阪野 貢 のすべての投稿

敗戦後76年夏コロナ戦時体制を読む

戦前・戦中生まれは 全人口の7人に1人に減った
戦争を経験した旧軍人は 1万人を割り込む
戦時の記憶は 忘却の彼方に遠ざかる

今夏のコロナの爆発的感染拡大とオリンピックの強行開催は
いのちを軽視して妄想にふけた 政治の過失による災禍となった
感染者急増地域で入院対象をリスクの高い患者に限定し
それ以外は自宅療養を打ち出した謀策は 炎上した
ワクチン接種に賭けた思惑は 見事に外れた
楽観的見通しが惨禍を招き 失敗した時の対策は尽きていた
唐突な「酸素ステーション」の設置など 焼け石に水でしかない
事は安倍晋三の不見識と愚かな采配の象徴「アベマスク」から始まった
危機的状況を読み間違え 医療体制のひっ迫を想像できず放置した
平時のペースでのワクチンの承認作業で 接種を遅らせた
国内のワクチン開発を放置し 疫病対策の弱点を浮き彫りにした
事業者への協力金や生活困窮者への支援金は出し惜しみする
重大な局面では 政治主導を打ち出しながら統治能力はなかった
議員の座に拘泥するだけの 政権与党の最後のあがきは
パラリンピック開催へと 都知事小池も舵を切る

コロナ禍は 奇しくも戦時体制を彷彿させた
国権の最高機関である国会は 戦時下同様空洞化が進む
中止の声はかき消され 反日のレッテルを貼られた
コロナとの戦いに勝った証の五輪は幻想だった
幻想を抱かせることにひたすら突っ走り 失敗を上書きする
五輪に固執することで すべては後手に回った
戦意高揚 生活統制 精神動員
国家総動員法もどきの旧態依然とした
政治理念なき戦時国家体制が出来上がっていた

いのちを最優先するどころか「難死」をも前提とした国家は
15日全国戦没者追悼式で 首相が臆面もなく式辞を述べる
「積極的平和主義の旗の下、国際社会と力を合わせながら、
世界が直面する様々な課題の解決に、全力で取り組んでまいります」

戦没者のご冥福を祈りながら わが心に命ずる 
いまだ懲りない者たちの 民主主義を否定する専制体制にピリオドを打ちたい
戦後生まれの老害支配に抗う 批判的な行動力を若き世代に切に求めたい

〔2021年8月15日書き下ろし。靖国に参拝する国家支配者たちは何を祈るのか〕

付記
姜尚中氏がコロナ自宅療養の“冷酷さ”に疑問「病院で死ねないというのは先進国なのか」
政治学者の姜尚中氏が15日、「サンデーモーニング」(TBS系)に出演し、新型コロナウイルスの自宅療養について危機感を示した。
番組では現在、問題となっている新型コロナウイルス感染者の自宅療養における容態急変の不安を取り上げた。
姜尚中氏は「日本は世界に誇る皆保険制度を持ってるわけですよね。それから一人あたりの病床数も世界トップクラス。何なんだろうね、この奇妙な冷酷さ」と切り出した。
 続けて「例えば戦争中、満州で疎開した人を、そのまま放り投げて後は自分の努力で何とかしろと。なにか冷たさというのはかつて小田実が『難死』って言ったんだけど。なんかこう虫けらみたいにあとはどうぞという」と厳しい例えを持ち出した。
「だから今やるべきことは例えば応急病院に仮設のプレハブを作って、そしてそこに医療資源を張り付かせてですね。これは自宅療養ではなくて、そこに来てもらう。そしてシームレスに今度は病院に運んで行く。そういうことが1年半できたはずなんですよね。7000人もオリパラに医療資源を一挙に使うぐらいならできるはず。予備費で1兆円以上でしょ。これは何をやってるんだろう。病院で死ねないというのは、先進国なのかどうかですね」と話した。(東スポWeb2021年8月15日)

