阪野 貢 のすべての投稿

引き受けられない悲しみ

12月17日 大阪市北区北新地の心療内科クリニックが放火された
尊い命を奪われた24人の御霊に心より哀悼の意を表します

こころの病に苦しむ多くの人を救ってきた
患者のために夜間の診療も献身的に続けた
人生を取り戻した多くの人が恩人と敬った
西沢弘太郎医師への懸命な救命治療も虚しく逝った
ともに患者と向き合った看護師も職員も逝った
医師を頼りに来院した患者たちは逃げ場を失い逝った

24人の人生を初老の男が断つ
動機はいまだ不明だが結果は残酷だった
殺すという一念だけが男を支配した
院内の間取りを熟知して殺害方法を熟考した
残忍な段取りを周到に用意して迷いなく動く
死霊に取り憑かれた男は躊躇なく殺戮した
我身も阿鼻叫喚をきわめる中に置いた
男は重度の一酸化中毒で重篤だという

繰り返される許し難き自暴自棄の犯罪行為
他者の命を軽視無視する無差別殺人
反社会的な行為に憧れる者たちはにたりと笑う
俺にもやれると奮起して憎悪の刃を研ぐ

残された家族の深い悲歎にただ黙する
慟哭の怒りを
やり場のない憤りを
やりきれないおもいを
引き受けられない重さにただ黙する

〔2021年12月19日書き下ろし。大阪府警は19日未明、現住建造物等放火と殺人の疑いが持たれている重体の谷本盛雄容疑者(61)を特定した。身勝手な行動に社会はブレーキをかけることすらできない。近隣の住民すら関心のない存在感のうすい男だった〕

研究所開設10周年を準備する

昨夜久しぶりに阪野先生と長電話した
二人の語らいは話題が尽きない
世相から近況報告に至り
いま取りかかっているテーマへと向かう

来夏6月市民福祉教育研究所は10周年を迎える
阪野先生の人たらしの魅力は人を惹きつけてやまない
誘われていつの間にか自分の居場所を見つけた
バーチャルな研究所は40数名の共同研究者が集う

求められる研究所の社会的役割
阪野先生は7つのミッションを掲げた
日本の社会福祉の重鎮であられる大橋謙策先生
日本の社会福祉の牽引者である原田正樹先生
お二人の貴重な論文や大橋先生の人間味に溢れた旅行記の連載
ただただ畏敬の念を強くしながらお力添えを得ていることに感動する
お二人もまた阪野先生の人たらしに魅了されたのであろうかと

求める研究所になる課題を掲げた
若い研究者や実践者の発掘と発表の場の提供
論文やレポートの発掘と発信の場の提供
自己変革への意欲の喚起と挑戦の場の提供
未熟な研究者や実践者への助言と指導の場の提供
さらにここに集う者たちの交流の機会と場の提供

こんなおもいを電話口で語り合い胸を熱くする
来夏10周年記念のセミナーを開催しよう
どんなプログラムになるのか
阪野先生の楽しき企画の旅が始まる
同伴者は名古屋に飛んでいく日が決まるだけでいい
航空券の予約は格安のうちにゲットしておきたい

〔2021年12月19日書き下ろし。『メビウスの帯』(19年12月1日 アップ。 ⇒ 本文 )が阪野ワールドだった。好きな詩はと昨日問われた答えである〕

頼まれた代弁書

原稿を依頼された
三人にインタビューをした
ひとりは老人施設関係者
ふたりは関係するボランティア
二日間の日程が必要だった

三日目ようやく書き始めた
自由勝手に書けない原稿
様式に沿った書き方が求められる
必要な情報をコンパクトにまとめる
主張すべきところは工夫を凝らす

聞き逃した情報や必要な資料があった
ボランティアに連絡して対応してもらう
ようやくカタチが整った
ただインパクトのある文章には何かがたりない
ここで思考停止に陥った

眠りを妨げる言葉が彷徨う
目覚めたらきっと憶えてはいないはず
諦めながら再度眠りに落ちる
目覚めた時に言葉が甦った
朝から添削作業にかかった

書き終えてすぐにメールで関係者に送った
依頼された原稿を短期間に無事終えた
A4版4枚に書き込まれた代弁書
互いのおもいを言葉で表現することの面白さ
充足感を味わいながらはたと気づく

