詩集「夢織りし子らに」
鳥居一頼
「夢織りし子らに」
子どもらの夢の世界に遊びたい
思い描くやわらかな世界に迷いたい
やさしく安らぐ世界に包まれたい
見果てぬ夢を追う子らは
儚(はかな)さを乗り越え
流浪し 夢追う旅人となる
夢のひとしずくを 手のひらにのせ
瞳(め)を輝かせて 明日を見つめる
恐れることなく まなざしを注ぐ
凜として すこやかに いまを生きる
ひとりとして 夢をあきらめぬよう
尊き子のいのちとこころを 護りたい
生きる喜びは 夢のひとかけら
昨日とは違う今日を
今日とは違う明日に翔る
世と人を信じて生きる子は
楽しき夢を織る
1
「好奇心を刺激する」
好奇心が刺激された
心のうちをちょっと覗いた
果たしてギューッと心が鷲づかみになる
その手応えを感じてみる
好奇心が湧いた
未知なる世界へと誘う
果たしてピンときた直感を信じたい
その強さに身を預けたい
好奇心が動いた
やる気がその気にさせる
果たしてガーンとスイッチが入る
その反動を感じたい
好奇心が研ぎ澄まされる
求めるものの正体が現れる
果たしてキリキリした緊張感が心地よい
その反応に身を投じたい
好奇心が育てる
成長のバロメーターに変わる
果たしてドキドキした探求心で満ちてゆく
その渇望に精気をもらおう
好奇心は枯渇させてはならない
生きていることの感性への刺激
生きていくことへの思索への刺激
生きることへの共生共存への刺激
2
「保育に生きる世界」
溌剌とした空気感がいい
颯爽とした様子もいい
無双な環境がさらにいい
世に命のほとばしるど真ん中に生きる
幸せを共に育む真ん中を生きてきた
無償の愛をど真ん中に幼子に注いで生きている
羅列すれば保育のど真ん中を真っ直ぐに生きる
にこっと笑う幼子に心が和む
困ったようすの幼子に心が揺れる
凜とする眼力の幼子に心が掴まれる
幸いなるかな求められ求めて人を得た
小さき瞳に魅せられて純心を持ち続けた
壊れそうな命のぬくもりを護ることを天命とした
子どもの園は今日も明るい声がする
どの子も安心して心も身も遊ばせる
もっと何かできるもっと何かしてあげたい
エンドレスの保育は幼子がど真ん中に育つ世界だ
3
「お外で遊ぶ」
園長先生
雨が降っても風が吹いてもお外で遊んでね
雪が降っても寒くなってもお外で遊んでね
なかに閉じこもっていないでお外で遊んでね
みんなお外が大好き
鬼ごっこしたり走り回ったり
鉄棒したりおしゃべりしたり
みんなお外が大好き
園庭いっぱいに遊び回る
園庭いっぱいに笑顔が広がる
園庭いっぱいに歓声が響く
園長先生
お外で遊ぶ子大好き
陽を浴びる子大好き
風に吹かれる子大好き
雨に負けない子大好き
寒さに挑む子大好き
ここは子どものパラダイス
たくさんたくさん遊ぼうね
げんげん元気な体力つけよう
思いっきりの笑顔がいちばんさ
げんげん元気に大きく育とう
4
「大人になれたら」
腹が満たされない
2食も食べられない時代があった
食べることが生きがいだった
ガザの子は言った
大人になったら…ではなかった
大人になれたら…何と答えよう
腹をすかせ明日の命も危ういのだ
余りに多くの人の死を見てしまった
命を奪われそうになっても抗えない
大人になる前に死が迫っている
大人になる前に飢餓にもだえる
大人になる前に非道を知りすぎた
力なき子らは食べ物を探す
祈りを唱えても何も変わらない
大人になれたら何を手にするのか