老爺心お節介情報/第29号(2021年8月15日)

「老爺心お節介情報」第29号

〇新型コロナウイルスの感染急拡大の上に、酷暑、豪雨と日本は、地球はどうなったのでしょうか。
〇残念ながら、日本地域福祉研究所の第26回地域福祉実践研究セミナーin花巻は、岩手県、花巻市が新型コロナウイルスの状況がステージⅣになったことから中止になりました。足掛け4年に亘り準備してきてくださった花巻市社会福祉協議会の皆様の無念さを思うとなんとも辛いです。この間の準備に、心より感謝とお礼を申し上げます。
〇今後とも、花巻市社会福祉協議会のコミュニティソーシャルワーク実践が豊かに展開されることを祈念すると同時に、機会があればいろいろお手伝いしたいと思います。
〇「老爺心お節介情報」29号は、その花巻市でのセミナーで、紹介しようと思った「福祉でまちづくり」の農村型原型に関するレジュメとシルバー産業新聞連載の8月分の拙稿です。
〇もう一つの情報は、福祉教育・ボランティア学習に関心のある人の必見の論稿です。その文献を紹介しておきます。
(2021年8月15日、平和を祈念して)

Ⅰ 「福祉でまちづくり」の農村型原型――地域福祉実践の一つの原点

※松田甚次郎著『津に叫ぶ』は、既に著作権が切れており、PDFでダウンロードできるようです。是非、読んでください。花巻市社会福祉協議会地域福祉課の根子裕司課長がダウンロードしてくれました。
(根子課長より)
参考までに、資料データをギガファイル便にアップいたしました。データ容量が20MBで、メールに添付できませんでした。
アドレスはつぎのとおりです。https://xgf.nu/8Ek4

「福祉でまちづくり」の農村型原型――地域福祉実践の一つの原点

1 井上 亀五郎『農民の社会教育』1902(明治35)年
農村社会の改良拠点としての公会堂――公談場、共同遊戯場、共同宴会場、展覧会

2 横井 時敬『模範農村』1907(明治40)年
公会堂――レストラン、風呂、図書館、遊技場
※東京大学教授、東京農業大学の共同創設者(榎本武揚)
3 島木健作『生活の探求』初版1937(昭和12)年6月
『続 生活の探求』初版1938年(昭和13)年6月
※香川県三木町で農民組合の書記、転向後作家生活――川端康成、林房雄と交友
4 松田甚次郎『土に叫ぶ』初版1938(昭和13)年5月、羽田書店
『続 土に叫ぶ』初版1942(昭和17)年

#1 松田甚次郎(1909年~1943年)、山形県稲舟村鳥越(現新庄市)で出生、盛岡高等農林学校卒業、宮沢賢治に師事
#2 鳥越隣保館を設置(1933(昭和8)年起工、1937(昭和12)年落成)
#3 農繁期共同保育所、出産相扶会、共同浴場、最上共慟村塾等を組織化――山形県社会課社会事業主事永田誠氏(社会事業主事補 大正15年~昭和7年、社会事業主事 昭和13年~14年)が支援。
#4 農村劇36回上演
#5 『土に叫ぶ』の出版社、羽田書店は元総理大臣羽田孜氏の父親で衆議院議員
羽田武嗣朗氏が社長。

(参考文献)
大橋謙策著「戦後地域福祉実践の系譜と社会福祉協議会の性格及び実践課題」
(『地域福祉史序説』日本地域福祉学会編、中央法規、1993年所収)

(2021年8月1日記)

