鳥居一頼のサロン(3):「助かるわ」

「助かるわ」

夫婦二人のところに
精米した新米が たんと送られてきた
すぐには食べきれんから ご近所さんに ちょっとお裾分け
「お米嬉しい 助かるわ」
「なんもさ うちも助かるんだから」

買い物の帰りに 町会の人の車に 乗っけてもらった
小雨がぱらついてきて 荷物もあったから
「助かったわ」
「なんもさ 雨の中 ほっとかれんからね」

家のもんが だれもいなくて ひとりでいたら
突然胸が苦しくなって 消防に電話した
「助けて!」
サイレンならして 救急車が飛んできた
したら 隣の奥さんが 駆けつけて来て
「大丈夫?」っていいながら 病院まで付き添ってくれた
「本当に助かったわ」って こころから感謝したら
「お互い様だよ」って 返ってきた

「助けて!」って 相手に負担をかけると 知っているから
なかなか 言いだせないことば
「助かるわ」って すぐに出てくる 感謝のことば

「助かるわ」「助かったわ」ということばは
他人(ひと)とのかかわりを 和ませる
そのかかわりの さりげなさが
いざというときに「助けて」って すぐに伝えることばに変わる

だから 「助かるわ」「助かったわ」は
お互いの助け合いや支え合いを 身近に感じることばとなる
そのこころは あなたを信じ 分かち合いから生まれ 育まれて さらに豊かになる

それは 一人ひとりに宿る こころの風景そのもの
わたしのまちの 「愛ことば」
「助かるわ」「助かったわ」「なんもさ」「お互い様」
愛ことばの往来が
わたしのまちを ぬくもりあるまちへと 突き動かす

〔鳥居一頼/2018年10月28日〕