憤りを口にする
露わな憤怒(いかり)の感情は
自制の効かぬ己を 貶(おとし)める
憤りを口にする
勢いで発せられたことばで
暴力的な汚辱(おじょく)に 己が塗(まみ)れる
憤りを書きとめる
憤怒は ことばに置きかえられ
生じた理由(わけ)の 感情の整理が始まる
憤りを書きとめる
辛辣(しんらつ)なことばが 次々と吐き出され
憤怒が さらなる勢いを取り戻す
己の世の中への小さき憤り
非力ではあるが 無力ではない
己の小さき存在
ひとりではあるが 決してひとりではない
己から発せられ記(しる)されたことば
腐るかもしれないが 腐らしてはならない
憤怒を 批判力にかえて
人と世のあり方を問い続ける
ひとりではあるが 決してひとりにはならない
〔2020年5月13日書き下ろし。世相への憤(いきどお)りに憤怒(ふんど)のことばを綴り続けることしかできない〕