阪野 貢 のすべての投稿

障害は個性ではない―障がい者差別の解消に向けて―

『月刊福祉』12月号が届いた。2013年6月26日に公布された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」について特集が組まれている。そのテーマは、「障害者差別解消法が意味するもの」である。天竜厚生会理事長の山本たつ子先生が「特集の視点」で次のように述べている。

障害者差別解消法第4条には、「国民は、(中略)障害を理由とする差別の解消に寄与するよう努めなければならない」と定められており、差別の解消の推進は、国民の責務としている。義務規定ではないものの、社会全体で取り組むべき性格のものである。法の規定や義務づけによって差別は解消されるものではなく、国民一人ひとりの理解と意識変革が必要である。(11ページ)

取り敢えずここでは、障がい者差別の真の解消には、「国民一人ひとりの理解と意識変革が必要である」という指摘に注目したい。障害者差別解消法には、その「理解」や「意識変革」を促すための具体的な条文規定はない。第15条で、「国及び地方公共団体は、障害を理由とする差別の解消について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとする。」と定めている。しかし、この条文(「啓発活動」)も単なる修辞に過ぎなくなるとも限らない。2016年4月1日からの施行に向けて、今後、政府による「基本方針」の策定やガイドライン(対応要領、対応指針)の作成が行われる。「理解」や「意識変革」のための教育・啓発活動(福祉教育)についての熟議が、強く求められるところである。そして、それに基づく福祉教育(「市民福祉教育」)の現実的で具体的な推進方策の探究と提案・実施を期待したい。

障がい者差別に関して、福祉教育の実践場面ではいまだに次のようなことが語られる。

「Bさんがもっている障害は、Bさんの個性です。皆さんもそれぞれ、個性をもっています。障害をその人の個性と考えれば、障害のある人を特別視することはなくなります。」

ここで問われるのは、障害イコール個性なのか。それは耳触りの良い言葉ではあるが、その考え方が、障害や障害のある人に対する無知や無理解、誤解、偏見や差別などを生ぜしめているのではないか。場合によっては、障害のある人を無意味に美化することに繋がらないか。その人に特有な特徴や性格を個性というとすれば、それはその人の価値観・世界観に基づく、その人らしい行動や考え方、生き方に見出される。またそれは、その人の生い立ちや地域・生活環境によって異なる。障害の有無にかかわらず、誰もが、その人の生命(生きる力)や生活、人生によって個性を形成し、発揮する。しかも、その個性は多様であり、多様性のなかにこそその本質がある。これまでにありがちな抽象的で理念的な「障害個性論」を唱えている限り、福祉教育による「共生社会」の創造はかなわないのではないか。障害は、男性と女性、子どもと高齢者などと同様に、そうである人の身体的・精神的・社会的・政治的・文化的な「属性」(そのものが有する本質的な特徴・性質)の“ひとつ”に過ぎないと考えるべきではないか、等々である。

「Aさんは重度の障害をもちながらも、その障害を乗り越えてあんなにも頑張っている。障害のない、恵まれている皆さんが、障害のある人に対して思いやりの心で接するのは、人間として当然のことです。」

ここで問われるのは、障害はすべて、乗り越えなければならないものなのか。乗り越えなければならないバリア(障壁)をつくっているのは、一体誰か。「障害のない、恵まれている人」イコール「優等者」「強者」か。「障害のある、恵まれない人」イコール「劣等者」「弱者」か。優等者から劣等者、強者から弱者への思いやりは、一方通行の、上から下への思いやりではないのか。障害のある人が、「障がい者」としてただ生きる(存在する)ことの意味は何か。障害の有無にかかわらず、誰もが、いかによりよく生きる(実存する)かが問われるのではないか。それによってこそ、自尊心や自己肯定感、生きがいなどを持ち、保ち、高めることができるのではないか。ノーマライゼーションやソーシャルインクルージョンは空念仏となっていないか。こうした問題意識を深め、課題を追究し、その解決を図ることによって、真の「共生社会」への道が開かれるのではないか、等々である。

「福祉教育」実践・研究への“熱い思い”

筆者(阪野)の教え子のひとりである T 先生から、「福祉のまちづくり条例にみる『福祉教育』条文(Ⅰ)(Ⅱ)」(2013年11月7日投稿)の拙文に対し、以下のようなメールをいただきました。

「福祉のまちづくり条例にみる『福祉教育』条文Ⅰ・Ⅱ」を拝読させていただきました。相変わらず “阪野先生節” 健在で、読者に対する警鐘は当方も痛感するところです。
行政や社協が好んで使う「協働」は、聞こえのよい言葉ですが、「上から」の、「協働」の強制にならないよう、慎重を期することが大切ですね。
教育委員会の廃止や道徳の教科化、最近の特定秘密保護法案などに関しても、多くの市民がもっと関心を持ち、大きな声をあげなければなりません。そのためには、市民の、市民による、市民のための「草の根」の教育・学習の機会や場が必要になります。そのひとつに先生がおっしゃる「市民福祉教育」があるのではないでしょうか。真実かつ公正で、欠落のない情報が適切に開示・提供されることが強く求められます。一方で、市民にはそうした情報を収集し、整理し、分析する「力」をつける必要があります。その「力」の育成が市民福祉教育に期待されるのではないでしょうか。
福祉教育の世界は、最近、戦略(strategy)なき戦術(tactics)に走り、対症療法的な精神主義や教育技術主義に陥っているようでもあります。現状を無自覚的・無批判的に受け入れ、体制に迎合し、あるいは取り込まれている論稿が気になります。また、データ主義のもとで解析技法に重点が置かれ、真にめざすべき福祉教育や共生社会への探究が希薄な学会発表にも出合います。
客観性・論理性・実証性に十二分に留意しながら、福祉教育やその実践と研究に “熱い思い” を込めて精進したいと思っています。

福祉のまちづくり条例にみる「福祉教育」条文(Ⅱ)

3 福祉のまちづくりに関する市町村条例

市町村の「福祉のまちづくり条例」については、(1)木下聖がその論稿で扱っている38本の条例をベースに、(2)「福祉、まちづくり、条例」のキーワードでGoogleウェブ検索した条例を加え、そのうえで(3)市町村のウェブサイトに掲載されている条例・例規集から検索した条例を整理した50本の条例を検討対象とした。
その名称は多様であるが、ほとんどの条例で「福祉のまちづくり」などに関する「教育」「学習」「広報」「啓発」「情報提供」「意識の醸成」等の条・項文規定がある。それらのうちで、「福祉教育」について独立条文で規定する条例は次の18本(36%)である。神戸市(1977年1月10日公布、以下「公布」略。)、箕面市(1996年3月29日)、福岡市(1998年3月30日)、宇都宮市(2000年3月24日)、宮崎市(2000年12月20日)、金沢市(2001年3月23日)、若桜町(2001年3月30日)、新居浜市(2002年12月25日)、筑後市(2003年9月26日)、高浜市(2003年9月30日)、多治見市(2003年12月22日)、石狩市(2004年3月29日)、七尾市(2004年10月1日)、出雲市(2005年3月22日)、士別市(2005年9月1日)、都城市(2006年1月1日)、松江市(2008年6月26日)、志摩市(2008年6月30日)。
以上のうちから、代表的あるいは特徴的なものとして、「福祉教育」の条文とその前後の条文を8本紹介する。

(1)兵庫県神戸市/神戸市民の福祉をまもる条例/1977年1月10日公布
第4章 市民福祉の推進体制
第1節 福祉教育の推進
(福祉教育の理念)
第45条 福祉教育は、第2条に規定する市民福祉の基本理念並びに福祉に関する制度及び実情を正しく理解し、福祉意識を高めるとともに、市民みずから市民福祉を充実するための実践的な方法を身につけることをめざして推進されなければならない。
(市長等による福祉教育の推進)
第46条 市長及び教育委員会は、すべての市民に対し、生涯のあらゆる教育の場を通じて福祉教育を行うよう努めるものとする。
2 市民福祉の向上を目的とする団体(以下「福祉団体」という。)及び施設を経営する者は、その活動の場を通じて福祉教育を実施するよう努めなければならない。
3 市長及び教育委員会は、必要と認めるときは、福祉団体又は施設を経営する者の行う福祉教育に対し、助言又は専門技術的指導を行うことができる。
(市民の福祉学習及び福祉教育への参加)
第47条 市民は、福祉を理解し、及び福祉活動を実践するための自主的学習を行うとともに、福祉教育に積極的に参加するよう努めなければならない。

(2)大阪府箕面市/箕面市福祉のまち総合条例/1996年3月29日公布
(学習機会の確保)
第18条 市長は、障害者、高齢者等が地域社会でのあらゆる場面に参加し、それぞれの時期に応じた教育が受けられるよう学習機会の確保に努めなければならない。
(福祉教育の推進)
第19条 福祉教育は、市民自らが基本理念及び地域福祉に関する実情を理解し、地域福祉を充実することを目指し、主体的に推進するものとする。
2 市長は、学校教育、生涯学習等あらゆる機会を通じて福祉教育の推進に努めなければならない。
(福祉活動への支援)
第20条 市長は、自主的に地域において福祉活動を行う市民に対し、必要に応じて情報の提供、助言又は協働による支援を行うものとする。

(3)栃木県宇都宮市/宇都宮市やさしさをはぐくむ福祉のまちづくり条例/2000年3月24日公布
(意識の高揚)
第8条 市は、市民及び事業者が自主的に福祉のまちづくりに関する活動に取り組むよう意識の高揚に努めるものとする。
(福祉に関する教育の充実)
第9条 市は、高齢者、障害者等に対する思いやりのある福祉の心をはぐくむため、福祉に関する教育の充実に努めるものとする。
(生涯学習の機会の確保)
第10条 市は、高齢者、障害者等が生きがいを持って、豊かな生活を送ることができるよう生涯学習の機会の確保に努めるものとする。
(情報の提供)
第11条 市は、市民及び事業者の福祉のまちづくりに関する自主的な活動を促進するため、情報の提供に努めるものとする。
(ボランティア活動への参加及び支援)
第16条 市民及び事業者は、福祉のまちづくりに関するボランティア活動に積極的に参加するよう努めるものとする。
2 市は、市民及び事業者が行う福祉のまちづくりに関するボランティア活動を支援するため、必要な施策を講ずるものとする。

