いまを描く

限られた 生命(いのち)
限られた 時間(とき)
限られた 思索(おもい)

穏やかに 血を巡らせよう 
静かに 血を滲(にじ)ませよう 
強く 血を滾(たぎ)らせよう

いまを描くということ
広く ことばを思い浮かべよう
深く ことばを吹き込もう
豊かに ことばを手繰(たぐ)らせよう

いまを描くに足りぬということ
己の無能さを 心に留め置こう
己の非力さを 心に思い知らそう
己の無知さを 心に刻もう

いまを描くに足るということ
いのちと暮らしを脅(おびや)かすものの 正体を明かす
世の非情と不条理を許すことを 拒否(こば)み続ける
人の情けの深さを 広く世に知らしめ連帯(つなが)る
人生の喜びと悲しみを感受し 共に甘受する

宇宙の悠久の時(とき)の流れの一瞬に
いまを生きるということ
いままで生きてきたということ
確かに紡いできたと信じる
いのちとこころの営みを 
まだ許されるなら 描き続けたい

〔2020年5月18日書き下ろし。なぜ書くのか、いつも葛藤している〕