阪野 貢 のすべての投稿

秘密

秘密を楽しんだ
誰も知らないから 秘密だった
ひとりで楽しむ秘密がいい
ひとりの方が楽しかった

バレないように 隠し通す
秘密は スリリングだった
いい人ぶってる自分とは 違う自分がいた
だから 余計に秘密にしたかった
悪さの代償は 誰かが代わる

こんな人も 秘密を抱えて生きていた
知らぬと白を切って 反論する
正当性をかざして 仲間がかばう
金の回りをよくして 誘致を固める

ガードを何重にも張り巡らせた
秘密が暴露されそうだ
JOC招致委が 海外に送金した総額11億円超
東京五輪誘致の疑惑が深まる

〔2020年9月24日書き下ろし。虚実が飛び交う金まみれの五輪の世界、秘密が暴露されたら…だから徹底的に否定するしかない〕

きしみ

人の世を 不安に陥れる自然の脅威
人の世に 恐怖をふる舞う自然の作為
人の世が 翻弄される自然の摂理

身体が きしみをあげる
自粛生活を 受け入れる

人とのつながりが きしみをあげる
離れるしか 守れない

中小の企業が きしみをあげる
景気の回復が 遅すぎる

学校教師が きしみをあげる
子どもの不安は ぬぐえない

医療と福祉の従事者が きしみをあげる
リスクゼロの闘いに 終わりは見えない

社会のきしみは 静かに広がるばかり
いまの人心の緩みは 政権交代時のエアポケット
政治のきしみが 不気味に忍び寄り
次の不幸を 呼び寄せる

〔2020年9月23日書き下ろし。経済回復のための行動規制が緩和されたのは、コロナウイルスへの感染対策が広く理解され実施されているからだろうか。問題は政治だ〕

明日にララバイ

こんな時代だからこそ
きみにやさしくしたいんです
だって こころが壊れそう
だから そばにいて
明日に ララバイ

こんな時代だからこそ
きみを信じていたいんです
だって こころがくじけそう
だから 手をつなごう
明日に ララバイ

こんな時代だからこそ
きみに約束したんです
だって こころが折れそう
だから 離さないと
明日に ララバイ

こんな時代だからこそ
きみと夢を見たいんです
だって こころが枯れそう
だから 行かないで
明日に ララバイ

こんな時代だからこそ
きみと愛を語りたいんです
だって こころが乾きそう
だから 抱きしめて
明日に ララバイ

〔2020年9月22日書き下ろし。ふとララバイと口ずさんだ。書き終えた時メロディーは跡形もなく霧散した〕

自己肯定感とは

自分であることを 見つめ直し
人として生きることの 価値を見出す

自分を褒めてあげたい
こんな私でも いんですか
お役に立つことって あるんですね
今さらなんですが いいとこありました
みんなが言うほど 悪くはないでしょ
一つぐらい取り柄って あるもんですね
ようやく 自分の考えを伝えられました
失敗ばかりでしたが 認めてくれました
ダメだとあきらめていましたが 最後までやれました
人の話は よく聞く方ですね

嘘つきにも 正気に戻る一瞬があるもんですね
言葉足らずで 誤解させました
悪気は これっぽっちもありません
つい出来心で ほんまは違います
酒さえ入らなければ 仏さんです
苦労したから その辛さは重々わかります
がめついわけじゃなくて 節約です
意地悪じゃなくて 助言です
ずる賢さがなければ 生き残れません
正直だと出世できないから 偽ってきました
つい人と比べて粋がっていましたが みっともないですね

鬼のような形相でも 根はやさしいんです
利己が勝(まさ)って 他己を邪魔してました
不正の感覚がマヒしてるって ようやく気づきました
不義を働いていたなんて いま分かりました
良心の呵責を覚えるってこと あるんですね
周りが褒め称えるので ついその気でいたのが恥ずかしい
座った地位が 私を変えただけでした
偽りの姿に 嫌気がさしました
化けの皮を剥がされ すっきりしました
やってることが 虚しくなりました
いつか罰が当たると思っていたら 当たりました
人の生き血を吸うのも 飽きました

さて どなたの自己肯定感情?
なかなか 性根の腐った人は変えられません
言い過ぎたことで 付け足すことば
「でもいい人だよ」
その一言で 互いが救われます

「有為転変」のこの世です

〔2020年9月20日書き下ろし。人も世も移ろいやすし。世が乱れていても、せめてことの終わりは善き人でありたい。そんな人がいましたね〕

負い目

目覚めと共に浮かんだ 言葉
負い目

覚醒していない 脳裏に降りた
負い目

拭いきれず澱のように 沈殿していた
負い目

心の片隅に住み着いて 負担を強いる
負い目

どんなにあがいても 逃げることはできぬ
負い目

忘れたころに 鮮明に思い出させる 
負い目

好き勝手に生きてきたことへの 悔恨を求める
負い目

今さら返すに返せない 人生の借りを訴える
負い目

負い目を秘めながら 何事もなくいまを生きる
誰に返したら この負い目は軽くなるのだろうか
そう自問自答しながら 特別の朝を迎えた

〔2020年9月20日書き下ろし。71歳の誕生日の目覚めの朝。重たい言葉がふってきた〕

絵はがきにしたためる

友人の版画家中野章から もらった 
北の自然の景色を描いた絵はがき
手元に 数十枚ある

末孫宛にしたためた
メールをしたが 反応なし
電話をかけても 出ない
諦めて 絵はがきを取り出した
用件を書き出したら 書き足りず
絵の周りの空白にまで 侵略した