4)石川県金沢市/みんなで支え合う健康と福祉のまちづくりの推進に関する条例/2001年3月23日公布
(健康福祉教育の推進及び人材の育成)
第9条 市は、健やかで思いやりのある心を育むため、健康と福祉に関する教育を推進するとともに、必要な人材の育成に努めるものとする。
(ボランティア活動等の促進等)
第10条 市は、健康と福祉のまちづくりを推進するため、健康と福祉に関するボランティア活動その他の非営利活動(以下「ボランティア活動等」という。)への市民及び事業者の参加を促進するとともに、ボランティア活動等を支援するために必要な施策を講ずるものとする。
2 市は、市民が健康で心豊かな生活を営むことができるよう、生涯を通じての学習及び文化活動の機会を確保するなど、必要な支援に努めるものとする。
(情報の提供)
第12条 市及び事業者は、市民が健康と福祉について必要とする情報の提供に努めるものとする。
(普及活動の促進)
第14条 市長は、健康と福祉のまちづくりについての理解を深めるため、その普及活動に努めるものとする。

(5)愛媛県新居浜市/新居浜市みんなでつくる福祉のまちづくり条例/2002年12月25日公布
(社会参加への推進)
第8条 市は、すべての市民が等しく社会参加ができるよう、福祉のまちづくりにおけるさまざまな活動を支援するために必要な条件整備に努めます。
2 市は、移動手段の確保が困難な障害者、高齢者等の移動を容易にするための施策を推進します。
(福祉教育の推進)
第9条 市は、学校教育、生涯学習等のあらゆる機会を通じて福祉教育の推進に努めます。
(広報啓発活動の充実)
第10条 市は、福祉のまちづくりについて、市民及び事業者が理解を深め自主的に活動することを促進するため、広報啓発活動の充実を図り、適切な情報の提供に努めます。
(ボランティア活動等の推進)
第17条 市は、市民が社会に貢献する活動にいつでも自由に参加できるよう、ボランティア団体及び非営利活動団体等の育成や活動に対し、必要な支援策を推進します。

(6)岐阜県多治見市/多治見市福祉基本条例/2003年12月22日公布
(地域福祉の啓発)
第8条 市は、市民と事業者が地域福祉に関する正しい知識を深め、地域福祉活動に積極的に参加しようとする意欲を高めるために必要な施策を実施します。
(権利の尊重と擁護)
第9条 市民、事業者と市は、高齢者、障害者等の自己決定に関する権利を尊重します。
2 市は、高齢者、障害者等の自己決定に関する権利を擁護するため、社会福祉事業者や関係機関と連携しながら適切な援助を行います。
(福祉学習、教育の推進)
第10条 市民は、生涯にわたって福祉に対する正しい知識を得るよう、自主的な学習に努めます。
2 市は、市民が福祉に対する正しい知識を得るとともに、高齢者、障害者等をはじめ市民相互に対する理解と思いやりを持つことができるよう、社会福祉事業者、教育機関等と協力し、福祉教育の推進に努めます。
(ボランティア活動等への支援)
第18条 市民と事業者は、自らの意思に基づいて、地域福祉に関するボランティア活動(以下「ボランティア活動」といいます。)に参加します。
2 事業者は、雇用している人が、積極的にボランティア活動に参加することができるよう支援に努めます。
3 市は、市民と事業者によるボランティア活動その他の市民活動を促進するために、必要な支援を行います。

(7)北海道士別市/士別市福祉のまちづくり条例/2005年9月1日公布
(福祉の心の醸成)
第9条 市は、すべての市民がお互いの人権を尊重し合い、障害者、高齢者等を思いやり助け合う福祉の心及び社会奉仕の精神等の醸成が図られるよう努めるものとする。
(啓発活動、情報提供等)
第10条 市は、市民及び事業者の福祉のまちづくりに関する理解を深め、自主的な活動を促進するため、必要な啓発活動、情報の提供、助言及び指導を行うものとし、啓発活動及び情報の提供に当たっては、障害者、高齢者等の特性に応じた取組みを行うよう努めるものとする。
2 市は、障害者、高齢者等が情報を円滑に利用し、意思表示できるようにするため、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(相談支援体制の充実)
第11条 市は、福祉のまちづくりや保健福祉に関する市民の相談に適切に対応することができるよう、必要な相談支援体制の充実に努めるものとする。
(福祉教育の充実)
第12条 市は、障害者、高齢者等に対する理解が深められるよう、福祉教育の充実及び学習機会の提供その他福祉の心の醸成を図るために必要な施策を講ずるものとする。
(ボランティア活動の振興)
第15条 市は、市民及び事業者が障害者、高齢者等の福祉に関するボランティア活動を実践できるよう、必要な施策を講ずるものとする。
2 市は、障害者、高齢者等が自らの状況に応じたボランティア活動を実践できるよう、環境の醸成に必要な施策を講ずるものとする。
(地域福祉活動の推進)
第16条 市は、市民の理解と協力のもと、住民参加による地域福祉活動を推進するよう、必要な施策を講ずるものとする。

(8)島根県松江市/松江市ひとにやさしいまちづくり条例/2008年6月26日公布
(情報の提供)
第8条 市は、市民、地域を構成する主体等及び事業者がひとにやさしいまちづくりを推進するために必要な情報の提供に努めるものとする。
(学習機会の提供と福祉教育の充実)
第9条 市は、市民、地域を構成する主体等及び事業者がひとにやさしいまちづくりを推進するために必要な学習ができるよう、その機会の提供に努めるものとする。
2 市は、将来を担うこどもたちをはじめ、すべての人が高齢者、障害者等に対する理解を深め、思いやりの心を養い、お互いに助け合える地域社会をつくるため、学校教育、社会教育等の場において、体験学習やボランティア活動を通じて、福祉教育が充実されるよう努めるものとする。
(啓発活動)
第10条 市、市民、地域を構成する主体等及び事業者は、ひとにやさしいまちづくりの推進に関する広報その他の啓発活動に努めるものとする。
(ボランティア活動への参加等)
第11条 市民、地域を構成する主体等及び事業者は、ボランティア活動に取り組むように努めるものとする。
2 事業者は、その雇用する者がボランティア活動に参加しようとするときは、必要な便宜を図るように努めるものとする。
3 市は、ボランティア活動を促進するため、関係機関と連携し、情報の提供並びに人材の育成及び活用その他必要な支援を行うよう努めるものとする。
(地域づくり)
第12条 市民、地域を構成する主体等及び事業者は、地域の課題を共有し、連携してその解決に努めるものとする。
2 市は、地域の課題解決に向けた市民、地域を構成する主体等及び事業者の取り組みに対し、必要な支援を行うよう努めるものとする。

「福祉教育」の文言が条・項文中にある条例は、「福祉教育」の条文見出しのある上記の条例を除いて、4本を数える。以下にその条・項文のみを紹介する。

(1)兵庫県尼崎市/尼崎市民の福祉に関する条例/1983年3月31日公布
(福祉活動)
第13条 市民は、市民福祉を理解し、福祉活動を実践するための福祉教育を通じて、福祉意識の高揚に努めるとともに、近隣、地域、職域等の地域生活を通じて、福祉活動に努めなければならない。
2 市長及び教育委員会は、市民の福祉活動の促進を図るため、次の各号に掲げる施策を行うものとする。
(1) コミユニテイ活動及びボランテイア活動の育成に関すること。
(2) 福祉教育に関すること。
(3) 福祉活動に必要な情報の提供等に関すること。
(4) 前各号に掲げるもののほか、市民の福祉活動の促進を図るため必要と認められること。

(2)東京都狛江市/狛江市福祉基本条例/1994年3月31日公布
(計画の策定)
第5条 市は、第3条に規定する基本理念を実現するため、市民の生活の視点から市民福祉に関する基本的かつ総合的な福祉のまちづくりを推進するための計画(以下「福祉計画」という。)を策定し、次に掲げる事項を基本とする施策を推進しなければならない。
(7) 福祉のまちづくりに対する市民の関心を高め、活動への参加を促すため、学校及び地域における福祉教育を推進すること。

(3)岡山県岡山市/岡山市くらしやすい福祉のまちづくり条例/2001年12月21日公布
(魅力と特色のある教育の推進)
第20条 市は、関係機関、団体などと連携して、国際化、情報化などに対応した教育を推進するとともに、郷土に愛着と誇りがもてる教育や福祉教育など、魅力と特色のある教育の推進に取り組みます。

(4)富山県高岡市/高岡市福祉のまちづくり条例/2005年11月1日公布
(福祉のこころの醸成)
第19条 市は、すべての市民がお互いの人間性を十分に尊重し、高齢者、障害者等に対する正しい理解を深め、温かい思いやりと助け合いのこころを高めるため、福祉教育の実践に努めるとともに、学校、家庭、地域社会において、人間愛の精神、福祉のこころ、社会奉仕の精神等の醸成が図られるよう必要な施策を講ずるものとする。
2 市は、福祉に対する市民の理解を高めるとともに、ノーマライゼーションの理念の普及を図るため、広報、啓発活動の展開、市民交流の促進その他の必要な施策の実施に努めるものとする。

なお、ボランティア活動について、その「促進」「推進」「振興」「支援」「参加」等の文言を用いて独立条文で規定する条例は50本中19本(38%)である。また、「ボランティア活動」の文言が条・項文中にある条例は6本(12%)を数える。公共的施設等のバリアフリー化を主な目的とする条例においては、ボランティア活動に関する規定はほとんど設けられていない。なお、「福祉ボランティア活動の推進」について規定する加古川市の条例については、その細部にわたる規定内容等の評価はともかくとして、留意しておきたい。以下がそれである。

兵庫県加古川市/加古川市福祉コミュニティ条例/1982年6月22日公布
第10節 福祉ボランティア活動の推進
(福祉ボランティア活動の推進)
第44条 福祉ボランテイア活動は、高齢者及び障害者の人権を尊重し、市民の相互扶助精神に基づく市民の自主的なものでなければならない。
(福祉ボランテイア活動の助長)
第45条 市長は、市民及び事業者の福祉ボランテイア活動を援助するため、情報の提供、助言、指導等必要な措置を講ずるものとする。
(福祉ボランテイア活動への参加)
第46条 市民は、一人ひとりがその日常生活を通じ、自らの持てる技能及び時間等の提供により、単独又は団体活動に参加することによって、高齢者及び障害者の日常生活の移動、介助等の援助を行い、第40条に定める在宅福祉施策の推進に協力するよう努めなければならない。
(福祉ボランテイア活動への便宜供与等)
第47条 事業者は、その雇用している勤労者が福祉ボランテイア活動に参加しようとするときは、業務に支障のない範囲において必要な便宜の供与に努めるとともに、自らも福祉ボランテイア活動に参加するよう努めなければならない。

