親の徳

母と二人 農業をしている
今年も 秋の刈り取りが終わりホッとしている

三年前 父が突然亡くなった 
田植えと豆の植え付けを控えた時だった
長男坊だが まだまだ親父には 跡継ぎと認められていない半人前
呆然として 葬儀を終え
仏壇の前で 母と二人路頭に迷った

近所の人が 忙しい中集まって
田植えと豆の植え付けの 段取りを決めた
田植え機4台 軽トラ10台が 一斉に動いた
その年の田植えと豆の植え付けは 無事終わった
じい様の代からの稲作農家だった
ご近所の お互い様という言葉に甘え
じい様と親父の徳に 感謝した

母は 地域のために何か出来ることはないかと
思っていた矢先に
体調を壊した人に 民生委員を頼まれた
冬を迎えて 一息ついたところで 
1年生の母は 地域周りに忙しい

オレは まだ28歳
助けられた感謝の気持ちを忘れぬよう
地域で 学ばにゃいけんことが たくさんある
おじさんたちが倒れたときに 助けなきゃいかんから
そのための力も たんとつけときゃならん
母にも そう励まされている

地域の温情は 
代々の親の徳の賜わりもの
だから 恥じぬよう心して
母子二人 ここで生きる

〔2019年11月16日書き下ろし。民生委員の研修会で出会った、他人様のために何か出来るように生きたいという元気なお母さん、無理せずに。この気持ち新任の方々にも伝えます〕