阪野 貢 のすべての投稿

こころは人を信じるためにある

信ずる
ここまで 邪険にされて
何を信じれと いうのですか
人間性ですか
信念ですか
権威ですか
それとも お金ですか

どうして 信じられるのですか
もう その証拠(あかし)すら 見せられないでしょう
どうか 人を騙して欺くことは もうやめてください
どうか 嘘で嘘を重ねることは 金輪際勘弁してください

信じ込んだほうが 悪いのですか
仕組んだほうには 罪はないのですか
強欲なだましを見抜けなかったのは 無知だからですか
口上に乗っかったのは 浅はかだったからですか

信じ切り 信じ抜こうと覚悟した
その裏切りは 掛けたおもいの強さに 比例して
怒髪冠を衝く
まだ収まるところを 知らず
気がつくと 身ぐるみ剥がされ 裸にされていた

コロナ禍で 乾いた言葉をタレ流して 世間の心証を害した
コロナ禍の 遅きに失する政策で 内閣支持率27%に下落した
コロナ禍後は 経済のV字回復など夢の夢 倒産続きで身代傾く
コロナ禍後も 貧しい暮らしは 容赦なく責めたてられる 
コロナ禍後 貧富の格差は拡大し 人間不信が蔓延してゆく

小学2年の女の子
こころは? と問われて 
「こころは 人を信じるためにある」と
その答えに 驚愕し震えた
コロナ禍後の 社会の断絶を乗り越えるには 
ここからしか始められない 

※怒髪冠を衝く(どはつかんむりをつく):激しく怒って髪の毛が逆立ったすさまじい形相。

〔2020年5月24日書き下ろし。狸のだまし合いはもうたくさん。政権を担う政治家と官僚、あなた方はこの子と向き合える人間していますか〕

付記
内閣支持率27%に急落 黒川氏「懲戒免職にすべきだ」52% 毎日新聞世論調査
毎日新聞と社会調査研究センターは23日、全国世論調査を実施した。安倍内閣の支持率は27%で、今月6日に行った前回調査の40%から急落した。不支持率は64%(前回45%)に跳ね上がった。社会調査研究センターとの共同調査は3回目で、最初の4月8日に44%あった支持率が1カ月半で17ポイント落ち込んだ(後略)。(毎日新聞2020年5月23日)

黒川氏処分、首相官邸が実質決定 法務省は懲戒と判断、軽い訓告に
賭けマージャンで辞職した黒川弘務前東京高検検事長(63)の処分を巡り、事実関係を調査し、首相官邸に報告した法務省は、国家公務員法に基づく懲戒が相当と判断していたが、官邸が懲戒にはしないと結論付け、法務省の内規に基づく「訓告」となったことが24日、分かった。複数の法務・検察関係者が共同通信の取材に証言した。
安倍首相は国会で「検事総長が事案の内容など、諸般の事情を考慮し、適切に処分を行ったと承知している」と繰り返すのみだった。確かに訓告処分の主体は検事総長だが、実質的には事前に官邸で決めていたといい、その経緯に言及しない首相の姿勢に批判が高まるのは必至だ。(共同通信2020年5月25日)

コロナ禍から暮らしを護る

目が薄くなってきて 字がかすれる
もう読むことは あまりない
耳が遠くなってきて 声が聞き取れない
何度も聞き返すから 怒鳴られているようだ
動作は緩慢(かんまん)になり 外に出るのも億劫(おっくう)になった
食も細くなり 給食が一番のご馳走となった
一日のお相手はテレビ 話しかけても返事はない
一人暮らしも もう十年
いろいろお世話いただいて 感謝しかない
今日まで無事に 暮らしてこられた
誰かの呼ぶ声がする

「こんにちは いたかい!」
今日は 十万円の申請でお邪魔した
案の定 役場の通知は置きっぱだった
きっと困っているだろうと 御用聞きにうかがった
申請のことを教えて 二人で書き込み作業
後は投函して 入金を待つだけ
その時一緒に郵便局に行きましょう
安心した顔を見て ホッとした

コロナ禍のニュースを見ては心配で
じっと家で過ごしていた
買い物も病院も出てはいけないと自重する
それでは 身体を壊してしまう
コロナ禍で人のつながりが希薄になって
不安を抱えて家にいた