Ⅱ シルバー産業新聞連載第8回

「地域福祉に必要なシステムづくりと地域包括支援センターの原型」

筆者は、1960年代末から、社会福祉学の中でも地域福祉に関する実践的研究を行ってきた。従来の社会福祉実践が「福祉六法体制」と呼ばれるように“縦割り“的に社会福祉法制の枠内でのみ行われ、かつサービスを必要としている人が法制度が定めたサービス利用要件に該当するかどうかを判定するシステムであったのに対し、地域福祉は当時、”社会福祉の新しい考え方“と考えられ、なおかつ地域福祉に関する法体系もないことから、地域福祉実践は社会福祉制度の枠内での実践だけではなく、住民のニーズに対応して新しいサービスも開発する、最もソーシャルワーク実践を行なえる領域だと考えたからである。
その新しいシステムは、地域福祉の理念である地域での自立生活を支援するシステムである以上、地方自治体レベルで、地域の実情に即して創造していくことが求められると考え、筆者は全国の地方自治体で地域福祉に関するシステムづくりを実践的に研究してきた。
と同時に、地域での自立生活を支援するということは、属性分野ごとの単身者に対応する「福祉六法体制」ではなく、問題を抱える単身者は固より、同居している家族全体を考えた対応が求められるし、中には、家族の構成員が複数で、複合的問題を抱えている世帯もある。したがって、地域福祉における新しいサービスやシステムの開発は世帯全体にも対応できる、分野横断的システムでなければならない。
現在進められている「地域共生社会政策」の具現化は、地方自治体の地域状況に即して新しい包括的、重層的支援ができるシステムをどう創るかが課題である。筆者は、その政策の具現化の要は、現在全国に約4800か所設置されている「地域包括支援センター」が分野横断的なワンストップサービスの拠点機関として、かつ包括的、重層的支援の要の役割を担えるかが大きな課題だと考えている。
地域包括支援センターは、2006年に介護保険制度が改正され、位置づけられた。市町村を複数の日常生活圏域に分け、その圏域毎に地域包括支援センターを設置し、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員を配置するシステムは画期的な取り組みであり、地域包括ケアの新たな一歩を踏み出したと位置づけても過言ではないと考えている。
筆者は、この地域包括支援センターのシステム的モデルは、長野県茅野市が2000年4月から発足させた茅野市保健福祉サービスセンターシステムであると考えている。
目黒区では、1990年に法定化された老人保健福祉計画を2017年に社会福祉法改正により“上位計画”とされた地域福祉計画と同じ考え方で、障害児者も子育て問題も視野に入れて、住民の地域での自立生活を分野横断的に支援する地域福祉計画として位置づけ、住民参加で策定した。当時目黒区は人口26万5000人で、保健所が2つ、福祉事務所が1か所あった。それを再編・改組するために、区内を5地区に分けて、各圏域に保健福祉サービス事務所を設置し、住民の身近なところ(福祉アクセシビリティ)で、保健と社会福祉が統合的に相談、支援できるシステムとした。
また、1994年には、東京都児童福祉審議会において、筆者は専門部会長として東京都内の区市町村における“子育て支援のシステム”創りを提言した。子育て分野は家庭の私事性が強く意識され、高齢者分野、障碍者分野に比して地域での自立生活を支援する在宅福祉サービスという考え方が弱かった。実態は、問題を抱える児童、家庭への“点と点”でつながる支援システムで、療育、法的措置、保護を中心としたサービスシステムで、その代表が児童相談所という位置づけであった。
しかしながら、家庭や地域での子育て能力が脆弱化している状況を踏まえると区市町村レベルで、保育所だけでない、多様な子育て支援のサービス開発と相談・支援体制を構築することが重要であると考えていた。そこで、子育て支援が必要な家庭の近くである東京都の全区市町村に子ども・子育て問題の総合的相談、支援システムとして「こども家庭支援センター」を構想した。その「子ども家庭支援センター」には、社会福祉士、保健師、保育士を配置し、チームで相談・支援の対応をすることを求めた。この「こども家庭支援センター」は急速に整備され、都内全区市町村に58か所設置された。
「地域包括支援センター」の原型は、これらの自治体における新しいシステムづくりの実践を踏まえ、長野県茅野市の地域福祉計画づくりの中で、提案し実現できた。
茅野市の地域福祉計画は、当時の諏訪中央病院の鎌田實院長や医師会の土橋善蔵会長を中心に、100名を超える委員が手弁当で、足掛け3年間に延べ400回を超える委員会を開催し取りまとめられた『福祉21ビーナスプラン』に盛り込まれ実現する。
茅野市は当時人口5万7000人の人口で、中学校が9校ある広大な市域であるが、その市内を4つの在宅福祉サービス地区(現在の日常生活圏域)に分け、その圏域ごとに保健福祉サービスセンターを設置し、社会福祉行政職員、市保健師、市社会福祉協議会職員を配置し、チームで仕事をする、世代横断的なワンストップの総合相談体制と地域へ出張っての問題発見機能を統合的に展開するシステムにした。筆者は、茅野市福祉行政アドバイバーとして関り、目黒区や東京都の実践を踏まえて、このシステムづくりをした。
これからの社会福祉は、出されてきた国の政策に敏感に対応するだけでなく、地方自治体の属性に即して、地方自治体が新しい地域自立生活支援のサービスやシステムを開発していく時代である。

