父も母も 娘は生きていると
信じて疑わなかった
老いが その苦渋の年輪を刻む
父母の想いは ただ一つ
現世で 子どもと再会することだけだった
北朝鮮から 数人が戻ってきたときには
一途の想いを 大きく膨らませた
同じ境遇でさいなまれる 高齢化した親たちと共に
全国津々浦々 矢面に立って妻を伴い歩いた
問題の解決を訴えた声は
政治の世界に冷たく響いた
国の北朝鮮との交渉も
幾度も 淡い希望を抱いたが
いつも 非情に断ち切られた
米国のトランプ大統領にも面会した
国は 自力での解決を放棄し託した
人権問題なんぞ 儲けにならぬことには
リップサービスだけの男のこと
お友だちは くその役にも立たなかった
国会議員たちは 議員バッチと一緒に
いまも胸に青いバッチを 飾っている
拉致家族のおもいを 見事に政治ショー化して
その切実極まるおもいを 踏みにじってきた
象徴のアクセサリー
いつも空約束ばかりで 言い繕うことばかり
なんの成果も上げず ただ無能さを知らしめた
青いバッチだけが 無駄に飾りとなっていた
国に翻弄され続けながらもなお
国に一抹の望みをかけ
娘の帰国を願い 闘い続けた男の
87歳の生涯が
2020年6月5日 静かに幕を閉じた
「これ以上何を訴えればいいのか」
その無念さは いかばかりだったのか
国の白々しい弔辞が
さらなるやるせなさを かき立てよう
深く哀悼の意を表します
〔2020年6月5日書き下ろし。1時間前横田滋氏の訃報に接し冥福を祈ります。1977年娘めぐみさんを拉致されて以来、人生の半分を妻と共に解決のために奔走した。その姿が焼き付いている。国民を守ることもできぬ国の無能と無策が、悲劇を終わらせぬ〕