コロナ禍でこそ 民生委員の心・意気
正しい情報を伝えることと
少しでも不安を和らげるのが 私の仕事
マスクの下に 笑顔を隠して
明るい声で
「こんにちは 大丈夫!」
今日も大事なお役目果たします

〔2020年5月18日書き下ろし。全国の民生委員の活動にエールを贈りたい。地域で懸命に暮らしを守る人がいて、地域も頑張れるのですね〕

えがおでコロナにうちかとう

みえないものって こわいよね
みえてると よけいにこわいよね
でもこわがっていても しかたない
いまは 
うつらぬように
うつさぬように
みんな がんばっているんだ
きみも がんばるひとりなんだね
えらいぞ

おとなは 子どものいのちをまもるのに
いっしょうけんめいだよ
わがままを いわないこと
やくそくは まもること
かならずしなきゃいけないことは することと
あんまりやくそくごとがおおいと いやだよね
でもきみは きっとそうしてる
えらいね

じぶんかってなことをする おとなもたくさんいるけれど
それをみて いやだなっておもったたら
きっときみは そんなおとなになりたくないって おもうでしょう
いまは おとなのようすをみることが いちばんのべんきょう
がっこうだけじゃなくて 
みぢかなところで まなぶことってたくさんあるよ
一日ひとつ どんなことをみつけたか ノートにかいてみて
きっとたくさんのおもしろいはっけんが あるとおもう

ようやく がっこうにいける子もいるけど
まだまだ いけない子もいるよね
でも えがおをわすれないでね
きみのげんきが みんなをしわせにするんだ
つらくても だいじょうぶ がんばろうって
はげましのえがおを みせてほしい
みえないこわいものをおっぱらう 
それがいちばんの たたかうちからになるんだよ
えがおを たくさんプレゼントしあおうね

〔2020年5月20日書き下ろし。我慢強く頑張る子どもたちの笑顔が、世の中を救う〕

希望という名の花を咲かせよう

他人(ひと)のつながりが 断たれてゆく
他人との距離が 離れてゆく
他人とのこころの距離も 遠のいてゆく
だから希望という名の種を 植えよう

世の中の仕組みが 変わろうとしている
世の中の暮らし方が 変わろうとしている
世の中は もう昨日には戻れない
でも希望という名の芽を 摘んではならない

いのちが 脅かされる
暮らしが 立ちゆかなくなる
仕事を 失う
それでも希望という名の根は 踏まれて強くなる

他人と つながらなければ 生きていけない
他人と 暮らしを立て直さなければ 生きていけない
他人と 力を合わせなければ 世の中が良くならない
みんなが頑張ることで
希望という名の小さな蕾が 育っていく

あきらめず へこたれず
涙も笑いも みんな暮らしの肥やしにすき込んで
希望という名の花を 咲かせよう
きっといつかそうなるように
くじけず生きていこう

希望という名のその花を
一人ひとりのこころに飾る日は きっと来る

〔2020年5月20日書き下ろし。コロナ禍は続く。希望を失ってはならい〕

蟻の一穴

国民が注視した 検察庁法改正見送りも
間の抜けた顛末で ジエンド廃案
さすがに 蟻の一穴の者たちも
開いた口が ふさがらない
蟻の巣をつついたような 大騒ぎ
こんなことにアベノマスク同様 
血税と議員歳費をドブに捨て
コロナ対策ほったらかして 
時間と労力 浪費三昧
内閣の面子と 検察の威信は 地に落ちる
「真摯に受けとめる」だけの 
コメントだけでは乗り切れまい 
どんな始末を つけるやら 
どんな権勢図に 書き換えられるやら

功罪は カジノの危険を知らしめた
ギャンブル依存症の末路なり
これだけ優秀な方も形無し 
軽率な行動をと 言い訳したが
事のはじめは みんな軽はずみ
法を律する検察長№2も ただの人
知的な判断うち捨てて
自らの堕落を実証する
国が進める カジノで国興し
どんなに偉いお方でも 一度はまれば抜け出せぬ
蟻地獄の惨状を 見事に体現されたスキャンダル

