阪野 貢 のすべての投稿

瓦解する統治

支配する者と支配される者が いなければならない
支配する者は 搾取を常とする
支配される者は 懇願を常とする

制裁する者と犠牲となる者が いなければならない
制裁する者は 都合のいい法を作る
犠牲となる者は 不都合な法に縛られる

富む者と貧しき者が いなければならない
富む者は 人生に執着する
貧しき者は 人生を諦める

奉仕する者と奉仕される者が いなければならない
奉仕する者は 甘い汁を吸い続ける
奉仕される者は 甘い汁を餌に飼い続ける

支配する者と支配される者は 共に心を病む
支配する者は 強欲に嘖(さいな)まれる
支配される者は 絶望に嘖まれる

制裁する者と犠牲となる者は 共に心を病む
制裁する者は 正義だと信じ込むしかない 
犠牲となる者は 災禍だと受け入れるしかない

富む者と貧しき者は 共に心を病む
富む者は 醜さを隠しきれない
貧しき者は 卑しさを隠しきれない

奉仕する者と奉仕される者は 共に心を病む
奉仕する者は 裏切られぬよう用心する
奉仕される者は 噛まれぬよう用心する

かくして腐敗国家は 何事もなく統治される
支配する者は その力を偉大にして権力を示す
支配される者は 不当な権力の犠牲を強いられる  

ようやく腐敗国家は 土台が揺らぎ始めた
支配する者に 最後通告の時が迫る
支配される者は 自己防衛を強化する

すでに腐敗国家は 危機に陥った
支配する者は 化けの皮が剥がされ瓦解する
支配される者は 解放の拳を天に突き上げる 

〔2021年7月31日書き下ろし。「辞めない、自分はできる」根拠なき楽観と自信が崩れていく音が聞こえてきた〕

本音が聞こえた

五輪やってる最中に
なんでこんなに増えるんだ
ゴリ押し続けた 挙げ句の果てに
金メダルを取っても 盛り下がる

五輪やってる最中に
どいつもこいつも言うこと聞かない
黙って家に ひっこんでろ
呑兵衛が コロナを巻き散らかす 

五輪やってる最中に
1万人に超えようが 無視していい
安心安全なんか くそ食らえ
どこでも勝手に動いて 罹ればいい

五輪やってる最中に
ルール違反があっても 仕方ない
性悪だから コンドームも用意した
見つからぬよう 隠れてすればいい

五輪やってる最中に
悪口少しは減ったが 影薄い
五輪で支持率アップを 目論見た
コロナ爆発で怒り心頭に発し こん畜生!

五輪やってる最中に
医療機関は ひっ迫を覚悟する
まずは外国人優先で 治療に当たれ
俺の評判落とすとヤバい 訴訟も怖い

五輪終わった途端に
非難囂々(ごうごう)一気に吹き出す
世間は 全くいい気なもんだ
この借りは 必ず目にもの見せる

五輪終わった途端に
年寄りのワクチン接種は 大方終わる
あんたらの命は 最優先で守ってやった
だから決して恩を忘れず 選挙に走れ

〔2021年7月30日書き下ろし。夕方菅義偉首相の記者会見を聞きながら、信頼を失った男に去来するものは何かを想像した。正念場を潜り抜けて生き残るしたたかさに乾杯!緊急事態宣言とまん延防止法の発令決まる。日銭を稼ぐ仕事は奪われ、犠牲者がまた増える〕

五輪と同じ対策取りました

五輪と同じ スポーツです
五輪に負けぬ 防止対策取りました
屋内会場より広い 野外です
social distancing(物理的距離)は 完璧です

五輪と同じく スポーツを楽しみました
五輪に刺激され 体がムズムズして動きました
感染リスクの少ない 野外です
social distance(社会的排除)よりも 教育は交流です

五輪は 緊急事態宣言中にしています
五輪の影響など ここでは皆無です
学校も夏休みで 業務も一息つきました
ストレス発散して 英気を養います

五輪は 四千食の弁当を廃棄しても 家畜の餌にしたと言います
五輪は バレぬようヤバい情報は流しません
一体どこから 漏れたのでしょう  
壁に耳あり障子に目あり でも野外です