4 むすびにかえて

以上、基礎自治体と広域自治体の「福祉のまちづくり条例」に規定されている「福祉教育」の条文について整理・紹介した。最後に、それらを概観したうえでの問題点や課題をめぐって、若干の所見を述べたい。それをもって本稿の「むすびにかえて」おくことにする。
(1)「福祉教育」の独立条文のほとんどが、福祉教育を高齢者や障がい者に対する「理解」を深め、併せて「思いやりの心」を育むものとして規定している。その際、「理解」の視点や内容、方法については、一部を除いて必ずしも明確ではない。高齢者や障がい者を画一的・抽象的に(絶対的)「弱者」としてみるのか、個別具体的な「社会的弱者」としてみるのか。弱者に対する「強者」の側に立つ理解なのか、社会的弱者の側に立つ理解なのか。人権の実現・保障の視点や、社会的包摂の重要性を念頭においた理解なのか。先ずはこれらの点に留意すべきであろう。
「思いやりの心」は、あたかも福祉教育の接頭語のようである。また、その内容は不明瞭でもある。「思いやりの心」は、響きの良い言葉であるがゆえに、精神主義への偏向が促進されたり、人間の生き方という道徳面に力点が置かれたりする危険性なしとしない。「福祉のまちづくり」という名のもとで、社会や国家に尽くす従順で御しやすい人間づくりの福祉教育の推進が企図されないとも限らない。道徳の教科化や教育委員会の廃止などがもっともらしく、またかまびすしく語られる今日、こうした想いがするのは筆者だけであろうか。道徳の教科化は特定の価値(観)を小・中学生に強制的に注入し、教育委員会の廃止は教育行政の政治的中立性や継続性・安定性を脅かし侵害することにつながる。
(2)まちづくりには、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」、加えて「ネットワーク」が必要である。そして、こうした地域・社会資源を総合的に整備・調整・開発・保全・再生し、効率的・効果的に組み合わせて住民の生活問題や地域の課題の解決を図ることが肝要となる。福祉のまちづくに関してはさらに、地域住民と専門職による協働(共働)的な地域診断(アセスメント)や、アウトリーチ(出前)活動による積極的なニーズの把握や新たなニーズの掘り起こしが求められる。
以上のうちから、福祉のまちづくりに関する専門的な知識および技能を有する「ヒト」(「人材」)についてみると、その「育成」「確保」「活用」等を独立条文で規定するのは、都道府県条例で10本(21%)、市町村条例では5本(福岡市、金沢市、多治見市、七尾市、高岡市。10%)と少ない。まちづくりは「人づくり」といわれるように、地域リーダーや専門職の育成・確保が重要であることは多言を要さない。福祉のまちづくりやそのための改革実践が画餅に帰すことのないようにするためにも、人材育成・確保の福祉教育システムの整備が強く求められる。
福祉のまちづくりに関する必要な「情報」についてみると、その「収集」「提供」「利用」等を独立条文で規定するのは、都道府県条例で36本(77%)、市町村条例では50本中32本(64%)を数える。それ以外の条例でもそのほとんどに、「情報提供」に係る文言が条・項文中に設けられている。それは、山形県金山町(1982年4月施行)や神奈川県(1983年4月施行)での条例化を嚆矢とするが、国(「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(通称;情報公開法)、2001年4月施行)に先駆けて数多くの地方自治体で情報公開の手続きに関する条例が制定されたことに起因するといってよい。ただし、住民の要請に応える受動的な情報提供では住民主体の福祉のまちづくりは進まない。行政による積極的で能動的な情報提供と、住民による情報の収集・選別・編集とネットワーク化、そして共有化、そのうえでの有効活用が厳しく問われることになる。これはまた「福祉教育」の内容や方法のあり方に通じる。
(3)地方分権の推進が図られ、市民主権や市民自治が叫ばれるなかで、住民による、住民のための、地域特性を生かした福祉のまちづくりが求められている。また、住民の地域・生活ニーズが高度化し、価値観やライフスタイルが多様化するなかで、行政だけではそれらに対して効率的に、きめ細かく、臨機応変に対応することが困難になってきている。その一方で、住民による福祉のまちづくりへの参加意欲が高まり、NPОやボランティアなどの市民活動が活発に展開されてきている。多くの地方自治体によって、地方自治条例である福祉のまちづくり条例が制定される要因や背景のひとつはここにある。
ところが、前述の木下が指摘するように、福祉のまちづくり条例は「そのほとんどが行政主導で規定されてきている。こうした状況から、条例が当該自治体の市民の間に、そのねらいを含めてどの程度浸透しているかは疑わしいと言わざるを得ない」(前記論文、70ページ)。とすれば、およそ半数の福祉のまちづくり条例がボランティア活動の促進や支援策について規定していることに、多少の不安要素があり、ある種の危険が伴うことを指摘せざるを得ない。ボランティア活動の官製化が進み、市民「参加・参画」という名の「動員」や、行政の「下請け」化、「補完」化を促すことに結果するのではないか。危惧を覚えるところである。
ボランティア活動をはじめNPО活動や自治会活動を中心とした地域活動などの「市民活動」は、総じて福祉のまちづくりを推進するための活動であり、広範で総合的な分野にわたる。また、それは、一人ひとりの、全ての市民の権利であり責務である。さらに、市民活動は、市民の主体性と自律性、活動の革新性と創造性が尊重されなければならない。そこに求められるのは、市民相互および市民と自治体(行政)との真に対等・協力の関係である。そして、お互いが認識を広め、相互理解を深めるための学習と熟議である。福祉のまちづくり条例が規定する「福祉教育」や「ボランティア活動」には、こうしたことが含意されているであろうか。筆者がかねてからいう「市民福祉教育」のレーゾンデートル(存在理由)のひとつがここにある。
(4)福祉のまちづくり条例といっても、条文とその内容の密度や比重は異なるものの、①バリアフリーのまちづくりについて定めた条例、②まちづくりの理念や原則について定めた条例、③まちづくりのための市民参加・協働について定めた条例、④福祉コミュニティの形成・発展について定めた条例、⑤これらのいずれかを総合的に定めた条例等々、その名称も含めて多種多様である。いうまでもなく、福祉のまちづくりは一人ではできない。複数の住民がそれぞれが抱える生活問題や地域の課題を共有化、それぞれの立場や属性、考え方などについての異質性や同一性、さらには共同性を認め合いながら、課題解決に向けた学習すなわち福祉教育(市民福祉教育)に取り組むことが必要かつ重要となる。福祉のまちづくり条例は、それがどのような内容を主にするものであっても、福祉教育の条文規定は欠かせない。
前述したように、福祉のまちづくり条例に類するものに自治基本条例や市民活動支援条例、市民参加・協働条例などがある。それらにはいずれも、広報・啓発、情報提供、学習・教育などに関する条文が規定されている。また、市町村地域福祉計画や都道府県地域福祉支援計画、さらには社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画などにも福祉教育に関する計画内容が盛り込まれている。これらの規定や計画と、福祉のまちづくり条例の「福祉教育」条文との相乗的な効果を生み出す工夫や新たな取り組みが求められる。
また、福祉のまちづくりの都道府県条例と市町村条例には、ほぼ同じ内容の福祉教育の条文規定がある。両者は、建前上は競合することはなく、併存する。都道府県条例では広域的観点から福祉教育に関する必要十分な条文を規定し、市町村条例では地域の実態や特性を十分に考慮した条文内容であることが求められる。ただし、福祉のまちづくりや福祉教育の理念や構造および内容、性格や特性などを考えたとき、市町村条例の方が都道府県条例よりは同等以上に効果的であり、市町村条例における「福祉教育」条文の質・量ともに充実した規定が求められよう。

付記(1)
市町村の「福祉のまちづくり条例」として検索し、検討対象としたのは、次の市町村の条例である。公布順に市町村名のみ記す。一番古いのは阿南市/阿南市社会福祉基本条例/1972年3月29日公布、一番新しいのは久喜市/久喜市総合福祉条例/2010年3月23日公布、である。
阿南市、神戸市、加古川市、尼崎市、町田市、狛江市、世田谷区、箕面市、仙台市、府中市、川崎市、小平市、調布市、横浜市、三鷹市、福岡市、池田市、札幌市、上越市、宇都宮市、宮崎市、金沢市、若桜町(鳥取県)、函館市、岡山市、板橋区、新居浜市、厚木市、筑後市、高浜市、豊中市、多治見市、美唄市、石狩市、茅野市、七尾市、出雲市、高山市、士別市、鶴岡市(旧藤島町)、高岡市、都城市、世田谷区、八戸市、西東京市、那覇市、松江市、志摩市、練馬区、久喜市。

付記(2)
茅野市では、2013年1月1日、「茅野市たくましく・やさしい・夢のある子どもを育む条例」(2012年12月27日公布)が施行された。次の条文規定に基づいて福祉教育の推進が図られているのであろう。なお、この条例は、例規集の「第1編 総規」中にある。紹介するとともに、留意しておきたい。
(子どもの社会参加の促進)
第14条 市は、子どもが社会の一員としての責任を果たせるように社会参加をする機会を拡充し、子どもの意見が適切に社会に反映される環境の整備に努めるものとする。
2 市は、子どもの個性を伸ばし、人間性を豊かにする文化的・社会的活動に子どもが参加し、体験することができる場を確保するように努めるものとする。
(福祉意識の醸成)
第15条 市は、子どもが全ての人を思いやる心を育むことができるように福祉意識の醸成に努めるものとする。

福祉のまちづくり条例にみる「福祉教育」条文(Ⅰ)

