16歳の少年

大望もなく
その日暮らしで 時間を潰す
もてないと 悩みながらも
頭と顔に なにやら液体をぶっかけて
気取ったふりして 粋がって
お洒落に時間と金をつぎ込む 16歳

勉強も 赤点取らなきゃまず安泰
家でやるのは ゲームだけ
反抗期だと 母親の愚痴は煙たがり 金の無心はお手の物
友だちと マチで遊びを覚える 16歳

この先の行く末は なにも見えない 決められない
親は大学進学も お前次第だと言うけれど
何をどうするかもわからぬままに 大学決めて何になる
もう少し高校時代を楽しみたい 中途半端な 16歳

高校に ただ行ってるだけで 
親は 子どもの教育をちゃんとしてると
それで 世間体は立つのです
親は 世間体を気にかけつつ暮らしています
稚気な世間知らずは どこ吹く風と呑気に暮らす 16歳

高校には行かず アルバイトで稼ぐ
中学を卒業してから バイト先は6つ目
早朝から出勤 大人に混じって対等に働く
早く稼ぎたかった 
社会は そんなに甘くない
自分に見合ったバイト先を見つけるまでが 苦労した
それでも そこそこで辛抱しながら頑張った
いのちの時間を削って 
夢を叶えるために 稼ぐことを決めた 16歳

親に依存することなく
早く18歳になって 自立したいと自らに檄を飛ばす
世間に依存することなく
早く18歳になって 学歴妄信の世間の空気を吹き飛ばしたい
学校に依存することなく 
早く18歳になって 同世代の者たちの甘ったれた言動を否定したい

だからいま 前を向いて自分の足で歩くことの厳しさを学んでいる
失敗を笑われようと 俺は俺の力で歩いていることを信じてひたすらゆく
16歳の誕生日 中卒を世間のさらし者にして喜ぶ輩に恩返します
16歳の誕生日 親への感謝の気持ちを大切に 心の痛みを学びます
16歳の誕生日 少し大人になった自分を ほめてあげます
そして16歳の誕生日 自分を信じる力をもっとつけるよう 社会で学びます  

〔2020年2月5日書き下ろし。4日16歳になった中卒の少年の胸に去来する覚悟とは何か。嘲り笑う者たちへのしっぺ返しはつまらぬ小事。大志に生きよう〕