福祉力を見える化するのは
ひとりの人として家庭人として市民として地球人としての責務です

〔2021年12月8日書き下ろし。日々の暮らしに当たり前にある平和を登別市きずな計画に見出すことが、悪しき戦争の歴史を繰り返さない決意でもあるかとはたと気づいた〕