大人になれたら憎しみを抱くのか
大人にもしもなれたら自由と平和を…
力なき子の希望は泡とついえる
戦時下に生きる子どもらをいたぶる
異教も思想もただの幻想でしかない
政治の具として抗争と犠牲を強いる
大人になれたら…爆撃でかき消される
大人になれたら…傷ついて動けない
大人になりたい…奇跡的に生きている
5
「なんかへん」
なんかへん
小さなつぶやきが聞こえた
やっぱりなんかへん
真剣な表情に変わった
どこがへんなの
だってなにがいけないのかわからない
みんなそうおもっているからね
みんながそうおもうとそうなるの
だれもへんだとはおもってないから
そこがへんだよね
なにがへんなの
だってだれもへんだとおもわないから
それでいいんだよ
よくないよ
そうおもってもひとりじゃね
ひとりじゃいけないの
そうはいってはいないけど
みんなってだあれ
ここにいるみんなだよ
ひとりひとりきいてみた
きかなくてもわかることだよ
へんだなってだれもおもわないの
いけないことだとしってるからね
へんだなっておもっちゃいけないの
ほんとにいけないことかな
みんなとちがっちゃいけないの
みんなとちがうとどうなるの
みんなといっしょならいいの
みんないっしょってへんだよ
みんながほんとにそうおもっているの
だれもきもちわるいっておもわないの
ボクはいやだな
みんなということばがこわい
みんなというくうきがこわい
みんなという大人がこわい
ボクはみんなになりたくない
なんかへんだよっていえないもん
ボクはボクでいたい
なんかへんだっていえるもん
ボクはボクになっていく
なんかへんだとおもう子に
6
「でもね」
でもね ちょっとちがうんだよね
うまくはいえないけど
ちがう気がする
でもね まちがっていないよ
よくわからないけど
そんな気がする
でもね うそはついていないよ
いたずらっこだけど
しょうじきな気がする
でもね いじわるしてないよ
くちはわるいけど
やさしい気がする
でもね らんぼうはしないよ
えばりんぼうだけど
まけずぎらいな気がする
でもね ずるはしてないよ
みえをはるけど
がんばってる気がする
でもね まだゆめがないよ
考えてはいるけど
なんだかちっぽけな気がする
でもね このままではないよ
いろいろといわれるけど
なにかできそうな気がする
7
「とちゅうだもん」
じぶんことする
うまくできないよ
ほらむりでしょ
だってできるとちゅうだもん
だまって見てて
じぶんこと
なんでも不思議が溢れる
じぶんこと
なんにでも首を突っ込む
じぶんこと
回り道寄り道大好きなんだ
じぶんことしたい
できないとべそをかきそう
あきらめないでやってもみて
やってみたい子が大好き
そんならもいちどやってみる
いまはできるとちゅうだもん
だまって見ててね
じぶんこと
やりたいことが見つかった
じぶんこと
おもしろいことが見つかった
じぶんこと
いまはとちゅうとお茶目が可愛い
じぶんこと
できると思った
じぶんこと
だれかが手を貸した
じぶんこと
いまもとちゅうと言いはった
幼子のじぶんことの言葉が嬉しい
幼子の自信満々のどや顔が愛おしい
幼子のいまはとちゅうと偉そうなのがたまんない
8
「だはんこく子」
なぜダメっていうの
なぜやりたいことをさせないの
なぜすぐじゃまするの
なぜひとりでしちゃいけないの
なぜはなしをきいてくれないの
なぜたくさんやくそくさせるの