今朝アップする詩が手つかずだった
思案する間もなくいま書き上げた
よしよしこれで明朝まで自由時間
まずはボーッとしよう

〔2021年12月18日書き下ろし。ちょっと重たい依頼原稿。無事終えて自己解放する〕

母と赤いかくまき

薄暗い街灯の光をよぎって雪が降る
闇の中を斜めに雪は舞う
母は赤いかくまきに幼子をつつんだ

家路を急ぐには歩きにくかった
雪は激しくなり行く手を阻む
母は赤いかくまきで幼子を守る

二人の幼子は母の服を握って歩く
母は幼子の肩を抱く
母は赤いかくまきで幼子をくるむ

窓外の降り積もりそうな雪の朝
赤いかくまきを着た母を想った
母のぬくもりの中にいた
遠い記憶の欠片を拾う

※角巻(かくまき):四角い形をした毛布の肩掛け。背の高さに応じて三角に折って着る。別に帽子をかぶることが多い。おもに、東北地方などの寒冷地で、外出の際に、女性が防寒用として用いる。

〔2021年12月17日書き下ろし。本格的に降り出した雪の朝、赤い角巻の母を鮮明に覚えているのはなぜか。不思議な感覚だった〕

詩と代弁者

代弁者になることを否定された 

経験がなければ 言葉は心に響かぬ
経験しなければ 言葉は心に届かぬ
経験してこそ 言葉は心を動かす

様々な人生を 追体験することは不可能
書けるわけがない
出会いから学び 心に感じ言葉にする
書かない限り始まらない

悩みを 言葉で引き受ける
戸惑いを 言葉で引き取る
失意を 言葉で引き動かす
意欲を 言葉で引き出す
喜びを 言葉で引き担(かた)ぐ

事に関わる多くの人生模様を
言葉の力を信じて
いまもめげずに書き続ける

〔2021年12月16日書き下ろし。他者から頂いた体験をうまく詩にもまとめただけの精神論と酷評された。そこに真実が見えぬとすれば、まだまだ未熟な詩である。それでも書く〕

学生まちづくりに動く

ラベンダーは 札幌の南区が発祥の地と熱く語る
ふるさとが大好きな学生だった
2019年6月 地域おこしのイベントに参加した
閉店したメガネ屋さんの壁を 黒板仕様にするペンキを塗った
子どもから高齢者まで 楽しそうに参加した
突然紙芝居が始まったり うどんの屋台まで出てきた
単なる壁塗りではなく 楽しいコミュニティがそこに現出した
仕掛けたまちづくりコーディネーターの企画力に驚かされた

8ヶ月後 コロナが道内にも流行する兆しが出始めた頃だった
南区の果樹園の協力をもらって 友だちとアップルパイを作った
果樹も地域の特産物だった
地元の活性化に挑んだ高校生は 販売して収益を得た
ボランティアでしてるのに お金を得ることに戸惑った

2021年藤女子大学に入った
7月東京五輪の前後 道内はまん延防止法が発令されていた
地元でラベンダー祭りが開催され参加した
札幌市大の主催する「高齢者と広場で話そう」イベントにも参加した
9月後期の授業で ボランティアに関する科目を受講した
いままでのボランティア活動は 苦にならなかった
いままでの活動をふり返りながら ボランティアを考えた

高校生の時から
人と物をつなぐ不思議な力を持っていた
着想も良かった
行動にも迷いはなかった
学習能力も高かった
新しい発見が次のモチベーションとなっていた

まちづくりの担い手となる若い旗手の芽が育つ
彼女は純粋なおもいを素直にカタチにできる
彼女は一途におもいを実現する行動力がある
彼女なら人を魅了し人が集まる
彼女への期待を込めて
仲間を募り団体を立ち上げることを助言した
想定外のことでビックリしていた

地域の活性化は 柔らかい創造力と逞しい行動力を求めている
ボランタリーな活動から多くを学び 大きく成長する可能性を感じた
アップルパイの収益金は 活動資金の造成になると助言した
その資金を地域で回していくことも 彼女ならできるだろう

ボランティアの世界は 学ぶ力を妨げない
もっと自由に楽しく 思う存分やるといい
明るいキャラクターと 天性の行動力が頼もしい
人と物をつなぐ 確かなネットワーク力も半端ない
地域でやるべきことを見出す 大事な存在となった
心底ふるさとを愛する人に心寄せ 仲間の輪ができることを願う