パチンコ店の経営者 
窓から眺めて ご満悦
今朝も働き蟻たちが 行列つくって餌運ぶ
コロナ禍で叩かれても 
働き蟻は 借金しても餌運ぶ

遊びを超えた麻雀も 同じギャンブル依存症
治すに治せぬ 伴侶泣かせ 親泣かせ 子泣かせ
この現実に目をつぶり
大阪も横浜も カジノ誘致にしのぎを削る
ギャンブル依存症に対策しますと
餌を運ぶ蟻を集めることに 腐心する
カジノから 上納させて市民を養う
なのに 不平を漏らすのかと 反論する
弱い者への施しとかばうフリをして
病気の者から巻き上げる
害した健康 国民皆保険で賄う悪循環
知っていながら 強引グ・マイウェイ

働き蟻も そろそろ列を乱す時が来た
検事長 よくぞギャンブル依存症問題を 
身をもって啓発されたことに 深く感謝したい

またも文春砲 戦々恐々の議員諸氏
次は 誰に放たれるのか 
どなたかの名言を拝借して
「次はあなたと対立する方に投票します」

※蟻の一穴(ありのいっけつ):日本人は良くも悪くも横並びに同じ方向に向け一斉に走り出す癖がある。一種の民族的特性だとも言う。

〔2020年5月21日書き下ろし。黒川弘務検事長の辞任の報を聞き、自制の効かぬギャンブル依存症が身を滅ぼすことの現実から目を背けてはならぬと、まずは一報〕

とんがることば

ことばがとんがる
ソフトアイスみたいに ドンドンとんがれ
でもなめてるうちに 丸くなる
そっか なめればいいんだ
なめてかかれば 丸くなる?

ことばがとんがる
鉛筆みたいに けずってとんがれ
でも書いてるうちに 丸くなる
そっか 書けばいいんだ
恥をかけば 丸くなる!

ことばがとんがる
冷たくあしらい こころがとんがる
でも話しているうちに 丸くなる
そっか 話せばいいだけなんだ
わかってあげれば 丸くなる

とんがることばは
話せば あったかくなり しまいに丸くなる
いつの日か 打ち解け合い 許し合う
だから わかり合うには 時間がかかる

「真摯に 丁寧に」
とんがることばでは ないはずなのに
いつもこころに 突き刺さる
誤りを認めない 答弁拒絶や法案先送りのとんがりことば
とんがる人とわかり合うには 
越すに越せぬ 高い壁がある

とんがることばが 伝搬し
他人(ひと)のこころを突き刺して
とんがる人を 擁護する
とんがることばは 廃れない
他人(ひと)のこころを深くえぐって
とんがる人に 媚(こび)を売る

コロナ禍から 人と世を救う 丸いことばは 
とんがる人が多くなり 衰え始める
コロナ禍後は 人と世が変わる
丸いことばが とんがる人に利用され
だましの甘いことばに 言い換えられる 

〔2020年5月18日書き下ろし。コロナ後は世界中で熾烈な生存競争が起こるかも知れない。丸いことばの果たすべき人を人として生かす救世の力が衰退してゆく〕

いまを描く

限られた 生命(いのち)
限られた 時間(とき)
限られた 思索(おもい)

穏やかに 血を巡らせよう 
静かに 血を滲(にじ)ませよう 
強く 血を滾(たぎ)らせよう

いまを描くということ
広く ことばを思い浮かべよう
深く ことばを吹き込もう
豊かに ことばを手繰(たぐ)らせよう

いまを描くに足りぬということ
己の無能さを 心に留め置こう
己の非力さを 心に思い知らそう
己の無知さを 心に刻もう

いまを描くに足るということ
いのちと暮らしを脅(おびや)かすものの 正体を明かす
世の非情と不条理を許すことを 拒否(こば)み続ける
人の情けの深さを 広く世に知らしめ連帯(つなが)る
人生の喜びと悲しみを感受し 共に甘受する

宇宙の悠久の時(とき)の流れの一瞬に
いまを生きるということ
いままで生きてきたということ
確かに紡いできたと信じる
いのちとこころの営みを 
まだ許されるなら 描き続けたい

