痛みなきゲーム

子どもらは ゲーム機もって時間を潰す
兵士らは 値の張るゲーム機持たされて
いつでも 正確無比に攻撃できるよう
シミュレーションで 時間を潰す

本番の指令が 飛んできた
心うきうき 作戦開始
飛ばした無人攻撃機を
ターゲットに向かわせる
宇宙から監視衛星で追跡し
撃ての命令 スイッチオン
見事攻撃成功 小躍りしながら 高揚する
作戦見事に的中し
敵陣は 幾多の屍が折り重なり 
阿鼻叫喚(あびきょうかん)の巷(ちまた)と化す

阿修羅道に踏みいれし者たちは
戦争ゲームに 夢中です
敵を殺戮(さつりく)する快感は
ミサイル着弾の瞬間に わきあがる
倒れし生身の人間の 一人ひとりの死にゆく苦悶の表情は
誰ひとり想像できない 仮想世界の出来事なのです
遠くにありて 仮想世界の出来事にしか過ぎないのです

痛みなき戦争ゲームに参加する
主導する者も 命令される者も
みな他人の死に対し
無慈悲無感覚となるのでしょうか
自らの最期の刻を迎えたときに 
よき人間だったと
よき人生だったと
みな神に召されていくのでしょうか

その墓には きっと花よりもゲーム機が似合います

※阿修羅道(あしゅらどう):仏法の守護神とされる一方、六道の一として人間以下の存在とされ絶えず闘争を好む阿修羅が住む争いの絶えない世界。

〔2020年1月11日書き下ろし。痛みの伴わない殺戮が繰り返されている。核兵器のスイッチは誰が押すのか。安全に厳重に管理されていると何を根拠に信じているのか。世界はいつでも狂気を満たす準備を整えていることを想像しよう〕