五輪は 汚点が見つかれば世間が辞職に追い込みます
五輪で死んだら 自己責任だと平気で開き直るでしょう
巷(ちまた)では 責任の取り方が問題にされます
知事が謝り 現役の処分は減俸程度で終わりでしょうか

「対策すれば、同じスポーツのゴルフも開催していいのではと判断した」
県教委は 規則に準じて軽い行政処分で済ませます
「五輪村と同様に対策すれば、店を開いていいのではないかと判断する」
民間は 重い罰則が課せられます
コロナの感染拡大は歯止めが効かず 緊急事態宣言再発令も検討中とか
今日も 店をたたむ判断をする人がいることでしょう

※「social distancing」:公衆衛生戦略を表す用語で、疾病の感染拡大を防ぐため、意図的に人と人との物理的距離を保つこと。特定の個人やグループを排除するという社会学用語の「social distance」とは区別して表記した。

〔2021年7月29日書き下ろし。ナイス判断。処分は粛々と規則に則って行われる。世間の批判をよそに、行政マンは護られていく。札幌は29日150人台の感染者、国は様子見〕

付記
山梨県教委幹部ら約12人がゴルフ・会食「五輪もやっているので」
山梨県教育委員会幹部らが今月25日、教育関係者ら計12人前後で昼食付きのゴルフをしていたことが、県教委などへの取材で明らかになった。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため長崎幸太郎知事は県民に、大人数での会食などを控えるよう要請しているが、参加した幹部は「東京オリンピックが感染対策を徹底して実施されている。対策すれば、同じスポーツのゴルフも開催していいのではと判断した」と釈明した。
県教委によると、保健体育課長や中北教育事務所の副所長ら職員3人と教員OBらは25日に県内のゴルフ場で午前8時半から約1時間の昼食を挟んで、午後2時半ごろまでプレーした。マスクや手指消毒、検温をし、食事も会話中はマスクを着用する「マスク会食」を徹底させたという。(毎日新聞 2021年7月28日)

五輪下感染列島ジャパン

稚内で 島の人たちに会った
利尻島と礼文島の人だ
島に来る人たちは マスクもせずに島内を歩き回る
島は感染してないから 安全地帯だと嘯(うそぶ)く
島の人たちには マスクは決して外せない日が続く

28日 全国最多9583人
東京都3177人 首都3県2498人
埼玉 千葉 神奈川 大阪は 緊急事態宣言を検討する
北海道も2ヶ月ぶりに200人超えの227人
要請しているまん延防止法は 五輪マラソンが終わるまで棚上げか
札幌市長は 緊急事態宣言レベルと危機感をあらわにする
知事はいつものポーカーフェイスで 要請のポーズを取り続ける 
国が躊躇している間に 道内の観光地はリスクを抱えるしかない
  
「人流は減少している。心配ない」
たったそれだけの根拠で 五輪中止はないと強弁する
説得力が皆無のリーダー 信頼を失った言葉はいつも霧散する 
外出自粛と移動の制限 五輪も家で少人数での応援を要請するだけ
一方で五輪は粛々と進み メディアはこぞって熱狂ぶりを毎日煽る
空回りする感染対策と 狂気の果ての東京五輪

夏の大移動が 感染を拡大する
観光地は軒並み 感染者を増やす
1日1万人は もう目の前だ
医療現場は病床が圧迫され 緊急医療も手術も縮小される
医療者の献身的な治療は 限界を超えていくだろう
五輪をやっている場合かと 当たり前の批判が表面化する
不安を増幅させる事態の収拾まで どれだけの犠牲を強いるのか
都合のいい数字を切り貼りするのは すでに見透かれた
リスクの限界数値を 示すしかないだろう
社会の認識を変えるカンフル剤は いとも簡単
「五輪中止」

