二つの詩

一つは 中学生だった

先生 聞いてください ぼくらの悩みとあせりを
先生 話してください あなたの青春の夢と希望を
先生 笑ってください 教室の暗さを吹き飛ばして
先生 叱ってください ぼくらの不平とさぼりを
先生 教えてください 人生のはてない辛さと厳しさを
そして 人として生きることの喜びを

そんな先生には なれなかった

もう一つは 版画家中野章に教えてもらった

人生には 明るい闇夜があり
まっすぐな迷路がある
人が群れとして 盲いていて
みちびく者も みちびかれる者も
みんな盲いていて
そんな夜を そんな道を
ひたむきに歩むのは 悲劇だ

出会ったときから もう20数年たった
11月7日夜 旭川の自宅を数年ぶりに訪ねる
いまの世の中が 悲劇にひた走る予感を 
共有する 

〔2019年11月5日書き下ろし。氏の北海道の風景を描いた版画は、多くの人を魅了する。「人はそれぞれの人生を歩みながら、それぞれの足跡を残してゆく」と巻頭言を寄せてくれた。その人生の軌跡を語り合える人がいることを、仕合わせというのだろう〕