〔2020年5月18日書き下ろし。なぜ書くのか、いつも葛藤している〕

「断絶の時代」に「分断社会」を考える―井手英策ほか著『分断社会を終わらせる』読後メモ―

〇スローガンだけの「今」の政治では社会は変わらない。そのことを知りつつも、響きの良い言葉に淡い期待を寄せてきたのではないか。そのあいだに地域・社会では、静かに地殻変動が起こり、「断絶」(「不連続」)すなわち新たな時代への兆候が見られる。コロナ禍における地方自治体の地域主権の取り組みや、「#検察庁法改正案に抗議します」というツイッターデモなどが注目される。「今」を「過渡期」と前向きに評価するのは、楽観的すぎるだろうか。「マネジメントの父」と言われ、グローバル化などを説いたP.F.ドラッカーの『断絶の時代―来たるべき知識社会の構想―』(林雄二郎訳、ダイヤモンド社、1969年1月)を想起する。
〇筆者(阪野)の手もとに、そのタイトルに「分断」「分断社会」という文言が入っている本が4冊ある(しかない)。

(1)井手英策・古市将人・宮崎雅人『分断社会を終わらせる―「だれもが受益者」という財政戦略―』筑摩書房、2016年1月(以下[1])
他人に対して冷淡で不機嫌な社会――。それが今の日本だ。世代間、地域間、性別間、所得階層間それぞれの対立が激化し、人々は、バラバラな存在へと追いやられている。永続的な経済成長をあてにする「勤労国家レジーム」が、こうした状況を生み出した。井手らは本書で、財政を通じて(財政社会学によって)日本社会の閉塞状態を解き明かし、打開策を示す。すなわち、分断社会を終わらせるべく、すべての人の基礎的ニーズを満たすという「必要原理」に基づく財政戦略を提唱する。そして、暮らしの安心の実現が、格差是正と経済成長を実現させることを説き、来るべき未来を構想する。(カバー「そで」、15ページ)
(2)塩原良和『分断と対話の社会学―グローバル社会を生きるための想像力―』慶應義塾大学出版会、2017年4月(以下[2])
マイノリティや社会的弱者への排外主義・社会的排除という風潮がある。マイノリティとは、その人が有する差異に基づいて社会的に不利な立場に固定化されてしまった人々をいう。そういう人々や、障がい者や貧困層といった社会的弱者が置かれている立場や思いに対する「想像力」が不足している。あるいは、想像すること自体を拒絶していると思わざるをえない出来事が頻発している。塩原は本書で、現代のグローバリゼーションという社会変動とそれに伴って出現する「分断」の時代状況を読み解く「想像力」と「対話」について考える。塩原にあっては、他者に対する「想像力」とは、「個人が知識を活用しながら自らの共感の限界や制限を押し広げて、他者を理解しようとする努力」である。急激な変化の時代においては、現状の問題点を見極め、より良い社会と人間の生き方を考えていく「批判的思考」が不可欠である。その前提となるのが、社会と歴史に対する「批判的想像力」である。塩原にあっては、「対話」とは、「人間であるかもしれないし、そうではないかもしれない『他者』との共約不可能な差異を前提としつつ、それでも他者を理解し承認するためにその声に耳を傾け、それに応答しようとする営み」である。その際の「他者」に関して、「対話」とは人間同士のコミュニケーションと、自然や歴史・科学などに注意深くあることを意味する。「共約不可能」とは、両者を単純に比較してどちらが正しいのかを比較することができないことをいう。(1、4、6、11~12、15、25、193~194ページ)
(3)井手英策・松沢裕作編『分断社会・日本―なぜ私たちは引き裂かれるのか―』(岩波ブックレットNo.952)岩波書店、2016年6月
なぜ、日本社会は正規労働者と非正規労働者、非正規労働者と生活保護受給者というように、「彼ら」と「われわれ」が引き裂かれ、分断されているのか。分断は、人々の存在を尊重することの欠如に由来する。分断が問題なのは、社会のいたるところに境界線が引かれ、相手の立場や境遇を理解する前提ともいうべき「想像力」が次第に失われていくことである。その時どきの支配者は、社会の凝集力を維持するために、もっともらしい装いをした偏ったイデオロギーによって人々を理念的に結合し、社会や国民を力ずくで「建設」しようとする。こうした分解と国家的・理念的結合が、全体主義の時代を生むメカニズムである。社会が他者への想像力をなくし、価値を分かち合えなくなったとき、社会は人間の群れとなる。井手・松沢らにあっては、分断をなくし、対立点をなくするためには、この社会に無数に引かれ、混線してしまっている分断線を一つひとつ解きほぐしていき、新しい秩序や価値を創造し、痛みや喜びを共有することを促すような仕組みを作り出していくしかない。今の「分断の政治」を「共通の政治」に変えられるかどうかである。(2、15、61、78、85~86ページ)
(4)吉川徹・狭間諒多朗編『分断社会と若者の今』大阪大学出版会、2019年3月
今の若者は「日本社会のあり方について肯定的になっている」、「価値観がゆるやかに保守回帰している」、「日常の活動が消極的でおとなしくなっている」などの傾向にあると言われる。吉川らは本書で、2015年1月に実施した「第1回階層と社会意識全国調査」のデータに基づき、さまざまなトピックから、若者(20~30代の若年成人)における「今」の捉え方に「分断」が生じていることを明らかにする。「今」の捉え方とは、今という時間や今の自分、今の社会をどのように考えているのか、ということを意味する。そこで扱う若者の意識や態度・行動は、「現在志向(将来のために努力するよりも今現在を楽しむことを重視する態度)」「権威主義的態度」「自民党支持」「消費」「幸福感」「大学進学志向」「働き方と自由」「性別役割分業意識」などである。要するに吉川らは、今の若者は一括(ひとくく)りにすることはできない。社会的な立ち位置(社会階層の高低)によって、それぞれの意識に強弱があり、複雑な様相を呈していることを描き出す。(2、255~258ページ)