#1、筆者が、各自治体でどのような取り組みをしたかは、『コミュニティソーシャルワーク』(中央法規で販売)第26号、27号で論述しているので参照願いたい。
#2、茅野市のシステムづくりは『福祉21ビーナスプランの挑戦』(中央法規、2003年)を参照願いたい。

Ⅲ 渡邊 琢「言葉を失うとき―相模原障害者殺傷事件から二年目に考えること―」 雑誌『世界』2018年8月号、岩波書店

『障害者の傷、介護者の痛み』(2018年、青土社)所収

※大熊由紀子先生の「ゆきのえにしメール」(7月22日付け)からの情報

(2021年8月15日記)

オペレーションの問題

12日新たに1万8888人が確認された
2日連続で過去最多を更新した
新規感染者が1万8000人を超えたのは初
コロナの爆発的感染拡大に打つ手なし

オペレーションを共有できないオペレーションの問題なので
危機管理能力欠如のまま出たとこ勝負をしてきた話である
コロナ対策のオペレーションの問題なので
安心安全な楽観論が崩れただけの話である
病床確保のオペレーションの問題なので
自宅で急変しても覚悟を強いる話である
コロナワクチンのオペレーションの問題なので
供給沈滞してもコロナに打ち勝つとする話である
政策担当のオペレーションの問題なので
その過失の責めは国民が負うべき話である
不要不急のオペレーションの問題なので
それは自己責任を求められる話である
飲食店のオペレーションの問題なので
すでに科学的エビデンスなき対策の話である
いまさら帰省のオペレーションの問題なので
強い警戒感をもって行動させる話である
緊急事態宣言のオペレーションの問題なので
自治体に資金を回して積極的に動かす話である
世論調査のオペレーションの問題なので
それでメディアが政局を煽る話である
東京五輪のSDGsのオペレーションの問題なので
IOCがTOKYOに責任を押しつける話である
パラオリ開催のオペレーションの問題なので
IOCから勲章もらった二人の話である

稚拙なオペレーションの問題はこれからも災害対策で続けられる
国会は閉会審議で停滞しガンガン感染嵐吹き荒れて首相は身を潜める
内地は低気圧の前線停滞しバシバシ暴風雨で暮らしが叩かれている
ニッポンは無能な閣僚官僚が停滞しバンバン世間の風雨でしばかれる

※オペレーション:ビジネス:一般的に、業務の目標を達成するため、物事を運営・推進していく手順を定めること。またそれに沿って実施していく一連の作業、実務のことをいう。いくら優れたビジョンを持っていても、それを実現するための具体的なプロセスであるオペレーションがしっかりしていないと、企業経営はスムーズに行えない。そのため、企業は、経営企画部門が全社のオペレーションを企画したり、コンサルティングファームにオペレーションの設計を依頼したり、IT技術を活用したりと、様々な施策に取り組んでいる。(「ビジネス用語集」by Elite Network Co,Ltd)