なぜできないってきめつけるの
なぜほしいといちゃあいけないの
なぜいやなことをさせるの
なぜできないのにさせようとするの
なぜいうことをきかないっておこるの
なぜわかってるのにくどくどいうの
なぜいつまでもいやなことおぼえてるの
なぜおわったことまでもちだすの
なぜやりたいように自由にさせてくれないの
なぜそんなにしんぱいするの
なぜしっぱいするのをいやがるの
なぜともだちとくらべたがるの
なぜべんきょうすればいい子になるの
なぜあの子とあそんじゃだめなの
なぜだらだらしちゃいけないの
なぜがなぜかたくさん
なぜがなぜだかしらないけれど
なぜかボクをしばってしまう
だからだはんこく(わがままになる)
ボクのせいいっぱいのていこう
9
「小さな制裁」
もういいかい
まあだだよ
もういいかい
もういいよ
どこにかくれてるのかな
おかしいいな
どこにいったんだろう
だれもいなくなった
どこにいるの
だれかへんじして
どこにいったのか
だれかおしえて
なぜかひとりぼっちになっちゃった
だれももうあそんでくれない
なぜかひとりぼっちにしちゃった
だれももうあそばない
ひとりぼっちにされちゃった
友だちにいじわるしちゃった
ひとりぼっちにするしかない
友だちをいじめちゃいけない
なぜひとりぼっちになったのか
その子がいちばんよくしっている
なぜひとりぼっちにしたのか
その子のせいだとしっている
ひとりぼっちになっちゃった
どんなにいいわけしてもうそっぽい
友だちにこころからごめんってあやまろう
なぜかひとりぼっちにしちゃった
友だちだからわかってほしかったんだ
でもなんだかかわいそう
ねえもうゆるしてあげようか
10
「ぶっちゅーんしようよ」
魔法の呪文ぶっちゅーん
みんなのこころに魔法をかける
涙をいっぱいためたきみ
お友だちにいじわるされたの
まずは泣き虫やっつけよう
きみの涙にぶっちゅーん
たちまち笑顔になっちゃった
つぎはいじわるしたきみ
いじめ虫をやっつけよう
きみのえばった顔にぶっちゅーん
たちまちごめんとあやまった
失敗してしまったきみ
お友だちに笑われてしまったの
まずは恥ずかし虫をやっつけよう
きみの赤い顔にぶっちゅーん
たちまち勇気がわいてきた
つぎは笑ったお友だち
小バカ虫をやっつけよう
にやにやほっぺにぶっちゅーん
たちまち恥ずかしくて逃げ出した
なくしものをしたきみ
大切にしていたものだったの
まずは困った虫をやっつけよう
きみの泣きそうな顔にぶっちゅーん
たちまち見つかるまで頑張るぞ
大事なものをかくしたきみ
いたずら虫をやっつけよう
ずるがしこい顔にぶっちゅーん
たちまちごめんと差し出した
悲しそうなきみ
ママが風邪を引いて寝てるんだって
まずは心配虫をやっつけよう
きみのべそをかいた顔にぶっちゅーん
たちまち笑顔がもどってきたね
つぎは寝ているママ
風邪の虫をやっつけよう
はなれてママへぶっちゅーん
たちまち元気が戻ってきたよ
困った顔のお友だち
ひとりで悩んでいたんだって
まずはひとりぼっち虫をやっつけよう
きみのさびしい顔にぶっちゅーん
たちまち大丈夫とみんなが言った
魔法の呪文ぶっちゅーん
涙をふきとばすぶっちゅーん
みんなのこころにきっとある
11
「やくそくしてね」
おりこうさんにするってやくそく
ボクおりこうさんだよ
いいつけもまもってるよ
なぜやくそくしなきゃいけないの
まもらないかもしれないしょ