〇以上のうちから本稿では、[1][2]の2冊の本から筆者なりに再認識しておきたい言説や論点のいくつかをメモっておくことにする(抜き書きと要約。見出しは筆者)。

[1]井手英策ほか『分断社会を終わらせる』
「勤労国家レジーム」と「分断社会」
「勤労国家レジーム」とは、「成長や所得の増大がなければ人間らしく生きていけない枠組み」をいう。それは、所得減税と公共投資(公共事業)を骨格とする。そのもとでは、社会保障は就労ができない人向けの現金給付に集中し、育児・教育・医療・福祉・介護などの現物給付(サービス)を個人や市場原理に委(ゆだ)ね、租税負担率を低く抑えるレジーム(体制)となる。それは、財政の「限定性」(現物給付の占める割合が限定される)、「選別性」(給付が低所得層や高齢者、地方部などに集中する)、そしてその背景となる「自己責任性」(国民の自助努力と自己負担が前提となる)として特徴づけられる。それはまた、歳出の抑制・削減を意味する(25~27ページ)
高度経済成長期に原型が育まれ、1970年代に定着し、1990年代に全面化した勤労国家レジームは、長期にわたって人々の生活や考え方に強い影響を与えてきた。だが、経済環境、社会構造、財政ニーズの変化を受けて、このレジームは明らかに社会の不安定要因となりはじめている。勤労国家レジームの機能不全とその負の遺産が、所得階層間、地域間、政府=納税者間、世代間の対立を強めている。「分断社会」はこうして生み出されたのである。(41ページ)

勤労国家の「負の遺産」(「3つの罠」)
「勤労国家レジーム」の3つの性質(「限定性」「選別性」「自己責任性」)は、それぞれ複雑にからまり合いながら、「再分配の罠」「自己責任の罠」「必要ギャップの罠」を日本社会にもたらし、生きづらさや閉塞感、不安感を人々に与えてきた。(28~41、182ページ)
「再分配の罠」は、低所得層や地方住民を救済することによって受益者にし、負担者になる中高所得層や都市住民が不信感(政治不信)を強め、所得再分配への合意を難しくすることをいう。(29~30、41~42ページ)
「自己責任の罠」は、自己責任社会・日本では、経済成長が難しくなり政府の役割・期待が大きくなると、経済成長へのさらなる依存が進み、新たなニーズに対応できない政府への不信感も強まるという逆回転(負の循環)をいう。(36~37、41~42ページ)
「必要ギャップの罠」は、例えば、現役世代(子育て)と高齢者(介護)の必要(ニーズ)がズレることによって生み出される対立の構図をいう。(38~39、41~42ページ)
「受益のないところに共感はない」というリアルな現実が人々の目の前に横たわっている。(32ページ)

「救済型の再分配」と「共存型の再分配」
所得再分配政策の肝は、受益者の範囲を広げて、社会全体で課題を共有することで対立を解消する「したたかさ」にある。これこそが日本の政治に欠けていた視点であり、限界性や選別性、自己責任性を重視してきた勤労国家の負の遺産である。
貧しい人を助ける「救済型の再分配」だけが再分配なのではない。そのような再分配だけで財政ができているわけでもない。慈善心が財政を作ったのではない。人間の必要が財政を作り出したのである。
歳をとって所得を失うリスク、失業するリスク、病気になるリスクなどは、個人で完全に対処するのは難しいし、リスクに直面すると、誰しも身動きがとれなくなる。誰にでも訪れうるリスクをメンバー全員で共有できるような再分配、困った時はお互いさまという意味での「共存型の再分配」も、財政の重要な機能である。(58ページ)

