阪野 貢 のすべての投稿

清水将一/ボランティアの芽を摘み取るボランティア、福祉教育をダメにする福祉教育―いま立ち止まってボランティアと福祉教育を考える― 



 


  



 


 

影響を受けた人物
① S氏のこと

② 阪野貢先生のこと

③ 沢田清方先生のこと

④ 福井達雨先生のこと

 
影響を受けた出来事
① 阪神淡路大震災

 


追悼:清水将一先生は、2020年10月17日に逝去されました。
私は、ボランティアや福祉教育、まちづくりや社協活動などについて、先生の「実践的研究」から実に多くのことを学ばせていただきました。常にその視点や視座はブレることなく、またその立論は理性的で科 学的、かつ批判的で建設的なものでした。そしてその基底には、子どもや障がい者などに対する深い、確かな “愛” がありました。遺稿集である本書を読むなかで、その思いを強くしています。アルフレッド・マーシャルの 「熱い心と冷たい頭」という言葉が思い出されます。
叶うことなら、本書を通して、ご生前に十分できなかった先生との議論を重ねていきたいと願っています。
清水先生の学恩に感謝申し上げるとともに、衷心よりご冥福をお祈りいたします。(阪野 貢)
出典:清水将一『ボランティアと福祉教育研究』風詠社、2021年6月、5~129ページより転載。本稿のタイトルは阪野 貢によります。
謝辞:転載許可を賜りました風詠社と故・清水将一先生の奥様に衷心より厚くお礼申し上げます。


追記(2021年7月24日)
鳥居一頼先生から早速、次のようなメールをいただきました。いつものこととはいえ、先生のご厚情には感謝あるのみです。
それにしても清水将一先生には何のご恩返しもできず、悔やまれてなりません。(阪野 貢)

追記(2021年7月26日)
村上進様から次のようなメールをいただきました。村上様には日頃、本ウェブサイトの運用等について格別のご支援をいただいておりますことに深く感謝申し上げます。
清水将一先生の福祉観の確かさと、「生きている(いた)証」としてご高著を上梓されたことに敬意を表します。(阪野 貢)

一粒の種

岩見沢市民会館に 空知管内7市12町から 
133名の 民生委員が集まった
コロナの影響で 2年越しの新任研修を開催した

514席の中ホールは 感染予防対策で
前後左右かぶらぬよう 指定席だった
ステージの演壇は 木枠に透明シートが貼られていた
マイクは完全消毒が徹底され 一人1本だった

岩見沢の民生委員6人が登壇した
マイクが6本しかなく まわして使うことができない
だから この6人には最初から最後までお付き合い願う
演壇は上手に置き。中央に並べられた椅子に座った
何かが起こる予感に 観客席は6人に注目する
ワークショップが始まった

冒頭本来のワークショップができないことから
皆さんを代表して 6人の方に協力いただき
劇場型ワークショップを行いますと 6人を紹介した
指名は 名簿の今日の日付21番から順に6人を選んだ
ステージに上がるまで 全く面識はなかった

詩集『情緒は私を支配する、論理よりも強く』
テキストには、48編の詩と2本のシナリオが
90ページにわたり紹介されている
これを90分で消化するのは とうてい無理である
だから 朗読できなかった詩はお土産だと伝えた

導入に『他人の靴を履く』の一節を引用した
「言葉は思い込みを溶かす。固まっていたもの、凍っていたもの、不変だと信じていたものを溶かして、変える」
詩を通して 何かしらの前向きな変化があれば嬉しいと
情感に迫ることに 許しをもらった

早々に シナリオ『稼いで半人前』の上演
「一粒の種」と名付けた にわか朗読集団
初めて目を通す台詞を 心情豊かに見事に演じきる
これで今日はいけると 確信した

詩は6人と代わりばんこに 朗読した
時には その詩の感想を話してもらうこともあった
2時間半で設定したワークショップは 90分しかない
コロナ禍で全体の時間が半分となり 詩の大半を残す
それでも時間のかかる二つ目のシナリオ
『自分のネットワークを作ろう』にこだわった
この6人で演じる世界を味わって見たいと思った
案の定 見事な台詞回しで 会場から小さく拍手がわいた 