1 はじめに

1990年代後半以降、地方自治条例である「福祉のまちづくり条例」制定の取り組みが、広域自治体としての都道府県を中心に進められた。それは、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(通称;ハートビル法)が1994年9月から施行されたことをひとつの契機とする。その後、1998年12月から特定非営利活動促進法(通称;NPO法)が施行され、市民の社会参加の促進とまちづくりの推進が図られた。また、「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」(通称;地方分権一括法)が2000年4月から施行され、それに基づいて地方分権改革が進んだ。2000年5月には社会福祉事業法が社会福祉法へと改正・改称され、同年6月から施行された。そこでは、国や地方自治体における福祉政策の主要な柱に「地域福祉」が据えられることになり、地域福祉を新機軸とするこんにちの社会福祉の方向が示された。次いで、2000年11月から「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(通称;交通バリアフリー法)、2003年4月から改正ハートビル法、2006年12月からハートビル法と交通バリアフリー法を一体化した「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(通称;バリアフリー新法)がそれぞれ施行された。そして、2003年4月からは、社会福祉法が定める市町村地域福祉計画と都道府県地域福祉支援計画に係る規定が施行された。
こうした地方分権改革や社会福祉制度改革などを受けて、基礎自治体としての市町村において福祉のまちづくり条例を制定する動きが活発化することになる。その内容については、木下聖(埼玉県立大学)も指摘するように、当初は障がい者や高齢者に対する公共的施設等のバリアフリー化を主な目的とする条例であった。その後は、各自治体の福祉政策の基本方針や、すべての人を視野に入れた福祉のまちづくりを総合的に推進するための仕組みについて規定する条例へと変化していく(木下聖「地方分権下での基礎自治体における『福祉のまちづくり』条例の活用と福祉政策の展開―バリアフリー推進から福祉の総合的な展開へ―」『埼玉県立大学紀要』第11巻、2010年3月、63~70ページ)。
福祉のまちづくり条例については、いわゆる「自治基本条例」や「市民活動支援条例」「市民参加・協働条例」などと同様に、確立された考え方があるわけではない。また、それらの条例は、名称も内容も多様であり、必ずしも明確な共通性をもっているわけでもない。内容も、理念条例から手続条例まで多様である。
そこで、本稿では、「福祉のまちづくり条例」という名称の条例と福祉のまちづくりの推進を目的に掲げる条例を、とりあえず「福祉のまちづくり条例」として扱うことにする。条例の取捨選択については、明確な基準を設けてはいない。そうした限られた範囲内で収集した各条例のうちから、福祉のまちづくりの主体形成にとって重要な「福祉教育」に関する条文に焦点を当て、主として条文の紹介とそれをめぐる若干の考察を行うことにする。

2 福祉のまちづくりに関する都道府県条例

こんにち、福祉のまちづくり条例は全ての都道府県で制定されている。その制定に先鞭をつけたのは、兵庫県(福祉のまちづくり条例、1992年10月9日公布)である。それに次いで、大阪府(大阪府福祉のまちづくり条例、1992年10月28日)、山梨県(山梨県障害者幸住条例、1993年10月14日公布)、愛知県(人にやさしい街づくりの推進に関する条例、1994年6月14日)、滋賀県(だれもが住みたくなる福祉滋賀のまちづくり条例、1994年10月17日公布)がそれぞれ制定している。その後、2000年までに累計で43の都道府県において制定され、一番最後は徳島県(徳島県ユニバーサルデザインによるまちづくりの推進に関する条例/2007年3月20日公布)である。
「福祉教育」について独立条文で規定する条例は次の7本(15%)である。「福祉教育」とそれに関する条文(前後の条文)を紹介する。

(1)兵庫県/福祉のまちづくり条例/1992年10月9日公布
(福祉教育の推進)
第8条 県は、高齢者等に対する理解と思いやりのある児童を育成するための福祉教育を推進するものとする。
(県民の意識の高揚等)
第9条 県は、県民及び事業者に対し、福祉のまちづくりに関する意識の高揚及び知識の普及に努めるものとする。
2 県は、市町、県民及び事業者に対し、福祉のまちづくりに関する必要な情報の提供、指導又は助言を行うものとする。
(住民の意識の高揚等)
第10条 市町は、住民及び事業者に対し、当該地域の福祉のまちづくりに関する意識の高揚に努めるものとする。
2 市町は、住民及び事業者に対し、当該地域の福祉のまちづくりに関する必要な指導又は助言を行うものとする。

(2)愛媛県/人にやさしいまちづくり条例/1996年3月19日公布
(調査、研究及び情報の収集)
第9条 県は、人にやさしいまちづくりに関し、調査、研究及び情報の収集に努めるものとする。
(啓発及び情報の提供等)
第10条 県は、人にやさしいまちづくりに関し、事業者及び県民の理解を深めるよう啓発に努めるとともに、市町、事業者及び県民に対し、必要な情報の提供、指導及び助言を行うものとする。
(学習機会の充実及び福祉教育の推進)
第11条 県は、県民が生涯を通じて人にやさしいまちづくりに関し学習を進めることができるよう、その機会の充実に努めるものとする。
2 県は、高齢者、障害者等に対する理解と思いやりのある児童及び生徒を育成するため、福祉教育を推進するものとする。

(3)宮城県/だれもが住みよい福祉のまちづくり条例/1996年7月10日公布
(情報の提供)
第8条 県は、だれもが住みよい福祉のまちづくりに関し、県民及び事業者の理解を深め、自発的な活動を促進するため、適切な情報の提供を行うものとする。
(福祉教育の充実等)
第9条 県は、高齢者、障害者等に対する県民の理解を深め、思いやりのある心をはぐくむため、高齢者、障害者等の福祉に関する教育の充実及び学習の機会の提供に努めるものとする。
(ボランティア活動の促進)
第10条 県は、県民及び事業者が高齢者、障害者等の福祉に関するボランティア活動を実践できるよう必要な施策の推進に努めるものとする。

(4)島根県/島根県ひとにやさしいまちづくり条例/1998年6月30日公布
(学習機会の充実等)
第8条 県は、ひとにやさしいまちづくりの推進について、県民の主体的かつ積極的な取組の意欲が増進されるよう、学習機会の充実、啓発活動の推進その他必要な施策を講ずるものとする。
(福祉教育の充実)
第9条 県は、次代を担う子どもたちが高齢者、障害者等に対する理解を深め、思いやりの心を育むよう、体験学習の充実、ボランティア活動の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

(5)鹿児島県/鹿児島県福祉のまちづくり条例/1999年3月26日公布
(啓発及び情報の提供等)
第9条 県は、福祉のまちづくりに関し、事業者及び県民の理解と関心を深めるため広報その他の啓発活動の推進に努めるとともに、必要な情報の収集及び提供に努めるものとする。
(調査及び研究)
第10条 県は、福祉のまちづくりを推進するため、必要な調査及び研究に努めるものとする。
(ボランティア活動の促進)
第11条 県は、県民の福祉のまちづくりに関するボランティア活動を促進するため、必要な施策の推進に努めるものとする。
(福祉教育の充実及び学習機会の提供)
第12条 県は、児童及び生徒が高齢者、障害者等についての理解を深め、思いやりのある心をはぐくむことができるよう、福祉教育の充実に努めるとともに、県民が福祉のまちづくりに関する学習に取り組むことができるよう、その機会の提供に努めるものとする。

(6)栃木県/栃木県ひとにやさしいまちづくり条例/1999年10月14日公布
(情報の提供)
第8条 県は、ひとにやさしいまちづくりに関し、県民及び事業者の理解を深め、自発的な活動を促進するため、適切な情報の提供に努めるものとする。
(福祉教育の充実等)
第9条 県は、高齢者、障害者等に対する県民の理解を深め、思いやりのある心をはぐくむため、高齢者、障害者等の福祉に関する教育の充実及び学習の機会の提供に努めるものとする。

(7)鳥取県/鳥取県福祉のまちづくり条例/2008年3月28日公布
(広報活動等の推進)
第7条 県は、福祉のまちづくりについて、事業者及び県民の理解を深めるとともに、その協力が得られるよう広報活動等を推進するものとする。
(福祉教育の推進)
第8条 県は、児童及び生徒が福祉のまちづくりについての理解を深め、高齢者、障害者等に対する思いやりの心をはぐくむよう、体験学習、ボランティア活動その他必要な教育活動を推進するものとする。
(情報の収集及び提供)
第9条 県は、高齢者、障害者等をはじめとするすべての県民が安全かつ快適に利用できる施設の整備の促進に資する技術その他の福祉のまちづくりに関する情報の収集及び提供に努めるものとする。
(調査及び研究)
第10条 県は、福祉のまちづくりを推進するため、必要な調査及び研究に努めるものとする。

福祉のまちづくに関する教育や学習の振興・充実・推進等について、条文見出しに「教育」や「学習」の文言を用いる条例は36本(77%)を数える。それ以外の、神奈川県(1995年3月14日公布)、広島県(1995年3月15日公布)、新潟県(1996年3月29日公布)、それに石川県(1997年3月22日公布)の条例ではそのいずれもが、「みんなのバリアフリー街づくり」(神奈川県)、「バリアフリー社会の推進」(石川県)、「福祉のまちづくり」(広島県、新潟県)について理解を深めたり、意識の高揚を図ることについて条文あるいは項文で規定している。
条文見出しに「教育」や「学習」の文言を用いる条文の一部を紹介する。

(1)大阪府/大阪府福祉のまちづくり条例/1992年10月18日公布
(啓発及び学習の促進等)
第7条 府は、事業者及び府民が福祉のまちづくりについて理解を深めるよう啓発するとともに、福祉に関する学習を促進するため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
2 府は、高齢者、障害者等の自由な社会参加を促進するため、ボランティア活動の支援及び介助に係る人材の養成等に努めるものとする。
3 前二項に定めるもののほか、府は、事業者及び府民に対し、福祉のまちづくりに関する情報の提供、技術的指導その他必要な措置を講ずるものとする。

(2)大分県/大分県福祉のまちづくり条例/1995年3月15日公布
(教育の推進)
第9条 県及び市町村は、高齢者、障害者等に対する理解とやさしさのある児童及び生徒を育成するための教育を推進するものとする。
(県民の意識の高揚等)
第10条 県は、県民及び事業者に対し、福祉のまちづくりに関する意識の高揚及び知識の普及に努めるとともに、市町村、県民及び事業者に対し、必要な情報の提供、指導及び助言をするものとする。

(3)東京都/東京都福祉のまちづくり条例/1995年3月16日公布
(都民の責務)
第5条 都民は、福祉のまちづくりについて理解を深め、自ら福祉のまちづくりに努めるとともに、相互に協力して福祉のまちづくりを推進する責務を有する。
2 都民は、都がこの条例に基づき実施する福祉のまちづくりに関する施策に協力するよう努めなければならない。
3 都民は、高齢者や障害者を含めたすべての人の施設、物品又はサービスの円滑な利用を妨げないよう努めなければならない。
(教育及び学習の振興等)
第8条 都は、福祉のまちづくりに関する教育及び学習の振興並びに広報活動の充実により、福祉のまちづくりに関して、事業者及び都民が理解を深めるとともに、これらの者の自発的な活動が促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。

(4)茨城県/茨城県ひとにやさしいまちづくり条例/1996年3月28日公布
(広報及び情報提供)
第9条 県は、事業者及び県民に対し、ひとにやさしいまちづくりに関し、必要な広報及び情報の提供を行うものとする。
(教育の充実)
第10条 県は、児童及び生徒に対し、ひとにやさしいまちづくりについての理解を深め、やさしさや思いやりの心を醸成するための教育の充実に努めるものとする。
(学習機会の充実)
第11条 県は、事業者及び県民に対し、ひとにやさしいまちづくりに関する学習機会の提供に努めるものとする。
2 県は、事業者及び県民がひとにやさしいまちづくりに関して行う学習について、必要な技術的指導その他の支援を行うものとする。