ボクのことしんじてないんだ
そうじゃないけど
やくそくすればまもろうとするでしょ
やくそくしなくてもちゃんとしてるのに
それはわかっているけれど
やくそくするってふたりがしんじあうことなの
やくそくしなきゃしんじられないんだ
いやだな
しんじられるためのやくそくなんて
いやだな
しんじてほしいためのやくそくなんて
いやだな
やくそくよりもたいせつなことがあるのに
たいせつなことってなあに
やくそくがなくてもしんじることさ
やくそくというきまりがないといけないの
やくそくということばはほんとにいいの
やくそくってボクだけのことなの
やっぱりへんだよ
ボクにだけやくそくさせるってなんかへん
ボクをやくそくでしばろうとしているみたい
ボクはやっぱりやくそくしなくてもちゃんとする
ボクはしっぱいすることもある
ボクはできないこともたくさんある
でもね
ボクが大きくなるたねだよね
やくそくしたからだいじょうぶにはきっとならない
やくそくがおおきなたねにはならないからね
たいせつなのはいっしょに大きくなるたねをみつけること
たいせつなのはいっしょにボクがおおきくなるようしんじてくれること
やくそくできることはいまはないかな
12
「またあとで」
おとなのくちぐせ
またあとで
いつもあとまわし
いつもおいてきぼり
いつもだまされたきぶん
おとなのくちぐせ
いそがしいからあとでね
いつもはなしはちゅうぶらりん
いつもはなしはちゅうとはんぱ
いつもはなしはそれまでなのさ
おとなのくちぐせ
いまはごめんね
いつものこととあきらめる
いつものむしとしっている
いつもごめんできいてはくれない
おとなのくちぐせ
いいかげんにしなさい
はなしをきいてもらいたい
はなしをしつこくする
はなしにきれてしかられる
おとなのくちぐせ
すこしがまんしてね
ずっとがまんをしてきたけど
ずっとまっていたけど
いつのまにかわすれてしまった
13
「夢ってなあに」
夢ってなあに
なぜ夢をみにゃきゃいけないの
それはね
まわりのひとやまわりのことがいいなって
こころがうごいてしまうの
なんだかウキウキしてワクワクするの
それをあこがれっていうんだよ
だからね
こんなひとになりたい
こんなことをしたい
そうねがうことが夢なの
夢があるとすごくげんきがでてくるんだよ
そこでね
夢をかなえようとがんばるんだよ
なにもしないでいてはなにもはじまらない
夢にちかづきたくてがんばるんだよ
なにもしなければ夢はちぢんでしまんだ
でもね
おおきくなると夢はかわることもあるんだよ
あこがれがかわることもあるからね
もっとおおきな夢をみたいとおもうんだ
こころがふくらんでドキドキしてくるんだよ
夢ってこころをおおきくさせるちからなんだ
夢ってこころをあったかくするちからなんだ
夢ってこころになくてはならないえいようなんだね
14
「みっともない」
そんなかっこうしてたら
みんなにわらわれるよ
みっともないからやめてね
みんなってだあれ?
そんなたべかたしたら
みんながいやなかおするよ
みっともないからよしてね
みんなってだあれ?
そんなことしたら
みんなにばかにされるよ
みっともないからしないでね
みんなってだあれ?
そんなこといったら
みんながあきれるよ
みっともないからいわないでね
みんなってだあれ?
そんなかってなことしたら
みんなにそっぽむかれるよ
みっともないからみんなとあわせてね
みんなってだあれ?