言葉は 情感豊かに表現されることで
素直に心に響き その意が受け入れられる
初見しただけで その情景や心に動きを想像する
「一粒の種」のメンバーが 思い込みを溶かす
6人という集団が一つに溶け合い 自らを変えた
「一粒の種」がメンバーによって
このワークショップで 蒔かれていった

時間は押していた
テキストの未消化を謝罪した
いつもなら『めんこいしょ』で〆(しめ)るが
女性の朗読が聴きたくて 指名した
小さないのちへの限りない愛の詩は 静かな余韻を残した 

※『他人の靴を履く』プレイディみかこ著、文藝春秋、2021年6月刊。

〔2021年7月22日書き下ろし。ようやく解禁となった矢先、今日札幌は百人を超えた。札幌を中心にまん延防止法の発令は近い。仕事がしたい〕

信じられる?

信じろ
信じられることもしないで
何を信じるのか

信じろ
信じられない人の
何を信じられるのか

信じて
パートナーでもない 友人でもない
人は 簡単には信じない

信じて
信じるに値しない人に
あなたは 命を預けられますか

信じる
金しか信じられないあなたには
犠牲は 人ではなく損得でしかない

信じる
信じるに足りぬ人の言葉は
人心を 逆なですることでしかない

信じる
これだけ感染拡大で不信と不安を拡大しいて
レセプションとはいい加減にして欲しい

信じられない
どれだけ人心を 虚仮(こけ)にするのか
反発どころか 冷えた憎しみすら覚える

信じよう
次の選挙は 無下にされた民意の表明
無党派が 自公に決して投票しなければ
保身に走る者たちを 糾弾粉砕できる

信じぬ 嘘と欺瞞と傲慢な言葉を
信じる 押しつける抑圧からの解放を 
信じたい 困難に立ち向かう気迫と正義を
信じよう 危機を乗り越える人智と科学を

〔2021年7月20日書き下ろし。お互いの信頼とは、呆れた。スポーツとアスリートに世界と未来を変える力があるならとうの昔に変わっている。しばらく話題に事欠かない〕

付記
IOCバッハ会長「お互いに信頼し合わなければ」国民の高まる不信感も意に介さず
大会組織委員会は1日以降、選手ら大会関係者の陽性者数を発表しており、この日は1日で最多となる15人。選手村からも初めて陽性者が1人出た。バッハ会長は14日に菅義偉首相と会談した際、「我々がコロナのリスクを持ち込むことは絶対にない」と胸を張っていたが、既にほころびが顕著になっている。
バッハ会長は日本国民へ「アスリートを歓迎してほしい」とし、「彼らも犠牲も払って来ている。日本の人も同じ。制限的な対策を歓迎してくれている。日本だけでなく世界各地で見ても最も制約がかかった試合だ。お互いに信頼し合わなければならない。日本のパートナー、友人に対して信頼しているように、このような対策を信じて欲しい。効果が出ている。厳しい検査体制を敷いている」と話した。
バッハ会長は13日に組織委を訪問。全ての人々にとって安全な大会開催への意欲を示す際に、日本人と中国人を言い間違え「チャイニーズピープル」と口に。慌てて「ジャパニーズピープル」と言い直す一幕があった。18日には迎賓館でバッハ会長らIOC委員の歓迎会が行われることになっており、さらに反発は強まっている。(2021年7月17日スポニチアネックス)

