味覚の劣化

盲養護老人ホームでのワークキャンプ学習
高校生にアイマスクで 食事をさせた
体験後 味気なかったと 多くが語った

高校生の味気なかったそのわけは
味覚ではなかった
視覚だった
見て味わう
小さな頃からの繰り返しが 味覚を鈍らせていった
盛り付けられた料理を 
まず視覚で うまそうまずそうと認知する
すでにそこで 舌の出番は半減する
うまければ 自分の視覚に自信がつき
まずければ 自分の視覚に納得する
見た目よりおいしいときは 裏切られたことを喜ぶ

視覚に頼る者たちは
食材を味わう舌の感覚を 鈍化させ喪失させる
見た目の心地よさに 気を惹かれた者たちは
ことの本質を見抜けず
状況の判断力を 鈍化させ劣化させる
目の前の 見えることに執着し
目の先の 見えることだけの対応で
生命維持の感覚を だましマヒさせる

時には目をつぶり ことの成りゆきを
心静かに 味わい考える
新コロナウイルスに立ち向かい
暮らしを取り戻す闘いは
いまそのときを迎えた

※ワークキャンプ学習:福祉施設での宿泊を伴うボランティア体験学習。

〔2020年3月21日書き下ろし。道の経済回復の手立ては国の指示待ち。中央志向の知事なら仕方ない。さてここまできたら腹をくくって、まずは腹ごしらえ〕