〔2021年7月28日書き下ろし。熱波が続く。その最中に病気に罹るのは辛い。稚内の二十代の若者も夕方熱中症に罹ったと本人から聞いて驚いた。いのちを護るにも、ひとりでは難しい。まずは身近な者たちが今一度予防策を確認して実行しよう〕

歪む線路

稚内を出て1時間
当然 車内放送が流れた
この先の線路に 歪みが見つかった
点検のために 幌延駅に臨時停車する

炎天下にさらされた線路は
最北の鉄道を苛(さいな)める
18:45 日が陰り 冷気も流れる時間帯になった

特急宗谷の折り返し運転で
20分も同じ原因で 稚内到着が遅れた
戻り道のタイミングで またも歪みが見つかった
保線車輌が到着するまで どのような展開になるのかわからない
状況を見守り待つしかない

1ヶ月以上 雨がない
道北地域は かってない30度の灼熱を浴び続ける
草地は2番草を諦め 早々に刈り3番草に期待をかける
牛飼いには かなりのダメージだ
冬の餌が減るのを 覚悟した 
畑も 生育がおぼつかない
畑は日に焼かれ 雑草だけが繁茂する

アナウンス入る
保線区から18:50に出て 現地には19:30到着予定
安全点検完了まで どれだけの時間を要するのか不明
復旧の目処が立ちにくければ と不安がよぎる
旭川までの まだ3時間の行程が残っている
代替えのバスを用意するにも 一番近いのは稚内
手配に手間取れば 1時間以上はかかる
ただ乗客数が 50人にも満たないのが幸いか
コロナ対策を考えると 2台用意が必要か
とりとめもなく 緊急時の対応を想像する

夕飯は車内で 弁当をつまみにビールを飲んだ 
腹は 明日の朝まで十分持つ
水も充分ある
いまは 状況の変化と指示を待つだけの身でいる

アナウンス
19:27 保線車現地到着し点検開始
復旧の時間の目処は不明

JR北海道は 道北で線路が歪むとは想定外だったろう
列車は札幌行だが 旭川で乗り換える人もいる
このままでは 列車の連絡は難しい
旭川泊まりを 覚悟しなければならない
その宿泊費は JRは負担しない

数えたら 27名が現在4車輌に乗車中
それぞれの思惑を抱えた列車の囚われ人は
次のアナウンスを 待つ 
19:56 現在点検中 終了時間未定
まだかかる様子

20:20 20分後に出発見込みを伝える
安堵する
20:37 まもなく発車のアナウンスで
20:40 幌延駅を2時間遅れで出発する

途中臨時停車して 保線員を拾う
突発的な事態に素早く対処し 現場で復旧作業に当たる
厳しい仕事に 感謝しかない
旭川に2時間以上到着が遅れると 
特急券払い戻しの事態となる
JRは今度は時間との勝負となる
 
この日旭川は 36・2度
133年の観測史上一番高かった
市内の江丹別は36・9度
旭川市内は 今月100名以上が熱中症で緊急搬送された

2時間を17分オーバーして 旭川駅に着いた
特急券の払い戻しとなった

この熱波 いつまで続くのやら
歪むのは線路か 地球か 

〔2021年7月27日書き下ろし。今朝仕事の関係で旭川から夜送る予定でいたが、アクシデントのため、切り替えて明朝アップする〕

暑気払い

札幌も30度の炎天下
昼から ビールを飲んだ
クラフトビールの 味比べをしながら
丸いグラスを 次々空ける

木漏れ日が降り注ぐ テラスは
涼しい風に伴われ 冷やされる
万緑に満たされた 夏空の下
ビールのほろ苦さが 喉をつたう

4人に貸し切られた店
暑気払いの宴は 忘却の時を刻む
ススキノの外れで 無秩序に草木が茂る
小さな庭は 静かに酔客を歓待する

都会の喧騒もない
穏やかな風の流れに 身を置きながら
木々の葉に透ける光を仰ぎ
もう1杯のビールを 求めた

〔2021年7月26日書き下ろし。暑気払いで英気を養う。仲間と飲むビールに歓喜する〕

感染爆発は必ず起こる

新型コロナウイルスが猛威を振るう
世界の累計感染者 1億9294万6915人
世界の累計死者数 414万725人
世界の死亡率 2・15% (世界のデータは日経2021年7月24日現在)