安心安全の呪文

食あたりが怖い
パンケーキだと 大丈夫
さあ 唱えましょう
安心安全 菅さま安倍さま大明神

デルタ株が怖い
ワクチン接種 大丈夫
さあ 唱えましょう
安心安全 菅さま河野さま大明神

熱中症も怖い
医療体制 大丈夫
さあ 唱えましょう
安心安全 菅さま田村さま大明神

お酒が怖い
規制解除で 大丈夫
さあ 唱えましょう
安心安全 菅さま西村さま大明神

五輪が怖い
無観客だから 大丈夫
さあ 唱えましょう
安心安全 菅さま小池さま橋本さま大明神

役立たずが怖い
存在感なくても 大丈夫
さあ 唱えましょう
安心安全 菅さま丸川さま大明神

五輪の負債が怖い
たっぷり借金 大丈夫
さあ 唱えましょう
安心安全 菅さま麻生さま小池さま大明神

五輪後の選挙が怖い
公認が分裂しても 大丈夫
さあ 唱えましょう
安心安全 菅さま二階さま安倍さま大明神

どんな怖さよりも
恐ろしいのは 人間の業の深さ
さあ 唱えましょう
悪魔退散 菅さま小池さまバッハさま 
悪霊退散 安倍さま麻生さま二階さま 

トヨタが 五輪の呪縛を解きました
安心安全の呪文も 呪力を失いつつあります
安心安全の神話は 負のレガシーとなるでしょう

〔2021年7月19日書き下ろし。安心安全の神話づくりに欠かせない「呪文」です〕

付記
トヨタ、五輪関連国内TVCM見送り 最高位スポンサー
トヨタ自動車は19日、東京五輪に関連する国内でのテレビコマーシャル(CM)を見送る方針を明らかにした。トヨタは東京五輪の最高位のスポンサーとなっているが、大会開催や運営に関わる混乱で「理解されていないことがある」(トヨタ)として、CMを流さない。開会式など公式なイベントにも豊田章男社長含めたトヨタ関係者は出席しない方針も示した。(日経2021年7月19日)

北海道は熱暑です

十勝の足寄町で37.5℃
十勝池田町とオホーツク置戸町で37.4℃
北海道の23地点で35℃を超えて 3日連続の猛暑日となった。
札幌市でも34.3℃まで上がり 今年一番の暑さとなった

7月中旬で この熱暑は異常だ
涼しいからとマラソンと競歩を 強引に札幌に持ってきた
さてさてこの判断は 吉と出るか 凶と出るか
北海道の夏はお盆までと 海水浴場はクローズする
さてさて次なる試練は 8月本番の酷暑対策か
会場警備の立ちんぼボランティアが あまりに切な過ぎる

18日 2日連続で札幌80人超え 全道で100人を超えた
まん延防止法や緊急事態宣言も 視野に入ってくる
デルタ株に置き換わると予想され 危機感は日毎増す
千歳空港やJRでの内地から大勢の往来も 
夏休みとお盆と五輪の三重奏で 活気を呼び込む
ワクチン接種もままならない街に 人が溢れる
ビール園の大ジョッキは 観光客にはたまらない

マラソンの日に 猛暑が襲ったら
沿道での応援は 自粛せざるを得ません 
年寄りには 熱中症危険警報発令です
危険ゾーンに立ち入ることなく 家で観戦します
さっさと終わって 大通公園を元に戻してください
憩いの場は たかが数日のイベントで数ヶ月も奪われました
さっさと終わって 日常の風景を返してください
二度と札幌で 政治と金に汚れた五輪なんか持ち込まないでください 
犠牲を強いる為政者への 小さな小さな抵抗の声です

五輪の開催と広島を訪問した IOCバッハのねらい?
えっ! ノーベル平和賞を狙った パフォーマンスだって!
フェイクだとしても ストンと落ちるのが怖い

〔2021年7月18日書き下ろし。千歳空港に降りた乗客の一言、「満席だった」〕

教え子大井浩平君 NPO法人づくりに動く

東京在住の最後の教え子 大井浩平君
子どものために いまを生きる大人としてやるべきことがあると
30年ぶりに再会したときの話題が カタチになっていた
悠久の宇宙にある小さな太陽を公転する 命の惑星「地球」
そこに生きる様々な命の営みに 危うさを感じてひとり動き出す
NPO法人づくりへの一歩を印す 優しさと心意気に溢れたメッセージ
五輪開催とコロナの感染拡大で 辛辣になっている心が和んだ
事はひとりから始まる ひとりからしか始まらない
そのはじめの一歩を 彼の旧友たちと共有したい 

地球の上で生きているってこと
「地球」と聞いて 何をイメージしますか
宇宙から見た 青い丸い地球を思い浮かべますか
太陽系の中の一つの惑星の 地球を思い浮かべますか
地球を遠くから見たら きっとただの球体です
近くから見れば どこを見ても同じ景色はありません
いろいろな自然があり いろいろな景色があり
いろいろな植物たち いろいろな動物たち 
いろいろな昆虫たち いろいろな微生物たち
いろいろな細菌や いろいろなウイルスたちだって生きています
いろいろな人間たちも

