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老爺心お節介情報/第2号(2020年6月2日)

「老爺心お節介情報」第2号

Ⅰ 新型コロナウイルスの件でも在住外国人の生活問題にも関心を寄せましょう

① 「外国人労働者の生活課題とソーシャルワーク」(『ソーシャルワーク研究』46-1、相川書房
② 「滞日外国人支援基礎力修得のためのガイドブック」公益社団法人日本社会福祉士会、2019年3月
③ 『多文化福祉コミュニティーー外国人の人権をめぐる新たな地域福祉の課題』 三本松政之、朝倉美江編著、誠信書房

(一読寸評)
『多文化福祉コミュニティーー外国人の人権をめぐる新たな地域福祉の課題』
本書を“一読”しての感想です。今後、読み込んだ後の評価は変わってくるかも知れませんが、取り敢えず本書を頂いたお礼として書かせて頂きます。

①「はしがき」に書かれている韓国の李先生の取り組みの中に、今日われわれが考えなければならない実践課題、理論課題があると思いました。
そのことが、後の章の中で必ずしも意識化されて書かれてないように受け止め、少し残念でした。
日本でも「移住者」に関しての法制上の問題、生活上の問題の“事象”については、それなりに研究が進んできたかと思いますが、その底流にある“社会的排除”の論理との関わりに関する理論研究が必ずしも深められていないと感じています。
② 平野隆之先生の論説である「主体」と「空間」を引用されていますが、私もそれは同じ考えです。ただ、私の地域福祉研究においては、それでは「主体」をどう形成するかを抜きにして“コミュニティ”づくりを語れないと考えてきたことです。
「移住者」の主体形成、生活支援(これはアメリカのハルハウスがイギリスのトインビーホールの考え方と違えたところです)をどういう形で展開するかです。イギリスのコミュニティソーシャルワークの定着化においても、これが大きな問題で、特にロンドンのケンジントン・チェルシー区のスペシャルパッチ(精神疾患の患者やエイズ患者の集積地と同時に「移住者」が集積した地区)の課題でもありました。
他方、「移住者」を受け入れる地域の“原住民”の意識と行動の変容問題です。日本のように稲作農耕文化による「共同」と「土着」がDNAに浸み込んでいる住民に働き掛け、“共に生きる”認識と行動への変容をどう作るかの問題です。
私の一つの仮設的実践は福祉教育による地域福祉の4つの主体形成をどう図るかでした。
この点の考察が殆どなかった点が残念です。この課題こそ、李先生の認識とも関わってくるのではないかと思いました。
③ 本書の編集で、「読書案内」、コラム等はとても参考になりますね。

Ⅱ 地域福祉計画策定や潜在化しているニーズへのアウトリーチを考える課題の一つが、単身障害者の把握とその支援のあり方です

① 「気分『感情』障害(躁うつ病を含む)の総患者数は、平成8年と度比べると、29年は男女とも約3倍増加している」
(『厚生の指標』2020年5月号、Vol.67 No、5 P51 図グラフのページ)
② 新型コロナウイルスの件に関わる申請者への支援等を考える際に、なぜその人の生活が脆弱なのかを、その人、家族のソーシャルサポートネットワークの脆弱性に着目することが重要である。そのために、インフォーマルケアのエコマップをどう描けるかの能力が問われる。

Ⅲ 「大橋謙策3度目の四国お遍路喜寿紀行」の前編分を送ります

写真付きで編集したのですが、容量が多すぎて、添付ファイルでは送れません。文章のみのを取り敢えず送ります。

(2020年6月2日記)

老爺心お節介情報/第1号(2020年5月28日)

「老爺心お節介情報」第1号

社会福祉協議会の関係者の皆様
地域福祉学会の関係者の皆様

皆さんお変わりなくお過ごしでしょうか。新型コロナウイルスの件では、未だ予断を許しませんが、呉々も留意の上頑張っていきましょう。

私は、この3月で東北福祉大学大学院を退職しました。少し、閑になるので、時々皆さんに一方的に、私が見て、読んで関心を持ち、皆さんと情報を共有しておいた方がいいと思われる情報を一方的に送ります。取捨選択して使って下さい。

ただし、大学教員を辞めるということは、教育・研究上迫られて情報を集めるとか、その立場にいるから自然と情報がはいってくるとかということが無くなり、皆さんが職務上知りえていること以上には情報を把握していないかも知れません。まさに、私が知りえたレベルでの情報を独善的に取捨選択して、「お節介爺さん」として送り届けるものです。そんな“お節介”は要らないという人は遠慮なく申し出て下さい。

① 高橋良太著「我が師を語るーー地域にある住民の福祉活動を掘り起こし、分析・整理し全国へ」
(雑誌『ソーシャルワーク研究』46-1、181号、相川書房)
# ルーテル学院大学名誉教授の和田敏明先生のことが書かれています。