東京の死亡率 1・16%
北海道の死亡率 3・31% 
それは 東京の2・7倍 世界の1・5倍
ただそれだけのことなのか
なぜ高いのか 道知事は何も語らず
ただ移動自粛を強い 飲食店の規制を強めるだけ
クラスターの発生が 顕著になった
今日も北海道は 感染者118人(札幌88人)と減らない
まん延防止法の発令は 果たして効果があるのか
東京に感染爆発は 切ないかな必ず起こる

コロナ感染は 何度も大きな波になって襲ってきた
リスク管理すらできずに 機能不全に陥った
当初なすことは全て裏目に出て パニクったのは致し方ない
1年半を過ぎても 安心安全とのたまうだけで
何度も煮え湯を飲まされる人には その無能さがたまらない
IOCの思うままに 五輪開催に突っ走った
IOCはパラリンピックは観客をと 無謀な要求を懲りずにする
台風8号が 五輪の海浜競技場を直撃する 
IOCの天意に背く罰を都民が受ける なんという不条理か
東京に感染爆発は 哀しいかな必ず起こる
 
世界に恥をさらした者を功労者として崇め名誉職まで準備した
誰が発案したのか こんなレベルの者が大会を仕切る無恥を知れ
見る地平線の違いより 情けない運営を制御できない無恥を語れ
為すべき事もなさず ボランティアを消耗させる無恥を知れ
無観客を強いた世論を アホと貶(おとし)めた無恥を知れ
過注文した弁当が手も付けられず 棄てられる無恥を知れ
呆れかえる五輪の舞台裏には愛想も尽き 言葉が 心が 尖る
ただ東京に感染爆発は 悲しいかな必ず起こる

〔2021年7月24日書き下ろし。大坂なおみの聖火点灯は最高のパフォーマンスだったろう。大好きな世界のアスリート。東京五輪の負の現実を心に刻んで欲しい〕

太鼓を叩け

祭りだ 祭りだ
太鼓を叩いて 笛吹いて踊れ
クソ アホ ほざけ
バッハは ゴリ押し通してご満悦

祭りだ 祭りだ
何が起きても 成功させる
反日ら中止を ほざけ
バッハは 小池にスガって高評価

祭りだ 祭りだ
コロナは無敵 誰でもうつす
ワクチン足りぬと ほざけ
バッハは 犠牲はないと太鼓判

祭りだ 祭りだ
醜聞 失敗 失態の果ての辞任
ルール違反はないと ほざけ
バッハは でっかい顔して殿様気分

祭りだ 祭りだ
高温多湿 最悪コンディション
条件はみんな一緒と ほざけ
バッハは ハッパをかけて強行突破

祭りだ 祭りだ
失敗できぬ 損できぬ
賺(すか)して脅すと ほざけ
バッハは 取るに足らぬと知らんぷり

祭りだ 祭りだ
テレビ観戦 応援強いる
盛り上がらぬと ほざけ
バッハは 金の回収で一息ついて安堵顔

祭りだ 祭りだ
五輪の終わりの始まりだ
もう二度とないと ほざけ
バッハは 懲りずに札幌にアプローチ

〔2021年7月23日書き下ろし。ゴリ押しするバッハにゴリン(五輪)のゴリヤク(御利益)無に帰して、もうこりゴリと嘆きは深い。開会式は見ない〕

東京五輪開幕する

スキャンダラスに晒された
大義なき五輪が開幕する

金と欲が渦巻き
世紀末を象徴する五輪となる

詭弁の上に虚言を重ね
安心安全と唱える夏の亡者たち

コロナは衰えを知らず
万策尽きて万事を休す

東京砂漠に歓喜が広がる
アスリートは戦う以外ない

サイバーテロに弄(もてあそ)ばされる
脆弱なセキュリティー

手のひら返しで五輪を煽り
熱闘列島を演出するマスメディア

求めた開幕の舞台は整った
IOCと政権の命運を賭けた東京五輪

五輪の黒歴史がスタートする
新たな犠牲へのプロローグ

〔2021年7月23日書き下ろし。今夜8時開会式。開催中のボランティアとアスリートの無事を願う〕

老爺心お節介情報/第28号(2021年7月22日)