〔2021年8月12日書き下ろし。格好つけた横文字使いさも分かった風な口をきく。大事な事を伝えられない後ろめたさとおごりが悪臭を放っているようだ〕

阪野 貢/「市民福祉教育」の実践・研究のための文献紹介

「市民福祉教育」の実践・研究のための文献紹介
  Literature introduction for the practice and research of “citizen welfare education”


「市民福祉教育」の実践や学習・研究に取り組もうと考えている人たちに対する文献紹介です。「福祉教育」についての基本的な文献を中心に、発行年順にあげています。

 

(1)神戸「福祉教育」研究会 伊藤隆二編『「福祉教育」の研究』柏樹社、1975年12月
(2)伊藤隆二・上田薫・和田重正編著『福祉の思想・入門講座 ③福祉の教育』柏樹社、1976年4月
(3)大橋謙策『地域福祉の展開と福祉教育』全国社会福祉協議会、1986年9月
(4)一番ヶ瀬康子・小川利夫・木谷宜弘・大橋謙策編著『福祉教育の理論と展開』(シリーズ福祉教育第1巻)光生館、1987年9月
(5)伊藤隆二『福祉の教育をすすめるために』(伊藤隆二教育著作集5)福村出版、1996年1月
(6)村上尚三郎・阪野貢・原田正樹編著『福祉教育論―「共に生きる力」を育む教育実践の創造―』北大路書房、1998年4月
(7)大橋謙策編集代表 田村真広・辻浩・原田正樹編『福祉科指導法入門』中央法規出版、2002年4月
(8)硯川眞旬・佐藤豊道・柿本誠編著『福祉教科教育法』ミネルヴァ書房、2002年5月
(9)地域を基盤とした福祉教育・学習活動の推進方策に関する研究開発委員会編『福祉教育実践ハンドブック』全国社会福祉協議会、2003年1月
(10)辻浩『住民参加型福祉と生涯学習―福祉のまちづくりへの主体形成を求めて―』ミネルヴァ書房、2003年12月
(11)阪野貢監修 新崎国広・立石宏昭編著『福祉教育のすすめ―理論・歴史・実践―』ミネルヴァ書房、2006年4月
(12)阪野貢『戦後初期福祉教育実践史の研究』角川学芸出版、2006年4月
(13)阪野貢・木下康彦編著『福祉科教育法の構築と展開』角川学芸出版、2007年9月
(14)長沼豊『新しいボランティア学習の創造』ミネルヴァ書房、2008年12月
(15)阪野貢『市民福祉教育の探究―歴史・理論・実践―』(株)みらい、2009年10月
(16)原田正樹『共に生きること 共に学びあうこと―福祉教育が大切にしてきたメッセージ―』大学図書出版、2009年11月
(17)阪野貢『市民福祉教育をめぐる断章―過去との対話―』大学図書出版、2011年1月
(18)松本すみ子『メンタルヘルスと福祉教育』大学図書出版、2012年11月
(19)上野谷加代子・原田正樹監修 日本福祉教育・ボランティア学習学会協力『新 福祉教育実践ハンドブック』全国社会福祉協議会、2014年3月
(20)原田正樹『地域福祉の基盤づくり―推進主体の形成―』中央法規、2014年10月
(21)日本福祉教育・ボランティア学習学会20周年記念リーディングス編集委員会編『福祉教育・ボランティア学習の新機軸―学際性と変革性―』大学図書出版、2014年10月
(22)清水将一『ボランティアと福祉教育研究』風詠社、2021年6月
(23)原田正樹『福祉教育の理論と実践方法~共に生きる力を育むために~』(福祉教育推進員養成研修テキスト)全国社会福祉協議会、2022年3月
(24)大橋謙策『地域福祉とは何か―哲学・理念・システムとコミュニティソーシャルワーク―』中央法規、2022年4月
(25)松本すみ子『身近な社会課題に挑むメンタルヘルス福祉教育』大学図書出版、2023年3月
(26)日本福祉教育・ボランティア学習学会30周年記念出版編集委員会編『研究編 究める! 福祉教育・ボランティア学習の課題』大学図書出版、2024年11月
(27)日本福祉教育・ボランティア学習学会30周年記念出版編集委員会編『実践編 拡がる! ふくしの学び』大学図書出版、2024年11月