なお、ボランティア活動について、例えば以下のように「促進」「支援」等の文言を用いて独立条文で規定する条例は18本(38%)である。また、「ボランティア活動」の文言が条・項文中にある条例は、大阪府(1992年10月28日公布)、滋賀県(1994年10月17日公布)、石川県(1997年3月22日公布)、島根県(1998年6月30日公布)、秋田県(2002年3月29日公布)、それに鳥取県(2008年3月28日公布)の6本(13%)である。要は、半数(51%)の条例でボランティア活動に関する規定がある。

(1)山梨県/山梨県障害者幸住条例/1993年10月14日公布
(ボランティア活動)
第18条 県は、すべての県民があらゆる機会、あらゆる場所を利用して、障害者の福祉に関するボランティア活動を実践することができるような環境を醸成するよう努めなければならない。

(2)熊本県/熊本県高齢者、障害者等の自立と社会的活動への参加の促進に関する条例
(通称:やさしいまちづくり条例)/1995年3月16日公布

(ボランティア活動の促進)
第11条 県は、県民及び事業者が高齢者、障害者等の福祉に関するボランティア活動を実践できるよう必要な施策を講じなければならない。
2 県は、高齢者、障害者等がみずからその能力に応じ、ボランティア活動を実践できるよう必要な施策を講じなければならない。

(3)富山県/富山県民福祉条例/1996年9月27日公布
(ボランティア活動の支援)
第15条 県は、県民が行う福祉に関するボランティア活動を支援するため、活動基盤の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。

(4)三重県/三重県ユニバーサルデザインのまちづくり推進条例/1999年3月19日公布
(ボランティア活動等の促進)
第12条 県は、ユニバーサルデザインのまちづくりに関し、ボランティア活動を始めとする自由な社会貢献活動を促進するため、情報の提供、活動基盤の整備その他必要な施策を推進するものとする。

佐賀県鹿島市における福祉教育条例―資料紹介―

本稿で紹介する佐賀県鹿島市の「福祉教育条例」(「鹿島市福祉教育に関する条例」、1996年3月25日公布)について知る人は必ずしも多くないであろう。この条例はおそらく他に例のないものである。
福祉教育の条例化をめぐっては、とりわけボランティア論やボランティア学習論に依拠して福祉教育について論ずる場合、疑義を呈することもあろうかと思われる。ボランティア活動が生命とする自発性や主体性に対する侵害や、官製ボランティアの育成と強制・動員に繋がりかねない、というのがそのひとつの論拠であろう。
周知の通り、政府・行政がボランティアの育成・推進に本格的に取り組むのは、1970年代に入ってからである。1971年4月の社会教育審議会答申「急激な社会構造の変化に対処する社会教育のあり方について」、同年12月の中央社会福祉審議会答申「コミュニティ形成と社会福祉」を端緒とする。また、1990年代以降、多くの地方自治体では「福祉のまちづくり条例」の制定に取り組む。その先進的なものに神戸市と兵庫県の条例があるが、その条例から「福祉教育」に関する条文を紹介する。兵庫県の条例では、条文見出しと条文に「福祉教育」の文言があり、しかも独立条文として規定していることが注目される。

神戸市/神戸市民の福祉をまもる条例/1977年1月10日公布
(市民福祉の理解及び福祉活動のための条件整備)
第5条 市は、市民及び事業者が市民福祉に関する正しい理解を深め、又は福祉活動(市民福祉の向上のため、みずからすすんで自己の労力、知識、財産等の提供を行うことをいう。以下同じ。)を行うために必要な条件の整備に努めなければならない。
兵庫県/福祉のまちづくり条例/1992年10月9日公布
(福祉教育の推進)
第8条 県は、高齢者等に対する理解と思いやりのある児童を育成するための福祉教育を推進するものとする。

特定非営利活動促進法(NPO法)が施行されたのは1998年12月である。それ以来、認証を受けたNPО法人は増加を続けている。2013年7月末日現在で、認証法人は4万7,973法人、税制上の優遇措置を受ける認定法人は492法人を数えるに至っている。活動の種類については、2013年3月末日現在の調査(複数回答)によると、「第1号 保健・医療又は福祉の増進を図る活動」(58.1%)、「第2号 社会教育の推進を図る活動」(46.9%)、「第3号 まちづくりの推進を図る活動」(42.8%)が上位を占めている。いうまでもなく、NPO法人は、「新しい公共」の担い手として、市民の社会参加を促し、まちづくりの推進を図るところにその存在意義がある。
筆者(阪野)はかねてより、福祉教育を「福祉文化の創造や福祉によるまちづくりをめざして日常的な実践や運動に取り組む主体的・自律的な市民の育成を図るための教育活動」として捉えてきた。とりわけ、「福祉の(による)まちづくり」のための住民主体形成とそのプロセスを重視している。そこで、筆者は、上述の政策動向や関連法・条例の整備状況、そのもとでの市民・住民によるまちづくり活動の現状、さらには市民主権や市民自治が叫ばれる今日的状況などに鑑みて、福祉教育の条例化については条件つきで肯定的に考えたい。その条件のひとつは、条例化に際しての市民の主体的・自律的・能動的な参加(参集、参与、参画)と、条例の制定意義と条文の内容や考え方等についての熟慮と議論である。そして、その過程はそれ自体が福祉教育の実践そのものであり、そこにおいてその真価が問われる、と考えるべきであろう。
以下は、「鹿島市福祉教育に関する条例」の全文である。

佐賀県鹿島市/鹿島市福祉教育に関する条例/1996年3月25日公布
(目的)
第1条 この条例は、全ての市民が福祉に関する制度及び実情を正しく理解し、福祉意識を高めるとともに、市民自ら参加する福祉についての実践活動を行うことにより、福祉教育の推進を図り、もって福祉のまちづくりに寄与することを目的とする。
(市における福祉教育の推進)
第2条 市は、市民に対して生涯にわたる教育の場を通じて福祉教育の推進に努めるものとする。
(福祉団体等における福祉教育の推進)
第3条 市民福祉の向上を目的とする団体(以下「福祉団体」という。)及び福祉施設を経営する者は、その活動を通じて福祉教育を実施するよう努めるものとする。
2 福祉団体及び福祉施設を経営する者は、市及び教育委員会に対し、福祉教育に関する指導又は助言を求めることができる。
(市民の福祉教育への参加)
第4条 市民は、福祉の意義を理解し、福祉活動を実践するために、自主的に学習を行うとともに、福祉教育に積極的に参加するよう努めるものとする。
(学校における福祉教育)
第5条 教育委員会は、児童・生徒に対する福祉教育の充実推進を図るため、すべての小・中学校を福祉教育推進校に指定する。
2 福祉教育推進校は、児童・生徒に対し、計画的に福祉教育、活動の機会を設定し、福祉活動についての理解と関心を深めるよう努めるものとする。
(市民福祉推進委員会)
第6条 市は、福祉教育、活動について調査及び審議するため、市民福祉推進委員会を置くことができる。
(委任)
第7条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附則
この条例は、平成8年4月1日から施行する。

以下は、鹿島市教育委員会による福祉教育の取り組みである。

鹿島市教育委員会の取組み
1 取組みの経過
(1)平成7年度
平成7年
10月  市長が、福祉教育実施について教育長と会談
12月18日  市長が、市内校長会で構想を説明
平成8年
1月11日  教育長が、市内校長会で実施要項を説明
1月13日  市長・教育長が、中学校PTA役員懇談会で説明
1月19日  教育次長が、総務委員会・民生委員研修会で協力依頼
1月25日  教育長が、県教委・福祉生活部・県社協へ報告・協議
1月30日~3月6日
市長・教育長・教育次長が、市内各小中学校で構想説明・協力依頼
2月7日~9日
教育次長が、各地区の民生児童委員協議会で協力依頼
3月5日     鹿島市福祉教育推進実践校連絡協議会を開催
3月14日  3月定例市議会において「鹿島市福祉教育に関する条例」可決成立
3月26日  教育長が、民生総務委員会で要旨説明・協力依頼(調査依頼)
桑原市長(桑原充彦、1990年5月~2010年5月:阪野)は、官と民が一体になって福祉のまちづくりの中で、特に福祉教育を重視した。鹿島市でも核家族化が進み、独居老人が多くなると同時に、祖父母と同居していない子供が増加してきた。そのような子供は、人間の情緒を育てる「生・老・病・死」に触れることもできない。そこで、お年寄りと接する機会を与えれば、その体験ができるのではないかと考え、教育委員会に提案した。教育長、市内校長会もこれに賛同した。
市長、教育長、教育次長は、市内教職員へ福祉教育の意義の説明とその啓発のために、1月から3月にかけて市内全小中学校を訪問した。また、教育委員会は、関係諸機関とも連携をとった。
平成8年3月14日には、3月定例市議会において「鹿島市福祉教育に関する条例」が可決成立し、正式に福祉教育の推進が決定された。

(2)平成8年度
平成8年
4月15日  教育長が、市内校長会で実施要項を具体的に説明
5月7日    福祉教育実践校連絡協議会開催(ふれあい活動希望結果配布)
5月16日  教育長が、市PTA連合会総会で要旨説明・協力依頼
10月1日  福祉教育実践校連絡協議会開催(中間報告)
12月16日  教育長が、県教委主催の指導主事研修会で福祉教育について講演
平成9年
2月  庶務課次長が、各地区の民生児童委員協議会で希望調査依頼
平成8年度4月から、全小中学校において教育課程の中に福祉教育が位置付けられた。特に、中学校2年生では「ふれあい活動」という老人との日常的福祉実践活動が、民生委員の協力を得て開始された。1班6人程度でグループを作って独居老人や老人のみの世帯を週1回~月1回程度訪問し、話相手、肩もみ、草むしり、ごみ捨て、障子張り、網戸洗い、石運び等を行った。
初年度でいろいろな課題も出てきたが、交流、体験をとおして小中学生が学んだものには計り知れない大きな成果があった。老人からも多くの感謝のおたよりが届いた。