「老爺心お節介情報」第28号

〇梅雨が明けて、猛暑の日々が続いていますが、皆さんはお変わりなくお過ごしでしょうか。
〇私は、6月末から、新型コロナウイルスの件での自粛生活が続くので、時間的ゆとりが持てるようになりましたので、近くのパソコン教室に通っています。1990年頃にワードプロセッサーを使い始め、2000年頃にパソコンを使い始めましたが、いずれも見よう見まねで、本格的に基礎から体系的に学ぶことはありませんでした。分からないところは周りの人に聞いてやってきましたが、今回改めて習い始めて、用語やマークの意味が初めて分かり、こういうことだったのかという納得と新たな技術習得でパソコンに向かうのがさほど怖くなくなりました。
〇また、スマホ教室にも通い、こちらもこういう機能があったのだと妙に納得し、喜んでいます。
〇ただし、これらの技術や知識は面白く、楽しいですが、自分の日常の生活ではあまり使う機会がなく、やはり自分の生活と生活の行動上に必要な最低のものがあればいいのだとも実感しています。
〇しかし、これらの技術と知識を有しているかどうか、使えるかどうかは国民に新たなITリテラシー格差を生み出し、ひいてはそれが生活格差になることも実感しています。
〇DX時代といわれ、社会福祉学や社会福祉実践はどこへ行くのでしょうか。
〇「老爺心お節介情報」第28号の内容は以下の通りです。

Ⅰ CSWパワーアップ研修の方法と手順(コンサルテーション)

CSWパワーアップ研修の方法と手順(コンサルテーション)

コミュニティソーシャルワークの養成研修は、できるだけ社会福祉士や精神保健福祉士の有資格者を原則とし、別記の(初任者版CSW研修における事例検討の方法とアセスメント能力向上研修)の項目、手順、方法に基づいて研修を行って欲しい。
そのうえで、そのコミュニティソーシャルワーク研修修了者を対象とした研修(パワーアップ研修)では、コンサルテーションという機能を重視して研修を行って欲しい。
その際には、①個別支援の事例に即した問題解決プログラムの開発能力、その問題解決に即した新しい福祉サービスの企画力(抽象的、一般的地域資源の開発はダメ。個別支援に即して必要な地域資源、新しい福祉サービスの企画力を修得する)、②個別事例で提起された新しい問題の解決策として必要な新しいシステムづくりに関する企画力を高める研修を意識してほしい。
それが、“個別支援と地域づくり”という二元論ではなく、“個別課題の解決を通して地域を変える”という「地域共生社会政策」のポイントである。
CSWパワーアップ研修においては、別記の(初任者版CSW研修における事例検討の方法とアセスメント能力向上研修)を既に受講していることを前提に、下記の主に4,5,6の項目を重点的に展開する。復習の意味も兼ねて下記の1,2,3を再度行う。
このような研修をするにあたっては、従来、社会福祉方法論の領域で使われてきたスーパービジョンという用語は使用しないでいただきたい。コミュニティソーシャルワーク研修の中核的修得課題に即していえば、問題解決プログラムの開発、新しい社会福祉システムづくり、あるいは新しい財源確保や地域資源の開発にかかわる能力の向上を図る目的、内容からいえば、スーパービジョンという用語は馴染まず、コンサルテーションという用語がふさわしい。

(研修の方法と手順)
1 履修者に個別支援の事例を提出させる。
2 提出去れた個別事例の中から、ワークショップを行うグル-プ数に見合う事例を選択する。できるだけ、多領域の事例、困難事例を取り上げる。
3 ワークショップごとに取り上げて事例に即し、アセスメント能力の向上を図る
以下の手順を、まず個人作業として行い、その後グループごとのワークショップとして行う。

