老いていく身に 世捨て人を命ずる
老いていく身を 世の趨勢から遠ざける
老いていく身が できることすら拒みはじめる
老骨に鞭打ち働くことを いさめる
老骨は労(いたわ)られることを よしとする
老骨が世に発することを ためらう
もう 若い者たちの時代だ
その道を 邪魔することのないよう
表舞台から降板し おとなしくしていよう
だから 若い者たちに任せよう
その決心を 揺らがぬように
尋ねられたときだけ 真摯に答えよう
だた 若い者たちに伝えておこう
おれは 君たちの年には
わかったようなふりは しなかった
姑息な自分を 戒めた
ダレた自分を 鼓舞した
失敗した自分に 檄を飛ばした
自分らしく生きたいと ひたすら渇望した
もう 出番はなくなった
もう できることもなくなった
もう 考えることも億劫(おっくう)になった
だから 迎えが来るまで 好きなことをして生きながらえよう
そこまできて はたと気づいた
好きなことって 何なのか
世の中と人と関わることしか してこなかった
だから きっと死ぬまで
世の中と人にしがみついて 生きながらえるしかない
そんな自分も 悪くはないと悟った
出しゃばらぬよう 加減しながら いまを生きる
〔2020年2月2日書き下ろし。八十歳まで老いの道半ばです〕