② 山野良夫著「山里の拠点で、『引きこもり』、『ニート』の若者が地域活性化に向けて活動」
(全国社会福祉施設経営者協議会機関誌『経営協』2020年4月号

③ 『災害派遣福祉チームの育成に関する調査研究事業』2020年3月、富士通総研
# 令和元年度生活困窮者就労準備支援事業費等補助金・社会福祉推進事業。
## 今回の検討会には、全社協もきちんと参加しています。
### (株)富士通総研 国の医療・福祉分野の調査から検索できます。

(2020年5月28日記)

ほほえみがえし

よいことするってどんなこと

その子のかおがほころんで
「ありがとう」って いってくれたとき
きみもいいえがおで おかえしするよね
ほほえみがえしっていうんだ

わるいことするってどんなこと

ひとつ よけいなことをかってにしたとき
その子には してもらいたくなかったこと
「ごめんなさい」って すなおにあやまると
こまったかおがほころんで
きみもホッとして おかえしするよね
ほほえみがえしっていうんだ

ふたつ わざといじわるしたとき
その子には とてもかなしいことなんだ
「ごめんなさい」って すなおにあやまらなきゃ
でも すぐにはゆるしてくれないよ
ほんとにわるいとおもったら こころをこめよう
こころがつうじたら きっとゆるしてくれる
かおをみあって ニコってできたらなかなおり

みっつ わるいことだとわかってしたとき
その子には なにがなんだかわけがわからない
しまいには おこってしまうよね
しんじていた子に うらぎられたようなきぶん
きみなら すぐにゆるすかな
そんなきぶんになんか とてもなれないよね
ともだちなんかで いたくない

わるいとしって してしまった子に
かしこいきみは そのわけをきくかもしれない
その子には しんぱいごとがあって
だれにも そうだんすることもできずに
ひとりで すごくなやんでいたら
きみが とてもしあわせそうにみえてきた
うらやましく にくらしくて
やつあたりしてきたかもしれない
わるいことだとしりながらも
どうしようもなかったかもしれない

その子のさびしさやかなしさに
きづいてあげられたらどうだろう
もし ゆるしてあげられるのなら
その子は きっとすくわれる
きみのえがおが その子をすくう
その子のえがおが きみもすくう
ほほえみがえしって すてきでしょ

〔2021年3月12日書き下ろし。悪意の根にあるのは人間不信。寛容を拒否する社会に、微笑み返しは幻想か〕

遡上する鮭

犠牲となられた多くの御霊に哀悼の意を表します

報道された陸前高田の復興写真に見入った
冷たい海風は 防波堤を越え吹きすさぶ
十年の時を経てもなお 潮の香を運ぶ
奇跡の一本松は レプリカと化してなお風を受け立つ

3年前 山を崩し旧市街地にかさ上げの土を運んだ跡にいた
ニュータウンが造成され 小学校も開校した
山の上から眺望すると 川を越えた旧市街地は 
整備された道路が 区分けするように走っていた

復興のしるしに建てた 商業施設とその周辺だけは
街を形づくるが 賑わいにはほど遠かった
いまもなお 造成した6割近くが空き地だという
それでも 4割は戻ってきたのは事実だ

全国の地方のまちは 収縮を加速している
三千人のまちで 1年で百人近い年寄りが逝く
高齢化率の高い地域は 確実に多死時代を迎えている
最期を全うする静かな闘いが 日常となった

被災地の多くのまちで 帰郷を断念した人の無念が残された
災害前に戻すことは 叶わない夢想となっていった
でも 故郷の地で生き暮らすと頑張ってきた人たちがいる
まちづくりに必要なのは 若者・余所者・バカ者だという
いまその人たちがリーダーとなって まちづくりを引っ張る

復興のまちづくりのひとモデルこそ
これからの地方のあるべき姿となる
少子高齢化が進展する時代に 団塊の世代はその役目を終えてゆく
まちも国も縮んでゆくその過程の中で 
復興のまちづくりの担い手たちが挑む 熱い故郷づくりこそが
明日の地域や日本のあるべき姿を 指し示してくれるものと信じる

十年は 節目であり通過点にしか過ぎない
哀傷の念を抑えながらも 命の輝きと人のつながりの豊かさを学んだ
「負けないぞ!」 
その強い意思こそ 分かちあいたい
空き地の広さを論ずることよりも
人の心の空き地を 人の心で埋めてゆくことこそ
人が生きるに値する 故郷づくりとなるだろう
そんな余所者が 我が故郷で担うべき課題をいまも探る

震災の年の秋
大船渡の片田舎の漁村で見た
故郷に戻る小川を遡上する鮭の姿に
長い旅路の果てに死力を尽くして
次代を残すことに全力で挑む姿に
東北の被災地の復興に いまも果敢に取り組む
多くの人たちの姿が 重なって見えてきた

〔2021年3月9日書き下ろし。十年の間、被災地を三度訪問した。多くの方が語るなかで、何をか云わん。そう思いつつ書かざるを得なかった〕

福祉教育・ボランティア学習の理論化と体系化の課題

出所:福祉教育・ボランティア学習の理論化と体系化の課題/第2回大会・基調講演/日本福祉教育・ボランティア学習学会、1996年11月23日。
謝辞:転載許可を賜りました大橋謙策先生と日本福祉教育・ボランティア学習学会に衷心より厚くお礼申し上げます。