1)事例に即し、担当したソーシャルワーカーが何をアセスメントしたかを項目毎にポストイットに書き出す。
2)事例検討者が、事例を扱ったソーシャルワーカーのアセスメントが不十分なところで、かつ必要な項目ごとに、色違いのポストイットに書き出す。
3)上記1)、2)のポストイットを拡大した「社会生活モデルアセスメントシt-ト」に張り付ける

4 事例が抱える問題を解決するための望ましい支援方針を立案する。その際に、既存のサービスになく、問題解決に必要な解決プログラムや新しい福祉サービスを考え、それをポストイットに書き出し、先の「社会生活モデルアセスメントシート」に貼る。
5 問題解決プログラムや新しい福祉サービスについて、シートに基づき企画する。
6 問題解決の一つとして、その事例に即し、どのようなソーシャルサポートネットワークを構築すればいいのか、そのソーシャルサポートネットワークの構築に向けての企画書を作成する。

(初任者版CSW研修における事例検討の方法とアセスメント能力向上研修)
① 取り扱う事例の概略の説明を受ける。
② その概略化された事例に基づき、何がアセスメントされているかをその項目ごとに付箋(ポストイット)をつけて確認する。
③ 概略化された事例に対し、支援する場合に、アセスメントできてない、アセスメントした方がいいと思える項目を付箋の色を変えて書き出す。
④ 第1回目のアセスメントの付箋と第2回目のアセスメントの色違いの付箋の両方を、KJ法的に分類する。
⑤ KJ法的に分類したものを「社会生活モデルに基づくアセスメントシート」に貼り付け、自分のアセスメントの足らないところを自己認識する(「社会生活モデルに基づくアセスメントシート」は付箋を貼りやすいように、少し大きめの版で印刷してほしい。模造紙までとは言いません)。
⑥ 概略化された事例は、実際にはどうであったのかを事例発表者に改めて説明してもらう。
⑦ 新たに説明された事例に基づき、今度はグループごとに事例に対する支援・援助方針を立てる。
⑧ その際に、事例検討者個々人が気が付いておらず、グループ討議の中で出てきたアセスメントの項目については、前2回のアセスメントとは色違いの付箋で、シ-トに張り付ける。
⑨ 取り上げた事例ごとの支援・援助方針を各グループから報告してもらい、アドバイザーのコンサルテーションを受ける。
⑩ 取り上げた事例への支援・援助において、既存のサービス、社会資源がない場合には、それらのサービス、社会資源を簡略的に、箇条書きで書き出す。
⑪ 初任者は、①~⑩を丁寧に行った上で、困難な事例に即し「問題解決プログラムシート」に基づくプログラムの企画と個別事例に即した「ソーシャルサポートネットワーク構築シート」に基づく支援方策を企画する。