(3)平成9年度
平成9年
5月19日  福祉教育実践校連絡協議会開催(ふれあい活動希望結果配布)
12月1日  福祉教育実践校連絡協議会開催(中間報告)
平成10年
1月13日  福祉教育実践校連絡協議会開催(福祉教育の成果と課題)
1月16日  市報によって、福祉教育の啓発
1月26日  民生総務委員会において、中間報告及び協力依頼
1月27日  第1回福祉教育推進協議会開催
2月9日~12日
各地区の民生児童委員協議会で希望調査依頼
福祉教育が2年目を迎え、各小中学校ともに特色ある取組みが行われてきた。
「ふれあい活動」では、中学生と老人がごく普通にあいさつや声かけができるようになり、地域での温かい雰囲気ができてきたという民生委員からの報告もあった。また、この活動によって、将来の進路をヘルパー志望とする生徒の声もあった。一方、施設との交流も開始された。
しかし、課題も多く出てきた。まず、時間の問題である。生徒達の部活や塾等の都合と老人の都合が合わず、計画がうまくできない。また、ナイフ事件で「中学生は怖い」ので辞退したいということもでてきた。民生委員の方からは、多忙で負担が大きいという課題が出された。

(4)平成10年度
平成10年
4月27日  民生総務委員会において、再度協力依頼
5月26日  福祉教育中学校連絡協議会開催(ふれあい活動希望結果配布)
6月26日  民生総務委員会において、進捗状況報告
7月1日    老人クラブ理事会において、協力依頼
11月25日  民生総務委員会において、中間報告及び意見交換
11月30日  教育長が、東京での「スクールボランティアサミット」において講演
12月7日  老人クラブ理事会において、中間報告及び意見交換
12月9日  市社協と「ネットワーク活動」との連携を検討
平成11年
1月14日  福祉教育実践校連絡協議会開催(福祉教育の成果と課題)
1月16日  市報によって、福祉教育の啓発
1月26日  第2回福祉教育推進協議会開催
3年目を迎え、児童生徒に福祉の心が着実に育ってきた。中学生の殆どが老人との交流を希望し、自分の将来を考えたうえで、何か手助けをしたいと考えている。これは小学校1年から実施している小中一貫の福祉教育の大きな成果である。特に、自発的に近所の老人との交流を考え、生徒自身から「何か手伝うことはありませんか。」と働きかけた。
また、自分の家の祖父母への意識が変わってきた。つまり、近所の独居老人との交流を通して、自分の家の祖父母へ何かしてあげたい、話をしようと気づいてくれたということも出てきた。

2 これからの福祉教育
福祉教育が開始されて3年になるが、少しずつ児童生徒に福祉の心が育ってきたことが大きな成果である。また、地域の中でも、小さいながらも子供達と老人との温かい交流が生まれてきた。また、施設においても、受け入れの協力体制もでき、幅広い活動ができてきた。
これからは、ボランティアの本来の意義である自主性について、児童生徒の自発的、能動的な活動を重視する方向に進めていきたい。また、地域ぐるみの福祉教育の推進を目指したい。そのために、関係諸機関(社協、福祉事務所、区長会、民生児童委員会、老人クラブ連合会、PTA、子供クラブ等)との連携・協力を高めていきたい。
何十年かすれば、この福祉教育を鹿島市民は全員が経験したことになる。長期的視野に立った福祉のまちづくりを進めるうえでも、地道に継続的に進めていきたい。
(1)児童生徒の自発性を重視した福祉教育の推進
(2)広く多様な福祉教育の推進
(3)社協の「ネットワーク活動」及び関連機関との連携による「地域ぐるみの福祉教育」の推進
(4)中学校2年生の「ふれあい活動」の取組み
① 「ふれあい活動(グループ活動)」日常実践活動
② 「隣近所たすけあい活動(ネットワーク活動)」との連携
③ 施設との交流
④ 老人クラブとの交流
⑤ 近所のお年寄りとの交流
⑥ 「いきいきサロン」等 市社協の事業への参加
⑦ 「ふれあいキャンプ」への参加
⑧ 中学校への招待
(鹿島市教育委員会・鹿島市福祉教育推進実践校連絡協議会編『平成10年度 福祉教育推進報告書』鹿島市教育委員会、1999年3月、4~7ページ)

調査データの構造化と研究論文の内容構成

某大学の学生からメールが届きました。学校における福祉教育をテーマに、教師や生徒を対象にした意識調査と当該学校における福祉教育実践の実態調査(事例研究)を行いたい。そこで、調査結果を整理・分析する際の枠組みと、論文の内容構成について知りたい、というのがそれです。
福祉教育に限定するものではありませんが、とりあえず、筆者(阪野)がかつて学生に提示していたものの一部 (「調査データの構造化のためのマトリックス」「研究論文の基本的構成」) を以下に記します。

無題34567

雑誌 『グラスルーツ』 で読む福祉教育論―資料紹介―

社団法人・日本青年奉仕協会(1967年11月創設~2009年7月解散)が発行した雑誌のひとつに『グラスルーツ』があった。1982年11月に創刊され、1989年3月の第38号をもって「休刊」となっている。創刊号の特集テーマは、「ルポルタージュ/アリスの国の不思議な世界」、最終号のそれは「ボランティアに未来はあるか」である。
『グラスルーツ』は阪野文庫中の「日本青年奉仕協会に関する資料」(全4巻)に収録(一部欠号あり。)されているが、そのいくつかの資料を整理する際に、創刊号から通読してみた。懐かしさとともに、その編集者や執筆者の熱い想いを読み取ることができ、頭が下がる思いがした。最終号の「今号で休刊するにあたって」という挨拶文には、次のような一節がある。「草の根」を意味する誌名や、毎号のメッセージ性の高い編集と多面的・多角的そして多層的な言説から多くを学んだ筆者(阪野)には、何か、また何故か心にしみる。「何事にも初めがあれば、必ず終わりがあります。私たちがものを見るという、そのものは初めと終わりのあいだにあります。私たち編集部もようやくものが見れる時点に立ちました。これまでの歩んだ道のりを振り返りながら、自己革新と自己反省のいたらなさを感じつつ、最終号を編集しています」(『グラスルーツ』第38号、日本青年奉仕協会、1989年3月、2~3ページ)。
『グラスルーツ』では毎号、「特集」が組まれていた。第11号(1984年7月)は「福祉教育特集/福祉教育は『善行』」か」、第12号(1984年9月)は「続・福祉教育特集/私の福祉教育論」、そして第22号(1986年9月)は「ボランティア活動は『歴』になりうるか?」というタイトルの特集である。以下に紹介する玉稿や秀逸な意見は、福祉教育やボランティア学習(「ボランタリズムの教育」:岡本)の「仕掛け人」や実践者・研究者としてすでにその名を馳せていた木谷宜弘、興梠寛、臼井孝、大橋謙策、それに岡本栄一の各先生のものである。僭越かつ恐縮ながら、「すでにその名を」と記したのは、5人のうちで最年長の木谷先生は当時55歳、最年少の興梠先生は36歳、大橋先生は41歳である。以下のいずれの言説も、切れ味鋭く、明解なメッセージが伝わってくる、と思うのは筆者だけであろうか。小気味よい気持ちすらする。
こんにち、福祉と教育はその動向が混沌とし、さらに混迷を深めていくかのようである。福祉教育も然りである。福祉教育の実践や研究にかつての小気味よさを感じることが少なくなっているのは、筆者だけであろうか。そこで、「日本福祉教育・ボランティア学習学会」が2014年10月に創設20周年を迎えるのを機に、いま一度原点に立ち返る必要があるのではないか。そんな想いから、以下に「資料紹介」するが、余計なコメントを一切付さないのは、ブログ読者各位もそれぞれの立場や考えに基づいて原点に立ち返ってみては、という意味である。現状はそれほど深刻である、と思っている。大橋先生と岡本先生の次の指摘は、こんにち、特に重く受け止め、深く心に刻まなければならないのではないか。「(福祉教育に関する:阪野)心情や哲学が超歴史的に語られ、それにもとづいて推進されることは非常に問題である。とりわけ、福祉教育を推進する立場にいる人々の歴史認識、社会認識が問われなければならない」(大橋、『グラスルーツ』第12号、13ページ)。「ボランティアやその活動の根本精神は、国家や体制、イデオロギーを超えたエネルギーだと思います。(ボランティア活動は:阪野)「歴」にこだわることもないし、「歴」なんかありえない。そんなセコいものじゃないんですよ。本当のボランティアというのは現体制を否定して、そこからにらまれるのですわ」(岡本、『グラスルーツ』第22号、4ページ)。

今、なぜ福祉教育なのか/なぜ、福祉教育なのか
木谷宜弘・全国ボランティア活動振興センター所長

制度中心の学校教育の行詰り状態を打開する一策として福祉教育の有効性が認められつつある。(中略)
制度中心の学校教育の行詰りを予言したのは、下村湖人で今から四十五年前のことである。下村湖人は学校教育制度が充実すればするほど、児童、生徒の生命力を委縮させる結果を招くと警告している。今日の学校教育は残念ながら下村湖人の予言が的中したといえるほど荒廃している。
湖人は云う。今日の文化社会では、教育の制度化は必然のものであるからこれをさけることはできないが、その障碍を最少限にするため、人物中心の教育を行い、しかもその中に自然教育を導入すべきであると主張している。
湖人のいう自然教育とは、日々の生活の中で自然に行なわれる教育を指し、日常接するさまざまの人や自然環境とのふれあいを通じて自ら生きんとする意志を育てていくことだと述べている。
福祉教育の手法は湖人の云う自然教育に相当するもので、学校において福祉問題を学習素材として実践するということは、机上の知識吸収では得られない生身の人たちとの出合いとの共感の中で、人間が生きていくということはどういうことか、人間が人間らしく共に生きていく社会とはどんなものか、自己教育することであり、まさに下村湖人の主張と一致するものであるといえる。(『グラスルーツ』第11号、日本青年奉仕協会、1984年7月、4~5ページ)