「必要原理」と「分断社会」
日本社会が陥っている「3つの罠」から抜け出すためには、人間の生存・生活にかかわる基礎的ニーズを財政が満たすというアプローチが肝要である。その核となるのが「必要原理」である。それは、経済成長を前提とした、「市場原理」に基づく「救済型の再分配」とは別物である。「人間に共通する利益」に着目し、幅広い受給者のニーズを満たしていく、「広く負担を課し、広く給付する」「だれもが受給者」という理念や財政戦略をいう。従来の「成長=救済型モデル」を「必要=共存型モデル」に取って代えることである。(32、142、182~183ページ)
中間層を受益者とすることで「再分配の罠」を乗り越える。自己負担ではなく社会でリスクを共有し合うことで「自己責任の罠」から脱出する。人間の生活に必要なサービスをライフスタイルに応じてバランスよく配分することで「必要ギャップの罠」を解消する。「誰かの利益」を「みんなの利益」に置き換え、これらを束ねた結果として経済成長や財政再建を実現する。
これは、必要原理を起点として、少しずつ受益者の範囲を拡大し、人間と人間が対立する原因を消失させ、分断社会そのものを終わらせようというものである。(183ページ)

[2]塩原良和『分断と対話の社会学』
マジョリティの「勘違いの共感」
マジョリティ(「ふつう」だとされる人々)側に立つ人々がマイノリティに「共感」(他者の経験や感情を自分のことのように感じること)したからといって、それが直ちに「加害可能性」への気づきをもたらすとは限らない。加害可能性とは、自らが知らないうちにマイノリティにとっての加害者になっていたのかもしれないという意味である。また、共感が「連累」(れんるい)への自覚をもたらすとは限らない。連累とは、自らが受益してきた社会構造によって他者が苦しみを被ってきたという意味である。そのような共感は、マジョリティの人々が自らとマイノリティを過度に同一視し、そもそも社会構造的に異なる立場にあるかれらを、あたかも自らと同じ立場に立つものであるかのように錯覚することになりかねない。
「あなたの痛み、私にもわかる」というマジョリティ側からの共感の表明が、マイノリティ側からの「あなたに何がわかるのか」という拒絶にしばしば直面する理由がこれである。そんなとき、マジョリティの人々はマイノリティの人々の「傷つきやすさ」をわかったつもりになっているが、実は他者という鏡に映った自分自身の「傷つきやすさ」を眺(なが)めているにすぎない。要するにそれは、マイノリティの境遇に同情する「善意の」マジョリティが陥りがちな「勘違いの共感」なのである。(4、9、166~167ページ)

マイノリティの「傷つきやすさ」
マイノリティの置かれた不公正な状況の是正をめざすためには、そうした不公正がいかにして歴史的に形成され、社会的に構造化されてきたのかに注目する必要がある。それは必然的に、今を生きるマイノリティが抱える「傷つきやすさ」が、マジョリティの人々の「傷つきやすさ」と安易に同一視できるものではないという理解を導く。そしてそうした独特の「傷つきやすさ」を緩和するために、マイノリティが置かれた経済社会的なヴァルネラビリティ(不安定さ)を緩和する措置が、ときには優先的に与えられねばならなということになる。これが、マイノリティへの支援・優遇措置を正当化する論理である。(167ページ)

「とりあえず、なりゆき」任せの対話
「想像力」を養うためには、他者との「対話」が必要になる。それは、とりあえず「なりゆき」に任せてやってみることが、意外と有効で実践的な戦略である。
グローバリゼーションの時代とは、自分が始めた小さな行為がきっかけとなり、それが他者とつながることで、大きな流れになることが可能な時代である。それゆえ他者との対話と想像力を推し進めていくために、とりあえず身近な誰か、あるいは何かとの真摯な対話の試みから始めて、なりゆきに任せてみるのも悪くない。その可能性を信じる勇気と楽観性を持てるかどうかが、この見通しの悪い世界のなかで「リアル」でいられるか、現状追認や大勢順応に陥ってしまうのか、分かれ目になる。一つひとつの小さな対話がつながり、やがて大きな対話的想像力のネットワークになっていけばよい。それが社会(世界)を変えることになる。(207~208ページ)

