子どもにも分かる嘘

われわれは 戦争をしたくはない
(したくないなら しなきゃいいでしょ
アメリカから 高い戦闘機や兵器をたくさん買ったり 挙げ句の果てには 
アメリカの戦闘機が離着陸できる空母に改造してるって なんで?
戦闘機や兵器で どれだけ貧しい子が救われるか 優先順位が間違っています
われわれどころか 私たちは 戦争はしません)

しかし敵側が 一方的に戦争を望んだ
(一方的に戦争しようなんて ほんと?
敵ってどこの国? 
中東の沖まで行って 敵を探してくるの?
そもそも そういう気持ちにさせた 事の原因はどこにあるの?
そんなところに 私たちを 巻き込まないでよ)

敵の指導者は 悪魔のような人間だ
(あんたも相手には悪魔のように見られてるから 憎悪同志の話でしょ
だからアメリカは 奇襲作戦で爆撃して 殺したんだね
戦争をし続けないと アメリカはマグロのように死んじゃうから?
でもどうして 日本はいつも 尻ぬぐいをさせられるの? やめてよ!
日本にもテロリストが 手ぐすね引いてやってきますよ)

われわれは領土や覇権のためではなく 偉大な使命のために戦う
(われわれって ニッポンもそうするの?
偉大な使命だって アメリカが煽って 旗を振った日本のリーダーがいたね 
あのときは 平和憲法を盾に後方支援でうまくかわしたけど 
アメリカが喜んだ 集団的自衛権なんぞ行使できる今度は そうはいかないしょ
勘弁してくださいよ 目的はいつも覇権しかないっしょ
沖縄も岩国も いったいどこの国の領土なの?
憲法変えたら 戻ってくるの? 幻想だよね)

われわれも誤って犠牲を出すことがある だが敵はわざと残虐行為に及んでいる
(誤ってなんて嘘でしょ ごめんで済むはずありえない
人の命を奪っておきながら 誤って殺したって言い訳することに何の意味があるの
残虐行為って お互い様でしょ 戦争なんだから
言い訳が通用すれば 正義だとでも言いたいの
非戦闘員を殺すことに どんな言い訳がある
そんなの認めちゃ だめでしょ 
74年間も 日本は戦争したことなんてないんだから
そんな恐ろしいこと 絶対しちゃいけないよ
戦争やらなきゃ どちらにも犠牲者は出ないよ
子どもでもわかる これ常識)

敵は卑劣な兵器や戦略を用いている
(あのね 戦争って みんな卑劣で残忍 だから戦争でしょ
遠く離れたところで 画面見ながら爆弾落として人殺し ゲーム感覚なんだよね
だから こころを痛めることなんか ひとつもない
大量殺人兵器を使って いかに相手に ダメージを与えるかっていうのが
そもそも戦略でしょ 
相手が どうこうって話じゃないよね 説得力ないな
自慢げに 兵器を見せ合うパレードごっこ
危ない大人の 火遊びです)

われわれの受けた被害は 小さく敵に与えた被害は甚大
(よくそうやって よくみんなを騙してきたんだよね
使い古したフレーズで いま誰も信じはしないよ
えっ 誰かさんは 確かめもしないで信じるってほんと?
やめてよ そんなみっともないことすんの)

芸術家や知識人も 正義の戦いを支持している
(そんなわけないっしょ 
そういうのなら いっそのこと 前線に行って我先に戦ってもらったら
でも 決して誘いにはのりません ついてはいきません
煽るばかりで 一番安全な所にいる人だぁ~れだ?
自分でバンバンして 人を巻き込まないでください)

われわれの大義は 神聖なものである
(だからさ 大義でなくて大儀(おっくうでめんどうなこと)なんだよ
あんたの さもさもらしく嘘くさい 戦争神聖論
どこの神さまが 人を殺せって教えているの?
残忍なんだね あんた方の信じる神さまって)

この正義に疑問を投げかける者は 裏切り者である
(ここが一番汚いやり口 非国民って言わせたいんだよね
正義に見せかけて煽る戦術 もう見抜かれています
戦争に反対する人 喜んで裏切り者になろう
いや待って 
戦争しないって 日本国憲法に書いてあるのに
戦争の準備をしている人こそ 最大の裏切り者じゃない
騙されないよ 裏切り者には
裏切り者に 私たちのいのちを預けてなんか いませんから
騙されません 金輪際 絶対に
だから もう軍事力を強化するのは おやめなさい!
私たちは 日本の平和憲法の下に 生き続けます)

以上 戦争へと導く宣伝の法則の 裏を上手にかくと
平和を好む者が 戦争を好む者たちの
あざとい企てを 
看破することができます

いや 待って
戦争を好む者たちが
巧妙に 立ち振る舞うから 
平和を好む者たちは
騙されたことの 自覚なく
戦争への道を ひたすら歩かされる羽目になる
残酷な予断です

若者よ 覚醒(めざ)めよ
戦争の最前線に立たされるのは 
君たちであり
その子どもらです

〔2019年11月8日書き下ろし。『戦争プロパガンダ10の法則』(アンヌ・モレリ著、草思社、2002年、文庫版2015年)を引用しながら、アメリカに扇動された世界の危機意識を憂う。現国会で野次ってるレベルの人たちにいのち預けられますか?〕

付記
安保法制判決 憲法判断回避は無責任
集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法は憲法に違反するものだとして、約1500人が国に損害賠償を求めた集団訴訟の判決で、東京地裁はきのう原告の請求を退けた。
全国22地裁・支部で提訴された同種の集団訴訟のうち2件目の判決で、今年4月の札幌地裁判決に続く原告側敗訴となった。原告は、安保関連法施行で平和的に生きる権利を侵害されたと主張したが、判決は法的保護を与えられる利益とはいえないと判断。憲法判断をすべき理由がないとして請求を棄却した。行政や立法府が憲法を守らない場合、司法はそれを是正する役割を担う。最高裁が最終的権限を有する違憲立法審査権は、そのためにある。 立証に不可欠な証人尋問も認めなかった東京地裁の判決は、門前払いに等しい。これでは憲法を巡る審理の深まりは期待できない。
安保関連法を巡っては、「日本を取り巻く安全保障環境の変化」という薄弱な根拠で、憲法9条を実質的に骨抜きにする憲法解釈の変更を行った。極めて違憲性が強く、廃止するのが筋だ。三権分立の根幹が問われる重要な局面で憲法判断を回避した東京地裁の判決は、司法の責任の放棄と言わざるを得ない。東京地裁判決は、安保関連法の施行で、日本が反撃されたり、テロの対象となったりする危険が増したという原告の主張について、具体的な危険が発生したとは認めがたいとして退けた。憲法判断は、具体的な権利の侵害が審理の対象となるとされ、抽象的な訴えでは中身の検討に入らないことが多い。
しかしながら、「戦争は繰り返したくない」という空襲体験者やテロ攻撃などの巻き添えを恐れる米軍基地周辺住民の不安は、果たして具体性を欠いた訴えだっただろうか。
高度に政治的問題は司法審査になじまないとして、憲法判断を避ける「統治行為論」も影響したとみられる。前橋地裁や横浜地裁の訴訟で証人尋問に臨んだ宮崎礼壹元内閣法制局長官は、安保関連法について「長年の政府解釈や国会議論に反しており、違憲だ」と述べた。その事実だけでも憲法判断を行う理由になるのではないか。立憲主義が問われている今こそ、司法が憲法判断と向き合うべきだ。(北海道新聞社説2019年11月8日)