「地球」という一つの家の中で みんなが共に生きている
でもいまは ひしめき合い窮屈そうに 互いに攻撃しあって生きている
同じ家に住みながら いつも喧嘩が絶えず ときに命を奪い合う
知恵を手に入れた人間たちは 自分たちが住みやすくなるように
科学や技術をすさまじい勢いで進化させて テクノロジーが巨大なものになった
人間たちは 地球の命の糧を我がもの顔で奪い合う
より多くの有益を貪欲に求めて 必要以上に自然を破壊してきた
数千年を経て 人間たちは住みやすい環境を手に入れた

しかしそれは 他の住人を怒らせた
自然が怒っている
住んでいる「地球」が怒っている
人間は自ら自分の首を絞めていることに どれだけの人が気づいているのか
気づいていても 何もできないのかもしれない
もうこれ以上の技術革新は要らない もうこんなにも必要ない

イヤホンを刺して歩いていたら 隣の人の悲鳴が聞こえるかい
マスクをしていれば 真実は見えにくい
イヤホンもマスクも 自分だけの世界に閉じ込める
我がもの顔で生きるって それでいいのかい
ウイルスがなんだ
ウイルスだって生きている 共存するんだ
体を丈夫にしよう 抗体力をつけよう
そうすれば ウイルスとも共存できる
いつか 口元を覆い隠すマスクを外して 
人間らしい笑顔をみせて歩きたい
そんなおもいが 日々つのる

そこで気づいた
この奇跡の惑星「地球」で生きる私たちには 大きな果たすべき役目がある
未来を生きる子どもたちが 明るく健やかに育つ世界になるように
大きく深呼吸しても 息苦しくないように 
社会の動きを緩めて「いま」を見つめなおそう
子どもたちの感性を豊かに育もう

どうか急がないでゆっくり周りを見ながら 歩いてください
たくさんの命との響き合いを確かめながら 歩いてください
その歩みが 未来になる
「いま」が未来になるのだ
「いま」を大切にするんだ
「いま」の笑顔が未来の笑顔になる
「いま」を見つめなおそう
「地球」に住む全てのものにやどる命を 大切にしよう
「街」で行き交う全ての命とその存在を 大切に生きていこう

大きな未来が待っている 子どもたち
その未来が 命の輝きに満ちるように
子ども時代にしか 味わうことのできない
様々な機会を与え 生の経験をさせたい
一人ひとりの感性を刺激して 色あせない豊かな心を育みたい
地球環境や福祉に目を向け 涸れることのない好奇心を育みたい
体の健康  心の健康 地球の健康を学ぶことで
自分を他人(ひと)に接するように大切にして
他人を自分のことのように大切にできるような
まごころをしっかりと育みたい
おもいのある仲間たちと 協力し合うことの大切さを知り
社会や人 そして地球とコミュニケーションする力を身につけ
自分も周りの一人ひとりも 地球社会の一員であり
尊い存在であるという自覚と 広い視野と実行力を育みたい
そんなおもいを託した「NPO法人」を立ち上る

〔2021年7月18日書き下ろし。昨夜浩平君からメールがきた。嬉しくなって、今朝、彼の純朴な思いを早来小の旧友たちにも伝えようと電話して承諾を得た。すでに子どもの「かけっこ教室」を主宰し社会教育に飛び込んでいるのも頼もしい。心から応援したい〕