「福祉教育」と「ボランティア学習」のちがい
興梠寛・日本青年奉仕協会事務局次長

『福祉教育』は“弱者救済”といった根強く残る古い福祉観にたいして、正面からこれを正し、人権と共存の営みの主体としての人間性を育む教育として意味づけられているだけでなく、さらにその教育実践をとおして、偏差値教育や管理化のなかにある学校教育に新しい風を吹き込もうとしている。
私たちはこれまで、さまざまな社会課題に対応すべき教育のあり方を論じてきた。人権教育、平和教育、環境教育、国際理解教育、そして福祉教育などがそれである。『ボランティア学習』は、そうした社会課題や教育テーマをより効果的にすすめていくための学習の方法であるといえる。さらには、ボランティア活動のもつ特性、すなわち自発性や自由意志、そして自治性や公共性といった、民主主義社会をささえる基本的な思想を育むことにつながっていく。(中略)
ボランティアとして社会体験をとおして学ぶ対象は、社会福祉、教育、自然環境、文化、生活改善、国際理解と協力、保健医療、人権、平和、都市計画や村づくり、メディアなどの生存をおびやかす諸問題である。そしてそのひとつひとつは、おのずと『ボランティア学習』の学習テーマをかたちづくっているといえる。『福祉教育』は、社会福祉を狭義にとらえた場合、社会課題のひとつの分野をテーマにしたものであるという解釈もできる。しかし、福祉を共存の論理として広く解釈すべきであり、福祉思想は、すべての社会課題の根本的なものであるべきだと思う。
『福祉教育』も『ボランティア学習』も、それらをおたがいに対立する概念として考えることはナンセンスである。ひとことで表現すれば、教育の目標と学習の方法といった違いであり、それらをとおして求めようとする世界は同じである。対立概念として論じあうことは、これに類する学者の学派争いに似ている。派閥争いは、政治家と学者で充分である。そんなものは、グラスルーツな活動家にとってどうでもいい問題ではないか。要は、教育にどんな未来を描くかである。そしてまた、それをどのような組織と方法ですすめていくのかである。ひとつだけいえることは、『福祉教育』も『ボランティア学習』も、“新しい制度化”をめざして、さらにそれを第二の学校教育にしてしまうことであってはならないことだ。教育専門家が混迷のなかにいるいま、外野席からの教育にたいするこのアプローチを、私たちは冷静にみまもっていこうではないか。(『グラスルーツ』第11号、日本青年奉仕協会、1984年7月、8ページ)

私の福祉教育論/福祉という視点で学校を見直す
臼井孝・神奈川県立上郷高校教諭

教育に新しい何かを吹きこまねばならない。ところが、教師には自信を持って導入できるものがないというところに、ボランティア活動というものがひとつの説得力を持って入ってきたのが福祉教育だと言えると思います。しかしそれが本当にプラスになるのか、その本質が何なのか明らかにならないうちは、すぐ導入しましょうということに警戒と抵抗があります。ひとつの教育観が絶対という旗印で学校教育を風靡するのは非常に危険ですからね。それぞれの現場で教師が子供たちに何を与えたらいいか話し合いの中から出てくるものが本物なのであって、それは福祉教育に限定されるものではないはずです。
現在の教育の行き詰まりの原因は、学歴社会の中での知識偏重という社会情勢に、学校がそのいきつく先を考えずに目先の要望に応えたためだと思います。そして非行問題など社会の変化が学校に迫っていて、それに応えなければいけない時です。私自身は十年余りの経験から、ボランティア活動が生徒たちの意識改革にかなり有効な学習方法だと自信を持っていますし、学校教育の中に融合させていく方向は間違っていないと思っています。(中略)私自身、福祉教育がすべてとは考えていません。教科学習80%、ホームルームやクラブ活動が10%、福祉教育も10%にすぎないと考えます。
子供たちが育つうえで何が必要かというと、自分に自信が持てるようになることです。それには自分が必要とされているという体験を積み重ねることです。それが感動を伴なう体験として、自他の関係が響き合った時、教育の決め手になるんですね。何をやっても無気力な子供たちに刺激を与える方法のひとつがボランティア活動だと思います。(『グラスルーツ』第12号、日本青年奉仕協会、1984年9月、10ページ)

私の福祉教育論/善意があっても誠意がない―歴史にみる福祉と教育の関係
大橋謙策・日本社会事業大学教授

福祉教育をすすめるにあたって、常におさえておかなければならない課題がいくつかある。その一つは、福祉教育がいまなぜ必要なのかという歴史性と社会性の認識である。そのことは、福祉教育を必要としている現在の生活や教育への鋭い分析がともなっていなければならない。それらの点がぬけおちて、心情や哲学が超歴史的に語られ、それにもとづいて推進されることは非常に問題である。とりわけ、福祉教育を推進する立場にいる人々の歴史認識、社会認識が問われなければならない。(中略)
今日の福祉教育は、戦後初期の福祉教育実践とは違っており、決して連続していない。今回のそれは、一九七〇年頃を境に大きく変容してきている社会福祉の新たな課題の中で、その必要性が関係者に認識されて推進されてきた。と同時に、それが、すぐれて教育の荒廃、子どもの発達の歪みを是正していく上で重要な方法であり、戦後教育の理念であった教育基本法の理念を達成する上で有効な方法たりうることが教育関係者に理解されはじめたからである。
このような背景をもつ福祉教育が、その必要性とされる背景を科学的に分析できる力を身につけることなく、ただともに生きることのみを強調するとすれば、それは結果的には歴史的、社会的存在である社会福祉や教育のあり方を誤らせることになる。なかでも、社会福祉にあっては、一九七五年以降福祉見直し論が展開され、その後の臨調行革路線の中で「自助努力」のみが強調されるきらいがある。それだけに戦前、井上友一が展開した施策(国の物質的負担を軽減し、国民の自助努力を強調する教化、風化政策)と福祉教育とが同じになることを危惧している。そうならないためには、国民一人一人が、子どもも含めてきちんとした歴史認識、社会認識をもった主体者として形成されねばならない。(『グラスルーツ』第12号、日本青年奉仕協会、1984年9月、13~14ページ)

ボランティア活動は「歴」になりうるか?/「歴」にこだわるようなセコいものじゃない
岡本栄一・大阪ボランティア協会事務局長

ボランティアやその活動の根本精神は、国家や体制、イデオロギーを超えたエネルギーだと思います。人権や命を守る、平和を守る、差別と闘う、というギリギリのところで連帯する一つの思想なんですね。だからもともと制度的な認知をきらう本質があって、そこから言うと「歴」にこだわることもないし、「歴」なんかありえない。そんなセコいものじゃないんですよ。本当のボランティアというのは現体制を否定して、そこからにらまれるのですわ。
ただボランティア活動は両義性をもっているとぼくは思ってます。愛とか正義の形をとって文化の中で生きていく光りの側面と、偽善暇つぶしというちょう笑を浴びる影の側面と。
ボランティア活動の精神がきちんと根づいていない、そして地域社会の解体やヨコ関係の希薄化していく状況の中では為政者側が作為的に光りの側面を取り上げて社会的に認知、言いかえれば「歴」を作ろうとする動きが特に出てくるんでしょう。また「歴」を欲しがるし「歴」にあやかりたい願いも一方にはあるわけで、それをいちがいに否定しないで冷やかに見ていくことも必要です。学校教育や人づくりにボランティア活動を利用しようというのも全体的なすう勢ですが、それならボランタリズムの教育を、といいたいですね。問題の当事者を教壇に立たせる。子供だけをボランティア活動に参加させるのではなく親も教師もナマの現場に立ちあうというように。いまはコピーのコピーを教えている現状で、これくらい空虚なものはないですからね。(『グラスルーツ』第22号、日本青年奉仕協会、1986年9月、4ページ)

臼井孝先生と全国ボランティア学習指導者連絡協議会―資料紹介―

1982年3月、文部省認可の社団法人・日本青年奉仕協会(JYVA)との連携・協働のもとに、「全国ボランティア学習指導者連絡協議会」が設立された。以下に、その設立の経緯と、代表者である臼井孝先生についての新聞記事を紹介する。阪野文庫に収録されている「日本青年奉仕協会に関する資料」を整理している際に見つけたものである。
周知の通り、全国レベルで「福祉教育」について最初に研究協議されたのは、1970年11月に東京で開催された「昭和45年全国社会福祉会議」の第3専門委員会(「社会福祉の理解を高めるために―教育と社会福祉―」)においてである。その後、1977年2月、厚生省社会局長・児童家庭局長から文部省初等中等局長に対して「福祉教育のあり方について(要望)」が提出された。それに次いで、1977年4月から、厚生省と全国社会福祉協議会は、国庫補助事業としての「学童・生徒のボランティア活動普及事業」(通称「社会福祉協力校」事業)を始める。
「福祉教育」と「ボランティア学習」の固有性と関連性、それぞれの実践と研究、そして1995年10月に設立された「日本福祉教育・ボランティア学習学会」と1998年6月に設立された「日本ボランティア学習協会」、等々について考える際のひとつの参考資料になれば幸いである。

全国ボランティア学習指導者連絡協議会設立の経緯
1981年12月12日
●「活動文化祭’81」の指導者懇談会などで意見として出された指導者の全国的な連絡組織設立の実現をめざして、東京近辺の4人指導者とJYVAスタッフとで第1回設立準備委員会を開催 ①設立に向けての基本的な考え方 ②設立準備作業の内容と日程を検討
1982年1月23日
●第2回設立準備委員会 ①活動文化祭’81の参加者・協力者を中心に、地域や活動分野のバランスを考えながら世話人を推せん ②第1回全国世話人委員会の日程を確認
2月中旬
●連絡協議会の規約、事業計画などのたたき台を作成
2月下旬
全国世話人の依頼を電話などではじめる
3月6日
●第3回設立準備委員会 ①規約および事業計画のたたき台をもとに検討 ②全国世話人の確認
3月12日
●全国世話人依頼の公文書を発送
3月20~21日
●第1回全国世話人委員会開催 ①事務局案の説明にもとづいて各プログラム、参加者の費用負担、運営方法などについて検討。②連絡協議会設立について、準備委員から出された規約などを検討して設立を承認。世話人幹事、事務局体制を決定
(JYVA教育研究部編『活動文化祭’82』社団法人日本青年奉仕協会、1983年3月、実施1~2ページ)

毎日新聞/1982年8月20日
ひと/十代にボランティアを/臼井孝(うすいたかし)
この夏、全国ボランティア学習指導者連絡協議会が発足した。ボランティアの指導者の、唯一の全国組織といってよい。臼井さんはその代表である。
荒れる十代―非行が社会問題になってきているが、ボランティアに関心を持つ十代も気速にふえてきているという。しかも、この二つは、互いに関係しあっている。
「突っぱっている少年に、ボランティア活動をやってみろとすすめる。熱心に打ちこんでリーダーになったりする」。身障者の施設に就職したケースもある。
「学校教育が知識を教えるだけではどうにもならないところにきています。自分をどう生かすか―生きる力を与えるのが教育である。そう考えると中学や高校でボランティア活動を体験するのはもっとも効果があります。」
ボランティアは奉仕ではない。自分自身の問題なんだという。自分をどう生かすか、それを発見する学習なんだと説く。協議会の大半は、全国の中、高校で生徒たちを指導している先生。自身も神奈川県立五領ケ台高校教諭。中学の先生をしているとき、脳性マヒの生徒が学力がありながら、身体の障害で高校に入れなかったのを知って関心を持った。いま、社会福祉人形劇クラブの顧問。
「進学が影響してくるのは事実です。しかし、ボランティアへのエネルギーは、勉強のエネルギーにもなる。実際、見事に両立させた生徒もいます」。臼井さんは、エネルギー無限論をいう。若いエネルギーは、出す機会が多いほど多く出てくる。
ボランティアに入ってくる少年たちに三つのタイプがある。「当たり前のことだと考える」層、「友だちに誘われた」層、そして「なにかやりたい」グループ。会では全国のグループの情報交換を行い、ニュースを発行する。四十九歳。(四方 洋)

