為すべき事がある

未練かも知れない
蒼穹に残した白雲のような
やり残した事への 憧憬(あこが)れか

未練かも知れない
曇天に流れる黒雲のような
やり損なった事への 後悔(く)いか

未練がましく すがりつく
急な岩斜面にとりつくような
全身がこわばる事の 必死さか

未練がましく 訴える
呂律(ろれつ)の回らぬ言葉のように
伝えきれない事の 苦悶(くる)しみか

未練たらしく 無常迅速に抗う
他人に陰口を 叩かれようと 
まだ為すべき事は きっとある

未練たらしく 無窮自在に動く
老いてこそ 見えてくる光が
まだ為すべき事を 指し示す 

世に 未練はきっと残る
人に 未練はきっと残す
だから 終わりのない未練に生きる

生への執着だと 知りながら
まだ為すべき事があると
ひたすら 前を向く

※無窮自在(むきゅうじざい):思いのままに振る舞う・こと(さま)。

〔2021年4月7日書き下ろし。ふと生に未練が湧いた。まだ為すべき事があるという思いが生きることに執着させる〕