阪野 貢/「世論」考:「空気」を読んで「勝ち馬に乗る」「長い物には巻かれろ」ということ ―ノエル=ノイマン著『沈黙の螺旋理論』のワンポイントメモ―

〇その場の「空気」を読んで、いとも簡単に同調あるいは妥協し、「勝ち馬に乗る」人がいる。その場の「空気」を読まず・読めず、自分の意見や態度を貫き通し、「我が道を行く」という気概がある人がいる。それはその人の個性や資質によるのか、その人が所属する集団や社会の対人的ネットワークや文化的特性によるのか。筆者(阪野)はしばしば、そのような場面に遭遇し、いろいろと考えさせられてきた。とりわけ昔ながらのムラ社会においては、強固な(そう評される)少数意見は「出る杭」として打たれ、ときには抜かれることにもなる。その意見は地域・社会に潜在化あるいは雲散霧消し、何事もなかったかのように見かけ上の穏やかな地域生活が続く。
〇日本社会はいま、超少子・高齢・人口減少・多死社会下にあって、「格差社会」「分断社会」「貧困社会」が進展している。さらに、コロナカ禍においてその厳しさが加速度的に拡大・深化している。日本の政治・経済は、新自由主義・国家主義体制のもとで、人々の生活の諸側面に破壊と統制(生活破壊と社会統制)をもたらしている。しかも、政治(政治家)と行政(官僚)の劣化は目を覆いたくなるほどに、留まるところを知らない。
〇そんななかで、政府によるメディア・コントロールが進み、政権にひれ伏して組織防衛に汲々(きゅうきゅう)とする既存メディアの姿がある。また、インターネットメディアの普及・拡大にともなって、マスメディア時代の(多数派意見としての)世論とは異なり、世論の多様化(分裂)や二極化(統合)が顕著になっている。
〇身近な地域や現今の社会で観察されるこれらは、本稿で取り上げる「沈黙の螺旋」現象でもある。
〇筆者の手もとに、E.ノエル=ノイマン著、池田謙一・安野智子訳の『沈黙の螺旋理論[改訂復刻版]―世論形成過程の社会心理学―』(北大路書房、2013年3月)がある。ノエル=ノイマン(1916年~2010年)は、ドイツの政治学者、世論研究者・実務家であり、1970年代以降のマスコミ・世論研究に大きな影響を与えた「沈黙の螺旋理論」で著名である。この理論(仮説)は、「自分の意見が少数派である、あるいはそうなりそうだと認知した人は孤立を恐れて沈黙し、逆に自分の意見が多数派だと認知した人は声高に発言する。その結果、少数派の意見はますます少数派になり、多数派の意見はますます多数派になっていく。その過程は螺旋的に循環する。そして同調圧力によって多数派の意見に同調する人が増え、多数派の意見が社会的に大きく顕在化し、『世論』が形成される」という議論である。周知の通りである。
〇以下では例によって、「まちづくりと市民福祉教育」を射程に入れながら、「沈黙の螺旋理論」のワンポイントをメモっておくことにする(抜き書きと要約。見出しは筆者)。

仮定(前提)―「準統計的能力」―
● 人々は自分の社会環境をよく観察しており、まわりの人々の意見に敏感で、また意見の趨勢の変化を感じ取ることができ、さらにどの意見が支持を増やしつつあり、またどの意見が支配的になりつつあるかを記憶にとどめることができる。(10ページ)
● 人間には意見風土(意見の分布状況や趨勢)を感知する素晴らしい能力(「準統計的能力」)があると推測でき、また公衆の注目を浴びるには何をすべきか理解している層もあれば、意見風土の圧力を受けるがままに沈黙させられてしまう層が存在する。(39ページ)

仮説―「孤立への恐怖」―
沈黙の螺旋理論は互いに独立した4つの仮説と、それら相互の関係に関する第5の仮説の上に成り立っている。
1. 逸脱者を孤立にさらすことで社会は彼/彼女に脅威を与える。
2. 人は孤立への恐怖を絶えず感じている。
3. 孤立への恐怖により、人は常に意見風土を感知しようとする。
4. この感知の結果が公的な場面での行動、特に意見の表明や沈黙に影響する。
第5の仮説はこれら4つの仮説が関連しあって、世論の形成、維持、変化がおこる。(235~236ページ)

「世論」とは何か―定義―
●「 世論とは、論争的な争点に関して自分自身が孤立することなく公然と表明できる意見である」。この定義は、複数の意見が互いに張り合っている状況にしか適用されないものであり、(理性的・合理的な)「世論」の基本的な定義である。(68ページ)
●「世論とは孤立したくなければ口に出して表明したり、行動として採用したりしなければならない意見や行動である」。この定義は、固体状になった・堅固に確定した伝統、道徳、なかんずく規範の領域におけるそれである。(69ページ)
● 意見や行動の様式が固定化すなわち伝統化・慣習化してしまった場合(68ページ)には、「 世論とは、自分が孤立したくないと思えば、公然と表明しなくてはならない態度や行動である。論争や変化の起きている領域では、世論とは自ら孤立の危険を冒すことなく表明できる態度を指す」。(209~210ページ)
● 「世論とは、ある社会の中で感情的、価値的負荷のかかった問題に関する人々の了解であり、しかも自分の立場を失ったり社会的に排除される脅威のもとで、個人や政府が少なくとも行動面で妥協することによって尊重すべき了解である」。この定義は、孤立の恐怖と相関する社会的な合意を強調するものである。(210ページ)