君臨した者の教訓

俺以上の能力は決してあってはならない
俺を超える野心を抱いてはならない
俺より人気があれば先に叩かなければならない
俺より力があれば徹底して奪わなければならない
俺より弁が立つのは口先だけと思わせるのがいい
俺は嘘が上手かったが余計なことは言わぬがいい
俺が任じたバカの不始末は遺憾と言うだけでいい
俺の身代わりは命じたままに動けばいい
俺を庇(かば)った功績は裏で餌を与えれば済む
俺のやり方に不服があれば大枚出して選挙で落とす
俺を慕ってくる票は桜を見せるだけで事足りる
俺の知的劣等感は専門家を使いこなして解消する
俺を買って支援する爺さんを使いこなすのがコツだ
俺が俺がで突っ走るしか権力の道はない
俺への批判は無視して都合のいい情報だけで勝負すれ
俺の言うこと聞かない者は非国民だと切り捨てるといい
俺が残した五輪のレガシーづくりはよくやった

NHKの世論調査!
支持率29% 不支持率52%
俺の予想よりもずいぶん早くに末期症状が出ちまった
まあ野党の支持率伸びない分だけ選挙は楽勝
勝てば官軍負ければ降りるだけのこと
その時は俺の出番になるから心配無用
そう心得て恩をしっかり返すといい

〔2021年8月12日書き下ろし。内閣はもう何を言ってもやっても信用がないだけにNHKの世論調査はいまを実直に反映する。次は誰か〕

縄跳びした

スポーツ店で跳び縄を買った
ずっと欲しかった
でもいつも忘れた
4ヶ月もかかって手に入れた

長さを調整して庭に出た
運動シューズに履き替えた
跳べない
雑草と段差で縄が引っかかる
少しよけて跳ぶ
跳べない
ベランダから渡した物干し竿が邪魔をする
鎌を出して草を刈り段差をなくした

環境は整った
これで跳べるはずだ
跳べない
なんと跳べないのだ
30数年ぶりの縄跳び
こんなはずはないと何度もトライした
でも跳べない
運動能力の衰えを突きつけられた

めげずにトライした
1回跳べた
感覚を取り戻せばいけると勝手に思った
何度やっても数回しか跳べない
感覚が戻ってないと勝手に思った
10回飛べた 
なぜか嬉しくなった
20回にチャレンジした
調子がよかったのか46回を数えた
さらに息が上がった
その後は続かなかった
最後に20回跳べたらやめようと決めた
汗が全身から噴き出しまとわりついた
運動をする心地よさが不快感を一掃した

25回を数えて なぜかホッとした
トータルで100回も跳んだろうか
昼間の32度の余熱を帯びた夕方の風にあたりながら
庭はささやかなトライアル・ゾーンとなった

〔2021年8月7日書き下ろし。71歳が縄跳びをしただけのこと。無心になって汗をかいたことが一番か。いや無意識に五輪に影響されていたのだろう〕

お手軽挨拶

上書きされる原稿
官僚の貧しい想像力の賜物
与えられた原稿を棒読みするだけ
平和へのビジョンはひと欠片もない
読み飛ばし言い間違えは 日常茶飯語ご免で済ます

政治家の劣化は 原爆の悲劇すら喜劇に変える
侮辱を与えた意識も責任も薄く 笑えない不感症
政治家の無駄な言葉は 心に響かず宙に消える
誰も関心の持たない 無価値なゴミ原稿
政治家への批判は いつも無視される
為すべき事が見えず 陥れる恐怖の連続
政治家の不遜な態度は 時代の空気すら読まぬ
変化を頑なに拒み続ける先に見える 新たな絶望

