意気地なし

男はみんな 弱虫で意気地なしだった

歯医者は 怖かった
座らされて 治療する歯科医に 
何をどうするのか いちいち尋ねた
納得して ようやく治療の手が入る
面倒くさい子だった 

いよいよ虫歯を抜くという日になった
母は 親父に付き添うよう命じた
参観日にも来ない親父が 付き添うなど想定外だった
治療台に座り 一言も言えず 泣くこともできず
うっと堪えて 静かに抜かれた
父は 黙って見ているだけだった
それが 心強かった
母は 子の弱虫を退治したくて
親父に委ねた
帰り道 痛くなかったべ
痛さを我慢しながら うんと返事をした
頑張ったなと その一言が一番嬉しかった
少年は 成長とともに 意気地なしを隠す術(すべ)を学んでいった 
男になった
痛くとも 痛くないと 自己暗示をかけ
見栄っ張りを通した
素直になれないところに 我慢強さを身につけた
親父のような男のイメージが いつも後押しした
「男は黙ってサッポロビール」のコマーシャルが好きだった

弱さを知るだけに 強く振る舞うことが 男の美学となる
意気地なしの根は いまも残り続ける
だから ときどき臆病さが顔を出し 身を縮ませる
理由もなく面白くて そのバランス感覚を楽しむ

ふと いまの野党の烏合の衆を見ていると
臆病者の悲哀を感じてならない
意気地なしが 強がって虚勢を張る
男の成長と重なった 原風景
違いは 隠すことなく見え見えで 痛々しい
父のような存在感を持つ者すらいない
 
野党が大同団結できぬなら 
バラバラに つまらぬ見栄を張って 勝手にするといい
チャンスに 戦略を描けぬ無能さに輪を掛けて
大事な時局に立ち向かう 気概を見せずして 
互いのちっぽけな意地を通して何になる
それが 意気地なしの正体だ
民に見放されたと 嘆き続けるのが お似合いだ

「男は黙ってサッポロビール」
与党は 野党をうまそうに飲み干す

〔2020年3月27日書き下ろし。この時期に統一会派の解消とは、何とも意気地なしの野党だと、あきれてものすら言いたくないから書いた。ビールはサッポロクラッシックがいい〕