「沈黙の螺旋」現象―世論の発達過程―
沈黙の螺旋理論は、顔見知りの集団を超えた社会というところでも、合意から逸脱する個人を排除し孤立させる脅威が作用することを前提としている。他方、個人は多分に知るや知らずのうちに孤立への恐怖を抱いているが、これは天性のもの(「人間の社会的天性」)である。この孤立への恐怖から人々は、どの意見や行動のあり方が周囲で受け入れられるのか、また勢力を増しつつあるのはどの意見や行動様式なのかを常にチェックしているのである。この理論ではそのような評価を可能にするものとして準統計的能力の存在を仮定している。優勢意見の評価は意見表明の意図や行動そのものにまで影響する。自分の意見が合意の側に立っていると確信すれば、私的にも公的にも発言する勇気が出るだろう。たとえば、バッジやステッカーをつけたり、服を着たりといった目に見えるシンボルでその信念を表明するだろう。反対に、自分が少数派であると感じたときには慎重になって沈黙を守るようになる。こうしてついには、劣勢側の意見の支持者はハードコア層だけになってしまうか、あるいはやがてタブーと化すのである。(235ページ)

〇ノエル=ノイマンは、「沈黙の螺旋過程がその最終段階を迎えて大多数を呑み込んでしまってすら、孤立の脅威をものともしない少数者」(199ページ)、すなわち「ハードコア(層)」の存在について(必ずしも十分ではないが)言及する。ハードコア(「固い核」)は、沈黙がだんだんと広がっていくなかで、その場の「空気」や多数派の意見に気おくれすることなく、すなわち「集団思考」に陥ることなく「孤立への恐怖」を抑制して、確信をもって少数派の意見や異論を表明する人々である。彼らは、多数派意見の世論への「挑戦者」、沈黙する少数派意見の「代弁者」であり、社会変革のための存在となることが期待される。その際には、彼らが現に所属・準拠する組織や集団、地域コミュニティの価値観や規範、ネットワークなどが重要な役割を果たすことになる。また、政府によるメディア・コントロールが進む日本において「メディア(に)は、ある意見や立場を守る表現を提供する」(201ページ)ことが強く求められよう。別言すれば、権力と不正義に対する監視者としての使命と責任が厳しく問われる、ということである。留意しておきたい。

補遺
次の図は、本稿でメモった「沈黙の螺旋とハードコア」を概念図化したものである。参考に供しておきたい。

5つのしない

無理しない
もう身体がきかない
意気はあがらず 息があがる
老いるとは 体力を知ることか

無精しない
やぼな注文 面倒くさくて仕方ない
無精髭に ジャージ姿でうろつく
老いるとは 色気も失せていくことか

無駄しない
これ肝心 年金暮らしはきつい
出費は 医療費オンリー
老いるとは 生きるを粗末にしないことか

無茶しない
できないことは できません
おとなしく ただ薄笑いするだけ
老いるとは できないと自覚することか

無心しない
甘えない ねだらない 相手もいない
ただ無心になることは できる
老いるとは 日だまりに座することか

〔2021年7月15日書き下ろし。「5つの無」は、心を老いさせぬ戒律か。穏やかな日々が戻ることを願いつつ、17日から投稿3年目に向かう〕

リスクはあなたです

16日 IOCバッハ一行は広島を訪問する
76年前 米国で人類初の核実験「トリニティ実験」が行われた日
日本列島に 汚染地帯拡大警報が出ました
歩くリスクが 列島を縦横無尽に動きます
家来を傅(かしず)かせて 大名行列いたします
広島・長崎に 感染拡大警報が発令となりました
福島・札幌には 感染警戒注意報が発令となります

すでにリスクは 持ち込まれています
知らないといって隠すのは 管さんの哀しい性(さが)です
コロナワクチン供給量も酒屋の脅しも みんな承知しています
100万人のワクチン接種大作戦は 頓挫しました
開催の目処が立ったので いまさらどうってことはありません
五輪後感染拡大しようが 責任取って辞める身です
管々(すがすが)しく身を引き 次の人が後始末します

14日1149人です
15日1308人です
東京の感染者は 想定内です
まだまだ上がります
慣れて飽きて 政府の言うこと誰も信じていません
酒のせいにしても もう無理です

ただ感染者の数の問題で 死者の数じゃありません
重症者のベッドも いまのところ大丈夫でしょう
エビデンスなんか 持ち合わせていません
第六感ですよ
これを叩き上げて 首相になれた私です
まあ開催中は なんとか持ち堪(こた)えます