Ⅱ シルバー産業新聞連載記事第7回

「地域包括ケアの歴史的展開と地域社会生活支援」

厚生労働省は2016年7月に「地域共生社会実現本部」を立ち上げ、それ以降「地域共生社会政策」を推進している。その政策に先駆けて、厚生労働省は2015年に「医療介護総合確保法」を成立させ、いわゆる2025年問題(団塊の世代が後期高齢期になる2025年の介護問題)を見越して、日常生活圏域でのケアの一体的提供をするために、医療、介護、福祉の連携を強化させることを目的にした政策を推進すると同時に、“地域包括ケア”という用語をしきりに使用することになる。この“地域包括ケア”と“地域共生社会政策”という用語との関係が国会審議の過程において問われ、厚生労働省は、“地域共生社会政策は、地域包括ケアを包含したものである”と答弁している。
戦後70年間、社会福祉行政は「福祉六法体制」と呼ばれたように、属性分野ごとに細分化された“社会福祉行政の縦割り化”が進んでいたが、地域での自立生活が可能になるように支援していくためには、複合的課題を抱えた個人や家族全体に対し、総合的に相談支援していくことが求められ、現在「地域共生社会政策」の下で、様々な取り組みが展開されている。
2017年の社会福祉法改正では、地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される包括的支援体制整備を努力義務として規定した。2020年の社会福祉法改正では、包括的支援体制を強化するための機能が法定事業になり、市町村が認める場合には市町村の責任において地域住民に対して包括的支援ができることが明記された。と同時に、その包括的支援をするために、介護、障害、子ども、生活困窮の分野からの財源拠出等の財政支援を定め、それらの制度の一体的運用・実施もできるようにした。
また、地域共生社会政策を推進するために、包括的支援を行うとともに、福祉サービスを必要としている人々を地域で早期に発見し、それらの人々が地域社会から蔑視されず、排除されず、それらの人々の個人の尊厳と人間性が尊重され、社会、地域において社会的役割を担い、地域社会を構成する一員として認められ、包含されるように、個別支援とそれを支える地域づくりを一体的に展開する重層的支援体制整備事業も位置づけられるようになった。
これらの考え方、政策はある日突然出てきたわけではない。これらの課題への取組は歴史的に常に問われ、実践もされてきた問題であった。
地域包括ケアシステムに関わる歴史的ベクトルは大きく2つある。第1のベクトルは、医療系を中核としたベクトルで、古くは1950年代の長野県の佐久病院の若月俊一医師による医療、保健、福祉、社会教育の連携システムに基づくベクトルや1970年代広島県御調町の山口昇医師による病院を拠点としたシステムのベクトルが有名である。この医療系を中核としたベクトルにはもう一つの流れがあり、1970年代秋田県象潟町、高知県西土佐村での宮原伸二医師による実践や兵庫県五色町で展開された松浦尊麿医師の実践で、地域保健を中核とした実践であった。
第2のベクトルは地域福祉系のベクトルで、1994年設置の岩手県遠野市「健康福祉の里」(国保診療所併設)におけるワンストップの相談システムや2000年実施の長野県茅野市における保健・医療・福祉の複合型拠点(内科クリニックを併設した保健福祉サービスセンター)を中学校区という4つの日常生活圏域毎に設置し、かつ社会福祉協議会が実践するコミュニティソーシャルワーク機能と有機化させるシステムを創った実践である。
ところで、“地域包括ケア”とか、“地域共生社会政策”とかが掲げる福祉サービスを必要としている人々への縦割りの属性分野を越えて福祉サービスを総合的に、かつ医療、介護と一体的に提供するという考え方は崇高であるが、その実現はそう簡単ではない。
地域包括ケアシステムを構築する際の保健・医療・介護・福祉の連携を阻む要因が幾つかある。その主なものを挙げると、①医療・保健・福祉・介護に関わる財源が一元的でない調達問題(税金による一般会計財源、医療保険財源、介護保険財源の違い)、②保健・医療・福祉・介護に関わる利用圏域(広域圏域、一部事務組合、市町村圏域、日常生活圏域)の違い、③介護保険事業計画、医療計画、健康増進計画、地域福祉計画・障害者福祉計画・子ども子育て支援計画等の各種保健・医療・福祉に関わる計画の整合性の問題等が挙げられる。
地域での自立生活支援においては医療的ケア児の問題、一人暮らし高齢者や一人暮らし障害者の入退院支援や看取り支援、あるいは認知症高齢者の支援、難病患者や若年性がん患者の療養と生活支援等、今日では益々医療・介護・福祉・保健を一体的に考えて提供するシステムや考え方を推進しなければならないところに来ている。
今や、急性期医療だけでなく、慢性期医療が社会的に大きな課題になってきている時に、病院での治療を中心に考えた「医学モデル」での対応だけでは問題が解決しない。治療ということも包含して、その人の生活全体を考え、アスメントし、支援方針を考えるという「社会生活モデル」に基づく支援が必要とされており、そのための専門多職種連携、チームアプローチが求められている時代である。
そのためにも、市町村ごとに、医療・介護・福祉・保健の一体的提供のシステムを考えた「地域福祉計画」の策定が重要になる。

(2021年7月22日記)