鳥居一頼のサロン(7):「The End of JAPAN」

「The End of JAPAN」

いつの頃から 社会に 
こうも鈍感(どんかん)な人間が 増殖蔓延(ぞうしょくまんえん)していったのか。

公害問題は 水俣病とスモッグともに過去形で語られ ジエンド。
環境問題を提起した 大津波による原発の爆発事故後の 全面停止も 
他所の原発再開で ジエンド。
政(まつりごと)のごたごたは 
為政者の誠実な説明拒否と 官僚の巧妙な忖度(そんたく)で ジエンド。
経済の振興も 数字上のバーチャルな世界を誇張(こちょう)して ジエンド。
国防も 沖縄の民の声を無視するばかりか 
ただただ 膨れあがった防衛費の浪費に 勇往邁進(ゆうおうまいしん)して ジエンド
子育ても学校教育も 子らの知情意 そして体の成長のバランスが崩れて ジエンド
医療と福祉は 保険料と年金のパイの実の奪い合いで破綻(はたん)し ジエンド。
天災地変は 国土防災力の欠如が露呈(ろてい)し 
回避不可能なため 被害甚大(ひがいじんだい)に陥(おちい)り ジエンド。

民は “鈍感力”という自衛力を 強化した。
社会に逆らわず 人ごとに干渉(かんしょう)せず
“あきらめ”という 思考停止の保護バリアを 張り巡らす。
わずかばかりの生活費を 稼ぐだけの仕事に就き 
欲をかかず ひたすら慎(つつ)ましく暮らす。  
何も考えず 不平も言わず スマホに指を走らせるだけ。
特にすることもなく 寿命が尽きて 
ジエンド。

こうして 
無為無策(むいむさく)の民は 
鈍感力で “生きにくさ”を 克服して 
静かに 終焉(しゅうえん)のときを 迎えた。
虚構(きょこう)の政を行った 権力者は 
支配する民を失い 自滅(じめつ)した……そうな。

残されたもの。 
返済不能な 国の莫大(ばくだい)な負債
都会の 廃墟(はいきょ)と化した 灰色の街並み
そして 毀損(きそん)された 戦争放棄の崇高(すうこう)な憲法
だった……とさ。

〔鳥居一頼/2019年7月6日〕