雪降ることを 祈りました
雪が降って
私を洗い清めてくださるように 思えたから
けれど
雪が 今降ろうとしている空をみると
雪の降ることを 祈るのは
私にとって 最高のわがままだと 気づいたのです
私の心の中に住みつく 黒い影を取り除くには
歩む道を まちがえてしまったと 気づいたのだから
まちがえた道を
私の道として 私のものとして 雪にめぐり逢いたい
雪の降ることで 私は幸せになりたい
《遺稿「雪降る」昭和44年初冬、18歳》
涙が流れます
封印してきた あなたの詩情
受けとめられなかった あなたの心の奥の声
まちがえた道を 私の道として歩むと決めて
天を仰いで 倖せを祈るあなたの姿
その青き苦悩に 寄り添うこともなく
その青き願望を 理解することもなく
いま 雪降る闇夜を仰ぎます
生まれてきたもの
一つの愛の物語
無数の愛の花開く 片恋の道 無数の道
その一つ一つが 少年の五体へ通じる
意味のある旅人
好きになった少年の唇を そっとこの唇で触れたい
生まれてきたものへ 通じる恋の道
《「生まれてきたもの」昭和43年5月19日、17歳》
幼いとはいえない 恋心
叶わぬおもいを したためた
心残り 悔しさに
ただただ 涙が零れます
時に あなたは激情だった
だからこそ 生きていてほしかった
視界のきかない世界
それは 恋の地獄
もがきあえいで
苦しみの果てに 花は散る
地獄の炎は 恋日記
全盲の壁を のりこえて
叫び はいずり 狂い舞う
男は かかえる頭の重さを知らず
恋を捨てずに ノラ犬の如く這いまわる
女は 胸の痛みのとれぬままに 恋に捨てられ
ノラ犬の如く 男を探し求める
繰り返しの 恋日記
恋の地獄は さよなら地帯
もがき苦しみあえぎの果てに
青い焔が 一節詩う
さよなら地帯
《「さよなら地帯」昭和43年3月13日、17歳》
詩の中に 生身の女の子が 生きていた
それだけが 彼女の生の証
恋に身を焼く ヒロイン
求めてやまない恋情に
青の感性が 彩られていた
胸が 締め付けられています
いまも やるせないのです
どうしょうもなく やるせないのです
〔2019年11月17日書き下ろし。妹琴代との50年を超えての語らいです〕