ひとりからしか ことの始まりはない

〔2021年12月14日書き下ろし。ボラをテーマにした講座で出会った藤女子大生のアクティブな活動にボランティア学習の豊かさを学んだ〕

折り合いを付ける

ふと自身に問いかけた

譲歩する
頑なさが拒んだ
強引に主張を通した
思慮の浅さが災いした

妥協する
相違を埋められなかった
変質する言動が許せなかった
決裂は必然だった

歩み寄る
突っ張るしかなかった
考える余地は残されてなかった
走り続けるしかなかった

どう自分と折り合いをつけてきたのか
道を探して苦悩し葛藤した日々
道を見つけ邁進し躍動した日々
道を間違え挫折し失望した日々

わが身が可愛かった
わが心を守りたかった
わが意に納得したかった

こうありたい
こうしたい
こう生きたい
そう思いつつも
己と曖昧に折り合いをつけながら
ようやく生きてきた
己と不器用に折り合いをつけながら
どうにか生きてこられた
己に甘い折り合いをつけながら
これからは生きていこう

〔2021年12月14日書き下ろし。その時々に自身とどう向き合ってきたのか。ふりかえると面白いわが人生かな〕

古い資料を捨てる

ようやく捨てる時が来た
ファイルに綴じられてきた古い資料
手に取られることもなくなった古い資料
利用価値からも開放された古い資料

いつか使うかもしれないという呪縛症
ないと困るかもしれないという心配症
取りあえず残しておこうという保管症
いつでも捨てられるという先送り症

煮え切らない態度が思慮を欠いていまがある
大事だという思い込みが度を超していまがある
集めた時の思いを忘れられずにいまがある
知的財産を捨てる事への罪悪感でいまがある

ボランティア運動に関する貴重な実践記録は廃棄した
段ボール5個に詰められた資料は輝く時を失った
いま研究資料も講義の教材も無用となった
数十年に渡る世相の変遷は関心事の蓄積だった
教育・福祉そして社会への尽きぬおもいの足跡だった

すでに自室の収容スペースは限界を超えた
机下にもびっしり積まれ足の置き場がない
いずれ大きな本箱1つを処分しなければならない
介護用ベッドを入れるスペースが必要となる
元気なうちにベッドの使用勝手に慣れる策略だ
ベッドの周りに何を配置するのかは構想中
好きな書籍で埋もれるのもいいと思案する

福祉の授業で子どもたちからもらった手紙と感想文
きっと老いの暮らしを慰めてくれるだろう
捨てがたい人生の宝物は千通をゆうに超える
処分は残った者に任せよう

優柔不断で今日まで置かれた古い資料
断捨離を決してどれから処分しようか
そこからすでに迷いが生じる

〔2021年12月13日書き下ろし。まずは段ボールの用意から始めようか〕

仕事納めとオミクロン株

今日で遠方に出かける仕事を終える
9月末の「緊急事態宣言」解除まで予定が狂った
日程は晩秋以降に集中した

正月明けまでは家に籠もる
来週本の校正が入ってくる
2月納品の段取りがついた

積み残した仕事を片付けよう
ひとつ終わればまたひとつ始まる
エンドレスの仕事に感謝する

2年ぶりの穏やかな年の瀬は素直に嬉しい
12月に入り札幌市内の感染者はゼロから5人
オミクロン株の蔓延までしばし猶予がある

年が明ければ3月初めまで動き回る
オミクロン株は邪魔立てするに違いない
移動規制を強いられ仕事は頓挫する
道民の暮らしも圧迫されて忍従を強いられる
経済は失速し10万円など焼け石に水となる

願わくはそうならぬように尽力せねばならぬ
緊張が弛んだいまこそ油断大敵と心得たい
市政も道政も不安を払拭し安心を担保しなければならない
最悪の事態への体制は万全なのか明らかにしなければならない
札幌五輪誘致で民意を軽んじはしゃいでいる場合ではない

仕事納めは新たな事態への準備を始める日となる

〔2021年12月12日書き下ろし。穏やかに過ぎる年の瀬の緩やかな時間の流れを噛みしめたい。そして次に備える〕

共有の本質

錯覚に過ぎない
一時の同意でしかない
自己決定の保留

諦めに過ぎない
一時の同調でしかない
自己意思の妥協

場の空気に過ぎない
一時の同一でしかない
自己意識の依託

思い込みに過ぎない
一時の同行でしかない
自己実現の停止

曖昧な理解に過ぎない
一時の同異でしかない
自己欺瞞の表出

浅き思慮に過ぎない
一時の同和(どうか)でしかない
自己完結の放棄

他者との関わりに過ぎない
一時の同化でしかない
自己存在の懐疑

〔2021年12月11日書き下ろし。共有するということの本質は、己の弱々しい存在そのものであるかもしれない〕