学会の新たなる10年に向けて

出所:学会の新たなる10年に向けて/第10回大会・総括講演/日本福祉教育・ボランティア学習学会、2004年11月28日。
謝辞:転載許可を賜りました大橋謙策先生と日本福祉教育・ボランティア学習学会に衷心より厚くお礼申し上げます。

虚心坦懐の境地

人の欲は 底なしの淵
支配欲 出世欲 愛欲 物欲 利欲
凡夫ゆえに 強まる欲望
ひたすら 貪欲に求め続ける

人の欲は 満たされぬ器
私欲が過ぎて 乾きを促す
凡夫ゆえに つのる執着
おもむくままに さらに求める

罪深き凡夫の 血走った眼
強欲を隠しきれない 傲慢なふるまい
人を踏みつける 尊大な応対
人を妬み恐れる 小心者の強がり

少欲知足は 虚心坦懐の境地
少欲に甘んじ 断ちたい執着
知足をもって ありたい心境

虚心坦懐の境地を求めるがゆえの
そうはならぬ葛藤に 身を焦がす
それはまた 得がたい心境への
凡夫の尽きぬ 欲望なのか

※虚心坦懐(きょしんたんかい):心になんのわだかまりもなく、平静な態度で事にのぞむこと(さま)。
※凡夫(ぼんぷ):平凡な普通の人。凡人。〘仏〙仏教の真理に目ざめることなく、欲望や執着などの煩悩に支配されて生きている人間。異生(いしょう)。

〔2021年3月8日書き下ろし。尽きぬ欲望の淵を覗くと醜い己の顔が浮かび上がってくる〕

満席御礼

だからね
上手につき合えっていったでしょ
隠そうとするからバレるんだよ

おかげでね
こちとらは とばっちりを食らった
世間に家族が 笑いものにされちまった

もうないか
そう聞かれて ないフリしたけどすぐバレた
叩けば埃が出るくらい 世間はすっかりお見通し

それなのに
役所仕事のお手盛りの いつものずさんさ見せつけた
利権絡みのスキャンダル 信用なんてくそ食らえ 

それで
子どもに見せたくもない 厚顔無恥な醜態さらして
おまけに 詰め腹を切らされる

しまいに
更迭されて 出世コースを見事に外して
いまじゃ 左遷ポストも満席なり 

〔2021年3月8日書き下ろし。総理も大臣も乾いた陳謝に慣れてきた。政治家のトカゲの尻尾切りは常套手段〕

付記
【速報】総務省、谷脇総務審議官を事実上更迭
武田総務大臣は、谷脇総務審議官がNTTの澤田社長らから国家公務員倫理規定に違反する疑いのある接待を受けていたとして、事実上、更迭すると発表しました。
「幹部職員である総務審議官が、公務に対する信頼を著しく失墜させる行為を行ったことは誠に遺憾であります。改めて総務大臣として、深くおわび申し上げます」(武田良太総務相)
総務省によりますと、谷脇総務審議官はNTTの澤田社長やNTTグループ幹部から、2018年から去年にかけて合計3回、あわせて10万円を超える接待を受けていたということです。また、巻口国際戦略局長は、山田真貴子前内閣広報官とともに、去年、1人あたりおよそ5万円の接待を受けていました。総務省は、谷脇氏・巻口氏を国家公務員倫理規程違反の疑いが高いとして処分を検討していて、谷脇総務審議官については、衛星放送関連会社からの接待問題でも処分を受けていることなどから、8日付で大臣官房付に異動させると発表しました。事実上の更迭です。(TBSニュース2021年3月8日)

地力を引き出す

自(みずか)らを見つめる
いまどんな生き方をしているのか  
そこにどんな課題を見つけたのか   

自らを見つける
いまなりたい自分に巡り合えたのか
そこでどんな人間に成長させたいのか

自らを変える
いまどんな悩みに苦しんでいるのか
そこでどんな弱さと向き合っているのか

自らを鍛える
いまどんな力をつけようとしているのか
そこでどんなことに取り組もうとするのか

自らに挑む
いま成さねばならぬことに集中しているのか
そこでどんな力を試そうとしているのか

自らと生きる
いま誰かを愛(いつく)しんでいるだろうか
そこにどれだけのおもいを傾けているのだろうか

自らが生かされる
いま誰の懐に深く包み込まれているのだろうか
そこでどれだけ支えられているのだろうか

あるとき はたと思い知る
自(おのずか)ら地力をつけたつもりが
すべて 誰かが与えてくれたものだと
地力は
人によって育てられ
人によって引き出される

※みずから(自ら):自分から積極的に行うさま。自分自身で。
※おのずから(自ら):他から力を加えることなくそれ自身の力で、が原義。①物事の成り行きや自然の道理に従って自然にそうなるさま。②いつの間にか。知らず知らずのうちに。

〔2021年3月7日書き下ろし。自分で努力して身につけた地力と思しき力は、どれだけ周りの力を借りたのか、時に強く知らされる〕