ひとり暮らしを 始めた
施設を出て マチに飛び出した
ごみを出しに行った
出会ったアパートの人が
「おはようございます」と 挨拶をしてくれた
そのとき オレもこのマチで暮らしているんだと 即実感
挨拶を返しながら その喜びを噛みしめた
遊んでいた幼児が オレを見つけた
そばにやって来て 車いすを不思議そうに見る
どうしておじさん そんなものに乗っているの
なにげない 質問
大人は その原因を始めに尋ねようとは 決してしない
車いすはね おじさんの足だよ
だから 君よりは早く走れるよ
なめてかかって 豪語した
そしたら 競争しようという流れに なってしまった
突然 幼児は消えてしまった
おいおい 朝からおかしな展開だ
ややしばらくして
なんと「三輪車」に乗って 登場した
幼児にとって 車いすとの競争は 三輪車ですること
それが 対等な競争の条件
あなどれない 子どもの鋭い着想を 思い知らされた
〔2019年11月5日書き下ろし。『こんな夜更けにバナナかよ』の鹿野靖明氏と一緒にマチに出たタケちゃんのちょっといい話。幼児は「対等な関係性」をいかにつくるのかを、鮮やかに見せてくれました〕