だれかにみられている
だれかのかおいろをうかがっている
だれかにあやつられている
そうとはしらずに
みっともないとしつけする
じゆうにやりたいように
やらせてよ
じゆうにおもったことを
いわせてよ
じゆうにみっともないことしたいな
15
「お母さんが多すぎる」
お母さんが 車にはねられた
お母さんが 病院のれいあんしつにねかされていた
お母さんを かそうばへつれていった
お母さんが ほねになってしまった
お母さんを 小さなはこにいれた
お母さんを ほとけさまにおいた
お母さんを まいにちおがんでいる
小学4年生の母をなくした子の詩である
担任は「お母さんは最初の1行書けばいい」と指導した
子どもは書き直そうとはしなかった
子どもの母への強い慕情を受け止められなかった
詩のテクニックをここぞとばかり指導する担任
子の切ない悲しみは連続する「お母さん」に表れる
子どもの感性の鋭さを知らずして技法に走る
子どもの切実な訴えを軽視して技法に拘る
子どもは書き直しを拒絶する
どんなに母を呼んでも二度と会えない
その悲痛なおもいに寄り添いたい
試されるのは担任の死生観なのだ
教師の指導の怖さを知らされた
詩集に掲載し評価されることを念頭に置く
教師の指導の質を子は見切った
母を亡くした強い喪失感を繰り返し訴えた
教師の指導に屈せず子は自分を主張した
吐いた言葉の重さこそその子の本心を物語る
※朝日新聞「日曜に想う」(21 年 2 月 21 日)で紹介された児童詩集「青い窓」から子どもの詩を引用。
16
「お行儀がいいわね」
お行儀がいいわね
いつもほめられる
だからママもやさしくなるよ
お行儀がいいわね
ほんとはそうしたくない
だってママがこまったちゃんになる
お行儀がいいわね
たまにそういわれる
いつもママはそうしてねって
お行儀がいいわね
すきなおばちゃんだからね
だからママはあきれたかおをするよ
お行儀がいいわね
つかいわけするからね
だってママからごほうびでるんだ
お行儀がいいわね
そうしてればしかられないもん
いつもママはピリピリしてるからね
お行儀よければ
だれからもほめられる
お行儀悪いと
だれもがいやな顔をする
一番困った顔をするのはママ
内緒だよ
ママを助けてあげてるんだ
17
「とろくさい」
あそんだあとのおかたづけ
まだちらかってるよ
めんどうくさってふくれっつら
キミのそのかおもかわいいね
ひとつずつでいいからね
ゆっくりでもいいからね
ひとりでやってごらん
もうママは手はかしてあげないよ
ひとりでできれば
すこしおおきくなったということ
ひとりでしなければ
いつまでもあかちゃんかな
ひとりでやれたら
これかもあそべるよ
あそんだあとのおかたづけ
さあもうすこしだね
キミががんばるかおがすきなんだ
だんだんいいかおしてきたね
ママはおしごとするけどいいかな
もうそばにいなくてもいいよね
ひとりになってもだいじょうぶ
みていなくてもだいじょうぶ
もうすぐだからだいじょうぶ
ひとつずつ
とろくさくともできるんだ
とろくさくてもいいんでしょ
とろくさいのもかわいいでしょ
18
「ボクの心に土足で入らないで」
二人の子がいた
サンタはいないよ
イブのプレゼントはパパやママさ
サンタが世界中の子どもに配るなんて噓さ
それを信じるなんてなんてバカなんだ
サンタはいないってなぜわかるの
ボクは夢の中でいつも会ってるよ
信じるとか信じないとかじゃないんだ
サンタはボクの心の中にいるんだ
それがどうだというんだい
サンタがいない
そういうキミもプレゼントはもらうんだろう
ただプレゼントをもらうだけのイブなんだね
サンタがいない心の中はからっぽだね
なんてさびしい夜なんだろう
サンタがいなくてもいい
噓つきよりはもっといい
信じるなんてどうかしてるよ
見たこともないことを信じるなんて
ボクは噓なんて信じない
神様をキミは信じてる?