5年前 米オバマ大統領は 原爆死没者慰霊碑に献花した
「私たちはこの街の中心に立ち、勇気を奮い起こして爆弾が投下された瞬間を想像します。私たちは目の当たりにしたものに混乱した子どもたちの恐怖に思いをはせようとします。いつの日か証言する被爆者の声が私たちのもとに届かなくなるでしょう。しかし、1945年8月6日の朝の記憶を決して薄れさせてはなりません。その記憶があれば、私たちの道徳的な想像力をかき立てるのです。その記憶があれば変化できるのです」(日刊スポーツ「政界地獄耳」2021年8月7日から引用)

〔2021年8月7日書き下ろし。こけおどしの者たちが支配する恐怖と未来への絶望半端ない〕

残酷な仕打ち

独裁者は健在だった
世界から孤立しながらも体面を保った
不幸な事実はいつも封印された
漏れた情報はその真否が問われた

コロナは貧しいこの国にも容赦なかった
早々に中国との国境を封鎖した
経済は回らず食糧不足は深刻になった
支配層は万全の感染予防し腹を満たした
下層は脅威と飢餓をそのまま受け入れた
統制できぬ痩せた兵士らの犯罪の情報も流れた

コロナと猛暑と干ばつと水害
貧しき者たちは歪んだ思想に感化され
高貴な支配者への従順を叩き込まれる
貧しき者たちは声を上げることもできず
高圧な支配者の施しに生きながらえる
貧しき者たちは運が悪かっただけだと
高慢な支配者の奴隷と化していく
貧しき者たちは救われることなく
無慈悲な支配者の犠牲となっていく

近くて遠い国 北朝鮮
コロナは 国境を越えて
世界の貧困国と独裁国家の存亡を問う

〔2021年8月7日書き下ろし。世界の貧困国や独裁国のコロナ禍と惨禍の現状を知らなければ…何もできない自分がいる。それでも知らなければならない〕

付記
北朝鮮、干ばつに続き洪水 住民避難、食糧不足悪化も
北朝鮮東部などで8月に入り豪雨による洪水が発生し、多数の住民が避難したり、農地が冠水したりする被害が出ている。7月には猛暑や干ばつによる農作物被害が報じられており、食糧不足がさらに深刻化する可能性がある。
国営朝鮮中央テレビの5日夜の報道によると、日本海側の東部咸鏡南道では堤防が決壊して住宅千戸以上が損壊、浸水。約5千人が緊急避難し、農地数百ヘクタールが冠水したり、流失したりした。橋や道路も壊れたという。中朝国境を流れる北西部の鴨緑江一帯でも洪水被害が懸念されている。(共同通信社2021年8月6日)

友のため息

9日長崎原爆の日
被爆した市民運動の先達者山本いま子女史を偲ぶ
人は苦しむために生まれてきたのではない
人は悲しむために生まれてきたのではない
全ての人々と共に幸せに生きるために生まれてきたのです
死の直前に手にした新年の挨拶状
「お会いしたいですね」
犠牲になられた御霊に心より哀悼の意を表します

友には娘が二人いる
長女は京都に暮らす
次女は札幌に暮らす

今年のお盆は妻の母の半年遅れの3回忌
葬儀以来2年ぶりに家族が顔を合わせる
長女は航空券を数ヶ月も前から手配した
仕事をしてる二人は長期休暇を取った

京都も札幌もデルタ株が急激に感染を広げた
父母はすでにワクチンを接種してる
娘も孫もまだしてない
疾病を抱える父を思うともしもがよぎった
二人は帰郷を断念した
この先同時にまとまった休みを取るのは難しかった

