心のかさぶた

人は 時に感情の激流に放り込まれる
激しく衝突し 仲違いする
我慢できずに 声高に罵倒しあう
互いを許せず 心が遠のいてゆく

傷つけあった心が 痛かった
憤怒の塊が 消えず残っている
時の流れに 身を置いても
心にかさぶたは なかなかできなかった

傷ついた心は 病んだままだった
罪過の塊が 取って代わってゆく
時の流れに 身を任せることで
心にかさぶたが ようやく塊を包んでゆく

人は いつも心のバランスを欲した
かさぶたが生まれる様を 見まもる
傷口が塞がれてゆく様を 見つめる
癒やされてゆく心の様を 見続ける
ダメージからの再生への クールダウン

心のかさぶたは 他人との諍(いさか)いから生まれる
もどかしい気持ちを 素直に受け入れる
至らない未熟な気持ちを 優しく包み込む
悔悟から生まれる治癒力が 痛みを和らげる
心の再生は かさぶたができてから始まる

心のかさぶたは 心が再生されると剥がされてゆく
和解という薬は 穏やかに効いてくる
憎悪という牙が 緩やかに消えてゆく
批判という棘が 静かに抜かれてゆく
不信という澱(おり)が 徐々に流されてゆく

〔2021年4月9日書き下ろし。心のかさぶたをどれだけ剥がしてきたことだろう。傷ついても治癒されて、また歩き出す。かさぶたはあなどれない〕