見えなくても信じる人はたくさんいるね
見えないものはみんな噓なの
きっと信じる人には神様はいるんだよ
ボクは神様のことはわからない
でもサンタはいる
そう思うだけでもなんだかあったかい
世界中の子どもたちを想像してごらん
みんな笑顔でサンタを待っているんだ
イブは世界中でイエスキリストの誕生を祝う日
キリスト教を信じなくても祝うよね
なんか変だよね
でもなんかすごく嬉しい
心待ちにしたものをプレゼントされるイブ
ドキドキしてなかなか寝つかれない長い夜
サンタの代わりのパパでもママでもいいんだ
だってサンタはボクの心にずっといるから
だからね
サンタはいないって
ボクの心に土足で入ってこないで
信じるってね
心に夢のカタチをつくることなんだ
心に幸せのカタチを見ることなんだ
大人になってもサンタがいると信じたい
19
「閃くことば」
幼な子の発することばに耳を澄まそう
あいまいな発音でもことばが閃(ひらめ)く
いまを生きることばが閃く
幼な子の発することばに目を凝らそう
語彙が少なくともことばが瞬(またた)く
何かを訴えることばが瞬く
幼な子の発することばに身を任そう
かわいい声のことばが踊る
快く揺れることばが踊る
幼な子の発することばに心を託そう
世界がやさしくことばで包まれる
屈託のない笑顔でことばが包まれる
幼な子の発することばに感性を研ぎ澄まそう
無垢なることばの強さを感じよう
無心なることばの美しさを感じよう
幼な子の発することばに幸せをもらおう
身を委ねる甘えたことばを噛みしめよう
すべてが許されることばを噛みしめよう
幼な子の発することばに真理を見つけよう
真を問うことばにまごころで応えたい
理に導くことばにまごころを尽くした
20
「話せない子」
せっつかれても
いまの気持ちを言葉にできない
歯がゆくてどうしよう
話そうにも
言葉がすぐには出てこない
焦るだけで息を吐く
話したくても
わかってくれるかどうか
心配が先に出る
聞いてあげるよと
次から次と質問ばかり
考えがおぼつかない
言いたいことが自棄(やけ)になる
気持ちがなえてしまって
もうどうでもよくなった
肝心なときに話せない子だね
ちゃんと考えをまとめなさい
手のかかる面倒くさい子となる
話したいのはさ
こう考えているよってことを知ってもらいたかった
こうしたいってことをわかってもらいたかった
こうしたらってことを一緒に考えてほしかった
黙って聞いてくれるだけでよかった
言葉足らずでもわかってくれると思った
話したいって思ったのにうまくいかなかった
聞いてるふりでは思ってることは言えない
また後でねという決まり文句でジエンド
21
「連想する」
連想せよ
楽しきことこそつながれ
心躍る喜びが弾けていく風景を
連想せよ
面白きことこそつながれ
心惹かれ快感の虜になる風景を
連想せよ
愉快なことこそつながれ
心満たす笑顔広がる風景を
連想せよ
熱きことこそつながれ
心動くエネルギーが湧き上がる風景を
連想せよ
幼子のいのちこそつながれ
心ぬくまる優しさに包まれる風景を
連想せよ
無垢の夢こそつながれ
心強くして未来を護る人の風景を
連想せよ
自由と平和こそつながれ
心解き放し赦しを乞う人の風景を
22
「生まれたということ」
愛を知り
希望を抱き
澄んだ秋空に夢が舞う
野の花を愛でるこころこそ人なり
天地のいのちを敬うこころこそ人なり
優しさを分かち合うこころこそ人なり
助け合い支え合うこころこそ人なり
悪を憎み正義を求めるこころこそ人なり
平和を築くこころこそ人なり
様々な出会いを運命にする人でありたい
知欲がいつも湧き上がる人でありたい
生かされる感謝に満ちた人でありたい
生きる喜びを感じる人でありたい
人生エンジョイしながら真っ直ぐに
人生求めるところを果敢にトライする
人生紆余曲解だからこそめっちゃ面白い
人生未来を描くのはきみだけしかいない
澄んだこころで秋空に夢駈けろ
23
「真の協力を知る」
真夏の陽が部屋に射し込む
少女は老女の衣服を脱がす