受け取った孫からの電話
電話番号が変わったことを知らされた
しばらく音信不通というより
十日前に会ったばかり
電話やメールは ほとんどしたことがない

絵はがきを手にして 電話をかけてきた
ようやく 二人で初めての遠出の計画を練る
美しい中野の絵はがきの世界に
孫は 釣りの楽しみを想像しただろうか

メールにもSNSにもない手書きの世界
絵はがきが創る 旅への誘い
孫への一筆啓上 これからも続く

〔2020年9月19日書き下ろし。孫を釣りに連れて行く約束をした。バイトする孫の日程調整とお天気に左右されるが、絵はがきで気持ちをつなぐ中野章氏の世界がいい〕

ラストシーン

ラストシーンは 
劇的な どんでん返しもいい
奇想天外な展開も面白い

ラストシーンは
泣けるのは 定番か
笑いほうけるのも 楽しい

ラストシーンに至るまで
ハラハラドキドキするのもお薦め
期待を裏切らず 予想通りは少しいい

ラストシーンは ストーリーの総決算
なぜそこにと かえりみるのは後の楽しみ
ひとり噛みしめるのも みなで語り合うのも醍醐味か

ひとりの人生のラストシーン
己が演出できぬ 歯がゆさが残る
ストーリーが断たれた突然の ラストシーン
見ることさえ叶わぬ
現世の夢路に果てる 一泡のストーリー

自己完結

〔2020年9月19日書き下ろし。生と死の狭間で生きる自分のラストシーンを描く〕

自助・共助・公助

自助の蓄えは 日々目減りする
自助の手は 日々痩せ細る

共助の頼りは 日々疎遠となる
共助の支え手は 日々老いる

公助の求めに 日々経費が嵩(かさ)む
公助にすがり 日々手をあわす

自助できるものは ハイクラスなり
共助に手を貸さぬものは 地域と縁あらず
公助を有効に使えるものは 受けよく豊かなり

自助できぬものは 身を縮める
共助に身を委ねるものは 心苦しい
公助にすがるものは 身を貶める  

自助を求めて その責任を問う
共助を求めるも 地域は疲弊する 
公的扶助を求めても ハードル高し

格差社会は 人の心を卑しくする
貧富の差別は 人の心を弄(もてあそ)ぶ
コロナが加担し 人の心を蹂躙する

されど 心弱き者たちよ
心くじけそうになろうとも
揺り戻しの スイッチを押そう
そこから 弱き者たちよ
人の心を取り戻す
揺り戻しの 小さき声をあげよう
いまこそ 弱き者たちよ
人の暮らしを取り戻す
揺り戻しの 波動を起こそう

〔2020年9月17日書き下ろし。政治に翻弄される弱き者たちが、自助という名目で生きるに瀕してはならない〕

後ろめたさ

報われぬ世と 嘆くとも
分断の世を 抗(あらが)いながら
差別の世に 人として生きたい

ただいつも 後ろめたさがつきまとう
声するだけの 自分の無力に
書くだけの 自分の非力に
口先だけの 自分の卑力に

だからいつも 後ろめたさが強くなる
動けぬ エネルギーの枯渇
憤るしかない 自己完結
悟ったフリする 自己欺瞞

いつまでも 後ろめたさは責め続ける
世の非道を傍観する 加害者として
世の不正を見逃す 加害者として
世の不義に目を背ける 加害者として

それでも 後ろめたさが人の道を示す
後悔とは違う 懺悔
弁解とは違う 内省
詭弁とは違う 良心

後ろめたさの功罪
忘却した罪過を 白日の下に晒す
無関心を装った罪過を 社会に問う
利己的に生きた罪過を 一人ひとりに課す

〔2020年9月17日書き下ろし。雑感「相模原障がい者施設殺傷事件」が指摘した「後ろめたさ」を自問する〕

しょいっこじじいの悲哀

むかしむかし
あるところに しょいっこじじいがおったとな
背中のカゴに 何でもしょってしまうとな
どんなおもていいもんでも しょってしまうとな

それが えれ~い評判ばとったんだそうな
そこで いじくそわりいいじいじいが
わるふざけして ためしに 
おもていい ほんとおもていいもんばしょわして
おもしろがったんだそうな

しょいっこじじいは 負けじとばかりに踏ん張ったそうな
それば見てた 別のじじいが
もうひとつといって のっけたそうな
そんでも しょいっこじじいは 根性見せて踏ん張ったそうな
それば見てた ほかのじじいが
もうひとつといって のっけたそうな
しょいっこじじいは やっとこさ歩き出そうとしたそのときに
別のじじいが もうひとつ のっけたそうな
それが とどめのいっこになって 
しょいっこじじいは 見事にひっくり返ってしまったそうな
それを見て まわりのじじいたちが 
ざまあないなと 高笑いしたそうな

やっぱりおまえさんには 無理なこっちゃ
ひとりでかつごうと 強欲ばるからひっくり返るんだ
これからは 分をわきまえて かつげばいいと言ったそうな 
この大きくなったお荷物は 強欲じじいみんなで力を合わせて 
老いたからだでかつぎましょうと 言ったそうな

こうして 老いさらばえるしかないじじいたちが
のしてえらぶるところと あいなったそうな
しょいっこじじいは 文句も言えず 
だまってついて行きましたとさ

〔2020年9月16日書き下ろし。亡霊のような者たちの権力がある限り、亡国へ旅路はまだ続く〕