〇「今」の社会は、「地域共生社会」「全世代型社会保障」といったスローガンだけが躍り、その実は子どもから高齢者まですべての人が「生きづらい」社会である。表現の自由が失われ、監視と検閲がまかり通り、公務員やメディア関係者らも委縮する「息苦しい社会」である。近未来の全体主義社会を風刺し、警鐘を鳴らしたイギリスの作家ジョージ・オーウェルの小説『1984年』(高橋和久訳、早川書房、2009年7月)を想起する。
〇正義感をひけらかして政権批判を繰り返し、政策や制度の問題点や課題をあげつらうだけでは、社会は変わらない。「批判」は、「既存の常識を疑い、それとは異なる(オルタナティブな)新しい発想、価値観、方法を創造すること」([2]14ページ)である。
〇「今」求められるのは、「断絶の時代」認識と、「分断社会」についての“熱い胸”と“冷たい頭”すなわち感性的認識と理性的認識、そして主体的認識である(一番ヶ瀬康子。<雑感>(68)2018年11月27日投稿、参照)。
〇日本の政治や経済、社会は未曽有の危機にある。教科書で学んだ「先進国」や「経済大国」そして「民主国家」のニッポンは、地に落ちた。「がんばろう」「大和魂」「絆」などには危うさがつきまとう。そんななかで、ネットなどを通じた”共働”によってコミュニケーションの幅を広げ、新たな市民運動を展開することを経験している。また、「次の選挙であなたの対立候補に投票しますよ」(相澤冬樹)という言いまわしを再認識した。「ふつう」の市民が政治について自由に語り自律的に行動することが、民主主義を豊かにし、健全なものにする。その民主主義を支えるのはメディアである。その先に「生きやすい」「ゆったりとした」社会の”共創”があろう。そこで問われるのが井手や塩原らがいう「(批判的)想像力」と「対話」であり、その育成や推進である。自戒の念を込めて、改めて確認しておきたい。

現代政治ことわざ誤用集(その2)

〈七転び八起き〉
権力者が 民に要求すること

〈花より団子〉
桜を見る会のこと
どんな団子が与えられたのでしょうね

〈無理が通れば道理が引っ込む〉
国会運営の手法です
無理を通して 道理は消されること
 
〈蛙の面に水〉
スピード感をもった鈍足
真摯に丁寧にと使う枕詞(まくらことば)
慣れると何にも感じない 

〈帯に短し襷に長し〉
適材適所の要職に収まる議員がいないこと

〈転ばぬ先の杖〉
検察庁法の改正そのもの

〈船頭多くして船山に上る〉
コロナ後のどんぐりの背比べ
誰が船頭になるのやら 自民党議員の悩み深し
着く船頭で 大臣の椅子が決まるからね

〈棚からぼた餅〉
公明党の仕掛けた 手柄の横取りみたいなこと

〈蛙の子は蛙〉
だから 2世3世議員がゴロゴロ
ゲロゲロ鳴いて 金集め

〈聞くのは一時の恥 聞かぬは一生の恥〉
専門家の意見を聞いてと たぶらかすこと

〈頭隠して尻隠さず〉
妻の監督不行き届けです

〈仏の顔も三度〉
信仰がないから 三度くらい許されても意味はない
だから何度悪さしても こりないということ

〈瓢箪(ひょうたん)から駒〉
マスクで人気を取りましょう
やってしまった!

〈急いては事をし損じる〉
緊急事態宣言を解除した“いま”だよ!