「日本国民が恐れる必要はない。五輪関係者と日本人を明確に隔離する措置を講じており、大会の安全性に全幅の信頼を寄せていい」
何を言い出すのか 恐怖に変わった瞬間でした
バッハさん どんな権限をもってそう言い切るのか
あんたが言う台詞じゃない
IOCそのものが 恐怖であるという自覚が微塵ない
「日本の皆さんのリスクはゼロと言える」
ホントに何の根拠もなく 平気で嘘をつく
隔離するから大丈夫なんて あり得ないこと知ってます

安全性が破綻したら 責任を取りますか
すぐに逃げ出すくせに よくいうよと呆れかえります
責任を持った言葉だなんて だれも信じちゃいません
そこがそもそもズレてるから 無理強いするのです
偽善者の本性は すでにバレバレですから
動かず喋らず とっと帰ってください

リスクは覚悟の上で 万全を期します
私が命令しますから ルールは順守してくれるでしょう
VIPが飲みに出ても リスクは闇に葬ります
それも想定内です
バッハの本音 そもそも絶対なんかありません

日本の国民よ
熱暑の夏はホラー映画で 盛り上がりましょう
是非五輪のホラーを 家で楽しんでください

〔2021年7月15日書き下ろし。連日のバッハ会長の言葉に、開いた口は塞がらないが、キーボードを叩く手は勝手に動く。札幌64人、もっと増える予感がする。第六感だ〕

付記
バッハ会長「日本にリスク持ち込むことは絶対ない」 首相と会談
来日している国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は14日、首相官邸を訪れ、菅義偉首相と会談した。23日に東京オリンピックの開幕を控え「我々が、日本国内にリスクを持ち込むことは絶対ない」と決意を語った。
バッハ氏は東京五輪が史上初の延期を経て開催されることを踏まえ「歴史的な大会になる」と強調。「日本国民一人一人が厳しいルールを勤勉に守ったから、(開催が)可能になった」と感謝した。首相は「政府も万全な感染対策を講じ、一致団結して成功に導きたい」と語った。
8日に来日したバッハ氏は、隔離期間が明けた13日に大会組織委員会の橋本聖子会長を訪問。「五輪休戦決議」の開始日となる16日には、被爆地の広島市の平和記念公園や広島平和記念資料館を訪れる。(毎日新聞2021年7月14日)

チャイニーズピープルです

「チャイニーズピープル」
傲慢な心の綻びが ぽろっと出た瞬間だった
言い間違えと流すのは いただけない
怒るのは大人げないと 冷笑を買うだろう
国民に寛容を求めることで IOCバッハはさらにつけあがる

ニッポンは アジアの辺境に生きる
JOCに搾取された 隷属する国でしかない
IOCバッハには アジアはみんな中国人
ニッポンにいて 中国を想う本音が透ける
次の餌食を虎視眈々と狙う 無意識が現れた

トランプが チャイナコロナと批難した
トランプ信奉者は 中国人を次々襲う
スマホで撮影するだけで 助けにも行かない市民
同じ顔したニッポン人も 犠牲となった
人種差別は 憎悪に点火してアジア人を殴打する

トランプの号令一下 国会議事堂まで攻め入る信奉者
選挙結果を否定し トランプの正義を信じるテロ集団
白人至上主義者は 民族の優生を主張して銃を取る

米オールスターで 大谷はホームラン競争でベストを尽くした
ヘトヘトになった彼に 人種を超えて多くの選手が激励のハグをする
アメリカがここまで成長するのに どれだけの犠牲があったであろう
苦難を乗り越えてきた歴史を 決して後戻りさせてはならない

五輪にも その役割は確かにあった
東京五輪は 貪欲な商業主義と下劣な政治で汚れてしまった
これは苦難ではない 悲劇である
歓喜も感動もない ただのスポーツ大会と成り下がった
バッハの「チャイニーズピープル」の一言は 
寛容にはなれない自分であることに 納得した
VIP待遇の五輪ファミリーは 今宵も夜の街に繰り出す

〔2021年7月13日書き下ろし。コロナ接種は五輪開催にこぎ着ければそれでよかった。2回目のワクチン接種が危ういと、札幌市はいまさら報道する〕