教育家庭新聞/1982年9月4日
この人に聞く/全国ボランティア学習指導者連絡協議会/代表 臼井孝さん
初の全国連絡組織/若者のエネルギー吸収へ

日本にもボランティア活動が静かな高まりを見せようとしている。昨年夏、第一回の「十代のボランティア文化創造交流集会」を成功させた(社)日本青年奉仕協会に集う若者の熱意と第一回、そして今夏の第二回集会に参加した先生方の熱意が一つに解け合い、参加した先生方を中心に「全国ボランティア学習指導者連絡協議会」が発足。ボランティア指導者の全国的な連絡会が初めて誕生。
「地域でボランティア活動を地道に指導していたがマンネリに陥っていた先生、意欲的にあらゆることを吸収しようとしていた先生の間で、交流集会まで一年間分散していたのではもったいない、という気運が盛りあがったのです。全国のパイプ役として生の声を出し合い、互いに吸収できるものは吸収しあい、刺激を与えあおう、と」
公式には今年の第二回同集会でスタート。活動は①「ボランティア学習」と題する指導者のニュース紙の発行②若者が作った八ミリ、スライドなど活動記録作品の貸し出し③事例研究集の作成④地方に埋もれている活動の調査研究⑤指導者自身の研修。構成員は中学・高校の教師、地域のボランティア指導者、等。まだ、産声をあげたばかりだが、弾力的な活動をめざしている。
代表の臼井孝先生は神奈川県五領ケ台高校の理科の先生。生活指導部主任で社会福祉人形劇クラブの顧問。無気力、無感動などと言われる現代の青少年とボランティア活動についていう。
「自分の持っているエネルギーをどう生かして行けばよいかわからない生徒が多いんですよね。だから、本能におもむくままに、オートバイに乗ってみたり、シンナーを吸ったりする。ボランティア活動はこのエネルギーを発散できるもの。学校がチャンスを与えてやれば、それにより“目を輝かせる”生徒が必ずいる」
「老人ホームでは若者との一回限りではない、深い交流を求めています。参加した若者は初めて、『こういう世界があったのか』と、老人問題を真剣に考えるようになる。道に落ちている缶を拾うという空き缶公害追放運動でも、地域の人たちとの対話が生まれてくる」  
オートバイにしか生の発散方を見い出せなかったものが、ボランティア活動でいままでとは違った外の世界を知る。地域の人達との交流で高校生でも社会に貢献できる、という実感を持つ。実際に、学校から「どうしようもない」と烙印を押された生徒が立ち直った例もある。
しかし、一般の生徒の見る目は、とかく“えらいわねえ”“よくやるなあ”で、“してあげる”という意識が抜けきれない。教師でも「自分自身ができてもいないのに、他人様の手助けをするなどおこがましい」というとらえ方をするのが案外多い。しかし、臼井先生は言う。
「私の学校は新設校ですが、甲子園の地区予選で四回戦にまで進みます。するとお母さん方が『どうして、学校全体で応援に行かないのか』と言ってくる。しかし野球に情熱を燃やすのも、老人ホームで働くのも、空き缶を拾うのも、同じ一つの甲子園の道、なんです。ボランティア活動の本質は、その中で自分自身をどう生かすか、ということ。
多感な青年期に一度経験したことは、受験などでボランティア活動から離れてしまっても、必ず後になって生きてくる。高校時代にいろんな生き方があるんだ、と実感したこと、ぶつかり、泥をかぶってした経験は大きな肥やしとなる」
中学・高校生の非行化が社会問題化している。しかし、その中で、ともすれば、目立たない存在として見落とされがちだが、自分の生き方を真剣に考えている生徒たちも確実に増えているという。二度の交流集会に参加してみて、そう断言だけるという。自分なりに生きたい、と思う心は今も昔もかわりないだろう。自分の道を見い出しにくい現代、同連絡協議会の発足は教育の中に大きな一つの道を提示している。
連絡先は(社)日本青年奉仕協会(〒151東京都渋谷区代々木神園町三―一NYC内電03-460-0211) (良)
(JYVA教育研究部編『活動文化祭’82』社団法人日本青年奉仕協会、1983年3月、付録65、67ページ)

小さな「サロン」から一言

筆者(阪野)はいま、セカンドライフを楽しんでいる。人生設計通りの定年退職を機に、無為徒食や晴耕雨読といった暮らし方ではなく、これまでとは違った人生はないものかと考えた。不遜ながら、これまで“一所懸命”に取り組んできた「市民福祉教育」に関しては今後も若干の意見提示は続けるとしても、である。
そこで、4月早々にスイミングスクールに入り、いまでは新しい仲間もでき、週2~3回、スイミングを楽しんでいる。以下は、その仲間たちとの会話の一コマである。いろいろな暮らしと人生が見えてくる。

「俺は何もすることがなく、ここに来るのが仕事のようなもの。毎日2~3時間近くプールで泳いだり、みんなと話したりしている。月6万円ほどの年金で、会社勤めの40歳代の息子と、二人で細々と暮らしているのだが、ここが楽しい。」(70代後半・男性)
「大病を患ったこともあり、健康維持のために午前中は市立体育館でストレッチや筋力トレーニングを行い、午後はプールに来ている。実は『馬に人参』で、俺にとっての人参は晩酌だよ。」(70代前半・男性)
「数年前に夫を亡くしたが、一人暮らしのことを考えるとき、健康への投資だと思って入会した。1日500メートルを目標に、頑張って泳いでいる。来月はこのスクールで知り合った友だちと東京見物に行きます。」(70代後半・女性)
「マスターズ水泳大会での上位入賞をめざして、ほぼ毎日3000メートル泳いでいる。この前、初孫が生まれ、私もおばあちゃんになった。」(60代前半・女性)

このような会話を思い出したのは、今朝(10月14日)の地元新聞の「スポーツクラブ/70代、4割所属」という二段抜き主見出しと、「体力づくりに有効」という袖見出しの、次のような記事が目にとまったからでもある。

「地域のスポーツ同好会やフィットネスジムなどのスポーツクラブに所属している成人の割合は年齢が上がるほど増え、70代で40%前後となることが13日、文部科学省が体育の日を前に公表した2012年度体力・運動能力調査で分かった。時間に余裕のある高齢者層が積極的に運動に取り組んでいるためとみられる。」
「調査によると、スポーツクラブに所属する割合が最も高い年齢層は70代前半女性の44%。男性は70代後半の41%が最高(以下、略)」。

筆者は、自分のこととしても、こうした高齢者のスポーツ活動が人と人との新しいつながりを生み、それがまた次のつながりを呼び、その人の暮らしや人生を豊かなものにするという連鎖が起きることを期待している。これまでの福祉活動が、高齢者や障がい者などのスポーツ活動や学習・文化活動の振興とそれに基づくライフの質的向上について十分に取り組んできたかといえば、必ずしもそうはいえない。その際の、ライフの“質”とは、「生命の尊厳」(Sanctity of Life)と「生活の質」(Quality of Life )、併せて「人生の豊かさ」(Abundance of Life)をいう。
高齢者分野で始まった生活支援サービス活動のひとつに、「ふれあい・いきいきサロン」活動がある。全国社会福祉協議会が1994(平成6)年に提唱した活動である。「ふれあい・いきいきサロン」は、高齢者だけでなく、障がい者や子育て家庭など、誰もが楽しく気軽に参加できる「地域住民によるつながりづくりのきっかけの場」「地域の居場所」として、全国に5万2000か所を超え大きな広がりを見せている。
全国社会福祉協議会発行の『ふれあい・いきいきサロン』(生活支援サービス立ち上げマニュアル第4巻、2012年)には、「サロンは多種多様ですが、『自分の気の合う人たちだけで行う活動』ではなく、『地域の誰もが参加できる活動』でなければなりません。『地域の人たちに親しまれる場をつくる』という原則がサロンではとても大切です」(26ページ)と記されている。筆者を含め、上述のスイミング仲間にとって、スイミングスクールは心地よい「居場所」である。仲間たちは、「気軽に」「無理なく」「楽しく」「自由に」(44ページ)、そして「健康維持」のために泳いでいる。プールに出かけて行くこと自体が「心のハリ」(20ページ)をもたらしてくれる。ときには普段の生活の困りごとについて話し合う。そこはまさに「サロン」である。この小さなサロンを、全国社会福祉協議会がいう生活支援サービス活動のサロンのひとつとして、あるいはそのサロンを「立ち上げ」るためのひとつとして考えることは無理であろうか。筆者は、今後の自分自身の暮らしと地域における生活文化や福祉文化を醸成するひとつのプラットホームとして位置づけたいのだが。

ガバナンスなき無挑戦型地域福祉

「社協ワーカーは、まちづくりの “偉大なるプロデューサー” 」の拙文に対し、遠くS市社協のY氏より、以下のようなメールが届きました。「ディスカッションルーム」がそれらしくなってきて、嬉しい限りです。

大変ご無沙汰しております。ディスカッションルームの原稿、拝読させていただきました。
先ず、「社協ワーカーは、まちづくりの “偉大なるプロデューサー” 」というタイトルに大変驚きました。さらに、「偉大なる」までつけていただいていることに、疑心暗鬼。こわごわ拝読させていただきました。
「社協や社協職員はこれまで、『黒子』という名のもとで、結果的には、地域や住民に『丸投げ』し、それを通して『管理』『監督』し、『調和』『同化』を促す側の立場に立っていたのではないか。それでは、地域や住民は変わるはずがない。」は、一面、ハットさせられました。
特に圧巻だったのが、「『民間団体の最高経営責任者であるという認識に欠ける会長』『充て職としての立場から一歩も踏み出せない役員』『天下りの期間を無難に過ごすことに汲々とする事務局長』『公務員然として定時勤務のデスクワークに励む事務職員』」です。社協ワーカーの端くれ? でありながら、正直胸がスカッとするのを覚えながら、スタンディングオベーション(大喝采)を……、次の言葉とともに! “ガバナンスなき無挑戦型地域福祉”