〈情けは人のためならず〉
人に情けはかけてはならない
すべては自己責任だということ

〈知らぬが仏〉
ヤバいのに不安をあおらぬよう 緊急事態宣言の解除をすること

〈紺屋の白袴〉
議員は 先に自分の袴を染めてます

〈芸は身を助ける〉
議員の多くは 太鼓持ち

〈可愛い子には旅をさせる〉
米国留学は 箔を付けることだっけ

〈親の心子知らず 子の心親知らず〉
親子のコミュニケーション不足だけでなく
政権と国民との関係のこと

〈弘法も筆の誤り〉
間違っても 言い訳だけがうまくなるということ

〈岡目八目〉
政権に 諫言をしてくれる人がいないこと

〈縁の下の力持ち〉
国民のこと

〈能ある鷹は爪を隠す〉
能がない鷹は バッチを爪にすること

〈一寸の虫にも五分の魂〉
壱千万件のツイッターも 一寸の虫扱いにすること

〈後の祭り〉
間に合わなければ 何の役にも立たない
予想される コロナ禍後のドタバタのこと

〈言うは易し行うは難し〉
緊急事態宣言解除後の自粛生活

〈笑う門には福来たる〉
その日が待ち遠しい
だから 笑顔を絶やさすにいよう
えっ マスクでわからない
だから 暗い世間です

〈身から出た錆〉
ボーとしていた議員が 首を洗って待つ日を数えること

〈早起きは三文の得〉
夜の宴会なくなって 資金繰りが難しい早寝の議員 
三文で我慢して

〔2020年5月17日書き下ろし。第2集です。まだまだ続けるつもりです〕

現代政治ことわざ誤用集(その1)

〈急がば回れ〉
スピード感をもってと言いながら
いつも遅きに失すること

〈二兎を追う者は一兎をも得ず〉
オリンピックと改憲
欲張ったツケは 国民が払うということ

〈柳の下の泥鰌(どじょう)〉
一度上手くいったからと
決めつけて 墓穴を掘ること

〈猿も木から落ちる〉
コロナで 手痛いしっぺ返しを受けること

〈失敗は成功のもと〉
失敗は 周りがみんな尻拭いしたから
彼らにあげた褒美(ほうび)を喜んだということ
“失政は出世のもと”ともいう

〈好きこそものの上手なれ〉
野党をからかうのは大好き
どんどん話術も態度も上達すること

〈人の振り見て我が振り直せ〉
民が政治家の振り見て 考え直すということ

〈楽あれば苦あり〉
次の選挙は 落選の憂き目にあうということ

〈出る杭は打たれる〉
だから官僚は 従順に仕事をするということ

〈逃した魚は大きい〉
ツイッター壱千万件を無視したつけが 議員の首を絞めるということ

〈取らぬ狸の皮算用〉
非常事態宣言を解いて 経済回復を目論んだ途端に挫折するということ

〈暖簾に腕押し〉
マスク配ります 支援金出しますって
頑張ったところで 大した手応えが返ってこないこと

〈鬼に金棒〉
検察庁法の改正 やる気満々
後に続く者への置き土産

〈先んずれば人を制す〉
先を越されて あわてて取り繕い
やってる感を演出するということ

〈火のない所に煙は立たぬ〉
いつも消火器を用意して さっさと消し回ること
広島の夫婦は 消しきれなかったことが悔やまれる

〈類は友を呼ぶ〉
党という看板の下で 友だちごっこすること

〈雨降って地固まる〉
コロナ禍で そう思いたいそうありたいと願う心境のこと

〈塵も積もれば山となる〉
7年もやってれば 掃除しきれない塵は出てくる
いまじゃふんぞり返った政治家が ゴミの山になったということ

〈溺れる者は藁をもつかむ〉
これから始まる党内の政権争い 楽しませてほしい

〈大は小を兼ねる〉
政治家は小ばかりで大がいないから 兼ねられない
でも “山椒は小粒でもピリッと辛い”のは 大歓迎です

〈負けるが勝ち〉
と思った瞬間 その座から滑り落ちるので
決して負けを認めず “真摯に丁寧に”を繰り返すだけのこと

〈下手な考え休むに似たり〉
リタイヤしてほしいと 多くの民は願いを込めている

〈喉元過ぎれば熱さを忘れる〉
“もりかけ”そばにして 喉越し良く飲み込もうとしても
次から次へと問題が起こって 忘れることができず嘆きが続く

〈朱に交われば赤くなる〉
小泉進次郎環境相です

〈口は災いの元〉
森まさこ法相です

〈思う念力岩をも通す〉
壱千万件のツイッターの声が集まった
政治の新しい流れが生まれる可能性を信じたい

〈蒔かぬ種は生えぬ〉
政治家のスキャンダル 
蒔いたから生えてきただけのこと

〈論より証拠〉
これで7年間 逃げおおせた名言

〔2020年5月17日書き下ろし。第1集です。楽しめましたか?〕