楽しみは大きくなった孫との再会だった
友のおもいは膨らんだ
指を折るように楽しみにしていた
友の期待は萎んでしまった

慈愛に満ちた夫妻は話題を封印した
寂しさが募るのを我慢するしかなかった
誠実な夫妻は静かにお盆を待つ
往来ができるようになる日をじっと待つ

電話口で友のため息を聞いたような気がした

〔2021年8月7日書き下ろし。釧路の旧友と話した。ごく当たり前にあった親子の団欒の風景は、レベルの低い閣僚官僚の手中でもて遊ばされ壊されてゆく〕

付記
お盆の旅行予約、感染再拡大でも前年超え ANAは4割増 
新型コロナウイルスの感染が再拡大する中で、お盆の旅行予約が増えている。全日本空輸(ANA)のお盆期間の国内線の予約人数は5日時点で前年比約4割増えた。コロナ前の2019年と比べるとなお6割減だが、今年はワクチン接種が進み移動への消費者の抵抗が薄れている。ホテル需要は総じて回復が弱いものの、一部リゾート地は稼働率が8割に達している。ANAの5日時点のお盆(6~15日)の国内線予約人数は約65万人。(日経2021年8月6日)

暑さが過ぎれば

昼下がりのにわか雨
5日1ヶ月ぶりの強い雨が土にはねた
気温は下がる気配もなく蒸す

不思議な感覚
かってない30度以上の日が毎日続く
直射日光がジンジンと注ぎ汗が吹き出す
お盆までの辛抱とイヤイヤ諦める
週間予報は9日から25度以下を予想する
雨も降りようやく乾いた大地が湿ってゆく

効果が薄いまん延防止法
札幌は緊急事態宣言レベルの状況が続く
デルタ株は大通りに潜伏し五輪を睨む
競歩もマラソンも観たいものは見るだけのこと
ロックダウンで閉じ込めなければ人流は抑えられない

4日世界の感染者は2億人を超えた
5日日本は1万5千人を超えた
6日首都圏は過去最多の感染者数を更新中
コロナに打ち勝った証と謳ったまやかしの五輪
選手の葛藤とともに閉会まで残り2日間
首都圏はパラ五輪の開催が危惧される
関西圏は夏の甲子園が危惧される

札幌人は慎重な移動を課せられる
依頼された研修で道内を巡る
五輪以上に万全な感染対策で受け入れる

まだ見かけぬ赤トンボ
暑さが過ぎれば北の大地は冷気が包む
コロナで療養中の方々の一刻も早い回復を祈る
IOCと政治に翻弄された異常な夏を
無事乗り越えられますように

〔2021年8月6日書き下ろし。まずは早々に札幌会場のリスキーな五輪を済まそう。札幌はクーラーのない家が多い。自宅療養は病気と暑さの二重の苦しみ。もう少しで涼しくなります。辛抱してください〕

付記
新型コロナ感染者、世界全体で2億人超す デルタ株の猛威で半年で倍増
【ジュネーブ共同】米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、新型コロナウイルスの感染者が4日、世界全体で2億人を超えた。1月26日に1億人を上回ってから半年余りで倍増。感染力の高いインド由来のデルタ株が各地で猛威を振るい、1週間当たりの新規感染者は6月下旬から増加に転じた。世界は再び感染拡大局面に入っている。
ワクチンは先進国や資金力のある国で接種が進む一方、発展途上国では医療従事者にすら行き届いていない。感染者は米国が3500万人、インドが3100万人、ブラジルが2千万人を上回っている。死者数も増加が続いており、世界全体で425万人。
世界保健機関(WHO)の8月1日付集計では、1週間当たりの新規感染者が最も多かったのは米国の54万人(前週比9%増)。インドが28万人(同7%増)、インドネシアが27万人(同5%減)で続いている。3日付のWHO集計では、中東・北アフリカを管轄する東地中海地域事務局管内が前週比37%増、日本を含む西太平洋地域事務局管内が同33%増と拡大が目立つ。(東京新聞2021年8月5日)