なぜ引き受けたのか
人は 心ない人たちに 傷つけられる
人は 妬(ねた)まれて 嘖(さいな)まれる
なぜなのか その理由(わけ)すら分からず 自責の念にかられる
なぜ引き受けたのか
人は たじろぎ立ち止まり 考える
人は やる気も失せて 辞めるタイミングを探る
そこまでして やらねばならない理由が 薄らいでいく
でも なぜ引き受けたのか
人は 人から受けた恩を世間に返すと 考えた
人は 世間のしがらみから逃れられないと 腹をくくった
だから もう少し我慢しようと 諦めるしかなかった
ときに民生委員は 世間の風をまともに受ける
世間の無理解から生じる 偏見と批判の的となる
納得することが出来ぬまま 沈黙する
諍(あらが)うことを避け 感情を抑え品性を保つ
引き受け手がいない
後継者が育たない
短期間でリタイヤする
綺麗事ではすまされない 厳しい現実の前に
民生委員は立ち尽くす
葛藤しながらも 強く心動かすものは何か
薄っぺらな同情心や憐憫の情ではない
その地でともに生きることへの渇望を 汲み取るだけのこと
福祉の崇高な理念や制度での救済ではない
その地にともに果てるまで 暮らし続けるだけのこと
微力であるがゆえに 為すべき事をするだけのこと
その地がともによき故郷となるよう 働き続けるだけのこと
まずは具体的な問題を処理しよう
「無報酬です」
「自治会は地域の自治組織」
無理解や誤解から 批判めいた発言をする地域の人
疎ましさを感じつつ モチベーションも下がる
だから せめて反論の根拠を示しておきたい
2編の詩は 自治会役員と民生委員の違いを明確に論じる
一人ひとりに じっくりと読み込んで欲しいとお願いした
「融和の心」
取り上げたエピソードは 世間の困りごとを
民生委員に押しつけて 高みの見物の決め込む世間の実態
それでも 生きる痛みや喜びを分かちあう融和の心を
地域に根づかせることを「人生の恩返し」にしようと挑む
「恩はいただいた方に返すのではなく世間にお返ししなさい」
そのことばが重い
人間の心の闇は 周りには何も見えない
コロナ禍で自死する人も多く 十代の自死も痛ましかった
全国の民生委員も参加する 自死を防ごうという運動は続く
道内では いのちの電話相談の限界も報道された
深い悩みの淵にあった 自死未遂者との語らいから生まれた
「自死からの目覚め」
気がかりな少年の自死に関心を向けさせた
いじめにより孤立した少年が選んだ自死の現実
「乾いた笑い」
あえて朗読をしてもらった少し表現の硬い詩
「生きたいという心」
自死を思いとどまって欲しいという 切ない願いを込めた
悲痛なテーマが続く
心痛なおもいが会場を包む
現実の問題から 目を背けることなく向き合う
その力を どのように引き出すのか
ナーバスに陥った心情のまま
ここで終わっては この研修の意味はなくなる
あらがいながらも 活動を続けることの意味を見出さねばならない
それこそが ファシリテーターとしての役目だった
※「無報酬です」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年3月10日アップ
※「自治会は地域の自治組織」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年3月11日アップ
※「融和の心」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2019年7月27日アップ
※「自死からの目覚め」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2019年10月31日アップ
※「乾いた笑い」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年11月13日アップ
※「生きたいという心」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年11月23日アップ
※参考「泣き寝入り」:ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年11月8日アップ
※参考「命を断つ子ら」ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年11月30日アップ
※参考「もう泣かないで」ブログ「鳥居一頼の世語り」2020年12月10日アップ
〔2021年3月28日書き下ろし。ナーバスになった心境からどう立ち上がるのか、研修は終盤へと向かう。テキストでは紹介できなかった子どもの自死についての詩を参考に記す〕