大丈夫というフィルター

自宅から高速道路に乗り2時間で旭川に入る
夕方市内の某団地の集会室に入る
地区の民生委員児童委員が15名ほどすでに着席していた
市の民生委員児童委員連絡協議会の事務局担当の社協3名
道民児連事務局1名と総勢20名が集まった

市町村民児連活性化事業テーマ特化型事業指定に関わる研修である
昨年研修に関するあり方検討委員会が協議を重ねた成果を
道民児連が具体的に事業化したモデル事業の一つだった

緊急事態宣言の解除でようやく例会が開かれる
その貴重な1時間をいただいた
前半道民児連担当者からモデル事業の概要について触れる
後を受けて40分ほど事業ではなく私の福祉の立ち位置を語る

「めだかのめぐ」の話を数年ぶりに取り出した
尻尾を切られて上手に泳ぐことのできないめぐ
みんなと姿形が違うことで偏見や排除の目にさらされるめぐ
それはめぐに対する世間の目であり差別の根っこでもあると

めぐを車いすユーザーに置き換えて話を進める
車いすユーザーの人を哀れに思うところから湧きでる憐憫の情は本物か
車いすというフィルターを通してその人を見てはいないだろうか
車いすを外してその人と対面しているのだろうか
障がいや老いや貧しさをフィルターにかけ
理解したつもりになってはいないだろうか

様々な問題を抱えた人と接する民生委員児童委員
大丈夫という言葉の裏にある語れない当事者の不安と本音
大丈夫と言わざるを得ない当事者や家族の深刻な事情
大丈夫と言われたときにふとわく委員の小さな疑念
大丈夫と判断した委員の曖昧な根拠

うちの地区にはこんな問題はないから大丈夫
大丈夫のフィルターを外すと地域の課題が見えてくるかもしれない
転ばぬ先の杖を地域に創り出す
まずは大丈夫というフィルターを確かめる時間となった
暮らしや心のほころびをまていに繕う民生委員児童委員
モデル事業を共に進めるパートナーとの顔合わせはこうして始まった

〔2021年10月8日書き下ろし。2カ年指定のモデル事業。単位民児協と民生委員児童委員活動における「福祉のあり方」を問う地域研究が始まった。参照資料「まちづくりと市民福祉教育:アーカイブ(31)鳥居一頼『ステレオタイプ化された貧しい福祉意識からの脱却~授業『めだかのめぐ』で覚醒した藤女子大の学生たち~」(掲載2019年8月9日)〕