なかなか思うように事が運ばない
額に汗が流れ始めた
特養ホームでのワークキャンプ
介護の初体験をする中一の少女
二日目の活動は入浴介助だった
ストレッチャーに乗せる支度をする
こんなに面倒だとは思わなかった
通りかかった介護士の一言で救われた
「一人でしようとしないで○○さんと協力したら」
少女はその意味を素早く理解した
一人相撲を取っていたことに気づいた
右手を少し上げてと指示し始めた
為されるがままに身体を預けていた老女が反応した
かといって大きく動くわけではない
それでも服を脱ごうという意識が勝った
ようやく脱衣させて少女は汗を拭った
少女は賢い子だった
服を脱がせてあげることではなかった
声をかけて老女の力を引き出すことだった
服を脱ぐという目的を共有することだった
達成するには二人の力を合わせることだった
一方的になにかしてあげることを当たり前と考えていた
一人で無理ならば仲間と一緒にすることが協力だと学んできた
その考え方は見事に覆され否定されてしまったのだ
老女との対等な関係から導き出された尊厳を知った
その日少女は真の協力を学んだと綴った
※ワークキャンプとは、子どもを対象にした福祉施設で実施される宿泊体験学習
24
「君がきみであるゆえん」
君は君らしさを知っているだろうか
誰かの真似事だと知った瞬間の虚しさ
誰かの考えをパクった瞬間の気恥ずかしさ
誰かの後ろに隠れていた瞬間のおぞましさ
そんな自分を拒んだ
そんな自分が嫌いだった
そんな自分に憤った
君はきみであることを明かさなければならない
他人の影ではないことを
他人に無条件で従わないことを
他人のなりふりに振り回されないことを
他人の思惑に惑わされないことを
他人の判断に身を委ねないことを
他人の醸し出す空気に流されないことを
他人の顔色をうかがう小心者でないことを
だから君がきみであるゆえんを示そう
他人にノウと声出す勇気を
他人に考えを伝える意志を
他人に心からの笑顔を
君はきみにしかなれない
だから
君はきみを信じてごらん
25
「人新世を生きる」
地球の生命は悲鳴を上げている
さりげない優しさが枯れてゆく
ほっこりしたこころが悲色に塗られる
野放しにした傲慢が自壊へと導く
世に正義は混濁し悪意に乗っ取られる
疎遠になり人のつながりが絶えてゆく
自堕落な人間の末路は残酷だった
おぞましい欲望が渦巻き黄泉の国が現出した
遺棄された後悔と懺悔は屑のように漂う
忘れることが唯一の救いとなった
嘘に彩られた時空間に縛られたまま生きる
真実は闇を彷徨い消滅する
そう遠くない時の流れの中で
時代が薄汚れてゆく
時代が虚構に飾られる
時代が終焉の時を告げる
だからこそ
人間らしく
いまを生きるのだ
いまを生きてゆくのだ
授かったいのちの限りを
そして
君らしく
心はいまを生きる
心はいま生きてゆく
共に慈しむ愛を育てながら
26
「学び続けるということ」
無知であってはならない
しかしすべてを知ることはできない
学ぶ意欲だけは持ち続けたい
どんなにあがいても知り得ない
しかし知りたいというおもいは消せない
学ぶ謙虚さだけは持ち続けたい
学び続けるということ
学ぶこころがわたしを育てる
学ぶ意思がわたしを強くする
学ぶ中身がわたしを守る
学ぶ機会がわたしを耕す
共に学び続けるということ
学ぶ出会いがわたしを豊かにする
学び合う知がわたしを奮い立たせる
学び合う友がわたしを信念に導く
さらに学び続けるということ
学ぶたびにわたしの古き殻を破る
学ぶ価値がわかればわたしをひるまない
学ぶ意味がわかればわたしは逃げない
学ぶ理由がわかればわたしは生きていける
学びは未知なる世界からのメッセージ
知ることは果てなき生存欲求
学び続けることはよりよく生きることへの誘い
知ることは自己存在の証明
ともに学ぶことは知の世界の共有
知ることは自己陶冶と相互承認
動くことでしか生まれない学びの世界
動かなければ変わらない学びの世界
動いて始めて実感する学びの世界
学びの世界に身を置きながら苦悶し続
27