男は 今までになく神妙な顔つきで 記者会見に臨んだ
いつものように カメラ目線から外れていた
書かれた原稿を さもさもらしく読み上げた
いつものように 誠意はこれっぽっちも伝わらなかった
後手に回ったコロナ禍対策への謝罪も
いつものように 乾いた言葉だった
質問を受ける時間となった
朝日新聞の記者が アベノマスクについて質問した瞬間
待ってましたとばかりに 語気を強めて反撃した
いままで散々叩かれてきた敵に 一矢を報いる
まるで勝ち誇ったかのように 上気した顔
この瞬間 男は自分の冒した罪過を背負った
宿敵を口撃した途端に ブーメランとなって退陣への致命傷を負う
日本の経済を守り 雇用を護る
そう主張して 後手後手のコロナ禍対策に終始した男の口は
日本のクオリティーの高い繊細なものづくりの技術と人を罵倒した
男が配布する200円の布マスク 国内生産ではないであろう
その品質や生産管理の不手際で
髪の毛や虫の混入 黄ばみといった不衛生なマスクがあったと報道された
日本の製品管理ではあり得ない 根本的なミスである
かつ 男は布製だから何度も洗えると強調した
2度でも100度でも 何度のうちだ
いつもの科学的根拠に基づかない まやかしの言葉にまた振り回された
求めてもいないこんなマスクに 466億円をドブに捨てた
1枚1650円(税込)
200円の8倍の値段は すぐには手は出せない価格だ
しかし 品質で勝負していることは確かだ
日本で生産したガーゼ原料 毛羽立ちにくい特別加工 立体加工と耐久性の維持
150回洗えると いまでも検証を続け
製品への信頼度を高めようと 努力する
これが 日本のものづくりへ込められた開発者のポリシーだ
そのおもいを 男は全国民の前で 卑屈な顔をして罵倒した
男は 彼らを中傷したことには 頭は及ばなかった
その取り巻きも 男に心地よい情報しか伝えなかった
必死に良質なものをつくろうとする者たちへの
男の想像力は 保身に駆られ欠如したままだった
日本の世界に誇るものづくりへの 許しがたい冒涜となった
男を中心に 浅はかなバカの集まりが
政治を動かしているという 紛れもない事実を
自ら暴露した 記者会見となった
男は マスクの開発に尽力した者たちや会社に 公に謝罪すべきだ
しかし 男の謝罪は言い訳めいた乾いた言葉でしかない
だから 即刻その座から取り巻きと共に降りなさい
それが せめてもの誠意となり 国と産業を救う
〔2020年4月21日書き下ろし。17日の記者会見の様子を見てて、唐突な口撃に違和感を抱いた。後日その事実は白日の下に明らかにされる。緊急時に努力して開発したものと人への冒涜は許されない〕
付記
首相の「アサヒノマスク」批判が物議 2枚3300円の製造元、調べてみると…
新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けて、政府が全世帯に2枚ずつ配る布マスク。安倍晋三首相が主導し、国民の人気はいまいちで「アベノマスク」ともやゆされている。記者会見で配布に疑問を呈した朝日新聞の記者に対し、首相が「御社も2枚3300円で販売していた」と“反撃”したことが物議を醸している。一体、何が問題なのか?
「御社のネットでも布マスク、3300円で販売しておられたということを承知しておりますが、つまりそのような需要も十分にある中において、我々もこの2枚の配付をさせていただいた」
「緊急事態宣言」の全国拡大などを巡って首相官邸で開かれた17日の首相記者会見。「最近では布マスクや星野源さんの動画でも批判を浴びているが、この間の一連の新型コロナの対応について、ご自身でどのように評価しているか」と質問した朝日新聞記者に対し、首相は語気を強めて“反撃”した。
事前に保守系の経済評論家が「朝日新聞が2枚で3300円のぼったくりマスクを販売中!買っちゃダメだよ!」とツイートしていた影響もあってか、ネット上には「朝日新聞に特大ブーメラン直撃! ぼったくりかよ」「朝日新聞社は国民のことを何も考えていないぼったくり悪徳商法会社だった」などのツイートが相次いだ。
しかし、実はこのマスク、2枚3300円が定価だ。「繊維の街」として知られる大阪府泉大津市の南出賢一市長と泉大津商工会議所がマスク不足の解消を目指し、3月6日に市内の繊維メーカーに呼びかけて、市内と近隣の計6社(後に7社)がそれぞれに手作りで製造・販売したうちの一つだった。市や商議所のホームページには「必要な人にマスクが届かない状況を改善するため、泉大津ならではの良さが詰まったマスクを揃(そろ)えました」「地元事業者が一つひとつ手作りでつくりました。“泉大津産マスク”は洗ってもまた使えるマスクで、経済的、環境にも優しいマスクです」とある。
朝日新聞の通販サイトで販売していたマスクを製造したのは、1917年創業の泉大津市の老舗繊維メーカー「大津毛織」。同社によると、マスクは計4層構造。綿は医療用レベルの原料を使うなどし、150回洗濯しても使えるという。1日1000~1500セットを社員約15人で手作りしているという。
大津毛織のマスク担当者は「布製でありながら、立体構造で長時間着けていても不快感がない」と胸を張る。だが、首相の発言によって、ネットの一部では「ぼったくり」などと表現されて攻撃対象に。担当者は「すごく残念で悲しい。言われっぱなしで我々にはどうしようもなく、対抗策もない。日々マスクを作って届けるしかない」と声を落とした。
ただ、ネット上ではそうした事実を踏まえた投稿も増え始めている。妊婦向けマスクの袋に虫が混入するなど約1900枚の不良品が見つかり、「サイズが小さく、重い」などと批判される「アベノマスク」と比較し、「アベちゃんも注目、アサヒノマスク! アベノマスクより高品質らしいし」といったツイートも。「どこがぼったくりや? プロの作ったもん、バカにすんな。仕事潰すな!」「安倍政権が打ち出した地方創生をも否定する話」などの指摘も上がっている。
ネット上ではさらに、朝日新聞の通販サイトが首相の指摘を受けて閉鎖したとの誤った情報まで広がった。朝日新聞社によると、受注を停止したのは、首相が東京都などに緊急事態宣言を翌日に出すと「予告」した4月6日。通販サイトでは日付は入っていないものの「新型コロナウイルス感染拡大で政府が緊急事態宣言を出しました。これに伴い、朝日新聞SHOPは、物流に支障が出る恐れがあることから、お客様からの受注を、期間未定で停止いたします」と記載しており、確認をしないまま情報が広がっているようだ。(後略)
(毎日新聞 2020年4月21日)